水晶が炭に
魔理沙は霊夢の気遣いを受け、異変疑惑のある水晶のことを霊夢に隠してはいけないと思い始めていた。父親に隠しごとをされて、傷付いた魔理沙は、霊夢に隠しごとをしてはいけないと考える……。なにより、自分のことを心配してくれいている霊夢を出し抜くような真似はするべきではない、と魔理沙は自分の態度を改めた……。
「なあ、霊夢……。最近妙なアイテムが人里で売られててさ……。……なんかきな臭いんだぜ……」
「妙なアイテム……? なによそれ」
「人里でちっちゃい婆さんがこんなもん売ってたんだ……」
魔理沙は老婆から購入した水晶を霊夢に見せる……。
「何? そのガラス玉……」
「ガラス玉じゃねえよ! 水晶だよ!」
「似たようなもんじゃない……」
「……とにかく、だ……。この水晶は驚くなかれ、誰でも魔法が使えるようになってしまう不思議アイテムなんだぜ。里の皆は我先にと十円もするこの水晶を買い求めていたぜ」
「じゅ、十円!? こんなガラス玉が!?」
「……誰でも魔法が使えるって方に驚いて欲しかったんだが……、まあ、私も『十円もする』って言ったけど……」
「……で、何が妙なのよ……」
「まず、誰でも魔法が使えるって時点で妙だ……。私が実際に見たんだが、5,6歳の女の子が使っても魔法が発動してた……。普通ならあり得ないことだぜ……」
「そう? 私は5歳の頃にはもう術が使えてたわよ?」
「……お前は自分が普通じゃないってことをもっと自覚した方が良いと思うんだぜ……。……奇妙なのはそれだけじゃないぜ? こーりんにこの水晶を見せたんだが……、こーりんにも名称と用途の一部が分からなかったんだ……」
「霖之助さんにもわからない……?」
霖之助にも見抜けないアイテムだと知り、霊夢の目付きが鋭くなる……。霊夢が真剣に聞きだしたことを確認し、魔理沙は話し続ける。
「おかしいだろ? この水晶はただ単に誰でも魔法が使える便利アイテムってだけじゃないんだと思う……。何か他に秘密が隠されているはずなんだぜ……!」
「ちょっと、見せてもらえるかしら?」
魔理沙は霊夢の要望に頷き、水晶を手渡す……。
「な、なんだ? 急に光り始めたんだぜ!?」
霊夢が触れるや否や、水晶は激しい光と熱を放出し始めた……。霊夢は水晶を手放し、魔理沙とともに距離を取る……。すると、光はすぐに治まり、黒い炭になった水晶だけがその場に残った……。
「じゅ、十円もした水晶が黒焦げに……」
「わ、私のせいじゃないからね!?」
霊夢は水晶を弁償したくない一心で、大きな声を出していた……。