これからが本番
「ボクは三分耐えれると思っている。どうだい? それより早くほのが食べ始めたらボクの勝ち。それだけ待てたら、君らの勝ちでいいかい?」
俺がそう言うと、ほのは人間の姿になった。
かわいらしい姿になったほのの事を見たオルとレデ。
そのような賭けに一体どんな意味があるか? わからないオルとレデは気のない返事をした。
「はぁ……」
俺はそれを聞いて、眉根を寄せた。
「なんだい? その気のない返事は?」
そう言って、俺はめいっぱいオルとレデの二人を睨んだ。それに威圧感を感じたようで、オルとレデの二人はビクリとして体を硬直させた。
「ふん……何か景品でも出さないとやる気が出ないかい?」
そう言い俺は不機嫌な感じで立ち上がった。そうしながらオルとレデの二人の事を見る。
「あの……何か……?」
オルが不思議そうにして聞いてくるのだが、俺はピシャリとして答えた。
「動くな」
そう言うとオルは直立不動の姿勢を取った。
「ならどうだい? 君らが勝ったらお給金を上げてあげるってのはどうだい? 学院の方からも、もらうんだろう? いい小遣い稼ぎになるじゃないか……」
そんな事を言う俺。そう言ったあと、俺は金を取り出して、オルとレデの服のポケットに詰め込んだ。
「これでちょっとくらい手伝ってよ……チップを払ったんだからもっと楽しそうにゲームに参加してくれないかな?」
そう言い、俺は二人の尻を叩いた。
それにビクッと体を震わせたオルとレデ。
「なかなかいい形だな。弾力もあっていい」
そう言い、俺はニヤリと笑った。なるべく、見る者に嫌悪感を与えるようにいやらしく笑う。今のオルとレデの二人は俺に向けて、突き刺すような痛い視線を送っているだろうという事は想像が難しくない。
俺は自分の席に戻ると、分かるようにしてゆっくりと振り向いてからオルとレデを見る。
さすがに俺に真正面から視線を向けるような事はないようだ。
「三分だ。ほのが三分『待て』ができるか? 勝負だ」
そう言い俺は勝手に始める。
「開始!」
俺が言うと、ほのはスパゲティを見つめて、よだれを垂らし始めた。
「ほら、早く食わないと冷めちゃうよ」
俺は言う。そう言うとほのはスパゲティに顔を近づけた。
「君らはほのの応援をしなくていいのかい?」
俺はオルとレダの二人に向けて言う。
俺が不機嫌になったようにして眉根を寄せたのを見て、オルとレデの二人はほのの応援を始めた。
「ああ……言い忘れたけど、賭けに負けたら君らの昼食はなしだからね」
いきなりそんな事を言い始める俺。それにオルとレデの二人は驚いていた。
「ほのちゃん……まだダメだよ」
オルは言う。
「そうそう! 私達のご飯がかかっているんだから!」
そうレデも言い出す。
「そうそう、その調子……」
そう言いながら、俺は楽しそうにして笑った。
ディラッチェとフェリエの二人は、お互いにヒソヒソと話をし合った。
『ロドム様……すごく楽しそうですわ』
『あいつ……前々からサドっけがあるかもしれいないとは思っていたが……』
俺はその話を聞く。
『これは演技だぞ……』そう思うのだが、俺は演技に集中をして、ニヤニヤと笑った。
それから、俺はスパゲティを食べ始める。
「これはいいね。冷めてから食べてちゃもったいないのになぁ。早くたべなくていいのかなぁ?」
俺はほのの事を煽った。そうするとほのは今にもスパゲッティに顔を突っ込みそうになった。
「ダメだよほのちゃん!」
レデが言う。
「そうだよ、こんな事に負けちゃダメ!」
オルが言う。
ほのはその二人の言葉を聞いて顔を引っ込めた。
「そうそう……そうでなきゃ面白くない」
俺はさらに笑う。俺に向けて視線を送るオルとレデは明らかに俺の事を敵視していた。
「さん……にい……いち……」
俺はそう数える。
オルとレデは、これで三分が経つのであると思ったらしい。
「あとちょっと……」
オルが言う。
「がんばれ……」
レデも言う。
「ゼロ」
俺が言うと、ほのはスパゲティに顔を突っ込んで食べ始めた。そこに俺はニヤリと笑う。
「はい……ほのの負け……」
俺はそう言う。
「今のが時間制限のカウントなんて誰が言ったのさ? まだ一分以上時間は残っているんだよ」
俺はそう言った。ほのはそれで愕然をした顔をしていた。
「オル……レデ……ほのの分の食事を下げて」
そう言われ、渋々とほのの食事を下げる二人。無表情でこの部屋から出て行った。
これで、俺はあの二人から完全に嫌われただろう。
「本当におつかれさまでした」
フェリエが言う。なんか、不機嫌そうな顔をして俺の事を見ている。
「さっきのは演技だって言っているじゃないか……」
そう言うが、フェリエはジトリとした顔をしていた。
「お腹すいた」
そう言ったほのは、俺の膝の上に座って俺の分のスパゲティを食べ始めた。
「なんでボクのを食べるのさ!」
俺が言うが、フェリエとディラッチェの二人はさも『当然』といった顔をしていた。
「さっきの報いです」
「使い魔を大切にしないから当然だ」
二人ににそう言われる。
「だから演技だって……」
そう言った俺だが、フェリエとディラッチェの二人はずっとジトリとした顔で俺のことをみるのをやめなかった。




