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適当男の転生軍師  作者: TUBOT
転生先の世界で
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フェリエとシィの属性はなんと……

「あなたから先にやってみなさい」

 フェリエはシィにそう言った。フェリエもいきなり自分の属性を知ることになるのは怖いのだろう。変な属性になったら恥ずかしいからな。

 シィは宝石に手をかざした。そうすると父の表情はいきなり明るくなっていく。

「これは月属性だ」

 真っ黒な宝石の中に三日月のような形をした光るものが浮かんでいるのは分かる。これが月属性の反応なのだろう。

「これはいい! シィ君。君は明日から魔法の勉強をしなさい。メイドの仕事なんて他の人にやらせればいい」

 父がそう言うのにシィはキョトンとした顔をしていた。

「私が魔法をですか?」

 月は闇と相性の良い属性なのだという。

 闇属性の魔法で周囲数キロメートルを夜にする事ができる魔法がある。そうすれば、真昼にも月の魔法が使えるようになるのだ。

「その上月魔法には回復魔法もある。ほとんどの属性には無いんだ」

 父が言うには自分の息子が成り上がるためのサポートとして従者に一緒に魔法を教える事も多いのだ。

「君には、ロドムの引き立て役になってもらうよ」

 そう父が言う。シィは少し迷ったようだがそれも数秒のこと。シィは元気に返事をした。

「はい! 魔法をすぐに覚えて見せます!」

「当分は基礎の練習だけになるけど焦らないでくれ。みんなそこから始めているんだ」

 父は優しげにそう言う。当然だがフェリエにとってはその様子は気に入らないものなのだろう。

 フェリエは父とシィの間に割って入った。

「ちょっとお待ちくださいですわ!」

 敬語の使い方がおかしくなったフェリエが言う。そうしてシィの事を睨みながらフェリエが言った。

「メイドごときがそんないい属性になれるのでしたら私だって!」

 そう言いながらフェリエは宝石に手をあてた。

 そうすると黒かった宝石は急に白くなり始めた。そうじゃなく光り始めたのだ。

「これはすごい! フェリエ君は光魔法だ!」

 父もこれには驚いている。光属性は一部の『世界を救うような人物』しか持つことのできない属性などとも言われている。

 そう言われているだけだ。光属性を使えるものの、グータラして魔法の力を伸ばさない人を俺は知っている。

 一番の問題は、そこじゃない。

「フェリエ君の尻に敷かれるなよ」

 父がそう言う。光は闇の苦手属性だ。闇属性は大抵の属性に強い。だが、光属性にだけはめっぽう弱いのだ。

 俺がフェリエの事がどことなく苦手な理由がわかった気がする。


「どうですか? 私は世界を救うかも知れない人間なのですよ!」

 父が出て行った後の書斎。父はいますぐにでもシィに魔法を教え込むつもりのようでシィを連れ出していってしまった。

 自分の属性が光なのだと知って上機嫌になったフェリエ。

 俺はフェリエが苦手な理由がなんとなく分かって、ある意味すっきりした感じだった。

「魔法の力は鍛えないと強くならないよ」

 フェリエに向けて言う。まあ、フェリエは商人の娘である。魔法の技術を磨くなどありえないはずだ。

「私も魔法を鍛える! あのメイドと二人きりになんてさせるものですか!」

 そういえば、あれからシィは父に家の中庭にまで連れて行かれた。これから父が直伝で魔法を覚えさせるらしい。

 フェリエはそれから頭を抱えた。別の事を考え始めたのだ。

「そういえば、ロドム様に見合った宝石をもらえる話でしたが……」

 あ、忘れてた。

 そもそもどの宝石が自分に合うかを、調べるために属性の検査を受けたのだ。

 今、父はシィの特訓で忙しいだろうしまた後で聞いてみるのがよさそうだ。

「私の家は商家であるのをお忘れではないでしょうね? 宝石が必要ならば仕入れてまいりますわ」

 フェリエが言う。闇属性に合う宝石が、父の手元にあるか無いかすら聞いていない。父に話を聞いてからだろう。

「まあその話は父に話を聞いてから」

「そうですか……」

 そう言いフェリエは俯いた。自分の申し出を断られたら誰だって嫌な思いの一つや二つはするものだろう。

「父に話を聞いてからだから。明日にでも報告をするよ」

 そう言ってフェリエとの話を終わりにしようとした。フェリエはそれを聞いて顔をあげた。

「いいえ! このさいだから言わせてもらいます!」

 フェリエはいきなり声を荒らげた。

 いきなりフェリエの様子が変わったのに俺は驚いて目を見開いた。

「あなたは人の厚意を無下にしすぎです!」

 フェリエは言う。フェリエが用意をすると言うのだから素直に受け取っておけばいい。宝石は多すぎて困ることはないのだから。

「たしかにそうだけ」

「それに!」

 フェリエは俺の言葉にかぶせて言ってきた。

「私に対して、いらない気を使いすぎじゃないのですか?」

 フェリエはさらに言う。

「私はあなたの許嫁です。何があろうと一緒にいるのがわたしの勤めであり、私はあなたにつくすべきなのです。それを、何かにつけて、『フェリエにこんな事させられないよ』とか、『大丈夫僕一人でできるから……』とかあなたは言われます。あなたは気を使っているつもりなのだと思っているようですが、私がどれだけ寂しい思いをしているか?」

 フェリエが俺に向けて凄んできているのであるが、内容はフェリエの方から言うような事ではないような気がする。

「こんな事を言わせないでください! あなたは、私にもっと依存していいんですよ! 私はあなたにすべてを捧げるのですから!」

 そろそろピンときた。

 フェリエがここまで怒っている理由はおそらくシィだ。

 シィにサポートする力があるからとヤキモチを焼いているのだろう。

 そうなれば言うことは一つだ。

「そうだね。いままでは『シィになんでも任せればいいや』って思っていたけど……」

 そこまで言うと、フェリエはさらにすごんできた。たまらずあとずさる。

 最後まで聞いてくれ。

「これからは、フェリエにも頼むことにするよ。そうだねブラックオニキスの入荷を頼めるかな?」

 そう言うとフェリエは気が済んだようにして「フン……」と鼻を鳴らした。

 ひとまず溜飲は下がったようだ。

『これからずっと、こんな感じか……?』

 フェリエの様子を見てそう考えた。シィはこれまでより近くについて生活をする事になる。魔法の訓練だって一緒にする。

 フェリエといっしょにいる時間よりもシィと一緒にいる時間の方が長くなるのだ。

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