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適当男の転生軍師  作者: TUBOT
戦争前夜
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勝てる戦い

「オルさんとレデさん。ラルファル帝国に、何か動きはありましたか?」

 そう、ケーキを美味しそうな顔をしながら食べている二人に、シィは聞いた。

「それがですね」

 レデがそう言ってニヤリと笑った。

「テルシオの奴『こんな兵力で学院を攻めるなんて無理だ』とか弱音を言っているらしいんですよ」

 そう聞いて、シィはキョトンとした。

「そうですよ。学生なんて、歴戦の強者が一人いれば百人倒すことだて可能じゃないですか?」

 それはさすがにナメすぎだ……

 そう思ったシィだが、オルとレデの言葉の続きを聞いた。

「そもそも、この学校を襲うのに、そこまで兵力なんて必要ないのに、歴戦の勇者が百人集まっただけでも不満なんでしょうかね?」

 オルは、そうシィの事を見上げながら言った。

 失礼な事を言っているのには気づいているようだ。

「そうですね……学生達には、国のために戦う覚悟なんてありませんよ」 

 シィは二人に合わせてそう言った。

「戦う覚悟? てっきり、ここが襲われたらすっ飛んで逃げるつもりだと思っていたけど?」

 レデが言う。

「ロドム様は、この学院から逃げる気なんて、まったくありませんよ?」

 シィが言う。

 それを聞くと、オルとレデは驚いた。

「勝てるはずないのに!」

「無謀です!」

 二人はそろってそう言う。

「ロドム様には一考してもらいましょう……本気で敵と戦う気か? どうか?」

 シィは二人にはそう言っておいた。だが、当然ロドムはこの学院から逃げる気などまったくないと答えるだろう。

 それにこの二人には、戦争のために着々と準備をしている事など、全く話してはいない。

 こう考えるのも当然のことであろう。


 テルシオ達は、いきなりやってきた。

 それは授業中の事である。学院の校門にまで多勢をつれてやってきたので、生徒達の中で話題になった。

 無防備に、窓から顔を出した生徒達は、建物の入口にまで向かっていく教師達を確認して、事の行く末を見守った。

「おやおや、危険ですよ。一人でこんなところにやってきて……」

 その教師の前にメイレナ学院長が立ちはだかる。

 それはその教師にしか見えない映像だけの姿であった。

『教師にしか見えない』というのは、生徒達には見えないという意味だ。ある程度熟練した魔法の能力を持っていればメイレナ学院長の姿は確認できる。

 あと、ついでに言うと、俺にも見える。

 俺はメイレナ学院長が発している声を聞くことができた。

『おやおや団体様、この度はどのようなご用向きで?』

 メイレナが言う。それに対して、テルシオが前に出て言った。

 メイレナの言葉は念の魔法で発信しているのだが、テルシオの言葉は、しゃべっているだけだ。遠くの校門で行われている会話である。俺はその声を拾う事はできない。

 俺はテルシオの言葉が気になって、窓から身を乗り出そうとしたが、そこで背後からシィが俺の服を引っ張った。

「ロドム様……作戦通りに……」

 そう言われ、俺はシィに引かれて学院の屋上に登っていった。

 俺が屋上に登るのと同時に、メイレナが念の力で周囲の生徒達にもわかるようにして説明臭いくらいに詳しい話をし始めた。

『あなたは、これからこの学院を襲うというのですか? ここには、無垢な少年たちしかいないというのに……』

 メイレナは言う。これで、学院の生徒達はここがテルシオ達に攻撃をされるという事が分かっただろう。俺が廊下を走っているところ、教室から驚きの悲鳴が上がってくる。

 俺にとっては、前々から予想していたことだが、いきなり聞かされると、それなりに驚くことだろう。

『この学校が武装をしているのは当然じゃないですか? ここは兵士を育成する学校なのですよ?』

 そうメイレナが言い出す。

『ここで、戦い方を教えているのは当然です。そういう場所なのですから』

 メイレナの言葉を聞くだけで、大体どのような会話をしているのかは分かる。

『武装をしている』だの『我々に攻撃の意思がある』だの、テルシオは言いがかりをつけているのだろう。

 こんなものは、よく使われる文句だ。

 俺はそこまで聞くと、屋上にあがった。

 屋上からテルシオ達の様子を見てみる

「数は大体百くらいか……」

 俺はオルとレデの報告を思い出す。

 ラルファル帝国の中で、この戦いに参入する座を巡ってイザコザが起こっていたのだという。かなり、敵の数が少なくなる事は予想していたが、ここまでの数になるとは思っていなかった。

 兵士達の様子を見ると、兜を被って顔はよく見えないが、顔はにやついているだろう。

 ほとんど戦う力を持たない学生達に襲いかかって、次々に捕虜にしていく。そして、捕虜の身代金をせしめて、美味いものでも食いに行こう。考えている事はそんなものだろう。

 戦いの先陣を切る事は、武人の誉だとかいう考えもできるため、その重要な部分を誇りに思って真面目な顔をしている者もいるだろう。

 どうにしろ、この戦闘に参加をするのは、美味しいことばかりであるのだ。

 走って屋上にたどり着いた俺はすでに屋上にたどり着いていたメイレナに目で合図をする。

「それならば仕方ありません! 全員戦闘用意!」

 メイレナはそう言った。この言葉は学院の生徒達は教師達に向けて同時に言ったのだ。

 それを聞くと、その言葉の意味を理解した生徒達は、自分の手製のクロスボウを窓の外に突き出した。そして。攻撃魔法科の生徒達は次々に校門にまで向かっていく。

 陣形は完璧に整えられていた。

「開始!」

 メイレナが言うと、窓から突き出されたクロスボウから矢が打ち出されていった。

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