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嵐の前のなんとやら②

ストックをなんて言ってましたが、それをしようと思うと多分何週間も投稿しなくなるので、時間あるときに書いて投稿の今までのスタイルでいこうと思うます。


長い間休んでいたのに、読んでくださる方々がいて嬉しいです。

婚姻をするということでドタバタしていた家中に気づかず、一足遅れてバタバタしだした俺は戦国時代の結婚式はどのようなものか思い出しながら、あっちこっちで指示を出していた。


確か迎え役が新婦の家に朝行って、昼頃まで待つ。それで送り役と一緒に新郎の家に行き1日別室で過ごして、次の日に結婚。確か迎えに行ってもうちではこんなに大事にしてるんだぞ的な感じで焦らすんだよね?


「太郎様、いきなり過ぎて注文が追いつきません!」


「間に合う物を優先順位を決めて揃えてください!必需品だけはなんとしてでも手に入れてください。おい、久兵衛!馬を走らせてこの紙に書いてあるものを揃えてきてくれ!」


久兵衛を使いに出し、あちらこちらを走り回る勘助を呼び止める。


「礼儀作法がわからない。後で勉強できるようにこの紙に必須事項を書いてくれ!」


「はい!お任せください!」


婚姻なんてもっと先だと思ってたから準備してなかった。戦国時代の結婚適齢期を舐めてたぜ。


そうして迎えに行った新婦は一晩過ごした後結婚。その後の宴には新郎の家族、親族、一門だけが出席。新婦側は送り役が見届け人として出席。


で確か……その日の夜に契り結ぶんだよね……


俺はブンブンと首を振って、明日必要な着物を確認しに走る。本当は屋敷内って走ったらダメなんだけど、今日ばかりはしょうがない。ギィーギィー音を立てる廊下に、うるさいと言いそうになるが、仕事をしてるだけと割り切って感謝することにした。


廊下の音に耳を傾けていると、少しばかり落ち着いたのでその後の流れを確認する。確か家来たちも参加するんだよね、三日目は。


……これ短縮しちゃダメなのかな……今戦で忙しいし。うちの親族で出席できそうなのって弟達か市さん……市さんは浅井家の方だし。そう考えると父が融通をきかして出てくれるのはありがたいことなのかな。けどこれで秀吉も織田の親戚になっちゃうよね?一応養子とはいえ、信長様の姪っ子の夫の義父でしょ?


まぁそんな親戚だの一門だので待遇を変えるような器だったら、今こんなに慕われてないか。信長っていう男は常に結果で示してくれる。背中で語り、自ら動く。人に厳しいが、自分にはもっと厳しい。そんな背中に憧れる、勇気をもらう。だから戦さ場では、大将の力量がものを言うだ。




夜になってようやく落ち着くと、5人ほどでご飯を食べていた。

最初は凄い止められたんだけど、俺は家臣とか女中の人とかと一緒にご飯を食べる。まぁ全員だと無防備すぎるから毎日日替わりで。戦に行って気づいたんだけど、人を疑えっていうのは極端すぎると人がついてこないんだ。特に俺が前線に出るような勝ち戦では、相手の軍は活力がない。死に物狂いだけど、空元気のように見えて仕方がない。


だから裏切られるのを疑いすぎるのではなく、裏切られても文句の言えない関係を先に作ることを決めた。勿論、信用しすぎるという行為は避けている。だけどもこういう場を設けるのは悪くないとも思う。


「今日は準備お疲れ様でした。おかげさまで、なんとか今夜の晩に迎え役を送れそうです」


俺が軽く頭を下げると、とんでもないと皆さんが手を振る。温かい笑顔に甘えて顔を上げる。今日は男が2人、女性が2人。いつも料理の用意をしてくれる男性二人と、料理を運んでくれる女性二人。この四人と食事をすることが、何気に多い気がする。


「今日は何か印象的な事はありましたか?なんでもいいんです、聞かせてください」


すると、向かい合って右の女性が手を少しだけあげて話し出す。


「今日は城下町へと買い物に行きましたが、なかなか繁盛していましたね。その分、よその国から来たものが多かった気がします。甲斐のものは流石にいませんでしたが、岐阜や三河からの商人が印象的でした」


例えばこの会話。ただ今日あった印象的なことを聞いただけだけど、今までより領地外から来ている人が、素人目で見てもわかるくらいには増えているということがわかる。自分の偏った知識を持つ目だけを信じるのではなく、人の目に頼るということは必要な事である。


「そうですか、殿は経済を回す事を優先させるつもりなのでしょうか?」


すると調理長である、平太郎さんが口を挟む。こういう一般的な疑問も、自分でも思いつくけど人と議論する事で着眼点の差を身をもって感じられる。偏った知識のもとに人は集まらない。宿題をしなさい!と言われてやる気をなくす子供と一緒だ。大人だって、元は子供だったのだ。変わるとは言え、簡単に根本が部品を変えたように動き出すわけではない。


「そうかも知れないですね。どちらにせよ、警戒を怠らないことが重要だと思いますね」


こんな感じな会話から、近所の猫に子供ができたらしいという会話まで幅広い。だが、主である父秀吉がいるときはこうはいかず、個別で食べることが多い。特に家のものと食べるなんて言語道断。農民出身で頭が柔らかく、新しいことに寛容的なくせに身分とかに異様な執着心をみせる。周りはなるべくして武将になった人達ばかりだから気味が悪いという人も少なからずいるのだが、秀吉は全く気にしないようだ。


提案した時もならぬの一点張り。少しくらい理由のある否定なら諦めるけど、嫌だ!しか言わないと子供の我儘と大差ないんだよね。


秀吉が歴史上において天下統一を果たして偉大な人物として記録されている。だが、秀吉が圧倒的人気を誇るわけではなく、その後天下統一をした家康でもなく、あくまで信長なのはその外国文化や日本文化の良い所を吸収した、新しい時代を作ったからなのだと思う。側にいて感じるのは、家康は保身、秀吉はあくまで権力。だけど信長は何か一つの目標を持って、その目標に芯がある。人よりはるか先を見据えた計画に魅せられ、自分が想像もしない景色をみたいとついて行きたくなる。そういうことなんじゃないかって偶に感じさせる。


「では私は寝ますので。おやすみなさい、今日も1日お疲れ様でした」


食事を済ませ、軽く身体を清潔にして寝床へと向かう。自分のルーティンはとにかく早く寝ること。灯の無駄遣いをしないように過ごす。寝る前に考え事もするが、それは月明かりが利用できる範囲での行動に限ることにしている。まぁ戦があれば別なのだが。


ここにきてから、丹羽さんや弟達のように話す相手がなかなかいない。俺に直属でつかえているものが弥太郎達だけというのもあるのだが、弥太郎達も疲れているだろうとこの時間に呼び出すのは気がひける。


……少し寂しく感じていたから茶々がきてくれるなら嬉しい。


今はもう信長の子ではない俺。そんな俺が茶々と結婚することに家系図上の意味は持たないだろう……いや茶々が一応信長の姪だから俺が織田家一門になるのかな?けどそれでも浅井方にはたいしたメリットはない。それでも茶々を送り込んでくれる長政さんのためにも、意識を高く持って接さないといけない。


……女々しいのか、頑固なのか。誰に似たんだろう……


自信なさげな冴えない微笑を浮かべる。その後で少しだけ襖を開けて、部屋を出て廊下から月を眺める。


「……半月といった所だろうか?半分かけていても……いや欠けているからこそ美しい」


欠けているからこそ美しい。人間は完璧にはなれない、だがそれを埋めようとする姿が美しい。何か月にそう窘められているように感じて、心が少しだけ虚しくなる。人間は得たものより、失くしたもの。嬉しい事柄より、悲しい事柄。


生まれた時やその前後より死ぬ前後の方が記憶があるように、手から何かこぼれ落ちた方が印象に残ってしまうのだ。


それは人が完璧を求めようとするからなのだろうか?


……わからない



「けど……」


俺は月を再び見上げて、親指で隠す。月が遠くにあるだけなのに、自分が月を隠せる程の存在だと錯覚してしまうこの行為が嫌いじゃない。


親指をゆっくり下げて、再び半月が現れると、俺は右足を部屋へと向ける。


「完璧を諦めるのは絶対に違う」


それだけはわかる。





月夜に小さく木霊した、その言葉が聞こえたものは一人としていない。


だが、先程と違う笑みを浮かべた彼はのちに、自身の背中でそれを周囲に伝えていくこととなる。


暗闇で鳴いた鳥の声に消された密かな決心が遠い月へと消えていくようだった。

今回はストーリー自体には進展がありませんでしたが、主人公の年齢と戦や結婚に対する意識に少しだけクローズアップしました。

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