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適当男の転生軍師  作者: TUBOT
遠くの湖の小屋で
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このいじめには意味がある

「あのガキ……どこまで用意周到なのよ……」

 ゲータを助け出そうとしている事は、完全にロドムに知られていた。完全に手のひらで踊らされている。

 これから、どう裏をかくか? どうやって、この小屋から脱出するか? それをオルは考えた。

「ゲータの事……諦めるわけにはいかない?」

 レデが言い出す。

「何よ! 使い魔を失うなんて、魔術師をやっていけないじゃない!」

 使い魔を失うという事は、魔術師として終わりを意味する。本来、使い魔は魔術師と異界をつなぐパイプの役目である。

 異界は魔力にあふれた、魔法生物の世界である事までは知られている。

 そこには、空気中にも魔力があって、その世界の動物は好きに魔法を使えて不自由ない暮らしをしているという。

 腹が減ったら草の成長させて伸ばす魔法を使い。空が飛びたくなったらいつでも空を飛べる。

 そのような世界であると言われているが、その世界の事を見た者はいない。使い魔も、この世界に召喚されるとき、異界の記憶は消し飛んでしまう。

 使い魔の行動原理は、たくさんの魔法を使い、自分の中の魔力の『流れ』を作り出すようにしてくれる事だ。

 ただ、それには魔術師にとってデメリットがある。

 異界の魔法に犯されると、正気を保っていけなくなるのだ。そして、性格が少しずつ変わっていく事で、どんどん侵食をされていくのだ。

 そのため、魔術師は、基本的には自分の中に内在する魔力を使って魔法を発動する。使い魔は基本的に魔術師に忠誠を誓うものなので、そのままいいように利用するのが普通だ。

 ただし、あたらしい魔法を覚える時には使い魔から異界の魔力の供給を受ける。

 異界の魔力に意思があるようで『魔術師の意思を汲み取って、新たな魔法を教えてくれる』という認識である。

 とにかく、異界とのパイプがないと、教科書に載っているような、基本的な魔術しか使えない魔術師になってしまうのだ。

「レデはいいでしょう? ネイクは捕まってないし従順だから使いやすいし」

 オルはふてくされて言った。

「死んだら全部終わりじゃない!」

 レデは言う。

「死んだも同然でしょう? 使い魔のいなくなった魔術師なんて、運良く逃げ帰れても即クビになるわよ!」

「だけど、こんなところに残っていたら、本当に死ぬよ!」

 オルとレデはケンカを始めた。

「お姉さん達、何の話をしているの?」

 ほのがそこに声をかけてきた。オルとレデはゆっくりとほのの方を向いた。

「ほのちゃん……なんでもないのよ……」

 レデは冷静になってそう言った。

「あんたには関係ないから、さっさとどっか行きなさい!」

 オルは言う。レデは急いでオルの口を塞いだが、もう遅かった。

「なんで……なんで、ほのが怒られたの?」

 そう言って涙目になっていくほの。

「ほのちゃん……ゴメンね。別にほのちゃんの事を悪くいう気じゃ……」

 レデがそこまでフォローをしようとするが、ほのは泣いて廊下の向こう側に走っていった。

「うわあああん! ロドム様! ほのがなんで怒られないといけないの!」

 そう言い、ほのはロドムのいる場所にまで走っていった。

「バカ……」

 レデはそう言う。オルは放心状態だった。それから少し経ち、ニヤニヤした顔のロドムがやってきた。

「うちのほのがお世話になったようで……」

 そう言うロドムの顔はニヤついていた。明らかにこの状況を面白がっている。オルとレデはその笑顔に本気で嫌悪感を感じていた。


「アイリさん……イースさん……二人共、メイドの仕事を手伝ってくれるのはいいんだけど……」

 そう言葉を発した俺。厳格な物言いで床に座らせたオルとレデに向けて言うが、俺は顔をニヤつかせている。

 この状況楽しんでいるというのがその顔から見て取れるようにしている。

「使い魔に危害を加えられるって事の意味が知らないわけじゃないよね?」

 使い魔は自分の右腕のようなもの。自由に使うことはできるが、だからこそ、魔術師にとっては最大のパートナーである。

 使い魔に危害を加えられたという事は主人である魔術師に危害を加えられたのと同じである。

 使い魔に危害を加えるというのはそれだけの意味がある事であるのだ。

『あんたはゲータを食おうとしているけどな……』

 オルは心の中でそう考えた。だが、そう口に出すわけにはいかずに。ぐっとこらえる。俺は、シィから言葉を聴いてその事を知っているわけだが……今回はそれを見逃してもいいだろう。俺は続きを話す。

「まあ、学院から送られてきた人に無茶はできないんだよね。こっちとしても」

 そう、横柄な態度で言う俺。

「まあ、ほのに一発殴らせるくらいでいいかな?」

 そう言い、俺はほのの首根っこを掴んで、オルの前に立たせた。

「ほの……一発殴るんだ……」

 そう言う。ほのは首をフルフルと振った。

「そんな事できない……」

 それを聞くと俺はさらに顔をニヤつかせた。心の底から怒っているわけではない。だが、怒る『ふり』をするための材料ができて、面白がっているという顔だ。

「ほの……」

 そう言い、俺はほのの首を掴んで、床に押さえつけた。

「ほの……ボクの使い魔なら考えろ。こいつらはほのに危害を加えたんだ。それを黙っているなんて、ボクがこいつらに恥をかかされても何もしないでボケっとしているようなもんなんだよ。ほのもボクの使い魔なら自覚を持ってくれ」

 そうほのの頭を踏みつけながら言う俺。

 それを見て、オルとレデの二人は唇を噛んだ。いくらなんでも、ほのに向けてそんな事をしなくてもいいじゃないか。そう考えているのがわかった。

「いいの。ほのちゃん殴って」

 レデが言う。

「そうだ。早く殴ってくれ」

 オルもそれに合わせて言い出した。

 二人共、それなりに強い心を持っているようだ。ここで『殴ってくれ』なんて、そうそう言えるものじゃない。

「二人もそう言っているんだから、ほのは役目を果たせ」

 俺は言う。

 ほのはオルとレデ達の方を見ている。ほのに見えていないのはわかった上でニヤニヤ笑った。当然その顔はオルとレデの二人からは丸見えだ。

 ほのは逡巡をしたあと、拳を握った。

 そして、持てる限りの力を使って、オルとレデの二人を殴り飛ばしたのだ。

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