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第七十七話 世刻秋渡と暁春樹

風呂から上がり、幸紀とは別の部屋を案内させた。そう、された、じゃなくてさせた、だ。俊明さんが自然に幸紀と同じ部屋にしようとしたので少し威圧させてもらった。ともかく客室へ案内され、そこで布団を敷いてもらう。自分で敷くと言ったのだが、メイドが「五神将の方にはそんなことさせられません!」とすごい慌てて言ってきたからさすがに黙った。が、少し頬が緩んでることから幸紀の相手だから、ということの事実の方が上なんだろうな。

テキパキ仕事を終えた後にメイドは一礼してから去っていく。僕はそれを見送ってから部屋にあるソファに座る。


「急だったから本とかないし暇だな。まだ寝る時間でもないし」


時刻はまだ九時過ぎ辺り。僕は普段から日付が変わるくらいに寝るから全然眠気も来ない。散歩でも行くか?いや、勝手に出てくと俊明さんや早奈英さんに迷惑がかかる。けどやることがないのもまた事実。幸紀は課題をやるとのことで部屋に引きこもっている。真面目だし生徒会の人間だもんな。……そういや冬美から生徒会長にと誘われていたな。ふむ、生徒会か。真面目じゃない僕には到底向かないだろう。そういや今の世の中で男が生徒会長の学校ってあったかな?あれば有名だろうが……。いや、今はそんなことはいいか。さて……。


「(誰かの気配がする。外から……かなり遠くからの殺気?)」


何者かの気配がして思わず刀を手に取り、外へ視線を向ける。……行くか。この気配、青葉よりも強い殺気だ。あの青葉よりも強い殺気。つまり……。


「(暁春樹。だけどあいつはまだ僕のことは知らないはず。ならなぜ僕に……)」


こんな一点張りの殺気を飛ばされている?それからすぐのことだった。


「っ!?」


さらに強烈な殺気が飛んできて思わず反射的に部屋を飛び出す。そこには丁度料理をしてくれていた執事が驚いた顔で僕を見ていた。


「ど、どうかなさいましたか?」


「……少し外へ出る。幸紀達に何か聞かれても絶対に僕の後を追わせるな。下手をしたら死ぬことになるかもしれん」


「は、はい!」


それだけ伝えて僕は玄関から靴を履いて外へ出る。部屋着みたいな格好だからあまり動きやすくないがそれは今は仕方ない。ともかく猛スピードで殺気のところへ行く。屋根から屋根へ飛び移り、やがて住宅街から離れた丘へとすぐに着く。そこは暗闇で明かりがあまり届いてないがそれでも殺気だけは間違いようもない。


「初めまして、世刻秋渡くん?」


「ああ、初めましてだな……暁春樹」


僕は目の前の男ーー暁を睨みながら僕は冷や汗を掻く。こいつ、なぜ僕のことを知っている……。接点はないはずだが……。


「へぇ、僕の殺気に怯えもしない、か」


暁はどこか楽し気に僕を見てくる。僕はそれには答えずなぜこいつがと思う。赤い髪、僕と同じオッドアイ。そして手に持つ鞘に収まっている僕や暁の背丈と同じくらいの長さを誇る長刀。恐らくそれだけで他人を殺せてもおかしくないほどの殺気。


「(なぜよりにもよって今日こいつと……)」


一番会いたくない相手、一番戦いたくない敵。さて、どうする。まずは質問からしてみるか。


「僕のことを知ってるのか?」


「当然さ。優秀な部下を最後の五神将候補のもとへ刺客として送ったにも関わらず帰って来なかったのは君のところだけだったからね。それに龍大も虎雄も達也も破った相手だから興味が沸いたんだよ。いやー、部下は捕らえられるわ龍大ですら負けるほどの腕前を持つなんて五神将決定じゃないか」


「っ!」


あの刺客は他の奴等にも送られていたってことか?今日昼間に現れた柏木ってやつのところにも行ったのか?自称五神将を名乗ったやつだ。だから行っててもおかしくない。


「柏木……なんだっけな?忘れちゃったけど彼にも刺客を送ったけど……。なぜかボコボコで発見されたんだ。まぁ彼は高須武と同じで自称してるだけの雑魚だったみたいだけどね。高須はそもそも虎雄に頼りまくってる時点でもう違うし。さて、そんな彼らの話は置いといて……」


やはり来るか?しかし殺気はない。


「やはり君が最後の五神将、世刻秋渡くんで間違いないないね。なぜ五神将の集合に来なかったんだい?おかげで自称五神将がわんさかやって来て面倒なことが起こったんだよ?」


「……いや、知らねぇよ」


集合しなかったのは世間から変な目で見られることを避けたかった。それに恋華が離れてくことが少し怖かった。だからなんだが……。暁は本当に面倒そうなことがあったことを語るように笑う。何があったのかわからないがそれほどのことなんだろう。


「何人来たと思う?」


「五人くらいじゃないのか?」


「……百人はいたよ。しかも金持ちの息子ばかりね」


……百人も押し寄せてくる光景を思い浮かべる。うん、確かに対処はめんどくさそうだ。けど、なぜそんな愚痴を僕に?


「やれやれ……。どいつも髪を染めたりオッドアイに見せるためにカラコンを付けたりでどいつも必死だったよ。まぁ五神将という立場はそれほどのものなんだよね。なんせ総理大臣よりも上だしこの立場に就けばどんな貴族や女とも好きにできるからねー」


「どうやって見抜いたんだ?地毛の奴とかもいるだろう?」


「目はどうしようもないからカラコンじゃないことを証明するために目を開けたまま水に顔を浸けてもらってね。そうしたら自然にカラコンが取れるしモロバレだよ。何よりも実力が、ね」


ああ、暁達じゃなくてもその配下に戦わせれば一目瞭然だもんな。


「思わず笑っちゃったよ。みんな一発でほぼ沈んでくんだもん。五神将としての実力がなさすぎて……」


本当に面白いものを見たように笑う。こうして見てると意外と普通の好青年に見えるな。……長刀を見なければ。


「……ところで話はなんだ?僕に何の用だ?」


「あはは。是非君という人に一度会って話してみたかったんだよ。できればそのまま僕の仲間として引き入れたいって思ったんだけど……」


僕の質問に答え、一旦区切ってから。


「……どうやら無理そうだからね。だから勧誘だった予定を変更してここに宣言しよう」


暁の眼光が獅子の如く鋭くなり、それから何かのボイスレコーダーに向けて何かを話すように息を吸う。そして……。



「僕こと暁春樹、他の五神将、部下と共に五神将、世刻秋渡と命を賭けた戦いを今ここで宣言する。世刻秋渡を助けたいと思う女性、友、仲間は全力で王の世刻秋渡を守るが良い。なお、信用しないものは勝手だがこれは男対女の戦争だと思いたまえ。世刻秋渡は五神将の中でも数少ない女性の味方だ。その実力はこの僕にさえ届くだろう。だから……」


また区切ってから暁はニヤリと笑う。


「生き延びたければ彼に付いて行くことを推奨しよう。もし世刻秋渡との戦いで僕たちが負けたら潔く負けを認め、僕たち五神将という立場はなくさせてもらう。けど……」


僕は暁を睨みながらも黙って話を聞く。暁もフッと笑って続ける。


「彼が負けたら女性は根絶やしにされることを覚悟しておきたまえ!」


獰猛な目付きでボイスレコーダーへ話す暁。これは宣戦布告だ。こりゃ黒坂がどうこう言ってる場合じゃない。棗、黒坂、青葉、そして暁。五神将全員との本格的な命の奪い合いをすることになる。……他でもない、あいつら全員を守りながら。


「暁っ!」


「なお、この戦いは九月に入ってすぐにさせてもらう!」


僕がギロリと睨み付けた中、最後にそう締め括ってから電源を切る。それからまた睨み合う。


「……やってくれたな」


「白黒付けるいい機会だろう?」


「テメェ……」


「さて、今日のところは退散させてもらう。……楽しみにしておくよ、君との全力の戦い」


「……」


「じゃあね、世刻秋渡くん」


最後に僕にだけの宣戦布告をしてから暁は瞬時に去っていった。その速度は僕の全力の時と同格だったことから奴は僕と同じ強さと考えた方がいい。となると暁とは初めから全力で戦うしかない。あいつの強さは未知数。だがその強さは青葉、黒坂、棗を遥かに凌駕していることは間違いないだろう。僕は暁が消えていった方向を少し見つめてからやがて幸紀の家へと戻っていった。



ア「どうも、アイギアスです!」

恋「恋華です」

星「……星華です」

ア「とうとう邂逅しましたね」

恋「暁……春樹……」

星「……秋渡にも勝るとも劣らない男」

ア「今回は勝負はありませんでしたがこれは大変なことになりましたね」

恋「折角の秋渡との夏休みなのに……」

星「……去年は何をしたの?」

恋「去年?えっとね……。確か夏祭りがあったからそこに二人で行って色々出店を回ったよ」

星「……デート?」

恋「なっ!?ち、違うよ!……でも言われたらそうだね」

ア「秋渡君、なんでも桜とか好きらしいですからね。花火も好きなんでしょうか?」

恋「う、うん。打ち上げ花火を見て感慨深そうに眺めてるから。浴衣着てる秋渡も見れたし出店を秋渡と満喫できたから凄く楽しかったよ」

星「……ズルい」

恋「ズルいって言われても……。そもそも確か去年って星華ちゃんもまだあまり秋渡と親しくなかったでしょ?」

星「……むぅ」

ア「秋渡君はどのような浴衣を着てるんですか?」

恋「そ、その……黒い無地だけど背中に月と周りの雲が描かれてるやつだよ。秋渡、よく秋に月見もしてるから」

星「……風物が好きなんだね」

恋「イルミネーションされた雪景色とか好きだからね。花見も昼間の桜だけじゃなくて夜にライトアップされる夜桜も好きだし。……桜道を歩く姿は凛々しかったなぁ……」

星「…………」

ア「袴とかの和服着て桜の花びらが舞い散る道を悠然と歩く姿は絵になりそうです」

恋「うん!……でも今年は無理かな」

ア「どうでしょうか……。秋渡君ならなんとかしそうですが……」

星「……秋渡は負けない。だから九月までだけど時間があるうちにたくさん遊んでおこ?」

恋「そうだね……。うん、そうだよね!秋渡が負けるなんてあり得ないし、秋渡を信じてればいいんだよね!よーし、元気出てきた!」

星「……後で秋渡に声、かけておこ?」

恋「うん、そうだね!」

ア「ではキリがいいのでここら辺で終わりにしましょう。それでは……」

ア・恋・星「また次話で!」


オマケ


秋「ああ、いいぞ」

恋「やったぁ!じゃあじゃあまた夏祭りとか海とかに行こ!」

星「……約束……だよ?」

秋「わかってるよ」

秋「(負ける気はないがそれでも必ず勝てるわけじゃないからな。悔いの残らんようにはしておくか)」


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