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東方二次創作 普通の魔法使い  作者: 向風歩夢
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神名乗り

「あややや。これはまずいのではないですか、天魔様」


 射命丸もまた、変貌したラクタの姿を見て冷や汗をほほにたらりと流す。


「はたて、もう一度、捕縛しろ!」

「わ、わかった」


 天魔ははたてにラクタの拘束を命じる。はたては間髪入れずに念の蔓をラクタに巻き付けた。しかし……。


「くだらんな。……フン!」

「そ、そんな……。私の蔓が……」

「どうした、はたて!?」


 蔓の動きが見えない天魔ははたてに状況の説明を求める。


「……はたて様の蔓が一瞬で消し飛ばされました……。あの化物の一喝だけで……」


 蔓の姿が見える椛がはたてに代わって説明した。


「さて、もうお得意の念能力が我に効くことはない。他に何か策があるのか? ……貴様らの表情を見るにもう奥の手はなさそうだな」

「椛! あなたははたてに付きなさい。私は天魔様をお連れします。逃げますよ!」


 射命丸の言葉が響き渡る。椛は射命丸の指示どおり、はたてを連れて走り出した。射命丸も天魔を抱えて高速で飛ぶ。しかし……。


「逃げられると思ったか?」

「そ、そんな……」


 変貌を遂げたラクタはそのスピードも大幅に上がっていた。射命丸たちの逃走経路に一瞬で先回りし、彼女たちの前で仁王立ちする。


「射命丸のスピードをも上回るだと……? なんてやつだ……!」

「今更だな。我に勝てると思ったのが間違いだったな。最初から逃げていれば死だけは免れただろうに……」


 ラクタは天魔たちに掌を向けながら口元を歪める。


「焼き鳥にしてやるぞ……!」


 ラクタは手掌から火炎を放った。天魔たちは灼熱の炎に飲み込まれる。4人は悲鳴とともに爆炎で吹き飛ばされた。


「ほう。やるではないか……」


 ラクタが感心したように口を開く。ラクタは4人全員を殺すつもりで炎を放っていた。しかし、4人ともかろうじて息をしている。


「ただの衰えた大将ではなかったというわけか。あの一瞬で防御結界を施すとは。我でなければダメージを負うことはなかったであろうな」


 ラクタは倒れ込んだ天魔の元に歩み寄り胸倉を掴みながら持ち上げる。


「う……ぐ……。ふざけたやつ……だ」

「まだ意識が残っているのか。しぶといな。まずはお前から殺してやる。あとの3匹はゆっくり殺してやろう。もう気絶しているようだしな。……おっと間違えた。お前の部下の鴉や犬っころは他にもたくさんいたのだったな。心配するな。すべてお前の後を追わせてやる。我は慈悲深いからな」


 言いながら、ラクタは片手に魔力を込め、拳を炎で染める。


「これで終わりだ。死……ね!? っが!?」


 ラクタが天魔の腹部に炎の拳を叩きこもうとした瞬間だった。ラクタの側頭部を巨大な木材が打ち抜き、ラクタは衝撃で飛ばされる。


「げほっ、げほっ。た、助かった。……が、誰だ?」


 ラクタの拘束から解放された天魔は咳き込みながらも自分を助けた者に視線を向ける。


「き、貴様は……よそ者の……!?」

「やれやれ。助けた恩人に『よそ者』だの『貴様』だのと。随分と失礼じゃないかい?」


 海のような青い髪にえんじ色の上衣を着た『よそ者』はにやりと笑っていた。余裕からか、片膝立てて地面に座った状態で。


「誰だ、貴様は!?」


 側頭部を殴られたラクタは既に立ち上がり、『よそ者』を睨みつけていた。


「存外タフな妖怪だねぇ。私は『八坂神奈子』、この妖怪の山の神さ」


 八坂神奈子は背中のすぐ後ろに浮かせた注連縄を少しばかり動かしながら、胸の部分に装飾した黒い鏡に親指を向けて名乗りを上げるのだった。

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