のぼせてから、目を覚ましてみると
目を覚ますとほのにパタパタと扇がれていた。
今俺がいるのは家の脱衣所だ。床はフローリングで寝ていると背中が痛くなってくる。頭の下にはタオルが敷かれており頭が痛くはない。
体が重い。これが脱水症状なのだろう。体が痺れて動くのがキツくなってくる。
「鼻血を流してのぼせるなんて、もうちょっと大きくなった子の行動だと思ったわよ」
母がそう言ってくる。体は五歳だけど精神年齢は四十歳なんだもん。こんなに大きなおっぱいに囲まれたら興奮もするってもんだよ。
そう思うもののそれを口には出さない。
「すいません。私は着替えてきたのでもう大丈夫ですよね?」
シィがペコペコと頭を投げながら言ってきた。
「それはいい」
シィの体に反応したわけではない。本当にキツかったのはほのの方だ。ほのはいまだに裸だった。当然その大きなおっぱいも外にさらされたままである。
ほのから顔を外すと母も察してくれたようでほのの体にタオルを巻いた。
「はえ?」
そうほのが言うと言う。
「ほの。着物を着ろ」
そう言うとほのはいつものかっこうになった。黒い着物に赤い帯足元はわらじという姿だ。
ほのに服を着せてしまった。そのおっぱいが見れなくなったのはちょっともったいない気もする。
何を考えている? これ以上のぼせるのはごめんだ。
ほのが服を着るのを見ると起き上がった。
シィが俺に水を渡してくる。俺はそれを一気に飲み干し『ぷはー』と言って大きく息をした。
「なんかロドムってオヤジ臭いわね]
母は言う。俺は酒の味だってタバコの味だって覚えている。心の中は完璧なおっさんだ。そう言われるのも仕方がない。
俺はそれから服を着るために立ち上がった。
「起きるのが早すぎですよ。もうちょっと横になっていないといけません」
シィが言うがそれを無視して起き上がる。
「ちょっと外の風に当たってくるよ」
フラフラしながら言う。もう夕方になっているので外の風も涼しくなっているはずだ。
シィが俺の肩を取った。
「外にいくならご一緒をします」
それに頷くと俺はシィに肩を抱かれながら外に歩いて行った。
シィに肩を抱かれながら外に出ると夕日が辺りを照らしているところだった。
赤くなった世界は見ていても風情がある。
「どうですか? 冷たい牛乳を用意してありますよ」
氷の入った牛乳を渡される。牛乳は腐りやすいためこの国ではすぐにチーズなんかに加工をされてしまうものだ。
「ついさっきしぼったばかりです。買いに行ってきましたおいしいですよ」
シィは農家まで行って牛乳を買ってきてくれたらしい。農家の場所は歩いて数十分の距離である。俺が倒れてからそこまで歩いて行ったのだ。
シィが往復をする一時間くらいの間倒れていたことになる。
「氷は奥様に作っていただきました」
そういえば母の属性は水属性だった。氷の魔法は水属性の上位魔法である。作るときは結構しんどかっただろう。
今のこの身がみんなに守られて存在をしているという事を心の底から感じた。
子供の頃はみんなから助けがあって生きていられるのだ。自分の力だけで動いてもいずれ限界が来る。
「こうやってディラッチェと遊んでいられるのも周りの助けがあってこそ」
「あなたにとってはあれは遊びなのですか?」
シィが言ってくる。そうだよな。あれはうちの威信をかけた戦いであったはずだ。
そんな事は考えなくてもいい。
「シィありがとうね」
いまでは、精神年齢が四十歳になった俺としてはとても恥ずかしい言葉を言った。つい、口から出てきたのだ。
シィは、キョトンとした顔をした。だがその直後に一気に顔が赤くなり、あたふたと慌てて、手を振った。
「そんな事を言われるなんて、恐れ多い! こちらこそありがとうございます。至らない点もありますが、私に良くしていただいて」
シィはペコペコと頭を下げながら言った。
俺はその様子をみてほほえましい気持ちになる。
今のこの時間はすぐに過ぎ去ってしまう。社会に出ていくが、その時は昔のように適当にやって適当な地位を得て適当にやっていく事なんてできないだろう。
ディラッチェみたいな敵も多いだろう。その敵と戦って軍師の地位を獲得しなければならない。
この世界戦い続けなくては生きていけないのだ。
「あの。ロドム様。お願いしたいことがあります」
シィが改まって言ってくる。
「なんだい?」
そう言うとシィは意を決したようにして言った。
「将来私の事を妾にしてください!」
口に含んでいる牛乳を噴き出した。喉に牛乳が入ってきて大きくせき込んでしまう。
「ロドム様!」
俺の様子を見てシィは驚いていた。
「変なことを言いましたか!?」
「変なことってそりゃ。シィは妾って何の事か分かっているの?」
不思議そうな顔をして首を横に振るシィ。
そうか。意味も分からずに言っていたんだな
「妾というのが何なのかわかりませんが、一生懸命がんばるつもりなので、よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げてきたシィ。俺はそれを見て唸った。
そこに声が聞こえてきた。この声は明らかにフェリエの声である。かなり怒っている事も口調から読み取れた。
「めーかーけーですって」
俺が家の門の方を見るとフェリエが門の前に立っていた。門番は急いで門を開けフェリエの事を門の中に通した。
門番のあの表情を見るにかなりヤバい状況である事を雰囲気で察したようだ。確かにそうだ。これはヤバい。
「おっほっほ! 私のロドムに手を出そうなんて百年早いですわよ! メイド風情が」
フェリエが作った笑顔で言ってきた。口の端とかが引きつっており、笑顔というよりは顔面が神経痛にでもなっているような表情に見えた。
「親同士が決めただけの許嫁じゃないですかそこに本当の愛はあるのでしょうかね?」
負けじとシィも言う。シィとフェリエの二人はにらみ合った。すぐに二人は目線を外しあう。
「今度また魔法の勝負をしましょう、今日は不覚を取りましたが今度はそうはいきませんわ」
フェリエがそう言うと、シィも了承をした。
この二人が暴走をしたら俺が止めないといけないな。
フェリエだって俺の苦手属性だと言っても俺の言葉なら聞くだろうしシィだって同じだ。
『とりあえず。死人が出ないようにしないと』
そう心の底で決意する。にらみ合っている二人を見ると不安になってきた。
本当に俺に二人を止める事なんてできるのだろうか?




