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適当男の転生軍師  作者: TUBOT
ディラッチェとの因縁の開始
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勝負に負けちゃった

 俺の後ろにはフェリエとシィが戦った時に出来た穴がまだ残っている。

 その穴を見てあの時は大変だったなぁと考える。

 ディラッチェと俺はその穴の先にあるコートにお互いに立った。

「それでは始めましょう」

 そう言う俺。俺は父に試合開始の合図を任せた。

「試合開始!」

 前回の試合開始の合図はディラッチェに有利になるまで開始を引き伸ばした事を問題にして。父が開始の掛け声をする事になったのだ。

 ディラッチェの事を見てみると数機の精霊戦士を出した。

 その精霊戦士達はゴーグルを被り背中に大きな筒を背負っていた。

 背中の筒は昔見た、ジェット飛行機のエンジンのように見える。

 そう俺が考えたところでその筒から炎が吹き出してきた。その精霊戦士達は飛んだのだ。

 石を一つ持ち空高くに飛び上がった。

「これは精霊戦士で戦うゲームだろう? 魔法を使うのはルール違反じゃないのか!」

 俺は言う。これは完全に不測の事態だ。

 敵が魔法を使ってくるなんて全く予想もしていなかったのだ。

「ルールブックにそんなものはない」

 ディラッチェは言う。ディラッチェが比喩で言っているのは分かっているが、俺はそれでも言わずにおれなかった。

「ルールブックなんて無いだろう」

 そう言った時に空から石が落とされた。

 頭の上から大きな石が落ちてくる。

「魔法がルール違反ではないならこっちだって!」

 投石器を出した。その投石器はすぐに石を積み込んだ。投石器を押して動かしワームホールを使って、ディラッチェの目の前に持っていく。ワームホールの効果でディラッチェの目と鼻の先に投石器が移動させられた。

 目と鼻の先の位置から投石器の攻撃に晒されるディラッチェ。ディラッチェは、それでも空を飛ぶ兵士に指示を出した。

 航空部隊が俺の投石器の上に石を落とす。そうすると投石器は壊れていった。

「護衛も付けずに放置したのは悪かったか。でも、空からの攻撃に対する対処なんて」

 俺は考えながら言う。

 今はディラッチェの有利である。これからディラッチェの空爆に晒されるだろう。それを止める方法は今のところ無い。空爆はされて当然というつもりで行こう。

 そう考えるとこちらは守っている余裕はない。敵の空爆に晒されながらディラッチェに降参をさせるしかないのだ。

 いつもとは違い攻撃に打って出るつもりになった。

 基本的に戦闘は防衛側が有利だ。敵の攻撃を受けて対処をする方が隊列も攻撃も自由にできるからいい。

「これは不利だ」

 いままでは、ディラッチェの方が攻撃してきてくれたから勝てた。防御に回って敵の攻撃に対処をする側になれたから魔力の量の差を覆す事ができたのだ。

 いまだにディラッチェは、他の精霊戦士を出さない。

 力を残しているのか、飛行部隊の運用に力を使いすぎていて他の物に力を回せないのか?

 そこまで考えたところで俺の頭の上に石が落とされてきた。

 考えている暇は無い。こっちは攻撃をされているのだ。コブができたところを触り俺は攻撃型の精霊戦士を出した。

 相変わらずマントに胸当てを当てただけの女の精霊戦士が生まれた。このヴィジュアルはいつもの事であるし、今そんな事に気を回していられる状況ではない。

 そうしたが後になって考えたらこれが間違いであった。俺は攻撃型の精霊戦士など使ったことはない。それなのに、焦って攻撃に手を回してディラッチェと戦おうとしたのだ。

 ワームホールを使って攻撃型の精霊戦士をディラッチェの目の前まで移動させた。

 その直後にディラッチェの精霊戦士は、俺の攻撃型の精霊戦士に空爆を仕掛けた。

 精霊戦士は、次々に破裂していく。

「攻撃型は防御が弱いんだ! そんなに突出させるといい餌食だぞ!」

 そう言い出すディラッチェ。いままで俺がディラッチェに向けて言った挑発行動をどんどんやられている感じだ。

 この状況に焦っていた。どう動いてもそれがどんどん裏目に出る。なにか行動をしようと考えると、それだけむだに魔力を浪費してしまう。

「ロドム様! 今回の戦いは勉強のつもりで!」

 フェリエがそう言ってくる。

 だから五歳児の発言じゃないんだよ。もうちょっと、可愛げのある事を言えよ。

 そう考える。今になって思うと、こんな事を考えたのもイラついていた証拠だ。

 不測の事態になるとてんでダメになるらしい。これを知ることができたのは後々の事を考えるといい経験になった。

 ディラッチェが俺のことを見てニヤリと笑ったのを見て頭に血をのぼらせた。シィが小さく言った事を俺の耳は目ざとく拾う。

「今日のロドム様はダメです」

「誰がダメだって!?」

 俺は叫んでそう返した。慌ててシィは頭を下げたが、その行動こそ、俺がダメになっている事の証明みたいなものだった。

 シイが言ったのはこの場にいる人間全員が思っている事であったのだ。

 岡目八目。横から見ている者は冷静に戦局を見ることができる。今の俺は自分がダメである事に、まったく気付けなかったのだ。

 ここで冷静になっていれば戦いに勝てていたのかもしれないと後になって思う。

 魔力は残っている。とにかくディラッチェに攻撃を加える方法はないかと考えた。

 使い慣れた防御型の精霊戦士を出す。それらは上に盾を持たせ上空からの空爆から耐えるようにした。そして攻撃型の精霊戦士を出す。

 精霊戦士達は頭上を盾に守られ攻撃から身を守りながらディラッチェに攻撃をする事ができるようになった。

 精霊戦士達をその状態のままディラッチェの方に歩かせた。魔法を使うと魔力の消費は激しくなる。今の俺の魔力は、魔法を使いすぎて少なくなってしまっている。

 余計な事で魔力を消費する余裕などないのだ。

 ジリジリとディラッチェとの距離を詰める。ディラッチェの真正面にまで動かすと、精霊戦士たちは、ディラッチェに石を投げ始めた。

 石の砲火に晒されるディラッチェはそれを耐える。

 俺も上空から落とされる石の攻撃を耐える。

 これは優雅な魔法による戦いではない泥臭く、お互いの根性を試し合う、気力の勝負なのである。

 俺の頭の上から石が落ちてくる。

 ディラッチェは精霊戦士から投石攻撃を受ける。

 それをお互いに繰り返し相手が先に倒れるのを待つのだ。

「なんて形だ」

 戦術とはもっと綺麗なものなのである。兵は規則的に綺麗に動く。

 戦いも、ドロくさいもみくちゃの戦いに見えても、きっちりと統率の取れたものでなくてはならない。

 今の俺とディラッチェは、相手からの砲火に耐えるだけで精一杯の状況だ。

 精霊戦士をだしているだけでも魔力は使う。魔力が尽きるか俺の体力が限界に来るか、どっちが先かわからない状況だ。

 ディラッチェは俺の精霊戦士の攻撃にひたすら耐えている。ディラッチェの体格からして耐える事に関してはディラッチェの方が上だと思う。俺の体は今は五歳児。そして、五歳児のなかでも体が小さい部類に入るくらいだ。

 十歳の相手と体力勝負をしているのだ。これは勝てるはずもない。

 降参をする気はない。自分のひ弱な体でも耐えれるところまで耐えるつもりだ。

 魔力が吸われ意識が朦朧とするし、石が頭に当たって体が壊されていく。

 俺の目は次第に閉じていった。俺は立っていられなくなりその場に膝をつく。

 魔力はまだ残っている。これは体力の問題か。

 そんな事を考えながら、俺は目を閉じバタリと倒れたのだった。

 これは後で聞いたことだ。ディラッチェは俺が倒れ、ディラッチェの勝利が決まったその次の瞬間にバタリと倒れたのであるという。

 体力の限界は相手も同じだったのだ。それでも負けてしまったのは俺自身の精神力の弱さが招いたことであった。

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