理性と君と月の夜
浅井家にいるととてもリラックスできる。というか戦場に一ヶ月近くいると感覚も麻痺するもので、警戒がとけるまでかなりの時間を必要とした。過度な緊張状態からの解放は人をダメにしそうな気もする。一気に心から何かが抜け落ちた感覚におちいた。
「それにしても桜捨丸は優秀だと兄上が言っておりました」
ツンデレ?とも言える父の行動に少し嬉しく思いながらも箸を止めない。ご馳走は空腹と等しかった俺の胃袋を鷲掴んでいる。
「光栄な事ですが、まだまだです」
ようやく満腹になり箸を止めるとお茶が出て来てのんびりと話すという雰囲気になった。
「そうだ浅井殿」
呼び方を変えたのはこれから浅井家当主に対しての話をするという気持ちの表れ。正直これを言えば歴史が少し動く、だが仕方がない。すると市様と茶々は隣の部屋へと移動してくれた。別に聞かれてもいいんだけどな、市様恐るべし。
「父は……感情に身を任せることが多い。そして口下手だ。言葉足らずで我儘です」
これ聞かれたら殺されるな。長政さんは驚いた表情も、すぐ真剣な表情に戻す。
「ここからは14の小僧の戯言だと思って聞いてください。近い将来、きっと父は朝倉領を攻める。その時浅井殿には何も言わずに行動に移します」
長政さんに考える暇を与えてはいけない一気に畳み掛ける。
「それは浅井殿を信頼しているからこその行動だと思ってください。本当はこんな話はしたくないんですがね。きっと父のことだ、貴方を信頼して痛い目を見るはずだ」
すると長政さんは少し考えた後に笑う。
「面白い話です。ですが私は義兄上が描く世界を見て見たい。万が一にでも義兄上がそんな行動を取った時は太郎殿にお任せします」
こんなあっさりことが進んでいいんだろうか?いやこれもまた浅井長政という男の才からくるものだろう。敵に回すと怖いのは藤吉郎や家康さんではなくこの男なのかもしれない。
「もう暗いですし今日はお休みください!戦後でお疲れでしょう」
「すみません、ではお先に失礼します。今日はどこで寝ればいいでしょう?」
半兵衛も立ち上がり俺の後ろをついてくる。
「前回太郎殿が使った部屋を竹中殿と秀吉殿。その他の方達は案内させます。太郎殿はこちらのものに」
するとスッとたった男の人が俺を部屋まで案内してくれた。
「こちらです、ではごゆっくり」
襖を開けるとそこには寝床が一つ。この時代抱き枕は勿論ないので愛用していた俺にはきつい。
暗くてよく見えなかったが……
「茶々?なぜここに?」
そこにいたのは寝る準備万端といった茶々だった。相変わらず可愛いがどういうことだ?
「今晩は太郎殿と一緒に寝ろとのことです」
だから長政さんニヤニヤしていたんだな!やられたよ!
てか心はとっくに成人の俺が女の子と一晩とか無理!
「では寝ましょうか。おやすみなさい」
茶々は眠かったようですぐに寝てしまったが、俺の目はかなり冴えている。
……茶々の肌って綺麗だな……
かなり密着した体制を朝まで崩すことなく信継の理性に攻撃していた茶々は翌日凄くいい寝起きだったとか。
一応言っとくが何もしてないぞ!




