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第七話 暴走のお嬢様

次の日になった。家に帰ったらすぐに寝てしまったらしい。シャワー浴びるか…。


「今日はあんまし学校に行きたくねーな…」


昨日のことを思い出す。あのお嬢様とその父親のことだ。絶対にもう転校手続きを終えてるだろうな。そして今日にはもう来るだろう。何も起こらなければいいんだが…。


「はぁ…」


心配が絶えずあるために溜め息が何度も出る。

だがさすがに時間も迫ってるし行くかぁ…。


ーーー学校。

相澤と橋本が教室でなにか話していた。だがこっちに気が付くと、


「お、世刻じゃん、おはよ」


「おはよう、世刻」


挨拶をかわしてきてくれた。


「ああ、おはよう、二人とも。何の話をしてたんだ?」


そう聞くと相澤がやや興奮気味で、


「このクラスに転校生が来るらしいんだよ!」


……………確実にあいつだな。


「?どうした、世刻?」


橋本が話し掛けてくる。


「いや、何でもない」


「?そうか」


橋本はこれ以上追及して来なかった。正直ありがたい。


「いやー、楽しみだなぁ」


相澤は頬がめっちゃ緩んでる。その転校生に何を求めてるのだろうか。と、そこで予令が鳴ったので僕達は席に着いた。そして担任が入ってくる。


「え~、いきなりだが今日は転校生を紹介する。先に言うと女子だぞ」


この世界が世界のためか、あまり騒ぐやつはいな……


「おぉ!キタコレ!」


……いわけではないらしい。ちなみに騒いだのは相澤だけ。けど皆がワクワクしてるのはわかった。


「では入りなさい」


言われて入ってきたのはやはり愛奈だった。あの銀髪は簡単には見間違えないだろうよ。


「では自己紹介を頼む」


「はい。皆さん初めまして、私は雨音愛奈と言います。よろしくお願いします」


ペコリとお辞儀をする愛奈。そして、


「では雨音、君の席は……」


「先生、私はそこの席がいいです」


教師の言葉を遮り、指した席の場所は僕の隣だった。

できれば来ないで欲しい。なんでこんな時に空いてるんだ、僕の隣は……。


「う~む。ま、問題ないか。では世刻の隣に行きなさい」


「はい」


言って隣の席に座る愛奈。そしてこっちを見て、


「よろしくお願いしますね、秋渡さん!」


可憐な笑みを僕に向けて言ってきた。

悔しいが可愛かったよ、畜生。


話が終わって休み時間。

よくあるパターンと言うべき転校生への質問攻めが行われていた。けど困ることなく淡々と答えている愛奈はある意味凄い。


「どこから来たの?」


「好きな食べ物は?」


「どうして銀髪なの?」


「好きな人は誰?いなければよければ俺と…」


みんな山程聞きたいことがあるんだな。最後は何かが違うけど。


「はい、私は森乃丘学園から来ました。好きな食べ物はイチゴです。銀髪なのは生まれつきです。好きな人はいます。なのでごめんなさい」


すべて答える。そして最後のは見事に振った。しかも笑顔で。だが聞いた男は仕方ないか、という顔をしただけだった。こいつもある意味凄い。


「……凄いな、彼女」


横で賞賛を送る橋本。ちなみに相澤は質問攻めの輪に入っている。


「そうだな。あれだけのをよく答えられるもんだな」


そこは僕も凄いと思った。


「ただ、森乃丘ってたしか女学院だよな?なら彼女はここで好きな人ができたのか?」


「いや知らねぇよ」


本当は知ってるけどさ。それより、女学院か。そりゃ男と会うことも少ないだろうな。なら余計にここで僕よりも相応しい相手を見つけて欲しい。

橋本と話していた時、いきなり輪の中の連中がわっと騒いだ。思わず驚いて橋本とそこを見る。そして聞こえた会話。


「あ、でもどうせなら皆さんに私の好きな人が誰かを聞いてもらって協力して頂けたら嬉しいです」


………………………嫌な予感が。


「お、おい世刻?顔色が悪いが大丈夫か?」


「あ、あぁ。だ、大丈夫だ…」


全然大丈夫じゃない。


「私の好きな人は実は!」


「「「「「実は!?」」」」」


「そこにいる世刻秋渡さんなんです!キャッ!言っちゃった♪」


普通に言いやがったよ、このアマ!恥ずかしいなら言うなよ!でもよく見たら顔は言ってやったみたいな顔をしていた。地味に腹が立つ。


「おぉ~、凄いぞ、世刻。いきなりこんな美人を虜にするなんて」


橋本、僕がいつ虜にしたと言うんだ?てかこれ、よくある殺気を向けられるってパターンじゃねーか?何度か読んだ本にそう書いてあった。

……が、誰も殺気を向けてこない。なんでだ?気になってみんなを見てみると、


「なるほど、世刻か」


「たしかに納得だ」


「あいつだもんな」


みんななんか納得してた。なんでだよ…。


「というわけで皆さん、是非協力してもらえないでしょうか?」


「おう!わかった!」


「任せろ!」


息巻いている男子。女子はというと、


「なっ!?あの子も!?」


「負けないもん!」


愛奈に対抗意識を燃やしていた。理由は知らん。あとあの子もってどういうことだ。


「というわけで結婚してください、秋渡さん!」


「断る」


即答で答える。てか色々飛んだぞ、今。

しかし断られてしょぼけてもすぐに、


「くぅ~、絶対に諦めません!皆さん、何かいい作戦はないですか?」


「なら……」


変な会議が始まった。星華が寄ってきて、


「……これは一体何?」


「いや、知らん」


そう答えるしかなかった。だって僕もわからんし。

橋本は横で笑っていた。何がそんなに面白いのだろうか。

溜め息を吐きながら次の授業に備える僕だった。



午前の授業が終わり、昼休みに。愛奈が当然の如くの様に僕の所へ来て、


「秋渡さん、ご一緒にお昼を…「断る」せめて全部言わせてくださいよ!」


内容がわかってたから即座に断る。昼は野暮用で生徒会室に行くからだ。

ブー垂れてる愛奈は放っておいて生徒会室へ向かう。着いてすぐにノックをして入る。


「失礼するぞ」


入るとそこには生徒会メンバーだろう人達が揃っていた。

勿論冬美もいる。


「用ってなんだ?」


タメ口で普通に聞く。すると会計かなんかの担当っぽい眼鏡をかけた女が、


「少しは無礼というのを考えたらどうなんですか?」


不機嫌な顔で睨んでくる。よくいる超ど真面目なやつだな。


「敬意を示すに値しないから敬語なんて使う必要はないだろ」


「貴方ねぇ!」


立ち上がって突っ掛かってくる眼鏡女。掴んでくるの手を僕は余裕で掴む。


「何をする気なんだ?生徒会さん?」


離そうと腕を振るおうとするが、全く振りほどけてない。当然だ。力はあるけどそれより上の力で掴んでるからな。


「まさかこんなことのために僕を呼んだっていうのか?」


「違うよ。世刻君」


否定してきたのは書記を務めてるっぽい女だ。名前は知らん。

ついでに眼鏡女の腕を放す。痛そうに腕を擦ってた。


「私達が貴方を呼んだのは副会長の件についてよ」


ああ、前に冬美が聞いてきてたな。それの返事か。


「それで、どうなの?秋渡君」


冬美が聞いてくる。正直忘れてて何も考えてなかった。まあ考えようが考えまいが返事は一つだな。


「断る。僕には何も利益がない」


言うと冬美と書記の女はがっかりしてた。……なんでだ?

反対に眼鏡女はほらご覧!と言いたげに二人を見る。


「……どうしてもダメかな、世刻君?」


「何を言われようと僕の考えは変わらねーよ」


「……そう」


書記の女は諦めたようだった。けど冬美はまだまだ諦めていないようだった。


「お願い秋渡君!学校を守るためにも入って!」


「冬美、この男はダメだ。性格的にも生徒会に入れるには相応しくない。だからこの学校も守ってはくれないよ」


おお、ナイスフォローじゃん、眼鏡女。実にその通りだ。前の棗の時は鉢合わせしたからやっただけだし。


「話は終わったな?じゃ、僕は教室に戻らせてもらうわ」


さっさと生徒会室を出る。昼飯早く食わねーとな。


ーーー

冬美は生徒会室で沈んでいた。理由は秋渡に断られたからだ。工藤と室川は声を掛けるが冬美は反応しない。仕方無くそっとしておくことにした。


「どうしたんだろうね、冬美」


廊下で歩きながら室川は隣の工藤に聞く。しかし彼女もわからないので頭を振るだけだった。


「わからない。何か彼に隠されてるのか単に他に候補がいないからかだと思うけど……」


どっちにしてもあの冬美が必死になるほどだ。

二人は少し彼を調査することにした。勿論、冬美には内緒にして。



ーーー

学校の授業が終わり、放課後になった。部活に入ってるやつはさっさと教室から出てそれぞれの活動場所へ行く。


「さて、帰るか」


「帰るならご一緒してもいいですか?」


誰かなんて言うまでもない。愛奈だ。敢えてスルーしてみよう。すると星華が何か凄い怖い目で僕たちを見てきていた。なんかしたか?ひょっとしてなんか邪魔でもしてたか?だったら悪いことをしたな。


「あの~、スルーされると悲しいのでせめて何か答えてくれませんか?」


若干涙目で言ってきた。さすがに罪悪感が沸いて……こない。どんだけ冷淡なんだ、僕は。


「ん?ああ、愛奈、いたのか」


「まさかの存在がスルーされてました!?」


ガーンという効果音が聞こえた気がした。そして肩を落とした。

さすがにやり過ぎたか?


「さて、少し生徒会室でも行くか」


そう言って歩き出す。


「あ、待ってくださ~い!」


慌てて愛奈が小走りでついてくる。


「なんでついてくる……」


「秋渡さんがいるからです!」


「あ、そう」


相手をするのも面倒だった。


生徒会室。

入るとさっき会った会計さんと書記さんがいた。会長はいない。


「なんだ、冬美のやついないのか。ならいいや」


「待ちなさい」


会計さんに止められる。


「貴方、今更何の用なの?できるだけ私達の邪魔をしないで」


ん?どこか様子がおかしい。心なしか声が震えている。

なんかあったのか?


「ふ~ん。何かあったんだ。ま、僕には関係ないね」


「私にも関係ありませんね」


愛奈も言う。そうだよな。生徒会の仕事何だから僕達には関係ない。

しかし、次の言葉で変わった。


「いえ、二人にも関係あるわ。その子、雨音愛奈さんよね?」


「え?あ、はい」


驚く愛奈。そして書記の女が、


「先程『愛奈は僕のだ!得体の知れないやつに渡すか!』って電話が来たらしいのよ」


そんなこと言うやついるのか。でも男じゃ冬美には勝てないだろう。だからスルーしてもいいんじゃ……。いや、その前にその男が言った言葉だ。……うん、


「痛い台詞だな」


「ええ、私も思うわ」


「私も」


僕の感想に二人も賛同する。何気に三人で初めて共感したところだった。だってその台詞を言うってことはナルシストだろ?


「ん?でもそれのどこに僕が関係してるんだ?」


そうだよ、なんで愛奈のことで僕が関係してんだ?おかしくね?


「それがね、貴方と一緒の所を見て嫉妬?をしたらしいのよ。それでその男が勝負だ!だって」


うわ~。くっだらね~。やりたくね~。


「ただ……」


そう言うと二人は突然顔を曇らせて、


「彼の後ろには五神将のうちの一人が潜んでるらしいの。だからどうするか考えていたの」


五神将が潜んでるのか……。ふむ、どうすっかな。ま、もしもあれだったらその五神将ごと蹴散らすとしよう。


「ふ~ん。ま、受けてやるか」


「え?」


驚く二人。愛奈も驚いていた。そりゃそうだ。どんなに力があっても今じゃ五神将を上回る人間、ましてや男なんかで上回るやつなんか一人もいないだろう。だから普通は怯える筈だ。けど僕は全く怖じけずに淡々と相手の挑戦を受けた。そいつだけならともかく五神将が背後に潜んでるのにである。


「でも秋渡さん、私を狙ってる男も相当強いですよ?五神将じゃないのが不思議なくらい」


へぇ、そんなに強いんだ。なら少し期待しようかな。


「中には今いないやつの代わりに入れてもいいんじゃね?っていう声も聞きますよ」


「…………お前、なんでそんなやつに狙われてんの?」


余程の怒りでも買ったのだろうか。それとも別の理由か。予想では後者だな。なんとなくだけど。


「私に何度もしつこく婚約を求めてくる方です」


あぁ…、なるほど。見ると二人も納得してた。自分のものにしようとして色々奮闘してたけど突然見知らぬ男と笑いながら話してる。そりゃ嫉妬してくるわな。


「ちなみに相手の名前は?」


高須たかす武志たけしです」


知らねぇや。ってことはそこまで名が知れてるってわけじゃないんだな。


「お父様も彼には困っていたんですよ。彼の親もお父様の財閥目当てで近寄ってきましたから」


その親は自分達の息子をも利用してでも金が欲しいのか。多分それだけではないだろうがな。


「ですが今回の問題は……」


「五神将ね」


愛奈の言葉に答えを言う書記の女。


「とりあえず詳しい話は明日にして今日は帰りましょう。もう遅いし」


言われて外を見ると日は大分傾いていた。たしかに少し長く居すぎたな。


「そうだな。んじゃ、帰るわ」


「ええ、気を付けてね」


会計さんが心配をしてくれていた。ありがたいことだ。

外に出て愛奈と歩く。が、校門の所にはなんと、わが幼馴染みである恋華がいるではないか。どうしたんだ?


「あ、秋渡、やっと来た!…………ってその子誰?」


僕を見た瞬間は顔が輝いていたが愛奈を見たら一気に不機嫌になった。物凄い豹変ぶりだった。


「私は本日転校してきた雨音愛奈です。よろしくお願いします」


ペコリと頭を下げる愛奈。釣られて恋華も「あ、どうも」とペコリと頭を下げていた。…………ナニコレ?


「とりあえず歩くぞ」


僕がそう言うと二人はついてきた。何故か僕の腕に自分の腕を絡み付けて来た。意味がわからんかった。けどとりあえず僕の前で火花を散らすのは止めて欲しかった。

結局その状態は愛奈と別れるまで続くのだった。正直腕が痛かった上にずっとヒヤヒヤしてた。


明日は何もないといいんだけどな。



どうも、アイギアスです。

もう色々疲れました。台風は来るし。


ま、それでも関係なしです。

次回は二人目の五神将が登場!……の前に愛奈の自称婚約者が出ます。多分バトルもあります。

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