第八十二話 祭りのメンバー分け
祭り会場。
着いた時本当に宣戦布告なんてあったのか疑うくらいの賑わいだった。毎年来てたのと同じように騒ぎが聞こえ、太鼓か何かを叩く音も聞こえる。僕は少し足を止めてしまったが、すぐに驚きから楽しむことにした。
「結構人いるね」
隣に来た恋華がそう言う。しかし恋華が言うことも納得できるほど人でいっぱいだった。毎年人は多いとは思うが今年は例年よりも多く感じるほどの賑わい。
「……今日は暁からの宣戦布告のことを忘れて楽しむとしようか。さて、まずはどうする?この大人数での移動はやめた方がいいし何人かで別れようと思うんだが……」
僕は皆に意見を求める。さすがに全員で行動するのはこれは無理なので三人くらいずつで行動した方がいいと判断しての質問でもある。
「うーん、私は祭りはほとんど秋渡としか来てなかったからできれば一緒がいいかな」
恋華からは僕と行動をしたいとの意見。……まぁ昔から連れ回してたもんだから文句も何も言えないんだが……。今更毎年同じ人と来てて突然別の人と行動するってことはできないということなのだろう。なんとなくわからんでもない。
「……私は誰とでもいい。……できれば秋渡とがいいけど無理強いはしない」
星華はほとんど任せるという感じだ。まぁ告白もしたからか前よりは僕と共にいようとはするのだが……。
「私は生徒会メンバーと回るわ。祭りはあまり来たことないしどうせならここで二人と思い出も作る」
「私は構わないわ」
「同じく」
冬美、室川、工藤はもう決まったもんだな。ひょっとしたら最初からこの大人数で動けないのを見越してのことかもしれない。……けど冬美、その本当は違うと言いたげな目で僕を見るのはやめてくれ。僕はふいと視線を冬美から外す。
「私も秋渡さんとがよろしいですが……無理は言いません」
愛奈は言葉は遠慮してるが僕を見る眼差しは「是非ともご一緒に!」と語ってるのがわかるくらい爛々と輝いていた。確かに愛奈に何かあったら久英さんに社会的に殺されそうだけどさ……。親子共に変わってるしこんな所で誘惑されたくもないから愛奈には悪いけどできればパスしたい。
「私もできれば護衛がてら秋渡君と一緒がいいかな。その方が色々安全そうだし」
美沙も同行したいと言ってくる。確かにアイドルの美沙はもうすでに注目を浴びてるから護衛はした方がよさそうだが祭り会場じゃ僕もやれることが限られるんだがな……。
「私は明菜さんと回ります」
「……二人で大丈夫か?」
「私も少しは対処はできますし明菜さんなら余程大物が相手じゃなければ大丈夫ですよ、お兄様」
「うん、舞は必ず守るわ。約束でもあるし」
「……そうか、わかった。舞を頼んだ」
「うん」
確かに明菜があればちょっとやそっとじゃ変なことはされないだろう。そういうことになりそうになったら即座に反応もできるし浴衣とはいえ何か対処法もあるのだろう。それに、約束のことも守ってるからきっと大丈夫だろう。破っても今の明菜には何もメリットもないしな。
「私は秋渡さんとがいいです。その、この中だと親しいのが秋渡さんくらいしかいないのもあるので……」
幸紀は生徒会メンバーとはまだ仲はともかく顔は知ってるだろうけどそういや他のメンバーとは実質初対面なんだよな。そう考えると確かに幸紀は僕といた方がいいのかもしれない。
「橋本と相澤はどうする?」
二人にも聞く。橋本は少し迷ったがそれでもすぐに答えてくれる。
「力になれるかわからんけど俺と相澤で木上さんと雨音さんを守ろうか?少なくとも盾にはなれると思うぞ」
「……まぁ早々に何か起こるとは思えないから大丈夫だとは思うが……」
「それによ、野郎二人で回るのはさすがに、な」
「……ああ、確かにそうだな」
高校生になって男二人で祭りを回るのは確かに嫌だな。そうなりゃ確かに愛奈と美沙の二人といた方がいいだろう。
「……なら私もいい?」
控えめにだが星華が同行を申し出た。橋本は意外そうに見るがその前にまだ愛奈と美沙が納得をしていない。
「私は構いませんが……」
「うーん、でもなぁ……」
愛奈は納得したが美沙はどこか難しそうな顔。橋本も相澤も星華も二人の意見を主張するみたいで口を挟もうとしない。橋本はファンだからっていう可能性もあるが……。しかし何を渋ることがあるんだろうか?美沙はウンウン唸って悩み続ける。なお、すでに生徒会メンバーと舞と明菜は先に回り始めていてもうこの場にはいない。
「……ごめん、やっぱり秋渡君にお願いしたいかな。友里も秋渡君がいるからって今日は特別に送り出してくれたんだし」
「あ、そっか。普通ならマネージャーさんが付いてくるのにいなかったのは秋渡に任せてたからなんだね」
「うん。ほら、秋渡君何度か護衛をしてくれてたから……」
マネージャーさんがいなかった理由が判明。それにどうしてアイドルの美沙が僕達との行動を共にできたかも判明した。あのマネージャーさんは僕がいるからと特別にと許可をしたならばそれは他の人といたらまずいわな。
「それなら仕方ないな。世刻、しっかり守ってやりなよ」
橋本は特に文句も何も言わずに僕の肩を叩く。少しは粘るかと思ったが、さすがに橋本もそんな馬鹿なことしないか。
「じゃあ俺と相澤、雨音さん、風間さんで行動するよ。それでいいか?」
「俺はいいよ」
「……構わない」
「わかりました」
ある意味組み合わせが凄いことになったな。まぁ人数もそれほど多くはならなかったしいいか。愛奈の視線がウザいがそれでも何も言わない辺り海でのことを気にしているのだろう。無理矢理拉致ったからそのことはもう謝られてはいるしすでに過ぎたことだからもう怒ったりも文句も言うつもりはないがな。それに、日帰りでも結構楽しかったしな。色々危なかったけど。
「じゃあまた後で。合流する時は電話かメールすればいいよな?」
「ああ。先に回ってるあいつらにもとりあえず一時間は自由って伝えてあるからな。それまで楽しもうぜ」
「了解。つーか本当に手際いいよな、世刻って」
「んなことねぇよ」
「まぁいい、じゃあな」
橋本達は手を振ってから人混みへと消えた。橋本は気が利くし相澤も特に何かを起こすような奴じゃないからあいつらの心配は特に必要ないな。僕は残ったメンバーを見る。恋華、美沙、幸紀。……幼馴染みにアイドル、そして婚約者兼お嬢様。なんだこの濃いメンバーは?ま、今更気にしてもしょうがねぇか。
「さて、僕達も行くか」
「うん。今年は何か新しい店とか出てるかな?」
「それを探すのもいいかもしれないな。よし、行くか」
「うん(はい)!」
僕は恋華、美沙、幸紀を連れて歩き出した。このメンバーならば早々ピリピリすることもないだろうし、しっかり気配を確認してるからはぐれる心配もあまりないだろう。恋華が僕の前を歩き、幸紀が右側、美沙がひだりがわにくっつくようにしているがこれは恐らくはぐれないようにするためでもあるのだろう。そう信じたい。なんかバチバチ音が聞こえてる気がしたけどこのメンバーなら大丈夫だと僕は信じてる。
さて、折角の夏祭り、堪能するとしますかね。
ア「どうも、アイギアスです!」
秋「秋渡だ」
恋「恋華です」
美「美沙です」
幸「幸紀です」
ア「聞いてください!実は……」
秋「聞く気力は湧かねーな」
ア「せめて内容は聞いてくださいよ……」
恋「それでどうしたの?」
ア「あ、はい。実はブックマーク数が200を越えたんです!」
美「本当!?それは凄いね!」
幸「ふわー、それだけの人が読んでくださっているということですか」
秋「よくこんなの読む気になれるな……」
ア「文章力がないことは自覚しているのですが……」
恋「それでもこんなに読んでくれている人がいるんだよ!」
美「励みになるよね♪」
秋「まぁそれならせめてもっと早く話を更新しろと言いたいがな」
ア「うっ……それはそうなのですが……」
幸「ですがそれでも読んでいる人がいてくれるのですからいいと思います」
秋「まぁな。こう見えて喜んではいるんだぞ?」
ア「(表情に出ないからさっぱりわからないですよ……)」
恋「(昔から声を上げて喜んでるところなんて見たことないわよ……)」
秋「ま、頑張って話を更新するんだな。指摘されたこととかはしっかり直すようにしてな」
ア「はい!感想を下さった方々にもいつも感謝しています!」
美「指摘されないと気が付かない時もあるからね……」
幸「そうですね」
ア「では今回はここまでにしましょう!それでは……」
ア・秋・恋・美・幸「また次話で!」