戦闘に勝利。ギリギリの戦い。
ディラッチェの精霊戦士と俺の精霊戦士がぶつかった。
さすがにディラッチェは兵士を攻撃型の精霊戦士にしただけあり、俺の防御型は次々と破裂をしていった。
その後ろから放たれる投石器の攻撃に巻き込まれ、ディラッチェの精霊戦士も次々に破裂をしていった。
「だがこれ以上はなぁ」
すでにディラッチェと俺の精霊戦士たちはもみくちゃになって戦闘をしている。
これでは敵ばかりを狙う事はできない。
「投石やめ! 攻撃!」
俺の出した、ほのの姿をした精霊戦士たちは、投石器から離れもみくちゃの戦闘の中に参加をしていった。
「こっちもだ! 出ろ!」
そう言い俺は伏兵を出す。ディラッチェの精霊戦士達は、正面からほのの軍団。背後から伏兵に挟まれてどんどん数を減らしていった。
「伏兵を出したな」
ディラッチェが言う。たしかに伏兵を出すのはもうちょっと後にしたかった。伏兵を呼んだおかげで、ディラッチェの精霊戦士たちが殲滅をされる。
それで戦いは終わりではない。ディラッチェは新しく精霊戦士を出す。
またも攻撃型であった。
「どうしようか? 少し押されているな」
俺がそう小さく呟くとそれを目ざとく聞いたシィが言う。
「私の事がかかっているんですよ! しっかりしてください!」
それを聞くと俺はすこしおかしくなって軽く笑った。俺のその様子を見て不安になったのだろう。シィはバタバタと手を振っていた。
とにかく、デイラッチェは俺と正面からぶつかりたいようだ。下手な考えをするために足を止めたり作戦を考えたりすると、俺には勝てない事は分かっている。時間を与えると、相手にとって有利になる。
だから、頭をフル回転させるしかない。ディラッチェはなりふり構わず俺に肉薄する事を考えている。頭脳で考える事を放棄している敵を倒すのには頭脳を駆使する以外にないのだ。
ディラッチェの攻撃を上手く流して、敵の急所に攻撃を仕掛ける。それしか勝機はない。
とにかくディラッチェの方から攻撃を仕掛けてくるという前提で考えよう。
そう結論をつけた俺は投石器の作業員を呼び戻した。
投石器の石を投げつけてみる。十分ディラッチェの所に石がとどいた。
ディラッチェは、自分が優勢なのは分かっているので本来なら下手に手出しをする事はない。だが、俺の投げた石がディラッチェにまでとどいている。黙っていたら攻撃をされ続けるだけだ。ディラッチェの方から攻撃を仕掛けないとならない。
ディラッチェは精霊戦士を出して攻撃をしてくるのかと思ったが、ディラッチェは、俺に合わせて、精霊戦士を出してきた。
「相手も持っていたか」
俺はそれを見て舌打ちをする。
ディラッチェも投石器を出してきたのだ。
こうなれば、ディラッチェの方からこちらに攻撃を仕掛けることも可能だ。そう思ったが。
「どこに石を飛ばしているんですか?」
俺はおもわず呆けた声でそう言った。
ディラッチェから放たれる石はまったく俺にあたっていなかった。
ディラッチェも、投石器の扱いに悪戦苦闘をしている様子だ。
「もしかしてマネをしただけ?」
この投石器の扱いは難しいのだ。練習もせずに敵に当てられるものではない。ディラッチェは投石器を初めて使うようで全く使いこなせていない。
「撃て」
俺がそう指示を出すと、投石器はディラッチェの投石器に攻撃をしかけた。
ディラッチェの投石器に石が命中しボロボロと崩れて投石器は崩壊をしていく。
「魔力を無駄にしたな!」
そう言い、俺は投石器を使ってディラッチェに攻撃を仕掛けた。
次々に石をディラッチェに当てる俺。ディラッチェも次の精霊戦士を出した。
槍兵の姿をした精霊戦士だ。
「使い慣れた力が一番有効なんだよね。気づくのが遅かったけど」
俺は言う。投石器を作り出したディラッチェ。投石器を作るのはかなりの魔力を消耗する。もうディラッチェの力は残っていないはずだ。
「メテオ!」
ディラッチェがそう叫ぶとディラッチェの隣に丸い炎の塊が現れた。
あれはたしかコメットウィスプというモンスターだ。
見た目は、ひとだまのように燃えている球体といった感じで赤く輝いている。炎の精霊の一種だったはずだ。
ディラッチェはその「メテオ」を掴むとメテオの火の勢いは一気に小さくなり、最後には丸い石ころのような姿だけが残った。
ディラッチェは使い魔を使って魔力を回復したのだ。
ディラッチェは残りの魔力がとぼしいという事である。優位に立っているのを感じニヤリと笑った。
ディラッチェは、それからいくつもの精霊戦士を出してきた。
この攻撃で最後にするつもりらしい。この数はディラッチェの最後の力を振り絞った総攻撃のはずだ。
「撃て!」
俺がそう指示を出すのとディラッチェの精霊戦士が、こちらに向かってくるのは同時だった。
地響きがおきそうなくらいディラッチェの精霊戦士は全力で地面を蹴ってこちらに向かってきた。
精霊戦士たちに俺は投石器を使って石を投げた。
石にあたって次々に破裂をしていく精霊戦士。
それでもディラッチェの精霊戦士たちはこちらに向かってきていた。
「ほの!」
俺はほのを呼ぶ。ほのが俺の隣に来ると、俺の手の上に、ほのの前足を置かせた。
そうするとほのは力を失い人間の姿になってパタリと倒れた。ほのは辛そうだが俺は魔力を手にいれることができた。
その魔力を使って俺は投石器を出した。
敵の大軍に俺の投石器はどんどんと石を投げつけていく。
どんどんと破裂していくディラッチェの精霊戦士。
だがそれだけじゃ全然減ったように見えない。数が多すぎるのだ。
「どんどん撃て!」
俺がそう指示を出すと、どんどんと石が打ち出されディラッチェの精霊戦士たちが破裂していった。
「まだだ。減った気がしない」
俺はそう言う。それを聞いたほのは俺のことを心配そうにして見上げた。
投石器を増やすべきだろうかなどと考える。それはまだ後だ。ここはこの戦力で守らなければならない。
そうしているうちにディラッチェの精霊戦士たちは、俺の防御型精霊戦士に肉薄していた。ディラッチェの槍兵は手に持っている石を使って、盾を持った精霊戦士に殴りかかっていたのだ。
『だから、槍を使え槍を』
盾を前に出し敵の攻撃から耐える精霊戦士。
その自分の精霊戦士を狙って投石器の石を打ち出した。
俺の精霊戦士は当然消える。それは敵の精霊戦士を何体も同時に道連れにして消えさせた。
「味方ごと撃つか」
ディラッチェはそう言った。だが、戦略シミュレーションをやり尽くしている俺にとっては、こんな決断は当然考慮のうちに入る考えだ。
味方一人と敵を数人倒せるんだったらふるいにかけるまでも無いだろう。
そうやって、どんどんとディラッチェの精霊戦士の数を減らす。少しの間打つと大分ディラッチェの精霊戦士の数は減った。まともに戦っても勝てる数だろうとおもうほどにだ。
「掃討戦だ!」
俺がそう言うと投石器の作業員と、防御型精霊戦士達を攻撃に参加させた。
どんどんと数が減らされていくディラッチェの精霊戦士達。ものの数十秒で、ディラッチェの精霊戦士達は消えていった。俺は余裕の表情でディラッチェの事を見る。
俺は精霊戦士達を、悠々とディラッチェの前にまで移動させていった。
「これから石を投げるよ。先に降参をした方がいいんじゃないかい?」
ディラッチェの事を完全に囲んだ状態で、俺は言う。
その瞬間をディラッチェは待っていたようだ。
「いけ!」
ディラッチェは、そう言う。そうすると、馬に乗った姿の精霊戦士達が生まれた。
そうすると放置をしてある投石器のところまで向かっていったのだ。
「壊せ!」
そう言うとディラッチェの精霊戦士達は、投石器を叩き壊す。
どんなに足が早かろうと、馬の足には負ける。投石器が壊された後になって、俺の精霊戦士たちは騎兵の精霊戦士達に攻撃を仕掛けた。
「よくも!」
俺は言う。それに合わせてディラッチェの騎兵たちは俺の精霊戦士と交戦を始めた。
騎兵たちは意外と強かった。さすがに、騎兵は歩兵六人分の力を持つなどと言われるだけある。
俺の精霊戦士たちの残りはもう数える程だ。だが、魔力の残りは十分にある。
ディラッチェは残りは少ないようである。。精霊戦士をすべて倒されたがそれ以上に精霊戦士を生み出す様子はない。
「どうします? このまま何もしないならボクの勝ちですよ」
戦闘の勝敗はもう決まったも同然だ。そう思い俺は余裕の顔でディラッチェに向けて言う。
「俺は最後の力を残してる!」
ディラッチェは言った。そうすると斧兵を十人以上出す。確かに、今出ている俺の精霊戦士達ではそれに太刀打ちはできないだろう。
「やっぱり僕の勝ちですね」
そう言った俺は三十人以上の精霊戦士を出した。
いくら、攻撃型の精霊戦士であろうと三倍の人数差を覆すことはできない。
それからディラッチェは膝をついた。
「降参だ」
悔しさを噛み締め震えるような声でディラッチェは言ったのだ。




