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闇の中を踊る  作者: 東田 悼侃
5/20

接触5

  アメリカ ニューヨーク 

 自由の女神を望める位置に建てられた、ごく一般的な建物がある。その窓際に、一人の男が立っていた。

 なんとも地味で、若者に言わせればダサい服装に身を包んだその男は、名をウィリアム・グレイスといった。

 ウィリアムは、部屋で音楽を聴いていた。流行りのウォークマンでもなく、クラシックなレコードでもない。その持ち主の境遇を物語るような、時代遅れの古ぼけたカセットレコーダーで、流れてくるのはクラシック。だが、本来は優雅なはずのその音色も、使い古したカセットレコーダーのせいで途切れ途切れ。だが、ウィリアムが、娯楽に割く金も無いほど貧乏なのかといえば、そうではなかった。単に、それが趣味なだけなのである。

 そこに、クラシックの音を阻害するかのように、電話の着信音が鳴った。ウィリアムは、ポケットからスマートフォンを取り出すと、電話口に出た。カセットレコーダーを聞きながらスマホを操作するその光景は、時代錯誤を感じさせる異様な光景であった。

 「もしもし?」

 知らない番号からの着信に、ウィリアムは少し警戒した。

 「ウィリアム・グレイスさんですか?こちら、日本大使館です。」

 「大使館?日本の?」

 思いがけない相手に、ウィリアムは警戒の色を強めた。

 「何の用件だ?」

 「仕事の依頼です」

 「ってと、つまり?」

 「ある人物を・・・ここからは、直接話しましょう。これから、大使館まで来て頂けませんか?」

 「今からか?」

 ウィリアムは、時計を眺めた。時刻は、午後の五時を過ぎたばかりだ。

 「そっちの方こそ大丈夫なのか?今から行けば、着くのは夜中だぞ」

 「構いません。もちろん、そちらがよろしければの話ですが」

 「分かった。すぐ行こう」

 ウィリアムは請け合うと、通話を切った。


 「申し訳ありません。こんな夜分遅くに」

 数時間後、ウィリアムは日本大使館で一人の女性と対面していた。

 「日本大使館全権大使の傳田 樺耶かやです。よろしく」

 「前置きは要らない。用件だけ伝えてくれ。話は後からでも出来る」

 「そう」

 傳田は流暢な英語で答えた。

 「それじゃあ本題に入るわ。日本に行って、創牙狼という名の組織のボスを見定めて暗殺する。これが用件」

 「他には?」

 「無いわ。これだけ。日本の警察が全面的に支援してくれるそうよ」

 「警察?これは警察からの依頼なのか?」

 「いいえ、どうやら国からの依頼らしいわ。私も詳しい事は何も分からない。そうそう。あと、日本に入った時点で、貴方には発砲及び殺人許可が降りるわ。」

 「警察の協力はいらない」

 「いいえ」

 傳田は手を振った。

 「残念ながら、それは無理だわ。貴方には、およそ日本の治安では考えられない許可が降りるの。警察は、支援だけでなく貴方の動向を監視もするの」

 「そういうのは苦手だな」

 ウィリアムは頭を掻く。

 「それと、もう一人日本に連れて行きたい奴がいる」

 「それは、どういう人?」

 「言うなれば助手だ。平林・ニコラス・抄太しょうた日系人だ。日本語も喋れるから、通訳にもなるだろう」

 「同行は構わないとおもうけどーその彼には発砲許可とかは降りないかもしれないわよ。それは、向こうと交渉するしか」

 「許可がなくても問題ない」

 「分かったわ。その事も伝えておくわ」

 「それじゃ、契約成立だ」

 二人は立ち上がると、握手を交わした。

 「できれば、我々が日本に到着した時点で、契約金を振り込んでもらいたい。死んだんじゃ手遅れだ」

 「分かったわ」

 傳田は請け合った。

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