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適当男の転生軍師  作者: TUBOT
戦争前夜
101/132

一時休憩

「増水してきたな……」

 俺は外の川を見てそう言った。

 やはり敵は水責めをしてきた。この地形で、この作戦を取るのは当たり前であると思う。

「こんな事をして、敵は何がしたいのでしょうか?」

 フェリエがそう言う。

「水責めだよ。水責め」

 これには敵が逃げられないようにするという意味がある。

 兵糧攻めにプラスして、何もできないようにする。

「水責めが始まったのだったら、ある意味ラッキーだった……」

 俺は思い、メイレナに向けて言う。

「全員戦闘態勢を解除してください」

 俺がそう言うと、メイレナが、この学院の全員にその事が伝えられた。

 これで生徒たちは緊張から解放されてのびのびする事ができる。まあ、デイナの報告によれば、すでに緊張感なんて完全に切れていたらしいが……

「こっちからは何もできないけど、敵からも何もできない」

 食料だって大量にあるし、足りなくなれば、また買いに行けばいい。いくらでもこの場所に篭もれる状態は出来上がっているのだ。

「学院長……こちらの増援は来ますかね?」

 メイレナに向けて言う。

 学院が襲われているのだ。国の軍隊がこちらの救援にやってくるものだろうと期待をしているのだが、この国の惨状を考えると、もしかしたら、俺達の事を見捨てる事を視野に入れるかも知れない。

「なりそうですよ」

「いきなり何を? こんな時まで人の心を読むのはやめていただきたいですが……」

 あいからわずメイレナと話すと話が急展開になってついていけない。

「それで、なりそうと言うのは?」

 俺が聞くと、メイレナは念の力で使い魔を呼び寄せた。

 使い魔である燕の足に取り付けられた筒を取り、その中に入っていた、紙を取り出す。

「今、会議が行われていますね。この学校に増援を送るか? それとも、対話交渉をして兵を引き上げてもらうか?」

「一目散にこちらを助けに来るべきでしょう……」

 まあ、そんな事だとは思った。

 この国の上層部は、どうしても戦争をしたくないみたいだ。何とかして戦争を回避する方法が無いか? を考えているのだろう。

『そんな方法ないけどな……』

 俺はそう考える。だがメイレナはそれを読んでくる。

「その考え方はおかしいです。最後まで平和の事を考えるなんて、立派なものでしょう?」

「皮肉にしか聞こえない……」

 この国の上層部は、日本の政治家みたいだ。どんな事をされても全く反撃をしない。不信な船を見つけても、攻撃許可がおりないなんて話、いくらでも聞く。

 最強の軍隊は『アメリカの司令官』『ドイツの参謀』『日本の下士官と兵』であると言われる。

 そして最悪の軍隊は『中国の将軍』『日本の参謀』『ロシアの下士官』『イタリアの兵』などと言われるのだ。

 平和主義は結構だが、敵にどんな攻撃をされても、まったく反撃をしないという、アホな事になるかもしれない。

「実際になりかけているし……」

 この場は学生たちだけで乗り越えていかないといけない。そう考えると、俺は頭を抱えたくなった。


 シィが言った。

「豆腐ハンバーグってこれでいいんでしょうか?」

 俺はあれから食堂に行った。敵が攻めてくる気配はなく、十分に休養が取れると考えたのだ。

「テルシオの『天』の魔法を使わない限り、こっちにはやってこれないからな……」

 そんなバカな真似はしてこないだろう。

 下は濁流のところを飛んで、ここにまでやってこなければならない。そんなふうに飛び込んでくるなら、完全に夏の虫だ。

 天の魔法を解除すれば、濁流に飲み込まれる。もしこちらにたどり着けても、みんなで囲んで棒でつつくなりすればいい。

「ロドム様?」

 俺がそう考えているところに、シィが言ってきた。

「また考え事ですか?」

「まあね」

 俺はそう言う。

 敵が攻め込んできたら、連絡をくれるようにメイレナには言ってある。

 俺はテーブルに座って目の前に出されたハンバーグを見た。

「メイドごときにできる事、私にも出来て当然です」

 フェリエが言う。

「お嬢様が口だけかどうか? これでわかるよ」

 デイナが言う。

 俺の前には三つの豆腐ハンバーグが並んでいた。

「覚えていますわよ、ロドム様はウエルダンが好みなのですわ」

 なるほど、それで黒焦げなのか。確かに俺はステーキはウエルダンが好きだ。あのカリカリに焦げた肉の感触と、炭になった部分の苦味。肉質は固く、ナイフとフォークでは、なかなかきれないあの弾力は俺の好みにばっちりマッチしている。

 俺はこの状況でなければ、最初に手を付けようとしていたのだ。

 そう言い、デイナとシィの事をチラリと見たフェリエ。

 二人はむっとして顔を作った。

「ロドム様が、『焼きすぎると大豆の味が出て美味しくない』と、言っていたのを覚えていないのですかね? メイドの仕事はメイドに任せておいてくださいな」

 シィは、フェリエに向けて言った。

 二人の視線が交差する。背後で行われているそれであるが、俺にはおもいっきり鮮明にその状況を想像できた。

 この二人だけではなく、今回はデイナもいる。

 俺が、どれを最初に手を付けるか? それを俺の後ろの三人の視線を感じながら、どうにかしてこの状況を乗り切る方法はないか? と、考えていた。

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