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第五十四話 忠誠と戦いの意思

金髪達を疲弊させて赤髪……炎真って言ってたな、あいつら。ともかく炎真を戦意喪失させるために保健室に来たら冬美達が臨戦体勢を取っていた。けど気になることが一つある。それは……。


「お前、なんでそんなに疲れてんだ?」


炎真がもう肩で息をしていたことだ。明菜が投げただろうナイフはあるんだがそんなに本数がないことから戦闘が始まったばかりなはずだ。僕の言葉に炎真が僕を睨んできた。


「あんたから逃れるので体力を凄く使ったのよ!」


……そういやこいつがここに向かってた時にスモークの中からこいつに攻撃をしたな。それが原因か。けど体力がそんなにないならチャンスだ。これならば軽くやればすぐに屈服させられるな。


「そうか。じゃあそれは僕にとってはありがたいことこの上ないな」


ニヤリと笑い、刀を構える。今ふと思ったがこいつ、入口の所に僕がいるし窓の方には冬美達がいるから逃げ場ないな。あと戦力差が半端ない。明菜と冬美は強いし自分で言うのもなんだが僕も強い。しかも炎真の武器は銃だからここでは不利すぎる。まぁ逆に楽になるからいいけどな。ともかく正直言ってここでは炎真の勝率は低い。抵抗しないで降参するならば手を出さないが降参しないのならば容赦はしない。僕は鋭い眼差しを刀の切っ先と共に炎真に向ける。


「っ!」


僕の眼差しに何かを感じたのか、炎真は額から汗を流す。銃を持つ手も震えていた。僕はそれを見て炎真が僕に対して抱いているであろう、感情が容易に想像できる。だが誰もが持つであろう感情だ。恥ずかしいことはない。むしろ持たない者は自分の力に慢心する者であると僕は思う。


「恐怖……か」


僕がボソリと呟くと炎真はビクッ!として少し驚いた顔をしたが、すぐに表情を引き締め、銃口を僕に向けてきた。今は恐怖で僕しか見えていないのか、炎真は僕だけを見ていた。後ろで明菜と冬美がいつでも攻撃ができるように構えている。僕は目で二人にまだ待てと伝える。戦意がないなら戦う必要はなくなる。正直その方が僕にはありがたいな。後々が面倒だし。


「戦うか?」


率直に聞いてみる。これで答えによってはすぐに終わらせよ。


「……戦う!戦って有栖様の……」


炎真は最後まで言葉を繋げることができなかった。なぜならば炎真が『戦う』と言った瞬間にすぐに動き、炎真の鳩尾に拳を叩き込んだからだ。炎真は声を発する暇もなくその場に崩れ落ちた。僕はそれを黙って見ていてすぐにどうでもよくなり、舞達の方を向く。


「無事……みたいだな」


「ええ、でもありがとう」


室川が僕の言葉に反応した。僕も薄く笑い、全員の生存を確認する。それから明菜を見る。明菜も安堵した顔をしていた。どうやらもう完全に僕達の敵になることもなさそうだな。


「お兄様」


舞に呼ばれ、明菜から舞の方へ顔を向ける。


「無事でよかったです……」


「当然だ」


僕の言葉にその場の全員が笑う。まぁ多分舞と冬美は僕が負けることは全く考えてなかったと思うがな。


「お兄様、お一つお願い事があります」


突如真剣な顔付きになった舞に少し驚きながらも僕も舞の顔を見る。明菜が息を飲むのが聞こえた。……なぜだ?


「明菜さんを私達の家で住まわせることは平気でしょうか?」


明菜を家に住ませる?……ああ、櫻井がいなくなったし金髪達とも敵対したから帰る場所がねーのか。ふむ、別に家はそこそこ広いし部屋も空いてるから別に問題はない。だが……。


「お願いします、秋渡」


……ん?今明菜僕のこと名前で呼んだか?今までフルネームだった気がするんだが……。


「もうあなたの仲間を攻撃することはしないことを約束するししてほしいことがあればするから!」


ガバッと明菜は頭を下げてきた。それと僕が心配してたことを先に教えてくれた。


「私からもお願いします、お兄様」


舞も頭を下げてきた。なんだこの状況は?まぁ本当に僕達を攻撃してこないならば別に構わんが……。それよりも目の前に女が二人僕に頭を下げてることが何か何とも言えない。ともかく答えてやるか……。


「本当に攻撃しないなら住むことは構わない」


僕はそれだけ答えて炎真を肩に担ぐ。そしてそのまま金髪達がいるところに運ぶために保健室から出ようとする。


「ありがとう!」


「ありがとうございます、お兄様!」


頭を下げてた二人が声を揃えて礼を言ってきた。僕は少し振り返って軽く頷くだけでそのまま保健室を出た。振り返って見た二人の顔はとても笑顔だった。明菜は少し泣きそうな顔もしてたがな。


ーー

先程の金髪達がいるところに着くと三人は青髪の手当てをして容体を見てるところだった。だが僕の足音が聞こえたからか金髪はすぐにこっちを向いて身構える。


「構えるのは構わんがこいつがどうなっても知らんぞ」


臨戦体勢に入れば僕は炎真を床に捨てることになる。抱えながら戦うのはごめんだからな。それよりも緑髪と茶髪はまだ疲れてるが金髪はさっきよりも息が乱れていないな。隠してるのか、疲れが取れたのかはわからんがそれでもまた戦えるくらいには回復したってところか。だが僕の言葉に金髪はおとなしく身を引いた。どうやら冷静さはまだ保っているみたいだな。


「……炎真を返してもらえる?」


金髪は少し間を置いてから僕に話しかけてくる。こいつを返す、ね。さすがにタダで返すのは間抜けだ。


「返したら直ぐ様ここから去ることを約束できるか?まぁしなかったり破ったら今度こそ殺すがな」


「わかったわ。ところで……」


「あ?」


わかったと聞いたから渡そうかと思ったら何か続きがあるらしい。思わず不機嫌な声が出てしまった。一体なんだ?


「今何時?」


「……」


時間が知りたかっただけかよ。そういやこいつら腕時計してねーしな。多分すぐに終わるかと思ったんだろうがな。それでもてっきり取り引きか何かだと思ってたんだが……。とりあえず時計を見る。


「八時十五分だ」


「ん、ありがと。じゃあ行くわ」


「ほらよ」


さすがに人を投げて渡すわけにはいかないから手渡しで渡した。受け取ったらすぐの金髪達は青髪と炎真を抱えて学校からすぐに去った。気配で校門を出るまでは監視をしていたが本当にまっすぐ去ったみたいだ。それを確認してから僕も保健室へ向かう。その途中で外を見たらもう暗くなっていた。夏も近いからか日が落ちるのが遅い。だからまだ明るいとか思ってたがさすがにこの時間になるともう暗いな。

そんなこととかを考えていたら保健室に着く。


「お帰りなさいませ、お兄様」


「お疲れ様、秋渡君」


舞と冬美が出迎えてくれた。室川と工藤、そして明菜も一緒だ。例によって荒木は気を失っている。だがさすがにもう起きてもらおうか。僕は荒木に近付くとベシッ!と頭を叩いた。すぐに荒木は痛みで目を覚ます。


「いったぁ~……」


「おい、もうこんな時間だから帰るぞ」


「え?うわぁ……。もうこんな時間なの?じゃあさっさと帰ろうか。関澤さんと工藤さんも目覚めたみたいだし。って、私はいつから寝てたのかしら?」


「疲れて知らんうちに寝たんだろ」


「そっかぁ」


僕は荒木を乱暴に起こして荒木の疑問には適当に答えた。さて、本当に帰るか。こうしてやっと僕達は帰路に着くことができたのだった。それにしても今回は少し大変だったな。ま、無事に勝てたしいいか。


「じゃあみんな、気を付けて帰ってね」


荒木の声に全員反応してそれぞれ散っていった。荒木も戸締まりを確認してからすぐに帰った。今は僕と舞と明菜の三人だけだ。舞と明菜が僕の前を歩き、僕は二人の後ろを歩く。二人は仲良く会話をしている。……明菜と戦ったのが嘘のように思えるな。あの時ギンギンに殺気を向けていた奴がこうして仲良く一緒に帰り、同棲することになる。全く、今年は本当に色々あるな。だが退屈しない分、まだいいか。けどやっぱり不思議な光景だよな、これは。

こうして僕達は真っ直ぐ家に帰ったのだった。



ア「どうも、アイギアスです!」

秋「秋渡だ」

愛「愛奈です!」

幸「幸紀です」

秋「やれやれ、やっと終わったか」

ア「そうですね、結構長かったですしね」

愛「秋渡さんの勇姿、是非とも見たかったです……。よりによってこんな時に……」

秋「本気で泣くのはやめてくれないか?家の都合なんだから仕方ないだろ」

幸「ですが勇姿とは違いますが秋渡さんの戦い方は参考にしたいです」

秋「僕のは参考にならんぞ」

ア「否定が早いですね?」

秋「当然だ。手抜きの時が多いからな」

幸「手抜きで夏希さんを倒したのならば余計に凄いですよ!」

愛「まぁ秋渡さんが負けることがないでしょうからね」

ア「それこそ否定できませんね」

秋「ま、それはさておき次回からはどうするんだ?」

ア「一応また日常に戻そうかと思います。まぁ暁君も早い内に出るかもしれないですね」

秋「暁、か」

愛「どうかなさいましたか?」

秋「……もし五神将全員と対立したらどうなるかと思ってな」

幸「普通ならば勝ち目はありませんね。普通ならば、ですが」

秋「意味深だな?」

幸「はい。秋渡さんならば大丈夫なのではないでしょうか?」

秋「いや、さすがにわからんな」

ア「ふむ、ともかく今回はここまでにしましょうか」

秋「……そうだな」

ア「では……」

ア・秋・愛・幸「また次話で!」

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