夜会の結末
皆さま、大体、予約投稿8時だと思って読んでくださってたのに、不意打ちになってしまいました。予告出来ず、すみません。
ここから最後まで投稿してます。
リオンに強く抱きしめられる。
この場で立っているのは、私とリオンと、タリスさん、カイウス様、マルル様、カイウス様の父君。魔術師長。
「彼は僕が連れて行く。」
タリスさんの声が静かに響く。
「・・・まだ、外にいる。」
タリスの言葉に、リオンとカイウスが静かに頷く。
「ルークが監視している。」
リオンの言葉に、タリスが窓の外を見る。
「仲間割れしたらしいな。相手も一枚岩ではなかったという事だ。僕は彼を連れて、様子を見に行く。」
そう言って倒れた魔術師を抱え上げると、タリスは消えた。
魔術師長は、蒼白なまま、呆然と立ちつくしている。
この男、ロイメールでは自分が一番実力が上だと思っているが、実際はリオンの足元にも及ばない男だ。
意識を失わず、立っていられたのも、その地位から手に入れた、数々の魔防の魔術具によるものが大きい。
それくらいならレイローズにも解るのに、本人は自覚がなかったらしい。
でも、この状況では、派閥の違う彼の意識があってよかったのかもしれない。彼が証人になるだろう。
「さて。どうやって、この事態を回収する?」
「全員叩き起こすに決まっている。こんな事もあろうかと、2階に会場を用意している。会場外は通常運転しているからな。会場に入れなくなって、慌てているようだ。」
パチンと、リオンが持っていた魔石を割る。
ピリリとした感覚がして、殆どの者が目を覚ました。
物が散乱した会場で目を覚まし、人々が戸惑い騒然となる中で、王に状況が報告される。
「静かに。先程、侵入者があったが、既に対処された。会場が荒らされたが、特に問題はあるまい。会場を2階のダンスホールに移す。皆、移動するように。もし、怪我をした者がいれば、休憩室内にいる治癒師の元に行くように。」
リオンが皆に言い、扉が開く。ああ。状況処理のために、リオンが扉を封鎖していたのか。
多分、女性魔術師が侵入して5分程度。あっという間の出来事だった。
会場外の警備に当たっていた騎士が飛び込んで来て、会場内の様子に、一瞬、言葉を失う。
「ご無事ですか?」
騎士の言葉に、カイウスが頷く。
「侵入者は片がついた。皆を第2会場のダンスホールまで誘導しろ。」
ザワザワと人が動き、退出する。
その中で、数名の令嬢が泣き出す。どうやら、昏倒した際にワインや色付きのジュースなどをドレスにこぼしてしまったらしい。
はあ。と、ため息が出る。他人事といえ、さすがにドレスがあの状態では気の毒すぎる。
染み抜きなんて、すぐには出来ない。ん?でも、水の魔法でどうにかならないかな?
染み抜き?ワインなどの色を水と混ぜて抜き取ってしまえばいい?
うーん。ものは試しだ。やってみるか。
リオンに断って、泣いている令嬢の元へ向かう。見せてもらい、水を出して、水の分子と一緒にワインを抜き取るイメージ。
あ。なんか、意外と簡単にできた。こういうのって、前世の知識がイメージで役に立つ。この世界の人達、水分子とかわからないし。
令嬢が驚いた様子でお礼を言う。あと、3人?順番にドレスの汚れを取る。
伯爵家と子爵家のご令嬢達だった。あまり、今まで話した事がない方だったけれど。
一日一善?
さて。リオンと共に、私も第2会場となるダンスホールに移動する。
その後は何事もなかったかのように夜会は進んだ。
まだ、他に魔術師がいると言っていたのに。大丈夫なのだろうか。
リオンは何事もなかったかのように私をダンスに誘う。
リオンは何か状況把握をしながらこの夜会に参加しているのだろうな。前世のインカムのように耳につけられた魔石の飾り。こちらでダンスをしながらも、ルークやタリスさんと連絡を取り合っている。
それならば、私も合わせなくては。
何事も無かったかのように過ごす。と、言っても、ダンスホールに移動したため他の貴族との歓談が減り、リオンと踊るのは楽しかった。
夜会の夜は更けてゆく。
タリスは王都の街に転移した。
魔術師の男は、血にまみれているが傷は浅い。この魔術師が、サクヤの言っていたクランガルドの魔術師か。
ただの魔力切れだ。転移後にグッと魔力を流し込む。
ゴホッと咳をして薄目を開ける魔術師。
起こすにしては乱暴かもしれないが、今は時間が無い。状況がよくわからない。
ルークも遠視で魔術師を確認しているが、1対2で戦闘する魔術師。2名は見物して手を出す様子が無い。
どのような集まりなのか。
『おい。わかるか?』
魔術師に声をかける。
『・・・誰だ。』
『ロイメールの者だが、どうして仲間割れをしている。』
『・・・無意味な殺戮を望まない。』
『ならば、協力しろ。あそこで戦闘しているのは帝国の者だろう?全員が敵なのか?』
タリスが上空を指し示す。
『1人は完全に敵だが、あとの4人は・・・どう動くか解らない。』
『行くぞ。』
タリスが風に乗る。
不意に現れたタリスとビークの姿に、帝国の魔術師が距離を置く。
『おいおい。冗談きついぜ。まさか、魔女、やっちまったのかよ。』
男がニヤリと笑って、攻撃をしてくる。タリスが風の動きを止め、魔術師の男を止める。
力を振り絞ったように、ビークが破理の杖を男にかざす。
それだけで、充分だった。
異常な状態を保持し続けていた男は、まるで砂のように存在が崩れて空に散った。
『ふん。流石だな。』
1人の魔術師がビークを見て言う。
『これで、ダクロス様にも顔向けが出来よう。すまぬな。我は力を使うと今の主人に視界を共有して見られてしまう故に、手出しする事かなわなかった。まあ、もう、戻らぬがな。』
『こうなった以上、もう、帝国には戻れまい。』
『また、会うことがあれば、どこかで。』
グランカルドの門下であった魔術師達は、ビークに声をかけた後、消えた。
それを見て、ビークの意識もまた、落ちて行った。




