第七話 コンビニにご用心
コンビニ強盗を待ち受けていたものは……
深夜のコンビニ。
その出入口から死角になる電柱の陰で、その男は目出し帽を被った。
コンビニに店員一人しかいないのを確認すると、男はポケットからナイフを取り出し、二三回深呼吸してから、一気に店内に駆け込んだ。
「強盗だ! カネを出せ!」
そう叫びながら、男は店員にナイフを突きつけた。
だが、店員は至って平静な態度で、男に笑顔すら見せた。
「きみ、よした方がいいよ」
「ど、どうして、そんなに落ち着いてやがるんだ。このナイフはオモチャじゃねえぞ」
「そのようだね。まあ、ちょっと落ち着きなよ」
「うるせえ! ケガしたって知らねえぞ!」
「その言葉、そっくりお返しするよ。手を切ったりしないよう、気を付けた方がいい」
そう言いながら、店員は胸に挿していたボールペンを手に取った。
「おい! 動くんじゃねえ!」
「まあ、見てて」
店員はペン先を上向きにしてボールペンを握ると、軸の横に出ているノックボタンを押した。すると、ブーンという音とともにペン先からビームのようなものが出た。不思議なことに、そのビームは五十センチぐらいの長さで止まっている。
「な、何だ、それは」
「ぼくも詳しいことはわからないけど、金属だけをカットするビームらしい。こんな風にね」
店員がそのビームで男のナイフに触れると、スパッとナイフの刃が切れて床に落ちた。
「わあっ、何しやがる。危ねえじゃねえか!」
「いや、全然危なくないんだ。ほら、見てごらん」
店員はビームを自分の左手に当てた。
「おい、よせよ! やめろ!」
だが、確かにビームは店員の手に当たっているのに、何の変化もない。
「大丈夫だよ。ね、このとおり、何ともない。このビームは人間を傷付けないんだ」
「なるほど。それじゃ、おれも安全ってことだな。あばよ!」
男が逃げようとした刹那、店員はノックボタンを押してビームを引っ込めると、ペン先を男に向け、ボタンをスライドさせた。
パーンとクラッカーを鳴らしたような音がして、ペン先からクモの糸のように細い網が飛び出し、男を捕獲した。網は細くても極めて丈夫な素材でできているようで、どんなに男が暴れても破れず、がっちりと包み込んでいる。
「わーっ、た、助けてくれーっ!」
「ごめんよ。言い忘れたけど、こういう機能もあるんだ。ついでに教えておくと、捕獲網が出るのと同時に警察に通報が入っているから、もうすぐお巡りさんが来るよ」
翌日。
そのコンビニに、白衣を着た白髪の老人が来店した。
「昨夜、強盗に入られたそうじゃが、大丈夫じゃったかね?」
「ああ、古井戸博士、いつもありがとうございます。ナイフを持った強盗でしたが、博士から試供品としていただいた、防犯用多機能ボールペンが役に立ちましたよ」
「ほお、それは良かった。うむ、これぞまさしく『ペンは剣より強し』じゃな。ほーっほっほっほーっ」
博士、博士、それは違うと思いますよ。