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第七十五話 甘える幸紀

幸紀の家に戻って来ると俊明さんと早奈英さん、そして使用人が出迎えをしてくれていた。早速客室へ案内をされ、幸紀は嬉しそうにネックレスを付けながら俊明さん達に報告をして、それを聞いて俊明さんと早奈英さんも笑っていた。僕はそれを遠目で勧められた席から眺めていた。なお、玄関の柏木やその配下の血は使用人が徹底的に処理をしたらしい。プロって凄いな。あの血の量はそう簡単には落とせないと思うんだが……。まぁ恐らくそれ専用みたいなものを使ったりマットとかは新しいのに変えたんだろう……と思うことにした。


「お帰り、幸紀、秋渡君。まだ夕食には早いからゆっくり寛いでてくれ」


「ああ。すまないな」


「はは、五神将の君がのんびりできるところなのかはわからないけどね」


……暁達がどうなのかは知らないが少なくとも僕は普通の暮らしをしてたからその点は心配しなくてもいいんだがな。というかむしろここにいる方が普段よりも贅沢してる感じがすごいする。

と、裾をちょいちょい引っ張られる。そちらを振り向くと幸紀が若干顔を赤くしながら僕を見上げて来る。


「しゅ、秋渡さん。よろしければ私の部屋へ行きませんか?色々お話したいので……」


幸紀が少しもじもじしながら自分の部屋に僕を誘う。それを見てる俊明さんと早奈英さんが幸紀の見えないところでニヤニヤしているのが気になるがこの際、それは気にしないようにしよう。


「……あなた、これは結構早く孫の顔を拝めるかしら?」


「……そうかもしれないな。それも、飛びっきりかわいい孫を拝めるかもな」


……すまん、やはり気にしないようにすることはできなさそうだ。というか今の爆弾発言、幸紀にも聞こえてるのでは?


「お、お父さん!お母さん!何を言ってるの!?」


幸紀が顔を真っ赤にして慌てふためくが、俊明さんらはニヤニヤするのをやめない。あー、絶対面白がってるな。僕は苦笑を浮かべて俊明さん達に色々抗議してるが俊明さんと早奈英さんにいいように遊ばれている。……平和な家庭だ。幸紀達を見てる使用人達も微笑ましそうに笑っているし。


「秋渡さぁん……」


……涙声で俊明さん達から離れた幸紀が僕に抱き付いてきた。どうやら言葉の戦いは幸紀が惨敗したみたいだ。俊明さん達はニヤニヤしてるし使用人達も誰も助けようとはしない。これはひどい。幸紀の頭に手を置いて優しく撫でてやる。


「よしよし。俊明さん、やりすぎだぞ」


僕が幸紀を撫でながら俊明さんに一応声をかけて注意をしておく。


「ははは、すまない。幸紀の慌てる姿がかわいくてね。それに……」


一応謝罪はしてきた。やはり親バカでもあることからこの家族は本当に家の親父らと変わらないな。それよりも他にも何かあるのか。


「二人の子を見たいのは紛れもない本心だ」


「………………え?」


再び爆弾を落とす俊明さん。幸紀は泣きながらも聞いてたからビクッ!となっていたが、抱き付く力が少し強まる。苦しくはないのだが、腹辺りに柔らかい何かがさらに押し当てられてるのが気になる。幸紀のもそこそこあるからな……。

それはそうと俊明さん、あんたどんだけ幸紀を困らせるのが好きなんだ……。舞も親父達に同じことされそうだな……。親父と俊明さんは性格がかなり似てることから思考も似ている。きっと今ここが僕の家で親父達がいたら同じことを言っているだろう。まぁもし親父が言ってたら僕がぶちのめしているだろうが……。


「さて、この話は今は置いといてまだ時間に余裕がある。さっき幸紀が言っていたように部屋で話してるといい。時間になればメイドに呼びに行かせる」


俊明さんはニヤニヤ顔を少し抑えてからそう提案してくる。ニヤニヤは隠せないようだがこれ以上幸紀をからかわないようにするためでもあるのだろう。そう信じたい。……いや、その横の早奈英さんもニヤニヤしてるから信じられそうにないな。

すると早奈英さんが幸紀を手招きする。幸紀はなぜかはわからないがとりあえず早奈英さんに近付くと、早奈英さんは何かを幸紀に耳打ちする。


「ちょ、お母さん!?」


「ふふ、楽しみにしてるわね♪」


幸紀が突然顔を赤くして早奈英さんに文句を言うのに対し、早奈英さんは楽しそうに笑っている。僕と俊明さんは首を傾げるがわからなかったからスルーしておいた。それから顔を赤くしながらもとりあえず部屋へと案内をしてくれた。


「ど、どうぞ……」


「失礼する」


そう言ってから僕は幸紀の部屋に入る。部屋は広く、何よりも何かいい匂いがする。変な意味じゃないぞ?それとベッドには意外と言うべきか、普通なのかは知らないが水色のイルカのぬいぐるみが置いてある。


「あまりジロジロ見ないでください……。恥ずかしいです……」


幸紀を見ると顔を真っ赤にして僕から目を逸らしていた。とりあえず深くは見回さないようにしておこう。


「あ、秋渡さん、少しベッドに腰掛けてくれませんか?」


「?ああ」


顔を赤らめながらそう懇願してくる。理由はわからないが何かあるのかもしれんな。テーブルのとこに座ろうとしたんだが……。

とりあえずベッドに座ると何がしたいのかわからず、疑問でいっぱいだった。


「それで、座ったが……っ!?」


聞こうとしたら幸紀が無言でいきなり抱き付いて来た。油断してたこと、後ろに背を預けられるものがなかったことから当然押し倒された。僕は何がなんなのかわからなかったが、咄嗟に受け止めることだけはできた。


「……どうした?」


「あの……その……。ここでなら存分に甘えられるだろうって……言われて……。恥ずかしいですけど確かに甘えたくなったので……つい」


幸紀の話でとりあえずこういうことを誘発させたのが早奈英さんだということだけはわかった。僕はやれやれと思いながらも右手で幸紀の頭を撫で、左手を幸紀の背中に回して優しく抱き締めてやる。少しビクッとしたが、それでも体重は僕に預けてくる。にしても軽いな、幸紀。ふと幸紀が見上げてきて何かを求めるように目を潤ませてくる。普段は気付くことができないが今はなんとなく察した。頭を撫でることをやめたら幸紀はそのまま顔を近付けてから目を瞑り……キスをしてくる。


「ん……」


幸紀の顔が近く、思わず心臓の鼓動が早まる。ふと何かの気配を感じて視線だけをその気配へと向ける。そこには少し開いたドアから覗き見るように俊明さんと早奈英さんがニヤニヤして僕達を見ていた。


「……幸紀も大胆になったな」


「……ええ。娘の成長を見れて嬉しいわ」


「……しかもあの嬉しそうな顔。完全に昔のお前だぞ」


「……もう、あなたったら」


ドアの向こうでこっちを見ながらなんかイチャコラしてる家主の夫婦がいる。しかも僕に見られてたのはわからなかったみたいだ。とりあえずあれはどうにかしておきたいが……。


「ぷはっ」


幸紀が離れ、顔を赤らめて僕に跨がっている。だけど顔は凄く嬉しそうなものだった。


「えへへ♪」


まるで悪戯が成功した子供のように無邪気に笑う幸紀を見てて僕は内心「女の行動力って本当に恐ろしいな」と改めて思い知らされた。愛奈といい、弓月といい、そして幸紀といい、どうしてこんなにも大胆な女が僕の周りには多いんだろうな?

ちなみに幸紀が僕から離れた瞬間、幸紀の両親は脱兎の如く、逃げていった。なのでそれをいいことに僕は幸紀を抱き寄せる。


「ひゃうっ!?」


幸紀が驚いた風に声をあげるが、それに構わずギュッとする。幸紀の体温が直に感じてなんとも言えないがそれも気にせずに笑う。


「やられたらやり返す。前にそう教えてやったはずなんだがな?」


抱き寄せたことを逆手に取ってそのまま僕が幸紀の上になる。しかし幸紀は全く抵抗しようとしない。いきなりやられて驚いてくれたってことかな?


「……はい。秋渡さんでしたら私は構いません。お好きになさってください」


だが僕の勘違いだったらしく、幸紀は受け入れるように、いや、むしろ何かを期待する目で僕を見てくる。顔は変わらず赤いけど。だがこれじゃ仕返しにはならないな。けどこれだけはさせてもらおうか。そっと顔を近付け、幸紀にキスをする。


「ん……」


……やれやれ、これじゃ本当に意味が……。ん?ふと僕は前に幸紀が勘違いしたことについて思い出した。あの時、僕が仕返しをしようとした時、幸紀はなんて言ってた?


『せめて布団かベッドの上でお願いします……』


……あ。ひょっとしてこれ、嵌められた?口を離すと幸紀は嬉しそうにはにかむ。僕ははにかむ幸紀を見て違うことを思いながらも聞いてみる。


「……幸紀、もしかしてわかっててやってたのか?」


「……えへへ。お母さんにベッドに押し倒してごらん?って言われたんですけどその後にしたら何か仕返しされるなって思って。ですがベッドならば勘違いしてもおかしくありませんしその……」


ポッと顔を赤らめながら一旦言葉を区切る。


「……しちゃってもいいかなって思いまして……」


手で顔を覆いながら恥ずかしそうに説明する幸紀。……僕の仕返し方法は幸紀が想像してるのとは違うがそれは言うだけ無駄かもしれんな。さて、どうする。このままだと見事に幸紀と早奈英さんのペースに嵌められていくだけだ。


「秋渡さん」


「ん?」


不意に呼ばれ、考えることをやめると幸紀がスッと両手を広げる。まるで抵抗はしないと意思表示するかのように。


「私では……もの足りませんか?」


「っ!」


落ち着け、自分。まずは深呼吸から……。


「私は秋渡さんならば襲われてもいいと思っています。はしたないと思われてもおかしくはありませんがそれほどにまで私は秋渡さんを求めます。愛しています。してほしいことは私にできることであればやろうと思っています。それでも……ダメ……ですか?」


…………うん、そんな悲しそうに言わないでくれ。平常心を保てない。愛奈で鍛えたはずの理性が段々音を立てて崩れてく気がする。いや、まだ大丈夫。なんとか耐えきれている。


「……別に幸紀が嫌なわけじゃない。ダメでもない。けどさすがにこれはまだ早いと思う」


僕はゆっくり幸紀の上から離れるとまたベッドに腰掛ける。するとすぐに起き上がった幸紀が後ろからギュッも抱き付いてくる。背中に何か柔らかいものが押し潰されているがこれは愛奈のおかげで、いや愛奈のせいで動揺しない。


「当たってるぞ、幸紀」


「当ててますからね。ですがなぜ動じないんですか?」


「ある友人のせいで慣れてるんでな。残念ながらこの方法は僕には意味がないぞ?」


「むぅ……」


むくれる幸紀。なんだか悪戯してやりたくなる気分になるな。


「背中に胸を当てられても動じないがどうする?まぁそれ以上はさすがにまずいから何もできんわな」


薄く笑いながら勝ち誇るように言うと幸紀は頬を膨らませるがすぐにそれをやめると何かを閃いたように笑う。……何を閃いた……。


「背中は平気でも埋められることは慣れてませんよね?」


「……え?埋める?なんの……むぐっ!?」


突然幸紀は正面に回ってそのそこそこある膨らみに両手で包まれながら顔を文字通り埋められた。さすがにこれには耐性が全くなく、本気で動揺してしまった。


「ぐっ!ちょ、待て!」


「あ、ん!そう……動かれるとくすぐったいですよ、秋渡さん」


「な、なら離せ!」


「やです♪こんな姿の秋渡さん、滅多に見られませんから」


幸紀が嬉しそうに笑い、チラッと見た感じで笑っている。このままじゃなんか負けた気分になる。どうする?どうすればいい?……いや、力付くで抜け出すこともできるけどね。けどそれはダメだな。それじゃこの方法に屈したことにもなる。


「(クソッ!目の前が胸だと冷静になれん!なぜだ!?愛奈で慣れてたと思ってたんだが)」


やはり力付くじゃないと無理か?幸紀も全然離そうとしない。ふと幸紀を押し退けようとしたらあるところに手が当たる。ふにっっとした柔らかさが手に感じられた。


「ひゃうっ!?」


……やべぇ、幸紀の胸だ。だがおかげで腕の力が緩んだのでその隙に離れ……あ、僕今幸紀に跨がられて座っていることから動けない。ただそのままベッドに倒れ込むしかできなかった。幸紀はムスッとしてそのまままた同じことをやろうとして……いや、そのままキスしてきた。まぁすぐに離れたけど。


「ふふ、やっぱりこれは耐性がありませんでしたね。私の勝ちです♪」


「……ああ、素直に負けを認めよう」


僕は本気でやれやれと思いながらとりあえず退いてくれた幸紀に負けを認めた。その時の幸紀は凄く嬉しそうで、それからすぐに自分の行動が恥ずかしくなり、僕に背中を向けて顔を手で覆っていた。


「はぅ……」


「くく、けど反動ダメージもあるみたいだな?」


「……それはそうですよ。まさか秋渡さんが胸を触ってくるなんて思いませんでしたから」


「……」


あ、そこだったのか。いや、見た感じ行動にも恥ずかしさが出てるだろう。


その後はとりあえず胸を触ったことを謝り、それから夕飯までまたイチャコラすることになった。幸紀って想像以上に甘えん坊だったな。イチャコラの内容は想像にお任せする。



ア「どうも、アイギアスでs……」

恋・星・冬・愛・美・舞「ずるい!!」

ア「ごふっ!?」

明「ちょっ!?いきなり作者潰します!?ていうかどうしたのですか!?」

舞「今回のお話、どう考えてもおかしいです!」

星「……どうして一番後に出たはずの子が秋渡と……」

冬「凜桜の長谷川さんとのイチャイチャ話になってるのよ!」

恋「婚約者でも限度があるでしょ!?」

美「好感度ならわ、私だってそれなりに高いはずだもん!」

愛「そもそも秋渡さんは私の相手です!」

ア「ま、待ってくだ……さい……。それなら……本人に……」

星「……この話を書いたのは」

冬「あなたよね?」

恋「これならあなたを責めることに理由は充分よ」

明「待って待って!皆さん落ち着いて!」

美「でもここまでイチャイチャ展開の話は書いてもらえてないことも事実。それならこの怒りの矛先は作者に向けるしかない」

愛「さぁ、どのように殺られたいですか?できるだけ譲歩して差し上げます」

ア「……やめてください」

明「それなら既成事実を作っちゃえばいいのに……」

冬「それだとはしたないって思われるじゃない」

恋「そもそもそれだけで秋渡がブレるとは思えないけど……」

明「……確かにそうですね」

舞「……それに私、お風呂に一緒に入ったり一緒のベッドで寝ましたがお兄様、特に動じもしませんでしたよ?」

ア「それって彼が鈍いだけでは?それか感情が表に出ないのでは……」

星「……どうしよう。納得できた」

明「(そういえば前に彼から恋愛のこと聞いたら告白した相手の気持ちしか気付いてなかったわね……。相当鈍いのはそこで確信したけど……)」

ア「それで、どうしろと言うのですか……?」

明「作者、目が死んでるわよ……」

ア「命の危機ですからね」

明「……そうね」

恋「簡単な話、私達も秋渡とイチャイチャしたい」

舞「だからイチャイチャした話を書いてください」

ア「要望があればでいいですか?」

恋・星・冬・愛・美・舞「えぇ~」

明「…………(無言の合掌)」

ア「え、ちょ、なんですか!?皆さんなぜか言葉とは裏腹になんか凄い怒りの拳に見え……ギャーッ!」

明「また次話で会いましょう!またね」


オマケ


秋「…………なんか寒気が」

幸「寒いですか?では一緒に温まり……」

秋「やめてくれ……。僕の理性が保てなくなる」

幸「っ!では一緒にお風呂でも入りましょう!」

秋「待て、話を……」

幸「ではこちらへ」

秋「ちょ、待て」

幸「待ちません♪」

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