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第八十三話 満喫?夏祭り!

祭り会場を恋華、美沙、幸紀と回る。回り始めてから気が付いたがやはり美沙への注目が凄まじかった。髪色も目立つがその容姿も目立つためやはり隠し切れないのだろう。等の本人は僕の横でニコニコしながら出店で買ったりんご飴を食べているがな。気にするレベルじゃないのかりんご飴に夢中なのかは知らないがパシャパシャ写真を撮る姿がちらほらある。


「秋渡、あれ止めなくていいの?」


恋華が気になったのかそっと耳打ちをしてくる。僕はそれに頷き、美沙を見る。


「逆に今離れたら声をかけられてもっと動けなくなるだろ?写真を公開しても美沙やマネージャー曰く放っておいてもいいらしい。止める段階になるのは……」


僕が話すのをやめてある一角を見つめると恋華も釣られるようにそちらを見る。そこには美沙や幸紀を変な目で見る連中がたむろっていた。そしてその連中の一人がニヤニヤしながら美沙へ近付く。


「ねぇ、君アイドルの美沙ちゃんだよね?俺この地元の人だからさ、よければ一緒に回らない……っていってぇ!?」


話しかけて美沙の有無を聞かずに手を取ろうとした男の腕に力をそれなりに込めて握る。そして恋華を見て、


「こういう風に手を出そうとした時だ」


「なるほど」


「秋渡さん、慣れてますね?」


と、答える。恋華は納得し、幸紀は僕の手付きから慣れてると判断していた。まぁ普段からやりかねないといけない時はいつもやってたからな。とりあえず男はもがくがビクともしない腕にとうとうキレて直接僕を殴ってきた。が、それを空いてる片手で難なく受け止め、それからその男を睨む。


「手、出したな?」


僕は男を掴んでる腕をそのまま引っ張ってから一回転させて連中へと投げ飛ばす。男は綺麗な放物線を描いて男達へとぶつかっていた。


「おわわっ!?」


「クソッ!警備がいるならやめとくしかねぇ!」


「賢明な判断だ」


男達が立ち去るのを見てようやく一息付ける。ただ同時にこれで注目もされたから困ったものだ。見せ物じゃなかったがあれは誰が見てても注目するだろう。只でさえ美沙がいて目立つし恋華と幸紀も顔立ちはいいんだから当然注目を浴びるだろう。どうやら今年の夏祭りは例年よりも忙しくなりそうだ。


「さて、回るか」


「「「はーい」」」


恋華、美沙、幸紀からいい返事をもらえたので再び回り始める。今度は声をかけたくともかけられないといった雰囲気が伝わってくるが来ないならば下手に刺激をする必要はない。恋華達も今度は密着せずに三人で喋っている。幸紀も早く溶け込めたようで何よりだ。


「あ」


ふと恋華が足を止め、ある店を見る。僕達も釣られるようにして見るとそこはたこ焼き屋だった。そういやこの店じゃないけど毎年たこ焼きを一パック買って分けあってたな。僕はいつものところの人に心の中で謝りながらもたこ焼き屋に近づき、一人一人の数は減るが一パックだけ買う。金を払うと恋華達にたこ焼きのパックを手渡し、それを恋華が受け取る。


「ありがとう。さすがは秋渡。よくわかってるね」


「何年お前と一緒だと思ってるんだ?それに毎年買ってたからな。食べないと夏祭りに来た気がしないんだろ?」


「あはは……。秋渡にそこまで理解されてるのは嬉しいな」


恋華の嬉しそうな笑顔に僕も嬉しくなる。フッと笑うと美沙と幸紀が羨ましそうに僕達を見ていた。


「いいな、あんなに理解してもらってるなんて……」


「はい。私達より圧倒的に会ってる数が違うので当たり前なのかもしれませんが……」


「うぅ……幼馴染みに婚約者……私だけ凄く不利な気がするよ……」


「秋渡さんがアイドルが好きならば話しは別だったかと思いますが……」


美沙達のそんな会話を聞きながら道外れでたこ焼きを頬張る。恋華は美味しそうにして頬を綻ばせ、美沙と幸紀も美味しそうにして爪楊枝を刺して食べていた。こうして三人の美少女が美味しそうに食べてるところを見ると凄く絵になる光景だな。我ながらこんな凄いレベルの高い女子と知り合い処か友人だということが不思議なくらいだ。まぁ恋華は昔からだけど幸紀はお嬢様でもあり幼馴染み、美沙はアイドルでありクラスメート。他の連中も凄い奴らが多いがやはりそれでも驚くな。五神将だから僕自身も凄いんだろうけどそれでも一般的に考えたらこれたけでも贅沢だ。……逆に言えばこういった子から一人を選ぶことなんて僕には難易度が果てしなく高過ぎるんだよな……。


「秋渡秋渡!」


「ん?」


恋華に声をかけられて現実に戻る。すると何を思ったのか恋華は笑顔で僕に爪楊枝で刺したたこ焼きを向けていた。……これはまさか。


「はい、あーん♪」


そのまさかだった。いや、正直毎年やってるからおかしくはない。おかしくはないんだが今年はいつもとは違うから思わず躊躇ってしまう。愛奈や冬美がいたら口論にもなりかねないだろう。しかし口論にはならなくとも不機嫌になる者はいる。美沙は頬を膨らませてるし幸紀は笑顔だが目が笑ってない。しかしこのままでは恋華は毎年やってることだから悲しむだろう。……仕方ない、うまくいくかはわからんがこれを試してみるか。とりあえず恋華に差し出されたたこ焼きは食べる。そしてすぐに美沙と幸紀を見てから僕は少し笑ってから言ってみる。


「うまいな。二人にも食べさせてほしいものだ」


「「っ!?」」


二人は即座に顔を赤らめたがこれでダメならばこの二人の機嫌取りは相当時間がかかりそうだ。しかし二人はすぐにそれぞれ爪楊枝にたこ焼きを刺すと美沙から差し出す。


「あ、あーん……」


顔を赤らめながらそれでも懇願するような目で見上げてくる姿は可愛らしい。これを見たらそりゃファンも落ちるわな。ともかくそれを咀嚼して飲み込み、次に幸紀を見る。しかし幸紀は何を思ったのかたこ焼きを加え、そして口を上に向けて目を瞑る。……これって俗に言う口移し……か?まぁしてやるか。幸紀の肩に手を置いてからそのままたこ焼きを口で受け取った。さすがにキスまではしなかったが……。受け取ると幸紀は恥ずかしそうに離れ、顔を逸らす。僕も正直これは恥ずかしかった。


「は、長谷川さん凄いわね……」


「さ、さすがに真似がまだできません……」


「……まだ?」


とてつもなく幸運と言うべきか不幸と言うべき言葉が美沙から聞こえて思わず聞き返してしまった。


「う、うん……」


美沙はそれを恥ずかしそうにしながらも答え、否定はしなかった。幸紀は幸紀で顔を逸らしてるが少し笑い声が聞こえることから恐らく喜んでる。風呂とかに一緒に入った(幸紀が乱入しただけだが……)だけでも喜ぶからさすがにわかる。やれやれ、こんな甘い空気で食べるたこ焼きの味なんてわからんぞ……。


「ちょ、見てよあれ、あの男三人の女の子からあーんやら口移しで食べさせてもらってるわよ!」


「えー、あり得ないんですけどー」


「女の子の一人は木上美沙じゃん!あと本当かわからんけど口移ししてた子ってあの長谷川家の娘じゃない?」


「なんで男といるのかしら……」


近くのギャルどもがわざと大声で陰口を言い合う。だがそれが聞こえたのは僕だけだったようで恋華達は未だに顔を赤らめたままだ。……ふむ、これは少しイラつくな。僕はさっきまでの恥ずかしさなんて忘れて未だに笑い続けて陰口を言っているギャルどもに近付く。当然僕が動けば三人とも後を付いてくる。が、そこでようやくギャルどもは近付かれていたことに気が付いたらしい。化粧をして素顔を隠してる上に香水の強烈な臭い。正直付けすぎと言うほどの臭いでギャルの周りの人はしかめ面をしている。僕だって正直臭いと思っているほどだ。


「なに~?アタイらにあーんでもしてもらいたいの?」


「ないわ~」


「てゆーかそんな気ないし~!キャハハッ!」


勝手に勘違いしてまた笑い出すギャル。……やべぇ、堪忍袋が切れそうだ。それを悟ったのか後ろで恋華が少し慌てている気配を感じた。だがここで手を出すほどのものではない。僕はあくまで無表情でギャルどもを睨む。


「安心しろ。貴様らのような香水くせぇ連中になんて頼むわけねーだろ。素顔を晒すことができないような奴らに気を持たれてもただ気持ち悪いだけだ。何より僕達がしてたことにわざわざお前らごときの意見を取り入れる必要なんてないしな。ただ……」


僕は目を閉じてすぐに開くとそのまま殺気を放つ。


「ひっ!?」


「直接何も言えない弱者なんぞに笑われたらこちらとて黙っちゃいないぞ」


強烈な殺気を受けたギャルどもは完全にビビって腰が抜けていた。呼吸も苦しそうでしっかりできてるようにも見えない。が、今のこいつらに気遣いなど必要はないだろう。なんせ馬鹿にしてきた本人達なのだから。こいつらが不快に思おうが僕には思い出になりうる。それが事実だからな。


「はっ!あんだけ人のこと周りにわざと言いふらすように言っておいてことザマかよ。情けないにもほどがある。そんな情けない貴様らに警告をしておいてやる」


僕は色の違う目でギャルどもを馬鹿にしながらもさらに殺気を送る。それにギャルの一人が気絶してしまった。が、それに視線を向けることなくそのまま続ける。


「僕と僕の仲間を悪く思わせるようなことをすれば次は命を落とすと思え。これが本気と取るかは任せるがな。が、僕は本気だ」


一通り話し終えたらそのまま振り返る。もうこいつらに話すこともないしな。そのまま無言で歩くとまた後ろに三人が付いてくる。そしてしばらくして離れた所にあるベンチに座る。


「……すまん、悪い癖が出た」


僕は髪を掻き上げて恋華、美沙、幸紀に謝罪をする。折角の祭りにあんなことをする必要はなかったはずなのに思わずカッとなってしまった。だが恋華がすぐに首を横に振るとそのまま笑った。


「あれは秋渡じゃなくてもカッとなるよ。私だって自分がやったとはいえあれは許せないし」


恋華に続いて美沙と幸紀も笑う。


「そうだよ。そもそも普通ならあんなに言われて頭に来ない方がおかしいと思うよ?勝手に勘違いはしてるしさ。正直向こうの方があり得ないと思ったなー」


「はい。私と木上さんのことについてもあれはあの人達が秋渡さんのことを知らないからこそ言えたようなものです。正体を知ればあんなこと言えばどうなるか一目瞭然でしょうから」


確かに幸紀の言うようにあいつらは僕が五神将だとわかればあんな陰口は言えないだろう。ましてやあんな大声で。だがそれでもカッとなったことは僕も悪いだろう。


「ともかく楽しもうよ!折角の祭りなんだから!」


恋華は元気よく言って僕の腕を引っ張る。僕も変わらない恋華に笑って立ち上がると恋華も美沙も幸紀もすぐに祭りのことを話し始める。それを聞きながらやはりこいつらは特別なんだなと改めて実感した。……暁、やっぱりお前に負けることは僕自身が許せないことだと実感した。悪いがどんな戦いになっても勝たせてもらうとしよう。



ア「どうも、アイギアスです!」

恋「恋華です」

美「美沙です」

幸「幸紀です」

ア「最近は暑くなりましたね」

恋「そうね。冷房を使う季節だから仕方ないだろうけど」

美「汗だくになるから夏は嫌いなんですよ」

恋「わかる。薄着ならではのおしゃれはできるけど……」

幸「おしゃれした姿は秋渡さんに見てもらいたいですね」

美「おしゃれしてそれを褒めてくれる秋渡君……」

恋「ヤバイ、まともに顔見れなくなりそう」

ア「そもそもかなりの激レアシーンじゃないですか?彼、服とか褒めるの少なさそうですし」

恋「実際少ないわよ。けど褒められても照れてるようなところは未だに見たことないけど」

幸「照れてる秋渡さん……」

美「か、かわいい気がする……」

ア「ギャップ萌えってやつですかね」

恋「まぁ元々あれだけ普段からクールなだけあって想像するだけでも難しいんだけどさ」

幸「……今度は秋渡さんを悩殺するような服装を」

美「ラ、ライブの時の衣装とかで……」

ア「あの、お二人が……」

恋「気持ちはわからなくもないけど秋渡が悩殺されそうな服……ねぇ。全く想像付かないわ」

ア「そうなんですか?」

恋「うん。秋渡の場合はその相手の性格とかを一番見るからね」

ア「なるほど。それで性格も顔もいい異性がこれだけ集まったということですね!」

恋・美・幸「っ!!」

ア「あ、あれ?ど、どうかしましたか?」

恋「……やっぱり負けてられないわ!」

美「わ、私だって!」

幸「私は既にキスまでしてますけど♪」

恋「私だって昔したわよ!」

幸「それって幼い時でしょう?ああ、あの夜にしたキスは……」

美「やーめーてー!」

ア「……えぇっと、なんか始まってしまいましたが今回はここまでです。三人は……まだ言い争ってるので放っておきます……。ではではまた次話でお会いしましょう!」


オマケ


恋「だから私の方が先にしてるのよ!」

幸「子供の遊戯みたいなものじゃないですか」

恋「なんですって~!」

幸「あの時の秋渡さんは……」

恋「それなら昔の秋渡は……」

美「やめて~!ていうか私本当に圧倒的不利すぎるよぉ!」

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