闇の神の意志
短くてすいません。
「ふはははははは!」
勝利を確信したシェディムは高笑いしていた。魔理沙の苦しむ姿を見ながら……。
「いいぞ、天使共。そのまま、殺してしまえ!」
シェディムは更なる苦しみを魔理沙に与えるよう、天使たちに指令する。だが……。
「……どうした、天使共? なぜ攻撃をやめた!?」
天使たちはどういうわけか、突然羽を降らせるのをやめる。苦しみから解放された魔理沙は宙に舞う天使たちの顔を窺った。
「……泣いてる?」
大理石のような鉱物で出来ている天使たちの顔。その真っ白な瞳から透明の液体が流れていた。まるで涙のように……。
「お前たちはお母様の手により、精神を封印され、像となったはず!? なぜ涙を流している!?」
予想外の天使たちの動きにシェディムは動揺を隠せない。シェディムにとってお母様テネブリスの呪いは絶対なのだ。その絶対が揺らいでいる。それはお母様の力が衰えたからか、それとも眼前の金髪の小娘が要因か……。シェディムが原因を探る中、テネブリスがぽつりとつぶやいた。
「……気に食わんのう。ワシを欲する闇の神の意志を、未だ忠実に守ろうというわけか」
「お、お母様、天使共が攻撃をやめ、感情を露わにしていることに何か心当たりが……?」
「……シェディム……。その天使共はもう小娘を倒すための道具にはならん。下がらせるのじゃ」
「は、はっ……!」と畏まりながら、シェディムは天使たちの頭上に魔法陣を展開させた。天使たちは魔法陣の中へと吸い込まれ、消えていった。
「……命拾いしたのう、小娘。リサの血を持っていたことを感謝するんじゃな」
「母さんの血……?」
テネブリスの言葉に魔理沙は疑問符を浮かべる。だが、テネブリスが疑問に答えることはない。
「……シェディム、この小娘に小細工は通用せん。貴様の力で圧倒してみせよ……!」
「……はっ!」
シェディムはテネブリスの命に頷くと、魔理沙の方に向き直る。
「……小娘。お母様の命だ……。本気を出させてもらおう……!」
「……へっ。今までは本気じゃなかったてか? 本当に人を舐めてる連中なんだぜ」
魔理沙は吐血した血を拭いながら、不快感を口にする。
「……最初のドーターである私の真の姿は醜いからな。見せたくはなかったが……。お母様の命ならば致し方あるまい……!」
シェディムの体がメキメキと骨格から変形していく。等身は大男よりも大きくなり、頭部からは曲がりくねった羊のような角が生え始め、背中からは隆々とした蝙蝠のような翼が突き出してくる。
『変身』が完了した時、シェディムの姿は元とはかけ離れた異様なものになっていた。魔理沙は思わず言葉を漏らした。
「……何だよ、その姿は……。鬼に似ているけど、どこか違うんだぜ……」
「……デーモン。人間どもは私をそう呼んだ」
シェディムは威圧するように低い声を発するのだった。