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河童のガア太郎と番町皿屋敷のお菊の物語

作者: ルビィ

河童の中にもお金に執着し蓄財が大好きな河童もいたらしく


そのガア太郎がお菊さんを見初めたところから始まります。


番町皿屋敷…


江戸時代に…

落語、講談等で語り尽くされた。

怪談話としては、

誰もがその背筋を凍らせ…お菊の無念さに心を痛めた。


あの番町皿屋敷のお菊さん…


今夜も、トップリと日も暮れて、辺りには

だぁれ居ない…

お屋敷の…小さな小さな、井戸の中から

ポッ…ポッ…

と青白い火の玉が

一つ…2つと出て参りました。


『うらめしや~』


出て参りました。

草木も眠る丑三つ刻。

幽霊の決まり文句を如何にも雰囲気を出して口にします。


このお菊さん…

落語や講談では、

お江戸の話として、語られて来ましたが?

実は…明治政府の編纂した。


公文書によりますと、落語などでは、

大事な皿を誤って割ってしまったが為…その家の主人から手打ちにされて…


井戸に放り込まれたと言うのが定番ですが…


公文書によりますとお菊さん…お江戸の人で無く、筑前黒田藩の碓井の臼井。


今の福岡県嘉麻市

碓井の人だったようです。


この碓井のお屋敷に奉公に上がる内に

器量良しだったお菊さんに恋慕致しました。その家の主人からチョッカイを出されますが…


許嫁の居たお菊さん、無下にもその申し出を断ったそうです。

さあ!こうなると。収まらないのが、この家の主人!

可愛さ余って憎さ100倍。


『どうしてくれよう?』と思案致しました所。


我が家の家宝。


10枚一組の鍋島焼きの皿を、一枚隠して仕舞います。


それを、お菊さんの仕業だと騒ぎ立て、とうとう…お菊さんを袈裟懸けに切り捨てて仕舞います。


幾ら無礼打ちでも、これは少々遣りすぎです。


お菊さんの遺体の処理に困った主人は、お菊さんの遺体を

庭の隅に有る…


小さな古井戸に投げ込みました。…


何時になっても帰ってこない、お菊さんの身を案じて訪ねて来る母親に…


『お菊は勝手に出奔した』と嘘を言い帰らせます。


悪い事は出来ない世の中の仕組み…


何時の頃からか…

お屋敷の女中の間で庭の隅にある小さな井戸から毎晩お菊さんが現れ…


『いちま~い』

『にぃまぁ~い』

と皿を数えるお菊さんが…


そして…決まって…九枚まで数え終えると…


困った顔をして…

『あら…一枚足りないわ!』と恨めしそうな声を出して井戸に消えて行くそうです。ここまでが…

落語や講談で語られて居るお話ですが…

このお屋敷の主人はお菊さんの幽霊をみて…

親戚を頼り播州(現在の兵庫県辺り)に逃げ込みます。


碓井のお屋敷のお宝なども売り払い

裸足で逃げるが如く。


結局この主は

播州にて病に倒れ


家は没落してしまいました。


この…お菊さんの祟りを聞き付けた戯作者が番町皿屋敷として戯作し…


今の番町皿屋敷になったようです。


だぁれも居なくなった。お屋敷で…

今夜も皿を数えるお菊さん…

袈裟懸けに切り殺され井戸に放り込まれた事より…


お皿が一枚足りない事が彼女の無念を

この井戸に、

因縁としてしばりつけます。



近くに…一級河川


遠賀川の支流嘉麻川が流れております。この嘉麻川…


非常に河童の伝説が多く…


隣町の…稲築では…ますめ相撲や口の春の大楠などの話が残っています。


河童の膂力は物凄く川の側で草を食んでいる。

牛や馬までも、川に引き摺りこんでしまいます。


人間なんて…

ひとたまりもありません。


そんな、河童達の

親分に、

ガァ太郎と言う河童が居まして、これが…もう…


この地方でも有名な蓄財好きでして、


蓄財好きと言えば、聞こえは良いのですが…


簡単に言ってしまえば、ただのケチ!

ケチん坊なんですね。


だから、河童の間でも余り人望が無い。

この場合、人望が無いと言ってしまって良いものかは、さて置き…


人間の社会も同じように、


ケチん坊には人徳は無いようで…


この、ガァ太郎がお菊井戸の側を通りがかり、


『いちま~い、にぃまぁ~い』と皿を数えるお菊さんを見初めます。

『あんた…こんな、寂しい所で何時までありもしない、皿を、数えてるつもりだ。』



『幾ら数えても、数えても…


皿の数は一向に十枚になりません。


今日は十枚揃って

居るか?


揃ってなければ?

明日は揃っているか?


その無念が私をこの井戸に縛り付け、

毎晩…毎晩数えさせるのです。…


確かに私はこの皿を割ったりしてません。

それを主が何処かに隠し…この家から逃げ出した。どさくさに紛れ、他人の手に渡ったのでは無いかと…


そう思うと…


無念で、無念で、


ああ…うらめしや』

と、嘆きます。


それを聞いたガァ太郎はおもわず…


『アンタ…その誰かの手に渡った皿を、ワシが見つけて来ればその無念は晴れ…この井戸に縛り付けている。

因縁も断ち切れるのか?』


『多分因縁は断ち切れ…私は自由の身になる事でしょう。』

『ならば、ワシがその皿を見つけ出してやろう!』


お菊さんの表情に赤みが差してきます。元より器量良しのお菊さん…


それは…大層美しい微笑みを浮かべ…


『本当で、御座いますか?

ならば…私の因縁も断ち切れる事でしょう。』


『それと言ってはなんなんだが…』


少しの沈黙の後…

ガァ太郎は切り出します。


『ワシの嫁になってくれんか?』


ガァ太郎…どうも、お菊さんの微笑みに《コロッ》といってしまった様で…


『こんなワシでも良いかな?』などと、気弱な事を口にします。

『もとより…こんな…因縁を抱えた私で良ければ喜んで貴方のお嫁に参ります。』


さあ…善は急げ…

ガァ太郎は嘉麻川に引き返し手下を集めます。…


『金に糸目はつけぬ!鍋島焼きの残りの一枚!見事見つけた者には沢山の恩賞をだそう』


と言ったから手下の河童達は大騒ぎ!

ガァ太郎の気が変わらない内にと、


一目散に嘉麻川を飛び出し、方々へと、皿を探しに行きました。


あるものは…若松の洞海湾へ。

また、あるものは帆柱山へ…

関門海峡まで足を伸ばす者…大宰府にまで足を伸ばす者…

筑後川のかわんとん(川の殿)の所まで足を伸ばし…


色々と情報を仕入れて来ます。


その情報に対し…

ガァ太郎は惜しみ無く金を渡します。


新しい情報を手に入れる度にガァ太郎はその情報を確かめに行きます。


鍋島焼きの皿に近づく度に…


表情に赤みが差し、まるで生きていた頃の様に微笑みが増していく。


その表情とは裏腹に、次第に窶れて行くガァ太郎…


しかし…


その情熱は身を結ぶ

遂に山向こうの黒田家の支藩…


秋月黒田藩にそれを見つけた。

ガァ太郎は、秋月への道を進む…


長崎街道内野宿を過ぎ冷水峠を越えようとしたその時…


冷水峠の山頂にある大根地稲荷おおねちの前で…


『ガァ太郎よ!』と呼び止められる…


『これは、大根地の白狐様…』


『ワシの前を何の挨拶も無しに通りすぎようというのか?』

『これは…うっかりしておりました。

後程油揚げとお神酒をお持ちしますので何卒…お通し下さい』


『努々…忘れるでないぞ』


と通して貰った。


秋月にたどり着き…法外な金額を支払い。ガァ太郎は嘉麻川まで戻って来た。



その夜お菊井戸では…


ポッ…ポッ…っと

火の玉が現れ…

ガァ太郎が皿を探しあて。此方に向かって来て居ると…

噂を聞いたお菊さん…


ここはサービスでと…

ポッ、ポッ…と火の玉の大盤振る舞い…

まるで昼間の様な明るさの中、明るい声で…


『いっちまぁ~い』『にっまぁ~い』と数え始めた。

そこへガァ太郎が

一枚の鍋島焼きの皿を手に現れた。


『これが…お前の探していた。なべしまの皿だ!』と

お菊さんへ手渡した。


『ああ…これよ…

この皿…夢にまでみた…寝ても覚めてもこの皿の事ばかり考えて居たの…』



『それでは…ワシの嫁になってくれるのたな?』



『はい…あなた様に喜んで嫁がせて戴きます。つきましては、色々と嫁入りの支度も御座います。

三日程の猶予を戴けますか?』



『お前の心待にしていた時間に比べれば三日など…物の数には入らぬわ』と


約束をした。


『一度ワシの前で皿を数えて貰えぬか?』


『お安いご用です。』と…


『いちまぁ~い』

『にぃまぁ~い』と如何にも雰囲気を出そうとするが…


どうしても…

顔がにやけてしまう。それでも遂に、


『きゅうまぁ~い』『じゅうまぁ~い』と数え切った。


『ああ…とうとう…この日が来たのね…遂に私の因縁も断ち切れるわ…


ガァ太郎さん…

有り難う…


と礼を述べた。



三日経ち…いよいよ嫁入りの日…


ガァ太郎はお菊井戸の前までやってきた。そこに、待っていたのは…


すっかり…窶れてしまったお菊の姿が…

『お菊!如何致した。』



『今まで…今日は十枚あるか?明日は十枚あるか?…と

希望を持って数えて来たのに…数えても数えても…


十枚あるのです。


もう…因縁も断ち切れて…希望が無くなって仕舞いました。

このままでは、私は成仏して仕舞います。…


と言って成仏して仕舞いました。…


後に残されたガァ太郎はそこにある十枚の鍋島焼きの皿を持ち帰り…


大量の油揚げとお神酒を持って大根地神社へ向かったと言います。

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