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適当男の転生軍師  作者: TUBOT
ディラッチェとの因縁の開始
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フェリエとシィの戦い 2

「この月はですね、光魔法を吸収するのですよ」

 シィは言う。フェリエはそれを聞いて目を細めた。

 フェリエはさっきまで月に向けて光魔法をガンガン撃っていた。その光の力は自分に返ってくるのである。

「これは月の基本術です! でも溜め込んた光の力でこれだけの威力になるのですよ!」

 シィは勝ち誇って言った。

 シィの作った月が光を吸収しているのは俺も感じていた。溜め込んだ光の力は低級術の威力を最大まで上げるのであろう。

「月の光よ。優しく輝くのはやめ光で敵を焼き尽くせ!」

 ムーンファイアという名前の魔法らしい。

 月から光の帯が発せられそれがフェリエの足元に打ち込まれた。光の力は凄まじく地面をえぐり、川原の石を吹き飛ばすほどだった。

 俺のところからでもフェリエの顔が真っ青になっているのが分かる。

「次は外しません!」

 シィは言う。今度はフェリエに直撃をするコースで、ムーンファイアが打たれた。

 その光の威力は強く、地面をえぐり隕石でも落ちたのではないかと、思われるほどのクレーターを作った。

 月に蓄えられた光の力はそれで尽きたようだ。月の色は灰色をしたくすんだ色の月に戻った。

「とどめぇ!」

 シィがそう言う。

「月よ。その身を落とし敵を撃て!」

 フォールムーンという名の魔法らしい。

「あれ? トドメって聞こえたような?」

 俺はさすがにそう呟く。今や灰色をしている月がフェリエに向けて落とされていったのだ。

「やりすぎだって!」

 俺はそう言いフェリエの前にまで走っていった。

「ええと、この魔法に対抗するには」

 フェリエの前に立ったはいいがこんな魔法に対抗するような魔法をまだ持ってはいない。

『ええと、闇属性の魔法ではなくてもいい。無属性でこの月を止める方法は』

 ない。何も思いつかない。このままではフェリエといっしょに月の魔法で殺されてしまう。

 俺は必死で頭を動かした。何かないか? 何かないか? そう考えているとき俺の頭の片隅に一つの詠唱が浮かんだ。

「闇の道を作りその先に我は向かう」

 どういう魔法なのかわからない。この魔法は今の窮地を救う。それだけは分かった。

 大きな黒い穴が生まれた。この穴は俺の見える方からは裏側である。それは分かる。

 月はその黒い穴に飲み込まれていく。その月は俺の背後にできていたもう一つの穴から出てきたのだ。

 二つの穴と穴をつなぐ魔法だ。一つの穴に入ればのもう一つの穴から出ていくことができる。この魔法は、その穴に入って移動をするために使う魔法なのだろう。

 ワームホールという名の魔法だ。

 このワームホールのおかげでシィの作った月は、俺とフェリエのはるか後方で地面にぶつかっていった。

 周囲に地響きが鳴る。そして地面が揺れる。これは地震だな。この魔法で地震が起こった。

「これで私の勝ちですね」

 シィは言った。これだけではシィの勝ちと決めることはできない。

「二人共、反則で失格!」

 俺は叫んだ。シィとフェリエの二人は不思議そうな顔をして俺の事を見た。早く言うべきだった。そもそもこの戦いの根本をこの二人は理解していなかったのだ。

「精霊戦士を使って戦うゲームだよ!」

 そう俺が言い二人は『はっ』とした。この戦いはドローである。こんな強力な魔法の応酬があり、死人が出そうなほど激しい戦いであったのにも関わらず、勝者は無しで終わったのだ。


 あれからほのはシィにべったりとくっついた。

 フェリエは自分の苦手属性であり、しかもご主人である俺の許嫁である。

 シィは俺の家のメイドであり、ある意味ほの自身と同じ高さに立っている仲だ。重要なのは、フェリエと戦って勝っていること。自分の苦手な人間にとっての天敵という事は自分の味方であることと同じだ。

 こんな時に限って犬らしく従順になり。隣に座ってシィの腕に頬ずりをしていた。

 フェリエはそれに不機嫌そうな顔をしている。

 シィに負けたのもあり、ほのが自分には懐かなくなったのもあり、面木が丸つぶれになってしまった。

 俺は迷わずフェリエのところに行った。機嫌が悪いままのフェリエを放置しておくと後が危なそうだからだ。

「フェリエ。あの戦いは引き分けだったんだしそんなに気にしなくても」

 フェリエは俺の事を睨みつけた。

「あの状況を見ればどっちが勝ったのかくらいは誰にでも分かります」

 暑い日差しを浴ながら言うフェリエ。

「あの魔法を使ったら? あの日傘を出すやつ」

 俺はそう言った。フェリエは首を横に振った。

「いいえ。臥薪嘗胆ですわ。この事は忘れてなるものですか」

 ここまで腹のすわっている五歳も珍しい。本当なら今すぐにでも家に帰って母さんに泣きつくのが普通の五歳児の行動だろう。

 そうはならない。フェリエは家に帰ったらすぐにトレーニングの時間を倍に増やすように、両親にお願いをするだろう。

「そうです。ついでにベッドを薪に変えて夕食には必ず苦い胆を」

 フェリエが言うのに、俺はあきれてしまった。

「本格的だなぁ」

 本当にフェリエは五歳なんだろうかと思う用な発言をしている。五歳児の考え方ではないと思う。

 この二人の対立はこの先面倒なことになるだろう。俺はそう思いながらいまだに悔しがっているフェリエを見た。

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