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第六話 盗まれた名画

有名画家の絵が盗まれ、館長が密かに相談した相手は……

 何十年ぶりかに日本に来た世界的な名画が、何者かによって盗まれてしまった。下手をすれば、国際問題になりかねない。本来であればすぐに警察に通報すべきだろうが、その名画を展示していた美術館の館長は悩んだ末、ある人物に連絡をとった。

 顔色を失っている館長の部屋に、その人物はすぐにやって来た。白衣を着た白髪の老人である。

「ペカソの『爆笑する女』が盗まれたというのは本当かね」

「ああ、古井戸博士、夜分にすみません。まだどこにも知らせていませんが、まんまと盗まれてしまいました。何とか誰にも知られないうちに、絵を取り返す方法はありませんか」

「ない」

「ええっ、そんな」

「こともない」

「どっちなんですか!」

「まあまあ、少し落ち着きたまえ。わしには探偵の才能はないし、そういう発明品もない。じゃが、ペカソは好きで、展示の初日に来て『爆笑する女』もじっくり見た。そのうち、見ているだけでは気が済まず、あることをしてしまった」

「な、何と、犯人は博士でしたか。今すぐに、絵を返してくださいっ!」

「じゃから、落ち着きたまえ、と言っておるじゃろう。誰も盗ったなどと言ってはおらん。コピーしただけじゃよ」

「コピー?」

「さよう。わしの万能3Dコピー機でな。そのデータを入れた携帯3Dプリンターは持ってきておるから、今この場で再生してあげよう」

 そう言うと、博士はポケットから出した機械を館長室のテーブルに向け、光線のようなものを発射した。すると、みるみるうちに額に入った絵画が出現した。

「さあ、ペカソの『爆笑する女』じゃ。言って置くが、わしの機械は優秀じゃから、分子のレベルで調べても本物と見分けがつかん。というより、本物そのものじゃ。どんな鑑定士だろうと、いや、作者本人でさえ本物と区別できまい。何なら、予備にあともう何枚か出しておこうかの」

「あ、いえ、もう結構です。一枚あれば充分です」

「そうかの。それでは、また何かあったら、遠慮なく呼んでくれたまえ。ペカソだろうが、ガッホだろうが、チョチョイのチョイじゃ。ほーっほっほっほ」

「はあ」

 博士が意気揚々いきようようと帰ったあと、館長は絵をにらんで真剣に悩んだ。果たして、本物と100%完全に同じコピーは、本物と言っていいのだろうか、と。

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