プロローグ
初めまして、今日より、連載を書かせていただくTUBOTというものです。
この作品に感想とか、意見とかあったりすると、私は喜びますんで、何か言いたいことがあったら(難癖でも可)どんどん感想なんかをお願いします。
俺はいままで適当に生きてきた。
今はそれなりの中小企業に勤めている。
それはいままで適当にやってきた結果だ。
学校での勉強は適当にやってきた。適当にやって、適当に入れる学校を選ぶ。就職も適当にした。
その全て見立てには狂いがなかったようで、学校も就職も一発で入ることができた。高校受験や就職活動で苦労したことはない。これらは俺にとっても自慢だ。
会社の中でもやはり適当に地位を築いていく。
お互いの上下関係を決める馬鹿にし合いはどの世界でもある。そこで、自分がオタクである事をばらすと、それをつついてくる奴は多い。
それで何かにつけて嫌味を言ってくる奴を「勘弁してくださいよー」だの、「なんですかー? オタクがそんなに悪いんですか?」などと言って流しておいた。
仕事だってある程度頑張るだけだった。出世をしたければ誠心誠意を会社につくせばいい。夜遅くまで残業をして会社に貢献をすれば、その先出世の道が見えてくる事くらい自分でもわかっている。
だから、一日に1~2時間くらいの残業をして遅くまで残っている、会社に全てを捧げる者達に向けて「失礼します」などと言って帰っていけばいい。
彼らも俺に会社のために身を粉にする事なんて望んでいない。帰っていっても何も言われないものだ。
そして、賃貸マンションの1Kのアパートに帰るとパソコンの電源をつける。
パスタを茹でレトルトのパスタソースを温めながら、いつもやっているパソコンゲームのスイッチをクリックする。
ドラマやアニメはもう飽きている。それにゲームだってそうだ。
アクションゲームは操作を覚えるまでは難しい。だが、操作を覚え切ったところになるとエンディングも間近になる。
二週目、三週目を遊ぶような気も起きない。一度クリアしたステージを何度もやって何が楽しいのか? それに特殊アイテムを集めて入ることができる、隠しステージなども探す気が起きない。
一度、クリアをしたステージを何回も回ってそんなものを集めるのは自分に合わないのだ。
だからラスボスを倒したら終わり。それ以上アクションゲームには興味がない。
ロールプレイングゲームなどももう飽きている。
レベルを上げて強くなり覚えた技を使って戦っていく、今のレベルでは勝てないような敵に出会ってしまうとすぐに投げ出したくなってくる。この辺はゲームのバランス調整の問題なのだろうし、ストーリーなんてパターンがいくつか決まっているような気がしてくる先を見たいなどとも思わない。
格闘ゲームだってもう飽きている。動きを覚えるまでは辛いし、動きを覚えてストーリーモードをクリアしたあとになると通信対戦になる。
その通信対戦は、そのゲームに全てを捧げたような者達がひしめいている。
空いた時間をすべてそのゲームに費やし人生をかけてすらいるような奴らに勝てるはずもない。それに素早い判断が必要になったるするのもいけない。俺は、もっとじっくりと考えながらゲームをしたいと思っている。
戦略シミュレーションだけは、いつまでたっても飽きない。
敵は人間だ。いくつもの戦術があり新しい戦術も常に作られている。
そのため、敵がどのように攻めて来るか? そしてどのようにそれを迎え撃つか? それを考えるのが楽しいのだ。
俺はその日もいつも遊んでいる戦略シミュレーションのスイッチをクリックした。
パスタがゆで上がりパスタソースも熱く温められる。
その隣に、栄養が偏らないようにと、野菜ジュースを置いて一緒に飲んでいる。
ただ、その時はまだ部屋の異変に気づいていなかったのだ。
クローゼットの中に泥棒が隠れていた。
泥棒は、俺がパソコンに夢中になるのを見て今なら逃げられるとでも思ったのだろう。クローゼットを開けて部屋のドアにまで走っていった。
だが、そんなもの当然気づく。今の状況を見て一つの考えが頭をよぎった。
『そうだ、あのマンガで見た格闘技の技を使ってみよう』
オタクなら一度は考えたことがあるだろう。格闘漫画に出てきた技を実際に試してみたくなったのだ。
マンガで見たへんてこなポーズの構えをとって泥棒に殴りかかろうとした。泥棒はナイフを取り出す。
だが腰が引けている。泥棒を見て特に理由もなく勝利を確信した。
『こんな逃げ腰の奴なら十分勝てる』
本当にこの時はアホな事を考えたものだと思う。
格闘技をマンガでみただけのど素人に人を倒せるような力はない。
俺はその根拠のない自信を抱えながら泥棒がナイフを持つのも気にせずに飛びかかっていった。
そして、あの時の感覚は今でも鮮明に覚えている。刃物が胸を貫いて心臓を突き刺す感覚。突き刺された瞬間に痛みはなかったが、その直後に俺は意識が遠くなっていった。
胸が痛い。それに胸の鼓動が止まったのを俺ははっきりと感じた。
それから一気に気が遠くなり、気を失っていった。