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適当男の転生軍師  作者: TUBOT
学園編
41/132

俺の屁理屈

「こういう時にあの人が闇属性である事を本気で感じますわ」

 試合を見ていたフェリエはそう言った。

 フェリエの隣に進み出てきたシィはそれに頷く。

「あの人の轡はしっかりと握っておきますよ。お嬢様……」

「出しゃばる事はないのですよ。あの人の事は私が何とかします」

 そうフェリエが言いシィに顔を近づけた。

「万能魔法科なんてよろしい所ではないですか? 何も気兼ねをせずに力を伸ばす事に専念をされるのがよろしいと思いますよ。それがこの国のためです」

 フェリエとシィは額がお互いにぶつかり合うほど近づけてそう言い合っていた。

「シィ! 頼みたいことがあるんだ!」

 グラウンドにいる俺がそう言うとシィはこっちにまでやってきた。

「彼の手当をしてあげれないか?」

 俺は空を見上げる。ナイトフィールドで、真っ暗になった空には光る月が見える。

「いるか……」

 レリレンは、そう吐き捨てる。

「お前が止めなくても勝っていたからな!」

 レリレンは、そう言い、デルクトに威勢のいい言葉を吐いた。

「なら、さっきの続きを始めますか?」

 そう言いチェスピースを出す。それを見て怯えながら唸ったレリレンは、すごすごと退散をしていこうとした。

「気が早いって……」

 そう言ってレリレンの事を止めるが、俺のことを睨みながら振り返ってきた。

「何をムキになってんだよ……」

 チンピラが言う典型的な負け犬の遠吠えを言い、レリレンはコートから去っていった。

「月の優しさを示し光を浴びるものに恩恵を」

 そう詠唱をしたシィはムーンヒールを使った。

 俺の精神力が回復していき魔法を使った後に起こる。体のだるさが一気になくなっていく。

 レリレンもそれを感じたようだ。カラダの不調が完全に回復をしたあと、忌々しげにしてコートから出ていった。

「僕らは祝勝会でもしないかい?」

 俺はフェリエとシィに向けて言う。

「その祝勝会僕も参加させてもらっていいかな?」

 デルクトもそう言ってくる。

「これから行うのは祝勝会ですよ。説教をするつもりなら遠慮してくださいね」

 俺は涼しい顔で言う。デルクトが話そうとしている事はなんとなく分かっていたためそう言ったのだ。

 デルクト、出鼻をくじかれたといった感じであったが、小さな声で「ああ……」と言った。


 学校の食堂に戻った俺達はみんなで持ち寄ったお菓子などをテーブルに並べた。

 俺の右側にはフェリエがいて逆側にはシィがいた。

「ロドム様。勝利おめでとうございます」

 そう言われシィが差し出してきたお菓子をほうばる。

「ずるい! 私の方も食べてくださいまし!」

 フェリエも俺の前に菓子を出してくる。

 俺の前に並んでいる菓子は俺が前の世界の菓子を真似てつくったものだ。

 じゃがいもを薄くスライスしそれを高温の油で揚げる。いわゆるポテトチップスに魚肉やエビの肉を高温の油で揚げてつくるスナックなどだ。

 この食堂の調理師に向けてそれを作ってくれるように頼んだら面白がって作ってくれた。

 バイキングの料理にこれを加えようという話をしていたが俺はそれは止めておいた。

 こんな悪い油の塊は成長期の子供に食べさせるようなものではない。

 俺は食うけどな。それはたまにだ。毎日食ったりしていると体になにかの影響が必ず出てくる。

 俺は調理師達にそう言っておいた。本当に調理師達は作らないだろうかと考えたら、それは保証できない。

 明日にはバイキングの料理の中に並んでおり、それを食べた生徒達は口々に美味しいと言って食うかも知れない。全ては調理師達次第だ。

「現代の悪習を、この世界に持ち込むのは僕としても不本意です」

 そう言う俺。そう言いながらも俺はポテトチップスをかじっているのである。

「現代?」

 その言葉に食いついてきたデルクト。俺が返事を返す前にフェリエがうんざりしたような顔で言う。

「ロドム様はいつも不思議な事を言っていますの。『自分は別の世界から転生をしてきたんだ』って」

 フェリエはそう言い俺のことを睨みながら見上げた。

「そういう不思議な事を外で言うのはやめてくださいまし」

 そうピシャリを言い放つフェリエ。その言葉で次の言葉を飲み込んだ。

 その俺達の様子をジロリとした目で見つめているデルクト。デルクトは不満げに口を開いた。

「いくら許嫁でも。校内でそんな風にベタベするのは」

「デルクトさん。説教をしたいならこないでくださいって言いましたよね」

 俺はデルクトに向けてそう言い放つ。

「そうですよ。これは祝勝会なんですから」

 シィも言う。俺はデルクトの言いたい事をまとめて言い出した。

「たしかに、こんなふうにイチャついていたら周りから絡まれるのはわかっていますよ。あんなふうに『絡んでください』と言わんばかりにイチャイチャしていたのは悪かったですよ」

 そう俺が言う。デルクトはそれでも不満がありそうな顔をしていた。

「彼は僕のライバルです。軍師の椅子に座れる人間なんてそう多くないですからね」

 少しぐらいはデルクトのしたい話に付き合ってもいいだろう。そう思い俺はポテトチップスを齧りながら言う。

「彼の未来を閉ざす権利は君には無い。彼だってよく話し合えば……」

「今更話し合ったらどうなるんですか? 中等部の三年生なんでしょう? 新入生に負ける程度の能力しか持っていないなら、もっと現実的な未来を見据えるべきですよ」

「君が強すぎるだけだろう?」

 デルクトは不満そうな顔をして言う。

「この事は噂になりますよ。『新入生に負けた』となれば、の未来は絶望的でしょう? 誰もが自分の望んだ未来を進めるわけでは無いのですから」

 俺は説教じみた事を言う。

 デルクトも何も返事が思いつかずにうなだれていた。

「彼自身の努力の問題ではある……」

 レリレンの事を想う十八歳を容赦なく言い負かした。だが悪いとは思わない。結局はレリレンの努力不足が原因だ。

「レリレンさんは私が同情をしなければならない相手ではないです」

 最後にそう言い放つ俺。

 それで次の言葉が全くなくなってしまったデルクトは、祝勝会が終わるまで肩を落としたままだった。

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