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第三十三話 決着、そして疑問

滅多にしない勝利宣言。僕はもともとあまり負けたことがない。だが刀を二本抜くことになるほどに追い詰められた。これもまた珍しいことだ。なんせ棗、黒坂は一刀で勝ってきたのだから。つまり全力は未だに出していなかったというわけだ。僕は二刀流の時がほぼ全力ということになる。


「刀が一本増えれば勝てるってわけじゃねーぞ!」


「そんなことは百も承知さ。……普通ならな」


青葉が嘲笑うかのように言ってくるが僕はそれに淡々と答える。お互いが再び向かい合い、場に緊張が走る。幸紀だけでなく、ここはたくさん人が通る。僕と青葉の戦いは全員が釘付け状態だ。だが僕は周りの恐怖としてとれる視線は全て無視をして青葉と向かい合っている。さて、次は攻勢に出ますか。埒があかねーし。僕は地面を強く蹴って走り出す。青葉は先程あまり先手を取らなかったからか少し驚いた顔をした。が、すぐに大鎌を構え、僕の刀から身を守った。


ガキィッ!


金属がぶつかり合う音が響く。そしてお互いに一般人には見えない程の速さで武器をぶつけ合う。


キンッ!キンッ!キンッ!


時に受け、時に攻撃し、時にかわし、時にかわされる。この終わりの見えない斬り合いが三十分経った。お互いに一時武器を弾いて距離を取る。……やはりNo.2は伊達じゃないな。


「はぁ……はぁ……」


「ぜぇ……ぜぇ……」


お互いに肩で息をする。それぞれ負った傷口から血が流れている。幸紀の心配してる顔が映る。……が僕はそれには答えない。油断したらすぐにあの世行きだ。さて、どうしようか……。


「クソッ、つえーな、テメー……」


疲弊で疲れ果てながらも青葉は僕を称賛してきた。だが僕はそれに答えなかった。次で終わらせる!


チャッ。


僕は刀を鞘に戻し、腰を落として居合い斬りの体勢を取る。これに青葉は身構えた。青葉の速さはもうわかった。相当速い。けど……、


「(あれが全力ならまだ目が追い付く方だ)」


「青葉」


「あっ?」


僕に呼ばれ、構えながら答えた。僕は薄く笑い、


「少し本気を出す」


と言った。それに青葉はしかめ面をした。その時だった。


「なっ!?」


青葉の驚愕した声が辺りに響いた。いや、周りのギャラリーも恐らく驚愕しただろう。僕が消えたように見えたはずだからな。そう、僕は少し本気を出してまるで瞬間移動したかのように青葉の懐に潜り込んだのだ。そして僕の手には先程収めたはずの刀。一本だけどな。やがて、


「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!?」


青葉のほぼ全身から傷が付き、そこから血が噴射する。青葉は痛みのあまり絶叫した。腕、足、腹、胸、頬、手、挙げ句の果ては普通当たってないと思われる背中から血が噴いた。誰が見ても致命傷だ。遂に立っていられなくなったのだろう。青葉が前のめりに倒れた。これに青葉の部下がいち早く駆け付けた。そして集団で止血を開始した。

……結論を言おう。


決着がついた。僕の勝利で。


ーー

幸紀side


私は今すごい現場を目撃しました。というか今でも信じがたいです。五神将の青葉龍大に五神将でもない秋渡さんが勝利したのです。青葉は全身から血を流しています。対して秋渡さんは肩や頬に軽傷を負ってるだけです。けどさすがに計四十分程の戦いは疲れたようで肩で息をしています。


「秋渡さん、大丈夫ですか?」


私が声をかけると秋渡さんはこちらを向き、薄く笑ってくれました。……この人の笑顔は世の中の女性を悩殺できますね。薄笑いでこの破壊力ですから。


「大丈夫だ。傷も浅いしな」


私の心でも覗いたのか、秋渡さんは私の頭を軽く撫でてくれました。私はされるがままに撫でられています。気持ちいいです……。ですがあれだけ死闘を演じていた人を休ませないのも何なので私は名残惜しいけど撫でてもらうのをやめてもらい、近くのベンチへ秋渡さんを連れていった。


「秋渡さん強いですね。あの青葉龍大を倒すなんて……」


私はすぐそこにあった自販機で冷たい飲み物を買って秋渡さんに渡す。秋渡さんはお礼を言って受け取る。そこで私は感想を漏らした。


「偶然だろ。あいつが油断していたのもあるしな」


私の感想に秋渡さんは謙遜する答えをしました。けど油断していたにしても青葉龍大相手にそこまで息を乱していないのはなぜでしょう?やはり秋渡さんが青葉龍大よりも強かったとしか思えません。ふと私は一つ思い出しました。噂ですが黒坂虎雄と棗達也を倒したのは銀髪の超イケメンで今では珍しく刀を使う男だと。これって……。


「……幸紀」


「はい?」


「聞こえてるぞ?」


「はひゃっ!?」


秋渡がどこか訝しげな目で見ていました。というか思ってたことを口に出していたみたいです。は、恥ずかしい……。自分でもわかるくらい顔が真っ赤です。うぅ……。


「まぁ超イケメンってのは間違いだが他は当たってるな。その二人も僕が確かに倒した」


秋渡さんは特に追求はせずに教えてくれました。って、え?


「つ、つまり秋渡さんは三人五神将を倒したってこと……ですか!?」


思わず声が大きくなってしまった。ですが誰でも驚くと思います。五神将を一人でも倒すのは不可能と言われているほどなのにそれを三人も倒してるのですから。


「秋渡さん」


私はある仮説を立てながら秋渡さんにそれが真実かどうかを確認する。あまり当たってほしくはないけど……。


「なんだ?」


「秋渡さんは……五神将なのですか?」


恐らくは秋渡さん答えないでしょうね。そういうことは話さないだろう人ですから。しかし私は気付いた。秋渡さんの眉がピクリと僅かに動いたことに。なんて答えるだろうか。関係ないと言って終わるのだろうか。と、秋渡さんはいきなり息を吐き、表情を和らげた。それに釣られるように私も落ち着いた。のですが、


「当たりだ」


と、秋渡さんは言ってくれました。私の仮説は当たっていました。そして同時に疑問が生じました。それは、五神将は基本的に女性を敵視していると聞きました。なのに秋渡さんからはそれが全く感じないのです。一体どうしてでしょうか……?



ア「どうも、アイギアスです!」

秋「んな自己紹介しなくてもよくねーか?」

ア「いやいや!そんなわけにもいかないですよ」

秋「変なこだわりを持ってるな。どうでもいいが」

ア「バッサリ心を斬るのやめて?」

秋「知るか」

幸「あの、とりあえず少しお話しませんか?」

秋「何を話すんだ?」

幸「そうですね……。秋渡さんのことを少し知りたいです」

秋「僕のこと?なんも面白いことないぞ?」

幸「勉強面は強そうですし運動神経も抜群ですよね」

秋「まぁテストで九十点以下はあんま取ったことはないな」

ア「そればかりかほぼ満点でしょ、君」

秋「まぁな」

幸「す、すごいです!?秋渡さんに苦手なことってないのではないですか!?」

秋「……いや、苦手なことはあるぞ」

幸「え、なんてすか?(秋渡さんの苦手なことって相当なものなんでしょうね……)」

ア「言うの?秋渡君」

秋「構わんだろ。何かあるわけじゃないし」

ア「(絶対何か起こるよ!)」

幸「そ、それで何なのですか?」

秋「裁縫だ」

幸「え?」

秋「裁縫だけがどうしてもできないんだ」

幸「そうなんですか!?」

ア「(これでこの子は裁縫に力を入れるでしょうね)」

秋「まぁそーゆーこった。付き合うなら裁縫ができる人がいい」

幸「!!」

秋「そういや昔から恋華はそういった面は助けてくれてたな。自分のことで忙しいだろうに」

幸「……それ、恋華さんに言ったら怒られますよ?」

秋「なんでだ?」

幸「それはさすがに言えません」

秋「……そうか、ならいい。じゃあそろっと終わらすか」

ア「そうですね」

幸「(裁縫、かぁ。私もできるけどもっと頑張って秋渡さんに誉められたい!)」

秋「幸紀?」

幸「えっ!?あ、な、なんでもないです!」

秋「そ、そうか……」

ア「では皆さん」

ア・秋・幸「また次話で!」


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