第四十四話 生徒会メンバー負傷
戦いが終わったあとに冬美と工藤と室川を舞と保健室に運ぶ。だが僕は運ぶだけで着いたと同時に舞に手当てをしてもらい、止血が完了した。なお、冬美達の方はもう全員終わっていた。処置早いな……。明菜の傷はちょっと雑になっていたが……。そもそも舞は明菜を運び出すことは反対していた。それを考えればまだいい方だ。ふと先程僕が殺した櫻井のことで思い出す。
「(そういやこいつが今回の黒だったということは本物の校長は一体……)」
心当たりがあるとしたら櫻井に誘われた、というか強制的な呼び出しを食らった時に行った時に校長室で感じた人の気配。それが本物の校長の可能性もあるな。仮に違うとしても確認するのも手だ。できればすぐに動ければ即刻やるのだが……。
「舞、まだ動いちゃダメなのか?」
「はい、あと十分はそのまま安静してください」
このように舞に動くことを却下されている。ベッドは冬美達を寝かせているから使えないため、僕はソファーで横になっている。舞は使った物を棚に戻したり使用名簿に使用理由などを書いている。我が妹ながらとても真面目だな。学校にも遅刻しなくなったし。まぁ朝寝てたらなんかいつもより体が重く感じて目を開けたら目を瞑ったままキスしようとしてた舞の顔が間近にあったからそれを避けるために必然的にそうなった。失敗した時の舞の表情は恥ずかしさではなくできなかったことの怒りで私は怒ってます!といった感じだったのを覚えている。
それはそうとして櫻井と明菜の背後に控えてる人物が気になる。櫻井はあの方としか言っていなかった。だがあれだけの強さにも関わらず櫻井と明菜はそいつに従っている。普通あの強さは今の世界では上の方に入る。だからこそ気になるな。とはいえなんとなく目星はついている。恐らく男だろう、そいつは。そしてまだ姿を現さない猛者。そんなの残り一人の五神将、暁春樹しかいない。だが奴の強さは僕も知らない。わかるのは青葉よりも強いってことだけだ。
「(そんな奴と戦うとなったらさすがに僕も覚悟した方がいいな)」
いや、今はそれよりも……。
「舞?なぜ僕に寄り添ってるんだ?」
「とても甘えたい気分だからです。ですがお兄様は今足をお怪我しておりますのでこれで我慢しているのです」
確かにいつもの状態なら寄り添う処か抱きつくか膝枕をされに来るだろう。そう考えるとちゃんと考えてくれてると実感が湧く。まぁ足はそこまで痛くないからそんなに問題ないんだが……。
「う……ん……?」
そこで呻き声が聞こえた。どうやら起きたのは室川らしい。見た感じ三人の中で一番軽傷だったと舞が教えてくれた。とは言えベッドはカーテンによって中が見えないからどんな状態なのかはわからない。けど声はそこまで掠れていないから恐らく大丈夫なのだろう。シャッとカーテンを開け、僕達の姿を確認する。
「よう」
「どうも」
僕と舞は室川に挨拶をする。なお舞は今は寄り添っていない。室川はすぐには反応できず少し目をパチパチした後に、
「二人が助けてくれたの?」
と聞いてきた。けど室川の目はほぼ確信しているかのような感じで念のため確認したい、といったところだ。
「ああ。生徒会室に行ったらみんな倒れていたからな」
「……あの銃使いは?」
「……聞きたいか?」
僕の思わせ振りに室川は少し体を強張らせるがコクリと頷く。
「僕が殺した」
僕は一切の躊躇いも持たずにそう答えた。一瞬室川は驚いた顔をしたが僕の足に巻いてある包帯を見る。
「……そっか。怪我は大丈夫なの?」
まさか殺したことよりもそっちを聞いてくるとはな……。いや、これ以上聞くのが怖かったってのもあるか。
「僕よりもお前の方こそ大丈夫なのか?」
「ええ。おかげさまで」
「そうか。まぁ確かにあの中じゃ一番軽傷だったからな」
ちなみに一番重傷だったのは冬美だ。随分応戦したからだと僕は思っている。室川は二人が寝ているベッドに顔を向ける。その表情はどこか辛そうな顔だった。生徒会として守るはずの学校は守れず、仲間は怪我を負った。ダメージも大きいだろうな。
「……とりあえず室川はこの後はどうする?」
「……優衣が目を覚ますまではここにいるわ」
室川も椅子に座る。と、こんな感じで話をしながら二人が目を覚ますまで僕と舞と室川は保健室で待機をしていた。けど僕はすぐに確認に向かうことにしようか。今室川が目を覚ましたなら二人は任せても問題ないだろう。
「室川」
僕は彼女を呼び、ベッドに顔を向けていたのをこちらに向ける。舞もどうしたのかと思ったのか僕の横で僕を見る。
「少し確認したいことがあるからここで二人を見てもらっててもいいか?」
「それは私が請け負うわよ」
僕の質問に対して答えたのは室川ではなかった。保健室の入口に立っている女性。というか保険医の荒木だった。気配を感じなかったのだが……。
「……いいのか?というかいつの間に」
「細かいことは気にしない。それよりも確認したいことがあるんでしょ?行ってきなさい。関澤さんと工藤さんは私がしっかりと見ておくから」
まぁとりあえず違和感が特にないからこいつは問題ないだろうと判断をする。僕は立ち上がり、荒木を見る。
「頼んだ」
僕は舞と室川を連れて確認したいことがある場所に向かう。それは、
あの時かなり消されてたが僅かにあった気配を感じた校長室だ。
ア「どうも、アイギアスです」
秋「秋渡だ」
幸「幸紀です」
舞「舞です」
ア「今回は生徒会メンバーが負傷したことが大きいですね」
幸「前に時計破壊戦では簡単にやられるような方々には思えなかったのですが……」
舞「時計破壊戦ってなんですか?」
秋「(そういやずっと黙ったままだったな……)」
ア「あのー、秋渡君?どうかしましたか?」
秋「いや……。なんでもない」ぐいっ
幸「ひゃっ!?しゅ、秋渡……さん?」
秋「頼む、幸紀。舞には時計破壊戦のことは内緒にしておいてくれ……(小声)」
幸「え?あ、はい……。その……」
秋「?」
舞「お、お兄様!?何をしてらっしゃるのですか!?」
秋「え?あ……」
ア「普通にされたら喜ぶ女子がたくさんな状態ですよ。説明しますか?」
秋「いや、止めてくれ」
幸「秋渡さんが……近いです……」
舞「満更じゃないかのように喜ばないでください!」
幸「それは……無理な相談な気が……」
舞「……確かにそうですね」
秋「そこで納得するのか」
ア「ところでいつまで抱き寄せてるのですか?」
秋「ん?あ、と。すまなかったな」
幸「あ、いえ……」
舞「……羨ましいです」
ア「は、はは。とりあえず終わらせましょうか」
秋「!そ、そうだな」
ア「それでは……」
ア・秋・幸・舞「また次話で!」
おまけ
舞「じー……」
秋「抱き寄せないからな?」
舞「……いじわるです」