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第八十話 秋渡と恋華の絆

散々水着の舞、愛奈、美沙、後から星華、冬美に抱き付かれてしまい、色々危なかったがそれをなんとか乗り切り、今はシートで休憩をしている。ぐったりしてると側に恋華がやって来て飲み物を渡してきた。受け取って海を見ると他のみんなはビーチバレーとかをして盛り上がっていた。


「あはは、さすがに体力ある秋渡でもあれは耐えられなかったね。はい」


「むしろ耐えられるやつを見てみたいもんだ。ついでに耐えれるコツも知りたい。……サンキュ」


ペットボトルの蓋を開け、飲み物を一気に飲む。恋華は隣に座って同じようにして飲むと不意に不安そうな顔で僕を見ていた。僕も恋華を見返し、何を言いたいのかを把握している。


「……負けねーよ。ここで負けたらお前やあいつら全員が消される。……高校からの仲が多いけど今僕はここにいることが楽しい。お前は数少ない僕の昔からの仲。幸紀も今は婚約者としてだがそれでもやっぱりお前との時間の方が一番長い。それに、昔から色々あったからかお前を守りたい気持ちは特に強い。……それに、五神将って知らなくても僕の実力はお前が一番知ってるだろ?」


延々と、ではないがともかく負ける気も毛頭ない僕は恋華の頭を撫でながら語る。恋華は撫でられてることに恥ずかしさは持っているものの、振り払う気はないようでされるがままだ。それでも不安そうに見てくるようでフッと笑う。


「何が不安なんだ?」


「……大丈夫ってわかっててもやっぱり秋渡がいなくならないか不安なの。実力も知ってるし退かないのも知ってる。けどやっぱり……今回は相手が五神将最強だから……」


僕が聞くと頭を下げ、理由を教えてくれた。暁は五神将最強にして最凶。性格をよく知ってるわけではないがそれでもあの場で会っただけでもあいつの強さはよくわかってる。油断はできないし何よりも他の五神将もいる。五神将に対抗できるのは五神将。今の僕の仲間には残念ながら五神将は僕しかいないからどう戦うかは決めていない。策で攻めても残念だが黒坂に潰されるのは目に見えている。かと言って正面から全員と戦ってから暁と戦うなんて間違いなく負ける。正直青葉がキツい。あいつを止められるなら暁とはなんとかなりそうだがそれも無理だろうな。五神将の強さで考えるならば……


僕=暁➡青葉➡黒坂➡棗


だろうな。青葉を止めておくなら黒坂と棗が仲間になってくれれば一番だが……。


「(棗はともかく黒坂は無理だろうな。あいつとは因縁があるからな……)」


まさかここであの高須とかいうアホが障害になるとは思わなかった。いや、あまりあいつは関係ないか。


「秋渡?」


黙ってた僕に恋華が声をかけてくる。しまった、少し考えてたな。僕は少し体を伸ばし、それから飲み物をまた口に付け、口を離すと恋華に微笑む。


「僕はこの戦いに負けない。だから恋華は無事を祈ってくれ」


「……ふふ、それじゃまるでこれから死にに行く人の台詞に聞こえるよ」


「む、それもそうか。だが例え相手があんなに強大なやつでも僕は負ける気はない。もっとも、簡単に勝てるとも思ってないがな」


「他の五神将全員が相手だもんね。でも暁って人は知らないけど他の人はシュウトほど体に異常はないんだよね?」


棗は髪と目、黒坂は目と……あとはなんだ?あいつ、確か黒髪だったよな?前は戦ってたからあまりよく見れなかったし……。まぁいいか。青葉も髪と目だな。ほぼ青かった気がする。


「……身体的な異常は全員あるが他に関して言えば僕と同じオッドアイで髪色まで変わってるのは暁だけだ」


「……そっか。ねぇ秋渡」


「なんだ?」


暁のことや戦いのことはそれ以上恋華は触れず、少しだけ何かを考え込んだがすぐに笑顔を向けてきた。


「秋渡は長谷川幸紀さんと結婚することはもう決めてるの?」


「……」


い、今それを笑顔で聞いてくるか?思わず目を逸らして黙ってしまうがいきなり聞かれれば誰だってそうなってしまうだろう。だが本気で考えてみる。確かに幸紀は僕の中では特別な存在となっているが、それは恋華だって昔からそうだ。苛められてたら守り、原因がわかればそれを潰し、教師に何かを言われてもほぼガン無視。そんな昔から守ってた恋華だってそりゃ何もないわけじゃない。けど幸紀にも俊明さんにも結婚するのは構わないと言ってしまった手前、今更なかったことに、なんてことはできないだろう。幸紀は傷付き俊明さんと早奈英さんも親父達との約束が守れなくなる。勝手に色々決められていたとしても俊明さんが他の家からの婚約を何度も蹴ったりしてたということから本気で考えていたのに違いはない。それだけ幸紀の幸せも願ってたということだし親父達も僕だからと決めたんだろうな。


「……そうだな。親父達が珍しく僕に対して決めてたことみたいだし自分勝手過ぎるのもよくはないだろう。幸紀のことも好きだし僕自身嬉しい気持ちはある」


僕は言葉を選ぶか少し迷ったが恋華なら本当かどうかはわかるだろう。ならば下手に隠したりはしないで正直に話す方がまだいい。恋華は僕の言葉を聞いて少し悲しそうな顔をする。それを横目で見ながら話を続ける。


「……が、愛奈や冬美、星華のことも考えるとどうもはっきりとは決められていない。正直恋愛とかは無縁って思ってたから余計に決めることが難しく感じてな。もし舞も美沙も同じ様に僕に本気で好意を抱いてるならば一人を選ぶなんて困難なことはできない。もちろん凛桜の生徒の中にも好意を抱いてるやつはいるかもしれないが知らないやつが多いからあまり考えはしない」


「……秋渡」


「……恋華、僕は僕自身どうしたいのかよくわかってないんだ。好意を

抱かれるのは昔はそんなに好ましくなかったがこれだけの出会いがあった中でそれも変わってる。だからこそ、なんだろうな。今まで考えてなかったことだからどうすればいいのかがわからない」


恋華は黙って僕の愚痴ともとれる話を聞いていた。恋華が相手だから気兼ねなく話せるから僕としてもありがたい。恋華は昔からの付き合いだし変に遠慮はいらない。下手に遠慮したら昔文句を言われたからなんだがそれでも孤独にはあまりならなかった。……黒坂に友人が殺された時はどうしたもんか悩んだがな。


「ふぅ……。ま、今はそれよりも暁との戦いだな。未来のことも考えなきゃだがその未来が来なくなったら意味がない。必ず、は今回は約束できないが勝ってみせる」


自然と拳を握り締める。恋華はそれを見て薄く笑うと「そうだね」と返事をした。そう、幸紀と結婚するにしても、他の誰かとの関係にしても暁に勝たなければ何も意味がなくなってしまう。五神将最強にして最凶のあいつに負けたら全員が死ぬ。そんなことはさせてたまるか。目の前の海ではしゃいでる仲間達を見ながらそう決断していた。ふと恋華がさらに距離を詰めてきて肩に頭を乗せてきた。


「……どうした?」


「ちょっとやりたくなっただけ。ダメ?」


「いや、構わんが……」


恋華がこのように甘えてきたことはあまりなかったから驚いた。だが恋華が気持ち良さそうにしてることもあり、僕も嫌な気分じゃないから特に咎めたりはしない。皆がはしゃいでる声を聞きながら恋華とそれを眺める。


「……次に皆で遊べるのはいつになるのかな?」


恋華が目を閉じながら呟く。僕は少し上を向いてから少し考え、すぐに答えた。


「そうだな。暁達に怯えないようにするためにはやっぱりあいつを倒した後になるのかな。そうでないなら夏祭りとかもまだあるからな」


「夏祭り、今年はなくなるんじゃないの?戦争宣告されたんだし」


「うげ、じゃあ今年は打ち上げ花火が見れねーのか……」


夏に見る打ち上げ花火は僕の中で夏一番の楽しみだ。夏の風物詩ってこともあってそういったものが好きな僕には必然的に好きになるものだろう。と、恋華は満足したのか少し離れた。肩にあった恋華の温もりがなくなる。それから恋華はジッと僕を横から見てくる。


「……秋渡」


「ん?」


「目……閉じて」


「ん?あ、ああ」


言われた通り目を閉じる。何をするのかは知らないが別に危害を加えることじゃないならば特に気にすることもないだろう。目を閉じて待っていると肩に恋華の手が置かれ、そのまま恋華が迫ってるのがわかる。元々気配を感じ取れるんだからそれくらいはわかるが……。


ちゅっ


「っ!?」


突然唇に感じた感触に思わず目を開けた。目の前には恋華の顔があり、顔を赤らめながらも自分の唇を僕の唇に重ねていた。時間にして五秒くらいだろうか、恋華が離れる。


「負けるなんて、許さないからね」


恥ずかしそうに言ってくる恋華に思わず笑ってしまう。一種の願掛けともとれる行動と言葉だがその内心を読み取れない僕じゃない。だがここは恋華に合わせてやろう。


「ああ、了解だ。僕もそんな気はしなくなってきた」


「……ふふ」


「……クク」


お互いに軽く笑い合い、それから笑顔でなんとなく拳を突き合わせた。


ーー恋華、お前の気持ち、確かに受け取ったぞ。



ア「どうも、アイギアスです!」

秋「秋渡だ」

恋「恋華です」

ア「今回は少し秋渡君に質問が来てるので答えたいと思います」

秋「それ、やるならここじゃなくて番外編とかじゃね?」

恋「そこはあまり気にしなくていいんじゃない?」

秋「……まぁいいか。それで、質問は誰からどんなのだ?」

ア「えーっと、ペンネーム、五神将の妹さんからですね。内容は……」

秋「待て、それ間違いなく舞だよな?」

恋「私もそう思う……」

ア「今はあまり突っ込まないでおきましょう。私たって見た瞬間少し戸惑ったんですから」

秋「……ちっ。で?」

ア「えっとですね、『お兄様がお好みの女性が知りたいです』と……」

秋「……今なぜか悪寒がスゲーしたんだが」

恋「……そ、それでどうなの?」

秋「ノーコメントだ」

ア・恋「えぇっ!?」

秋「答えんぞ」

ア「初っぱなからこれですか……」

秋「最初ならもっとマシなのを選んでほしかったな」

恋「ま、まぁいきなりだったもんね(知りたかったな……)」

秋「それに今思えば過去の後書きでも少し暴露されてるだろ」

ア「メタいですよ、秋渡君」

秋「はぁ……。……好みとかタイプは特にない。僕が好きになったやつが好みだ。……これでいいな?」

恋「そ、そうなんだ」

秋「そもそも大体の奴がそうだろ。付き合っても絶対に結婚とかまで行けるかと言えばそんなことはないし付き合ってから変わるもんもあるだろ」

ア「まぁそうですね」

恋「……思った以上に大変そう」

秋「さて、そろそろ終わろうぜ」

ア「あ、はい。それでは……」

ア・秋・恋「また次話で!」


おまけ


秋「さて、終わったことだし……」

恋「?」

秋「飯でも食いに行こうか。舞と明菜もクラスメートに誘われてどっか行ってるしな」

恋「い、いいの?」

秋「?今更何を遠慮してるんだ?ほら、行くぞ」

恋「……あ、うん!」


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