表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇の中を踊る  作者: 東田 悼侃
3/20

接触3

 藤川は、どこからともなく複数枚の紙を取り出した。

 「我々には、裏社会の事は良く分からない。この仕事を引き受けてくれる人物を探すのには、専門を当たるのがいいだろう」

 長谷川は、藤川から紙を受け取りつつ、山田に言った。

 「宮崎 かすみ私立探偵だ。我々も何度か彼女に助けられた事がある。信頼に値する人物だ。」

 山田は、長谷川から紙を受け取ると、目を通した。紙は、長谷川の言った宮崎という女性に関する資料だった。

 「女性・・・・危険ではないですか?」

 「問題はない。言った通り、彼女はこの手の専門だ」

 「それに、空手の有段者です」

 藤川が口を挟む。

 「警察の中にも、彼女にかなう男はいません」

 「と、いうことだ」

 長谷川がつぐ。

 「そこで、君に調査の依頼をしてきて欲しい。いいかい?」

 「分かりました」

 長谷川の問いに、山田は躊躇いなく答えた。   


   *

 「こんにちわ」

 翌日、早速山田は、宮崎探偵事務所に居た。

 「はじめまして。中央警察の山田と申します」

 山田は宮崎に、名刺の代わりに警察手帳を見せた。

 「宮崎探偵事務所所長の宮崎 霞です」

 宮崎は、山田に名刺を渡す。

 「さ、おかけになって」

 宮崎に勧められ、山田は設置されたソファに座る。続いて、宮崎が対面に座った。

 「それで、ご用件は?」

 宮崎が、山田に尋ねる。山田は、これまでの経緯を宮崎に話した。

 

 「そう、なるほどね。あの人も、随分と強引な手に出たわね」

 山田は話を終えると、机に置かれた水を飲んだ。宮崎の助手が持ってきた物だ。

 「まあ、いいわ。弥尋みひろ、M-19のファイルを持ってきて」

 宮崎が、その助手、藤巻 弥尋にそう頼んだ。

 「M-19ですね」

 藤巻は、山田の背後の本棚にまわり、一冊のファイルを取り出した。それを宮崎に渡す。

 「これですね」

 「ありがとう」

 宮崎は、藤巻に礼を言うと、ファイルをめくった。

 「これね」

 宮崎は、その中から何かを見つけると、そのページを山田に示した。ページ上部には一枚の写真が貼ってあり、外は文字でびっしりと埋まっていた。

 「丸山 成辰なりたつ。こっちの世界じゃ、名の知れた男よ。凄腕のヒットマンだわ」

 山田は、その名前を耳にした途端、もう一度写真を見た。

 「あ」

 思わず声を上げる。

 「どうしましたか?」

  

 「この男、創牙狼の上級幹部の一人です」

 「あら、じゃあ」

 「ええ、おそらく。・・・凄腕のヒットマン、か」

 山田はため息を吐いた。そんな男まで、創牙狼は取り込んでいるのだ。

 「弥尋、悪いけど、今度はK-11を持ってきてくれる?」

 宮崎に頼まれ、再び藤巻は山田の背後の本棚に動く。

 「草間 ひろの名前は聞いたことある?」

 宮崎が山田に尋ねる。山田は首を横に振った。

 「そう」

 藤巻が宮崎にファイルを渡す。

 「彼なんだけど」

 ページを開き、山田にその写真を見せる。山田は、再び首を横に振った。

 「少なくとも、我々がこれまでに入手した情報の中に、彼は居ません」

 「分かったわ。そしたら、彼を当たりましょう。まず、身辺の調査からだから・・・そうね、ざっと三週間ぐらい待ってくれるかしら」

 「分かりました。でしたら、連絡先は対策本部を。番号はー」

 宮崎は、山田の言う番号をメモに取ると、ソファから立ち上がった。

 「済みません。それじゃあ、よろしくお願いします」

 山田も立ち上がる。

 「いいのよ。これが仕事なんだから。それに、貴方の所の警視総監おじさまには、何度もお世話になってるし」  

 

 <これで、また一歩>

 探偵事務所を出ると、山田は携帯を取り出し、長谷川に電話をかけた。時代の流行りに合わず、ガラケーである。

 「どうだ、引き受けてくれたか?」

 長谷川が電話口に出る。

 「ええ、調査は引き受けてくれました。結果は二週間後くらいで出るそうです。ただ、創牙狼の方が先に取り込んでいる可能性がありまして。丸山 成辰という男がー」

 携帯を片手に、山田は歩きだした。


   *

 署内に衝撃を走らせた創牙狼の会議からおよそ二週間。長谷川、山田、宮崎の三人が長谷川の部屋で顔を合わせていた。

 「草間 弘も駄目だったわ。彼も創牙狼のメンバーよ。他にも心当たりのある人物を何人か探ってみたけれど、日本にこの仕事を引き受けてくれる人ひ居ないわ。」

 宮崎の言葉に山田から思わずため息が漏れる。

 「だけどね、」

 宮崎が、意味あり気に微笑む。

 「ちょっとコネを使って、海外の方を調べてみたのよ」

 一端話を止め、二人の方に向く。

 「アメリカに一人居たわ。この仕事を引き受けてくれそうな人」

 そう言うと、宮崎は、バック漁った。

 「ウィリアム・グレイス 表向きは、アルバイトを転々とする冴えない男だけれど、過去に三度、ヨーロッパにのさばる麻薬組織を壊滅させた事があるそうよ。噂じゃ、報酬次第でどんな仕事でも引き受けるそうだけれど、一度会ってみたら?」

 「会う!?暗殺者にですか!?」

 山田が声をあげる。

 「結構簡単よ。電話で呼べばいいだけだもの」

 「いや・・・そうではなく・・・」

 山田は冷や汗を拭う。

 「大丈夫よ。へまでもしない限り、殺されはしないわよ。依頼者はこっちなんだから」

 「ですが、やはり不安が、」

 「そんなに不安なら、部下に任せればいいじゃない。」

 宮崎は、山田をいくじなし、とつっぱねた。

 「ま、それも、彼でいいなら、の話よ。私の仕事は一応ここまで。後はそちらにお任せします。長谷川警視総監。」

 「ああ、ありがとう。代金は、いつも通りに振り込みさせとくよ」

 「ええ、それじゃあ」

 二人に見送られながら、宮崎は退室した。

 「さて、山田君、我々は来週、総理大臣に面会するぞ」

 「はい?」

 突然の長谷川の言葉に、山田は面食らった。

 「何故、ですか?」

 「解らないのか?仮にも、我々がやろうとしている行為は殺人だ。総理と防衛大臣に会って、十分な審議を重ねなければならない」

 長谷川は、自分の机に着く。

 「既に会見は取り付けてある。その場でのプレゼンを、君に纏めて欲しい」

 「と、いうことは、このウィリアムという男に、この仕事の依頼をするということですね」

 「そうだ」

 「分かりました。すぐかに取りかかります」

 「頼りにしてるよ」

 山田は、長谷川に一礼すると退室した。忙しくなる。

ご意見・ご感想よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ