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第二十七話 偽りの苦しみ~星華side~

連続投稿です。

深い意味はありません。

星華side


ーー

……こんにちは。風間星華です。私は人と話すのが苦手なんです。だから普段はぼそぼそ話す程度です。さて、今日はどこか違和感を感じる日です。それは私のクラスのとある生徒がいないからだと思います。その生徒は世刻秋渡。何をやっても完璧にこなす完璧人間です。噂では何かできないと聞きましたが私は何なのかがわからないです。秋渡が苦手なモノ。それは何なのだろう?


「あ~ん!私の秋渡さ~ん!帰ってきてくださ~い!」


突然の声に私はそちらを向く。そこには秋渡の席に座って嘆いている雨音さんがいました。彼女はあの雨音財閥の一人娘なのですが秋渡とどこかで会って助けられ、そこで一目惚れしたらしいです。ですが彼女の想いに秋渡は気付いてるみたいですがいつも軽くあしらっています。……雨音さん、哀れです。とりあえず雨音さんから顔をそらして本を読み始めます。ちなみに雨音さんの行動は今に始まったことではないので男子は気にしてないみたいです。女子は嫉妬してますね。秋渡はモテますから。あと言っておきますが秋渡は死んでませんよ?


「(そういえば秋渡とは一年前からの仲でしたね)」


たしか去年の夏に寝坊してしまってそれで偶然秋渡と会いましたね。秋渡はいつもの事と言ってましたが。それでもう走っても間に合わないと判断して秋渡と一緒に歩きました。秋渡はどこか訝しげにしてましたが置いていこうとか追い払ったりはしませんでした。彼のことを嫌う男子はかなり多いのですが誰も勝負を挑まなかったそうです。正しくは最初のテストで平均点が九十三点だった人が秋渡に自慢したらしいですが秋渡はその時に全科目満点を取っていたため、その人が沈んだのを覚えています。

そして次の日に秋渡に運動で勝負を挑んだそうですが秋渡は凄く面倒そうな顔をしていました。けれどやはりあからさまに全力を出してない秋渡に負けたそうです。彼はその後に陸上部で鍛えてるそうです。と、何をやっても秋渡には敵わないと男子は判断し、橋本さんなどが何か吹き込んでいたのも覚えています。何を言ったのかは知りませんが……。


とと、去年のことを考えていたらもうホームルームが始まりますね。と、そこで急なことでした。突然視界がぶれたのです。一瞬のことですが私は辺りを見回しました。たった数秒前は教室にいたのにいきなり学校の屋上にいたのです。そして私の目の前に一人の男がいました。後ろ姿ですがそれは間違いなく、秋渡です。少し長めのさらさらな銀髪をしてる人は他には雨音さんしか知りません。ですが私の問題はそこではありません。秋渡の手、そして秋渡の横に倒れている人。倒れている人からは大量の血が流れていました。いえ、何よりも問題なのは倒れている人。それは、


「……恋……華……さん……?」


秋渡の幼馴染みにして私の友人の水嶋恋華さんでした。とここで、私が呟くと秋渡がこちらに向きました。しかし私は少しこの秋渡は違和感を感じました。それは、


彼の目はカラコンをしてるとは思えないほど黒かったからです。


私は前に一度作り過ぎた料理を秋渡に届けた時に秋渡の目を見たことがあります。たしか右目は金色を、左目は青色をしていました。そして次の日に学校で秋渡の目を見たときは普通の黒よりも少し明るかったように見えました。


「見たのか……」


秋渡(と思われる)が私に剣を向けてきました。と、ここでも違和感。たしか彼の武器は刀だったはずです。とりあえずそれは後回しにして今は目の前のことです。


「……秋渡、何をしてるの?」


私が尋ねると秋渡は恋華さんの遺体を見て、


「見ての通り恋華を殺した」


と淡々と言いました。その瞳はやはりいつもと違いました。いつもはもっと私達を優しく見てるのでそれくらいの違いはわかります。ですが今の秋渡もどきからはまるで殺しを楽しむような目が映りました。


「……なんで恋華さんを殺したの?」


「僕の荷物になるから、とだけ答えておこう」


秋渡もどきが恋華さんを殺した理由。荷物になるから。

ここでもう私は確信を得ました。この秋渡は完全に偽物ですね。本物の秋渡ならそれだけで幼馴染みを殺しませんから。


「……そう。でも私が恋華さんの仇を取るのは自由だよね?」


私の問いに秋渡もどきは少し目を見開いたがすぐに元に戻ります。秋渡の冷静さをしっかり真似をしようと頑張っているみたいですが秋渡には敵いませんね。なんせ秋渡はこれくらいでは全く驚きませんから。いつも秋渡を見てきたのでそれは間違いないでしょう。雨音さんが引っ付いてもいつも乱さずに引き剥がしていますし、木上さん相手に普通に接していますから。つまり本物の秋渡はちょっとやそっとじゃ何も動じないのです。それに、これはさすがにわかりませんが秋渡ならもっと上手に相手を殺せますから。


「敵討ち、か。僕相手にできるのか?風間」


……この人、本物の馬鹿ですね。そもそも秋渡が私を名字で呼んだことなんて一度もありませんから。もう偽物決定です。ですがどうしましょう?秋渡の偽物とは言え多分相手は強いでしょうし。本人には敵わないと思いますが。


「……確かにできない。……本物なら」


私の言葉に秋渡もどきが訝しむ顔をしました。ですがすぐに肩を震わせ笑います。……それはまさしく戦闘狂の笑い方です。と、急に笑うのをやめました。


「おいおい。僕は世刻秋渡だぜ?僕の強さはお前もよく知ってるだろ?」


彼が何を言いたいのかはわかります。一騎討ちでは秋渡には敵わない。だと思います。私は特に表情を変えずに秋渡もどきを見てました。さて、どうしましょう?しかし彼の一言で考えは一瞬で決まりました。


「さて、恋華はさっさと殺せたことだし、僕は他の奴を潰して来るか」


「……!……させない!」


恋華さんだけでも許しがたいのに更に殺す気ですか!?この偽物は!私は咄嗟に腰に掛けてある短刀で秋渡もどきを阻止するために攻撃をしました。ですがそれが、


ズブッ!


「……え?」


秋渡もどきは全く防ごうとせずに正面から受けたのです。いえ、私が走った勢いで思いっきり秋渡もどきの左胸辺りを刺していたのです。私はすぐに短刀を抜きました。秋渡もどきの胸辺りからは血がたくさん流れています。


「ぐふっ!」


秋渡もどきは血を吐きました。同時に膝をつきました。彼は苦しそうに呼吸をします。そして彼は私が刺した場所を押さえます。しかし血は止まりません。私は少し彼を見ていました。しかし、ここで予想外の事が起きました。それは、


「風間さん……。何を……してるの……?」


「っ!?」


さっきまで背後に誰もいなかったのにいきなり背後から声がしたのです。私は思わず驚いて後ろを見ました。確かこの子はクラスの女子ですね。名前は知りませんが。ともかくこれは最悪な状態ですね。なんせこのクラスメートには私が秋渡を刺したようにしか見えませんから。


「かはっ!……はぁ、はぁ」


秋渡もどきはまた血を吐き、今度は倒れました。クラスメートの女子がそれを見て秋渡もどきに近寄ります。私が止めようとしましたが彼女は私を思いっきり睨んで来ました。私は睨まれて自分がした罪悪感に声を出すことができませんでした。私がしたことは学校一の人気を誇る秋渡、そして彼女からしたら秋渡もどきの近くに倒れて動かない恋華さんを殺したというようにしか見えないでしょう。


「世刻君、大丈夫ですか?」


「……ぐっ!さすがにきっついな……」


私は彼女達の姿を眺めていました。女子生徒は秋渡もどきに肩を貸してました。そして秋渡もどきを抱えて歩き出します。そして女子生徒が私の方を向き、


「あんた、明日から覚悟しておきなさいよね?」


と言って秋渡もどきと共に屋上から去りました。私にとって彼女の言葉はかなり重かったです。秋渡のことを好いている人は多いため、敵になる数は多いでしょうね。私はそれを悟り、この後はどうしようか悩みました。さすがに学校中の女子生徒相手は私にはできません。どうしましょう……。


「…………今までの事が無に帰った」


私は逃げれないと思いました。更には最後の最後で私は大事な人を二人失いました。これは正直精神的に堪えますね。私には死ぬ選択肢しかないのでしょうか?ですが私が刺した相手は秋渡の偽物。ですがそれに気付ける人は少ないでしょう。つまりは他のみんなには本物としか見れないでしょう。仮に気付いた人がいても意味がないでしょうね。ついでに私が秋渡が偽物とどんなに言っても信じて貰えないでしょうね。多分、言い逃れだと思われて。私は溜め息を吐き、空を見上げました。


「…………私はどうしたらいいんだろう。………教えてよ、秋渡……」


私は本物の秋渡に聞くかのようにポツリと呟きました。当然、返事なんか返って来るわけがありませんが。


『お前が一番大切に想っている人のことを信じればいい。ただそれだけだ』


「っ!?」


私は突然の秋渡の声に驚き、周囲を見回しました。ですが死んだ恋華さん以外は誰もいません。なら今の声は……幻聴?

私が首を傾げて考えていた時のことです。屋上のドアがバンッ!と開きました。そしてそこにはなんか変な羽織を着ている集団が現れました。ですが私はこの瞬間、冷や汗を掻いています。そう、この集団は秋渡さんのファンクラブの女子生徒達なのです。人数も多い。何人かはわかりませんが私には百人はいるように見えます。すると急に屋上の入口付近が割れ、そこから道が出来ました。そして入口からはいって来たのは、


「風間星華、秋渡様を重症にした罪で死んでもらいます」


先程の女子生徒でした。あなた、隊長だったんですね……。

さて、そんなことよりもどうしましょう……。正直言って逃げられる術が思い付きません。ファンクラブのみんなもそれぞれ何か持っていますし。しかも何人か見えてる範囲で銃を持っています。屋上から逃げることそのものが無理ですね。飛び降りれば銃の餌食ですし。突っ込めば捕まって即死。……ここまで、ですか。

私が黙っていたことにイラついたのか、隊長の女子は後ろを向き、


「彼女は遺言がないみたいなので潔く死刑開始よ!」


と言い放ちました。それにファンクラブのみんなは掛け声を上げて、私に突っ込んで来ました。

万事休す、ですね。偽物の秋渡はここまで読んでいたのでしょうか。なら私の負けです。私にはもう仲間もいませんから。


『お前が一番大切に想っている人の事を信じればいい。ただそれだけだ』


先程の秋渡の言葉を思い出しました。私が一番大切に想っている人……。そんなの、一人しかいません!


「……助けて……。……秋渡ぉ……」


私は微量の声を出しました。涙と共に。そしてファンクラブのうちの二人が私に掴もうとしました。私は目を瞑り、死を覚悟しました。しかしいくら待っても掴まれる感触はありませんでした。私はどうしてかを確認するために目をそっと開けました。すると、そこには背中姿。そして少し長めの銀髪。私は目の前の姿に驚愕しました。彼はそれに気付いたかのように背中越しに私の方を向いて、


「……信じてくれてありがとな。これで星華を救える」


と、先程の声で話してくれました。つまり、目の前の人は正真正銘の本物の、


世刻秋渡。そして私が一番想っている異性でした。


私は涙を流します。先程までの絶望しての涙ではなく、嬉しい希望の涙です。


「……秋……渡」


私は彼の名前を呟きました。それに秋渡は薄く笑い、再び前のファンクラブに向き合いました。

ちなみに私に最初に襲いかかってきた二人は屋上の入口に飛ばされて気絶しています。秋渡が恐らく吹っ飛ばしたのでしょう。


「あんた、何我らの王子様の秋渡様を重症を負わせた風間星華の味方をしてるのよ!」


隊長の女子生徒が秋渡を睨みます。しかしそれを平然と受けている秋渡はさすがだと思います。まぁ五神将とやり合っていますからね。


「僕の大事な奴の味方をしてるだけだ。テメーらみたいな奴等は状況判断もできないのか?」


秋渡が隊長に対して完全に挑発をしていました。しかも声でしか判断できませんが完全にめんどくさがっていますね。そう言えば秋渡は面倒事をことごとく嫌っていましたね。


「何を!しかもあんたなんかが秋渡様と同じ格好するなんて百年早いわよ!」


隊長は怒ってますね。まぁ完全に馬鹿にしてましたからね。しかし秋渡はやれやれと首を振り、刀を構えました。


「めんどいな。さっさと終わらせるか」


言って秋渡は鞘に閉まったまま、少し腰を落としました。構え的に居合い斬りだと思います。そして一瞬のことでした。秋渡がぶれて、瞬きをしていた時には既にファンクラブの全員が倒れていました。先程との違いは刀がいつの間にか出ていたことです。秋渡は刀をさっさと鞘に仕舞い、私の方を向いて向かって来ました。そしておもむろに手を差し出してきます。


「大丈夫か?」


「……うん」


優しく声を掛けてくれ、私は照れながらもその差し出してきた手を握りました。と、ここで更に違和感。いつの間にか屋上ではなく玄関にいたのです。あれ?私はさっきまで屋上にいましたよね?私が混乱してると秋渡が答えてくれました。


「星華は今の今まで苦幻夢を見てたんだ。とある奴が幻覚を交えてな。それは……」


と説明してくれました。私はあれは苦幻夢だったのかと安心しました。秋渡によると恋華さんも生きているようです。ですが恋華さんもどうやら私と同じように苦幻夢を見て苦しんでいたそうですが無事、秋渡が助けたみたいです。ですがまだ冬美さん、雨音さん、木上さん、そして舞さんがまだ苦幻夢で苦しんでいるらしいです。秋渡は全員を救うとのことです。


「……わかった。……力になれないけどみんなをお願い」


「ああ。任せろ」


無力な自分が恨めしいが秋渡ならきっと、ううん、絶対にみんなを助けてくれるだろう。私はそう確信できました。


「……また、みんなで屋上に」


「当然だ。絶対にまた屋上で楽しくしよう」


私の言葉に秋渡は当たり前のように答えてくれました。その姿は女性を敵にしている五神将のものとは思えませんでした。だからこそ秋渡には女性が集まるんだろうな、と私は思いました。


ーー

数分後。

秋渡からは今日は帰った方がいいとのことで私は他のみんなを助けに行った秋渡を見送りながら帰路に着きました。あの時秋渡が来てくれなかったと考えたら恐ろしいです。ですが秋渡はそんな中から救ってくれましたね。やっぱり私にとって秋渡は特別です。必ず助けてくれ、尚且つ学校であまり馴染んでいなかった私に居場所をくれました。


「……だから私は秋渡が好きなんだ」


ポツリとまた呟きます。秋渡が気付いてるかはわからないが私はやっぱり秋渡のことが一人の異性として好きだと改めて気付けました。だから、


秋渡、ずっと一緒にいてほしいよ。


と、胸に手を当てながら思いました。だから私もそろそろ自分の気持ちを、想いを告白します、秋渡……。



ア「どうも、作者です!」

秋「早いな。しっかし今回は星華か。あいつの気持ちは今までもよくわかんなかったけど今回はわかったな」

ア「珍しい……」

秋「いや、星華も当然の如くの苦しみを持ってたってことだからな。それと弱さもな」

ア「…………」

秋「……なんだ?」

ア「なんでもない。嫉妬されそうだなぁ……」

秋「愛奈や夏希にな」

ア「ご苦労様です」

秋「うるさい。まぁいつもの如く無視するけどな」

ア「冷たいなぁ……」

秋「受け入れたら色々危ないからな……」

ア「……否定はしない」

秋「つまりはそーゆーこった。それに、あいつらは絶対に懲りないだろうし」

ア「そだね。がんばっ☆」

秋「他人事と思いやがって……」

ア「他人事だからね」

秋「まぁいい。それじゃ、またな」

ア「さようなら~」


星「……秋渡……」



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