フェリエとシィの戦いの後
俺は家に帰る事になった。
あの後フェリエの事を探していたメイドと鉢合わせになったのだ。
フェリエがボロボロになった事情を聞かれ、その理由を話すとそのメイドに言われた。
「ロドム様、そういう時はお嬢様の事を止めていただきたいです。許嫁のつとめですよ」
そう言われると弱いが俺はフェリエに物を申せる立場にはなっていない。メイドにも分かるんじゃないだろうかと言いたかった。女の戦いには男が介入をすることはできない。
父は俺に同情的な意思を見せてくれたが母は俺に向けて言ってきた。
「フェリエちゃんにものを言うこともできないようじゃ男として失格よ! 将来尻に敷かれたいの?」
そう言われればごもっともなのだが、それは今の状況では完全に難しい。この時与えられた母からの課題にはこの先ずっと悩まされる事になるのだ。
フェリエとシィの戦いは一度決着がついたところで、今度は自分の先の戦いの事を考えなければならない。
ディラッチェは戦術を強化しようとするだろう。頭では勝てないなりに考えて次の戦術を考えてくるだろう。
石を持って殴り合うという戦い方があるのも知った。絶対にあれは使ってくる。どうにかして真正面からのぶつかり合いに持ち込もうとするだろう。
俺はそれを避けなければならない。どうにかして戦いを石を持った殴り合いに持ち込まれないように考えなければならない。
「そういえば精霊って、一つしか種類がないんだろうか?」
そう考える。
精霊戦士の見た目もそろそろ変えなければならない。女性陣の視線が痛い。別の形態の精霊戦士を作ることはできないのだろうかと思う。そうすればまだマシな見た目のものも出てくるだろう。
守りに固く敵からの攻撃に耐える事のできる、屈強な兵士を想像して新しい精霊戦士を呼び出した。
「なんでこうなる」
頑丈そうな精霊戦士が呼び出された。なんで胸当てしかしていないんだろうか、手甲と脚絆を付けているのはいい。肝心の胴体がへそ出しで胸当てしかしていないという、今までの精霊戦士よりも恥ずかしい見た目で生まれてきた。
「なんでこんな奴しか呼び出せないんだ?」
とりあえず防御の体制を取らせると精霊戦士の左手に盾が現れた。
「これが見かけ倒しでなければいいけど」
とりあえず次のことを考える。そもそもこの精霊戦士が防御に特化しているかどうか、すらまだ試せていないのだ。
何か? いい感じの練習相手がいないかな?
そう考えて首を回すとお菓子をバリバリかじりながら部屋でゴロゴロしているほのが目に映った。
俺がみつめているのを見ると、キョトンとした顔でこっちを見てくる。
ほのといっしょに家の庭にまでやってきた。ほのに基本的な精霊戦士の出し方を教えてお互いに相対した。
家の裏にも小石ぐらいある。ほのに攻撃をされて耐久度を測ってみるのもいい。
さっき作った防御型の精霊戦士を出した。
「ほの! お前も出せ!」
そう言うと、ほのは自分の精霊戦士を呼び出す。
「デザインを交換したいな」
ほのが出したのは狼男の姿をした精霊戦士だ。ああいう屈強そうななタイプを出すのが普通なんだろうな。
そう考えながら俺はほのに指示を出した。
「攻撃しろ!」
そう言うとほのの精霊戦士は石を持って殴りかかってきた。
「これは結構いいぞ」
精霊戦士は盾を前に出しその盾で敵の攻撃を防いでいた。石をガンガン打ち付けられてもそれは盾に阻まれカンカンと硬い音をあげる。
「もっと強く!」
俺がほのにそう指示を出すと狼男の攻撃が、さらに苛烈になった。
だが精霊戦士は消えない。この形態の精霊戦士は攻撃に強いタイプなのである事は確定的だ。
「次だ!」
俺は後ろに通常の精霊戦士を出した。ビキニアーマーのやつだ。
そのビキニアーマーに石を拾わせて投げる。自分の防御型の精霊戦士に当たらないように投げさせるのは難しい。いくつかの石が、防御型の背中に当たり防御型が破裂する様子が見えた。
「このへんはこれからの課題だな…
防御型には当たらないように投げさせるのは難しいだろう。0それができればこれからの戦いはずっと有利に戦えるはずだ。
もしかしたら石を投げ飛ばす専用の、攻撃型の精霊戦士を作ることもできるのではないだろうか?
石を投げるというのだったら投石器である。カタパルト式で石を投げる事のできる機械を考えてそれを顕現させた。
「だからなぜ作業員が女?」
俺は確かにカタパルトを出した。それを操作するのは童顔なロリっ子の女の子だった。
「これ私ですか? なんかこんなに可愛く作られると照れます」
ほのがそう言ってくる。ほのとその作業員の姿を見比べた。
そうだな、胸が大きいところまでそっくりだ。俺はほのの胸元を見ながら思う。
自分の胸を見ながら、何か難しい顔をしているのを見てほのは首をかしげた。
「ご主人様! ほのになんか御用ですか?」
そう言いながらほのは俺のところに走ってやってきた。そして、俺に抱きつき胸を腕に押し付ける。
三十五歳だった俺だったら、それに狂喜乱舞でもしていたのだろうが五歳の体ではそんな事も感じない。
やっぱ性欲ってもうちょっと大きくなってから起きるものなんだよな。
「ロドムさまー。いったいどちらに?」
そうシィの声が聞こえる。
何だろう? 母様からの呼び出しだろうか?
「ここにいるよー。庭にー!」
そう答えると、シィがひょっこり顔を出してきた。
「奥様がって! 何をなさっているのですか?」
何って言われてもほのが俺に擦り寄ってきているだけだがな。この状況は、シィにとっては気に入らない状況のようだな。
その時は考えが足りずそんな考えしか出てこなかった。
「私もやります!」
そう言い反対側の腕にシィが飛びついてきた。
「シィ! ロドム様を半分こしよう?」
ほのはそう言い出す。
やめてくれないか? 自分が両方から引っ張られて真っ二つになる状況が頭に浮かんだぞ。
「そうしましょう! ロドム様を半分こです」
シィまで言い出す。
「そういえば母様が何か言っていたのかい?」
俺がそうシィに聞く。
「今日のロドム様は、お疲れでしょうか、一緒にお風呂に入って疲れをとって差し上げるように言われました」
一緒にお風呂に入るって事?
「いやいや! それはまずいだろう!」
「何がですか?」
シィは本当にわかっていない様子でそう言った。五歳児だもんなそう考えたら一緒に風呂に入るのもおかしい事ではないだろう。だがそれはあかん。
「ほのもはいるー」
ほのもそう言い出す。幼い体に似合わない殺人級のバストを見て俺は言った。
「ほのはもっとダメだって!」
抵抗をする俺だが二人がかりで引っ張られたら抵抗しても引きずられていってしまう。