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適当男の転生軍師  作者: TUBOT
戦争前夜
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自分の方が済んだら

 俺はあれから、フェリエ達にお菓子のつくり方を教えていった。

 プリンやビスケット。すでのこの世界にあるようなお菓子も多いが、俺が知る限りのお菓子の知識を出したら、知らないようなお菓子もいくつかあった。

「不思議です……牛の骨を混ぜると水が固まるなんて……」

「ホットケーキにこんな使い方があったなんて……中に小豆を砂糖で煮詰めたものをはさむなんて……」

 デイナとシィのつぶやきを見れば何の事を言っているか? 大体わかるだろう。ゼリーとドラ焼きの話をしている。

「お菓子についての知識は、これで打ち止め!」

 俺は言う。俺の知識で十分量のお菓子は作れたらしい。前の世界で、嫁さんもなしに一人暮らしをしていた時は、『思いっきり寂しい』と、思っていたが、その時に培った知識がこんな形で役に立つとは、わからないものである。

「これだけあれば、うるさいこの学校の生徒達も黙らせる事が出来るでしょうね?」

「こらシィ……」

 シィが言った言葉を、俺はたしなめた。

「そういう事を言うと、気持ちまで傲慢になるよ。僕らは彼らの『命を預かっている』のであって、彼らを下僕として扱っているワケじゃないんだよ」

 これまで歴史を見て、兵を軽んじた軍隊は長続きしない。腹の中ではどう思っているかはさておき、表面上くらいは、兵を大切にしないとついてこないのだ。

 俺が言った言葉にフェリエが面白そうにして「キシシ……」と笑った。シィはムッとしてフェリエを睨んだ。

『こういう事だってあるけどな……』

 二人の様子を見ると、自分の懐にも、諍いの種はあるのだと感じる。

「それじゃあ、このお菓子はみんなで食べちゃおう」

 俺が言うと、スプーンを取り出した。

「作ったからには全部食べるんだよ。折角貴重な材料を使って作っているんだ。無駄にしたらもったいない」

 俺がそう言う。

 みんなでお菓子を食べ始める。やっぱり女の子は甘い物が好きみたいだ。

 おかしを食べる二人は、諍いの事を忘れて、いつもどおりの笑顔をしていた。


「こっちの食糧事情が安定したところで……」

 俺は屋上に上がっていた。メイレナは俺の頭の中を読んでいるようで、すでに俺の事を見てニヤついた顔をしていた。

「フェリエ……シィ……デイナ……」

 俺はそう言いながらフェリエとシィの手を取った。そして、俺のうでを握るように指示する。

「これから君らの魔力を使うよ。デイナ……場所はどこだい?」

 俺が言う。デイナは俺の耳を掴んだ。

『こそばゆいから、もうちょっと別の場所をつかんでほしいな……』

 そう思う。だが口にすると、フェリエとシィがまた、俺のからだのどこか別の部分をつかみ合いをする姿が想像できる。

 俺は平静を装いながら目を閉じる。そうすると、デイナの魔法の虫が見ているものが視界に広がった。虫は、いくつもの袋が積まれたテントの中を飛んでいた。中には、小麦粉やレモンが大量に詰まっている。

 そして、虫は飛び上がり、テントの幕を潜りながら外に出た。視界に濁流の上に立つ学院が見える。虫が方向転換をすると、テントの姿が見える。

 他のテントと比べても、特徴のない荒い作りのテントだ。むしろ他のテントの方が個性的すぎるので、地味なテントに見えるだけかもしれない。

 家の紋章を縫い付けられたテントの入口の幕。その他に花が飾られ思い思いのデコレーションがされているテント達だ。

 こんな事をするなんて、キャンプ気分でやってきているようにしか見えない。

「あれならよくわかる……」

 俺は目を開ける。そうすると、デイナは俺の肩に手を置いた。

「私の魔力も使わせてあげる」

 そう言うデイナは、俺の足を掴んでいるほのの顎をなでた。

 ほのは、それにきもちよさげにして目を細める。

「二人共集中して……」

 俺が言うと、二人が俺の体を掴む力が強まった。

「ワームホール!」

 俺は魔法を使うワームホールの一つは、川の中に発生させた。そして川の水は、今見た敵の食料庫のテントの中に繋がる。

 つまり濁流の水が思いっきり敵の食料庫に流れていくのだ。

「みんな……ふんばって……」

 俺は大量の水をワームホールを使って食料庫にドバドバ流したのだ。

「向こうは大混乱ですよ」

 メイレナが向こうの状況を説明してくれる。

 小麦粉の袋は、水を通すサテンで作られている。今小麦粉はドロ水と混ざってぐちゃぐちゃになっているはずなのだ。当然食えるはずはない。

 それに舌の肥えた貴族達なら、なおさらそんなものを口にしようとはしないだろう。

「さて……これで、逆に兵糧攻めで攻める事になったんだけど……」

 敵はどう動くだろうか? もしかしたら、関係ないかも知れないとも考える。

 こういう時に闇商人が現れるのだ。べらぼうな値段で、貴族達に物資を売り儲けを出すあくどい奴らである。

「さすがに商人まで攻撃できないからな……」

 ほとんどの商人は水面下で繋がっている。一人の商人とっちめたら、ほかの全員の商人たちにもその話は伝わるものである。

 この世界では王と商人には逆らってはいけない。そういう言葉もあるくらいだ。

 だがそうなると、この戦いはさらに長期化をするだろう。それはなんとしても避けたいところである。

 俺はフェリエの方を見た。彼女は大きな商家の娘である。もしかしたら、なにか手段を考えてくれるかも知れない。

「フェリエ……こっちに……」

 これはフェリエにしか頼めないことだ。俺はフェリエに頼んでみた。

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