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適当男の転生軍師  作者: TUBOT
学園編
42/132

フェリエはフェリエで大変なようで

 寮に戻るとレリレンがいた。

 俺の事を一瞥するとすぐに顔を外した。

 そんな事は俺が気に留めることじゃない。布団にもぐって不貞腐れているだけの奴なんて、俺の敵じゃないしフェリエの事もあり嫌って当然の相手だ。

 レリレンの事を無視し自分の布団に入っていった。

 その様子を見てデルクトはこの険悪な空気をどうしようかと、いった感じである。

「何も余計なことは考えないほうがいいですよ。こうなったのも全て相手が悪いんだし」

 俺はそう言った。デルクトがレリレンの事を見てなにやら慌てていた。

 レリレンが俺に向けて睨んだりでもしたのだろう。そんな事は関係ない。

「デルクトさんもそんなに気を焼く必要ないですよ」

「君ねぇ」

 この険悪な空気をなんとかしたいと思っているデルクト。俺とレリレンの事を交互に見つめていた。

「ほの……起きろ……」

 俺は言う。そうしたらその数十秒後にほのがやってきた。ちゃんと犬の姿をしてやってきたようである。

「君の使い魔かい?」

 デルクトが聞いてきた。

 デルクトが見ているのは大きめの黒い犬だ。それだけで使い魔だとは判断できない。ただのペットという可能性もある。

 ほのはあれから大きく育っていた。

 五年前は、ほのの背は俺の胸のあたりの高さだったが、今のほのの背は十歳になった俺の胸辺りの身長である。

 つまりほのは十分どでかい犬なのだ。

 その犬は俺のベッドの前に立つと周囲を監視し始めた。

「使い魔なら部屋に連れ込んでも良かったはずですよね」

 俺がデルクトに向けて言う。

「それは小型の使い魔を監視するための……」

 デルクトは言う。その決まりは小型の使い魔に限られる話だ。あまり知能の高くない使い魔は、何かあるとフラフラと外に出ていってしまうことも多い。本来そのために作られた規則である。

 そう言うデルクトだが結局は使い魔を部屋に入れてもいいという事は決まっている事だ。ほのを追い出す事はできない。

 ほのを置く事で周囲を緊張させてしまったらしい。元々問題生徒を集めた部屋なのだ。こうなって当然である。

 デルクトはそれが不満そうであるが、まったくそれを気にせずに眠りについていった。


 俺が寝静まり布団の中でまどろんでいるところ、いきなり声が聞こえてくる。

「ロドム様!」

 フェリエが俺の部屋にやってきたのだ。

 デルクトは自分の机に座って唸っているところだったし、レリレンもすでに眠っていた。

 いつもフェリエには朝に起こされていたので反射的に起きてしまった。

「フェリエ! また起こしに来たの? って、まだ外は暗いじゃないか……」

 そう言って寝ぼけている俺の肩を揺さぶったフェリエは、なんだか顔が涙目になっていた。

「ロドム様! 助けてください! 私、あの人達に汚される!」

「フェリエ……詳しく話して……」

 フェリエの言葉を聞き俺は起き上がった。

「とにかくここは女子は立ち入り禁止だ。部屋から外に出るよ」

 俺はそう言い今にも泣き出しそうなフェリエを連れて部屋から出て行った。


「同室の人が……変な服を着せようとして……」

 とぎれとぎれで話してくるフェリエ。その言葉を聞いて大体の今の状況を把握した。

 どうやら、フェリエの同室にはフェリエを着せ替え人形にして遊ぼうとしている人がいるらしい。フェリエにとっては恥ずかしくてたまらない服で、それを着るのが嫌で逃げてきたのだという。

 俺はフェリエと一緒に男女共用スペースにあるベンチに隣り合って座っていた。

 俺とフェリエが隣り合って座っているのを見て、ほのは俺の膝の上に後ろ足を乗せ、フェリエの膝の上に前足を乗せ、俺達の膝の上に座っていた。

 俺たちの膝をソファかなんかと勘違いしてんのかね……この駄犬は……

 フェリエはほのの頭に手を置いた。そうすると、ほのは気持ちよさそうにして目を細めフェリエの胸に頬ずりを始めた。

 フェリエはそのほのの頭を撫でていく。フェリエの泣き顔が少しずつ笑顔に変わっていった。

『アニマルセラピーか……』

 ほのは、自分から狙ってアニマルセラピーでフェリエを癒したのだ。やはり計算高い。

『さすがは俺の使い魔だ……』といったところである。

「フェリエさん……こんなところにいましたの?」

 その声を聞くとフェリエは俺の手をぎゅっと掴んだ。その声の主がフェリエを着せ替え人形にして遊ぼうとしている先輩なのだろう。

 彼女らは三人で並んでいた。見た目はこの学校のボス達をいった風貌だ。

「フェリエは嫌がっていますよ。着せ替え人形にして遊ぶのはやめてあげませんか?」

「何よ? あんたは関係ないでしょう! 引っ込んでいなさいよ!」

 フェリエと同室という事は攻撃魔法科の生徒なのだろう。万能魔法科の生徒は数が少ないので、攻撃魔法科の生徒と同室になるとフェリエからは聞いていた。

 攻撃魔法科の生徒というだけあって気が強そうである。補助魔法科の奴らとはもっている雰囲気がまず違う。

 そんな事で尻込みをする俺でもない。

「関係あります。僕はフェリエの許嫁ですからね」

 そう言い放つと相手はキョトンとした顔をした。その直後に彼女らは笑い始めた。

「おーほっほっほ、許嫁がいるとは聞いていましたが、こんな坊やとは思いませんでしたわ。フェリエちゃんに全く釣り合っていませんわ」

 なんだこの無礼な連中は……

 こいつら気が強いワケじゃなくて、ただ性格が悪いだけじゃないか?

 俺はその三人を見てそう思った。俺はチンピラに絡まれたことがある。何かにつけて俺の言動を聞いてゲラゲラ笑う。やたらと挑発的な言葉ばかりを吐いてくる。

「クソ面倒だ……」

 俺はそう小さく言った。その言葉はその三人にはよく聞こえていたらしい。

「行儀の悪い子ですわね。まったく可愛くない」

 三人の中のリーダー格と思われる女子は言う。

 俺はそれに全く尻込みをせずに、その顔を見つめ返した。

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