第二十二話 守るべき仲間達
つ、疲れる……。いよいよ対立校が登場です。果たしてどうなるでしょうね?
そしてどさくさに紛れて出る橋本と相澤の名前。わ、忘れていた訳じゃないんだからね!?
……私が言って一体誰得なんでしょうか……。
ともかくどうぞ。
次の日。
今日は舞がうちの学校に入ってくる。転校生が多いこの頃。なんせ愛奈(雨音財閥の一人娘)、美沙(今話題のアイドル。橋本曰くあいつの中では一番らしい)、そしてこれは僕だけだが舞(妹ね)。いやー、ある意味すごいよな。これだけ豪華なやつらばかりだと。まぁその中の愛奈は僕にしか興味がないらしい。と本人談。とんでもないのに好かれたもんだ。
ちなみに今は学校でホームルーム中。舞の自己紹介だ。そういや昨日は色々あったから聞けなかったけど結局舞は世刻と横田のどっちで名乗るんだ?できれば横田の方が嬉しいが……。
「では自己紹介を」
千鳥が自己紹介を促す。舞は緊張しながらも、
「皆さん初めまして。世刻舞と申します。よろしくお願いします」
噛まずにしっかり言った。世刻を名乗って……。もちろんクラスメートは僕を見てくる。そりゃ世刻って苗字は珍しいからな。
「あー、言っとくが僕の妹だからな」
僕は全員の視線を受けながらもそう言う。するとクラスメートはほぼ全員が驚きの声を上げた。うるさい。まぁ橋本と相澤は知ってたから特に動じてない。さすがだ。
「え、えぇ~っと、世刻君、悪いけどまた世刻さんにも教科書とか見せてあげてくれる?」
「席はどうする気だ?」
「では世刻君の前の山田君、席を移ってもらっていいですか?」
「あ、はい」
お気の毒だな、山田。美沙から離れるなんて悲しいだろうな。そして山田がいた席に舞がやって来た。隣の美沙がかなり驚いた顔をしてた。
「お兄様、私うまくやっていけるでしょうか?」
「お前ならやれる。自分を信じろ」
不安そうな顔をしながら聞いてきたことに僕は少し笑って答えた。近くの女子がきゃーっ!って騒いでたが気にしない。なんかいいことでもあったんだろう。ともかくその後は特に連絡もなかったのでホームルームは終了。いやー騒がしかったな。今もだけど。現に舞を囲って質問をしてるやつが多い。フレンドリーなクラスだから舞も美沙や愛奈みたいにすぐに馴染むだろう。実にいいクラスだと改めて思った。
「お前の妹さん、かなりのレベルだな」
橋本が質問の輪に入らずに僕に言ってきた。よく見たら美沙や愛奈と星華もいた。
「……秋渡の妹、かわいいね」
相変わらずあまり表情を変えずに言う星華。舞に限らずにお前らもかなりレベルあるぜ。と思ってるがめんどいから何も言わない。というか言ったら愛奈がうるさくなりそうだし。
「というか秋渡さんに妹さんがいたのですね。ですが何故今まで別だったのですか?」
愛奈が珍しくまともなことを言った!?明日天候かなり荒れるんじゃないか!?よく見りゃ橋本も驚いている。星華は変わらず無表情。美沙はなんのことかわからずに首を傾げている。
「む、何か失礼なことを考えていませんか!?秋渡さん!まさか私の身体にムラムラしたのですか!?ならそうと初めから……」
「んなこと誰が思うか、言うか、考えるか。それなら今日の夕飯について考えるわ」
「夕食以下ですか……、私は……」
ズーンと肩を落とす愛奈。いつものことだ。全くこのお嬢様は油断の隙もないな。
「あ、さっきの愛奈の問いに答えると今までは僕と舞の祖父母の元にいたんだ。けど二人がもう色々厳しいからって僕に真実を明かしてこっちにやって来た」
だから知ったのは一昨日。あれはさすがの僕も驚いた。まぁ大事な家族だししゃーない。いや、家族だからこそ大事って言ったところか。
「かなり複雑なんだね、秋渡君」
「まぁな。親もいないから家は大変だけど生活はできるから問題はないけどな」
「な、なんかごめんね?」
思い詰めてることだと思ったのか美沙が謝ってきた。橋本もどこかどう声をかければいいのか思い付かない様子。星華も若干だがどこか悲しそうな顔をしてる。愛奈は困り顔。
「気にしなくていい。誰だって無意識に言ってしまうこともある。それに僕と舞はそこまで弱くない」
僕が微笑を浮かべて言うと四人は安心したかのように息をつく。それにあのバカ両親は多分どこかで生きてるだろう。まぁ日本にはいないと思うけど。まぁそこまでの根拠もないがな。おっと、授業だな。
ーー
一通り授業も終了し、今は昼。
僕は舞と美沙と橋本と相澤と恋華と愛奈と星華と屋上で飯を食ってる。随分と大人数だ。そしてそれぞれの飯を食い始める。
「やっぱ屋上は空気がうまいな、智樹」
橋本がそんなことを言う。ちなみに智樹とは相澤の名前のことだ。橋本の名前は真守だ。何気に今まで言ってなかったな。だから橋本がいきなり相澤を名前呼びにしたのは全員が驚いた。あ、全員じゃねーや。美沙と舞は驚いてない。わかってないんだ。
「お、おう。確かにうめーけど突然どうしたんだ?橋本」
相澤がめっちゃテンパってる。珍しい光景だ。橋本は少し笑ってから、
「特に意味はないけどたまにはと思ってね。ま、気にしないでくれ。ほんの気紛れだから」
「お、おう、わかった……」
と言ってそれに相澤はまだ混乱しながらも頷いた。
「お兄様、お弁当のお味はいかがですか?」
舞が唐突にそう聞いてくる。もちろん弁当は舞が作った。別に僕も作れるけどめんどくてな。だから作ってなかったが今は舞が作ってる。作らなくてもいいと言ったんだが栄養が偏るからダメだと言われた。ま、作ってもらえるならお言葉に甘えようと僕は思った。
「うまいぞ。舞は料理が上手だな」
僕が感想を言い、舞を褒めると舞は嬉しそうに笑う。それを見てた愛奈や恋華は、
「私にも家事スキルがあれば……」
と愛奈が嘆いていて、
「私も今度秋渡に作ってこようかな……」
とかなんかぶつぶつ呟いている。聞こえなかったけど。と、ここでスマホが震動した。メールのようだ。スマホを操作してメールを見る。冬美からだ。
『明日のことで話があるから放課後に生徒会室に来て』
短い内容だがこれだけでなんのことかは理解できる。明日の時計破壊戦のことだ。
『わかった』
と書いて送信。そしてスマホをしまう。みんなは喋っていたから僕がスマホを弄ってたのには気付いていない。舞と愛奈は気付いてたがな。
「(明日はこいつらのためにも勝たなきゃな)」
僕はそう思ってた。明日の欲しい人材はなんとなくこの中にいそうだったから。
「お兄様?急に手を握ってどうかしましたか?」
「秋渡さん、どうかしたのですか?」
舞と愛奈が心配して僕に聞いてくる。こいつらは巻き込むわけにはいかないだろう。だから僕は、
「ちょっとな」
と短く答えた。二人はまだ納得していなかったがこれ以上追求はしてこなかった。とそこで全員昼飯も食い終わり、みんなで談笑をしてたらチャイムが鳴ったので全員で教室に戻った。恋華は違うクラスだけどな。どうせなら恋華も同じクラスがよかったな。
ーー
午後の授業も終わり、僕は橋本達と別れて生徒会室に向かう。舞が一緒に帰りたい!と何度も言ってきたが今日はどうしても無理だと言うと凄く寂しそうな顔をしたため、じゃあ教室で待っててくれと言った途端にぱぁーっとまるで蕾から花が満開したかのような笑顔をした。考えたくはないんだけどひょっとして舞ってブラコン気質でもあんのか?そうでないことを望むが……。さて、そんな心配をしてたら生徒会室に着いた。そしてドアを開ける。もう室川と工藤も冬美もいた。みんな早いな。
「すまん、待たせたか?」
「大丈夫よ。とりあえず座って」
謝罪をしたが冬美は特に咎めずに座ることを促した。僕はそれに従い空いてる席に座る。
「さて、それでは明日の時計破壊戦について作戦会議を開始します」
冬美が立ち上がり、宣告する。しかしここで僕は少し変な気配を感じた。
「冬美、少し待て。何かいる」
僕が冬美に言うと冬美はすぐに口を防ぐ。室川と工藤も特に何も言わない。さて、気配は外からか。僕は立って窓に近付く。そして窓を開ける。深桜の生徒以外におかしい者はいない。けどさっきの気配は確かに今まで知らなかったものだ。だがその気配はもうしない。多分凜桜の偵察部隊か何かだろうな。よく鍛えてある。
「世刻君、誰かいた?」
室川が聞いてきた。僕は窓を閉めて振り返り頭を振る。
「逃げられた。相当早い偵察のようだ。ま、もう来ないだろう」
僕は断言する。偵察で来たなら一度勘ぐられたら相手の警戒が強まって簡単に近付けないだろう。あくまで僕の意見だけどな。
「さて、続きをしよう。冬美」
冬美に声をかける。冬美は頷いてまた作戦会議を再開させた。とは言え一時間くらいしかできなかったがな。内容は省く。
ーー
???side
深桜に潜り込んでいたとある人物は自分の失態に唇を噛んでいた。だがメンバーはわかったから彼女は凜桜女子学園の生徒会長の弓月へ報告をしなければならない。少しの情報でも仕入れることが役目である彼女は基本的に失敗は許されない。だが彼女は今日、たった一人の人物によってほぼ失敗をしてしてしまった。それは密偵だと言うのにすぐに感づかれたことだ。
「(けれどなぜバレた?私の気配は完全に消していた。なのにあの中の誰かは私に気付いた。どうして?)」
彼女は感づかれたことに焦りを感じていた。この失態は大きいからだ。色々と覚悟をしながら彼女は凜桜へと戻った。
ーー
「ふふ……。貴女が失態を犯すとは珍しいわね……」
そう艶やかに話す金髪の女性。その彼女は凜桜の生徒会長である弓月夏希であった。髪と同じ金色の瞳で一人の膝まずいている女を見やる。その見られた彼女はビクッ、とした。
「も、申し訳ありません……」
出てきたのはただの謝罪の言葉。その態度に夏希の周りにいた役員は苛立つ。
「何をやっているのですか!?夏希様の顔に泥を塗るかのような真似をしてただで済むとお思いで!?」
「貴女は夏希様の命のもとに遂行したにも関わらずこの失態。夏希様、彼女の処罰は私が……」
と二人の役員が激怒した。だが密偵だった彼女は俯いたまま。その態度は更に二人を苛立たせるがそこで一人の声がまた響く。
「別に構わないわ。例え何か情報を手に入れても対して役には立たないでしょうし。何よりもあのザコ達に密偵を送ること事態が間違いだったわね。……さて、和田鹿波。今日は下がりなさい」
夏希だ。彼女の言葉に承知をして彼女ーー鹿波は生徒会室から出た。そしてそれを見ていた二人の役員は不満そうに夏希に問い掛ける。
「夏希様、よろしかったのですか!?お言葉ですが何も情報を得ずにノコノコと夏希様の前に現れたことは無礼なのでは!?」
「そうです!いつもなら何かしらの処罰を与えるのになぜ……」
「黙りなさい」
しかし夏希は二人の抗議にはピシャリと言い放つ。その言葉だけでも圧倒的な夏希に二人は黙る。しかし夏希は笑顔で、
「言ったはずよ。私は和田鹿波に対しては何も期待をしていなかった。だから気にすることもないわ。それよりも貴女達は明日に備えてもう休んでおきなさい。今日は仕事はないから」
と言う。夏希の見えない何かによって二人の役員は従った。そしてもう一人。
「幸紀、貴女も今日は帰りなさい。明日に向けて、ね」
「はい」
終始黙っていた幸紀も部屋を出る。一人になった夏希はふぅ、と息を吐く。そして懐から一つの写真を取り出す。そこに写ってるのは顔を横に向けてる銀髪の少年。
「さて、私の欲しい人材は意外な人物だったわね。まさかの男性とはね。ふふ……。貴女の悔しげな顔が浮かぶわ関澤冬美……。そして色々と覚悟をしてちょうだい、世刻秋渡……」
夏希は負ける気など微塵にも思っていない。夏希には敗北はないからだ。秋渡は自分が標的だと言うことは知らない。
ーー
秋渡side
結局いい作戦はなく、解散となった。冬美から聞いた話では相手の会長は僕と同じような刀を使っているらしい。そして得意なのは居合い斬り。冬美以外はこの居合い斬りだけで時計が破壊されて敗れたらしい。かくいう冬美も全く見えなかったとか。けれど偶然冬美だけは剣で防げたらしい。しかし相手の会長は偶然だとすぐに気付いたらしく、すぐにまた居合い斬りをしてきて冬美の時計を破壊した。そして当時の副会長だった人物は相手に取られた。やれやれ、物騒な話だねぇ。一体今回は誰が狙われたんだか。ま、さすがに僕が狙われることはないだろう。いや、男子全般が狙われることがないだろうな。そもそも相手は女子校の奴等だしな。女子校の生徒会長がわざわざ男子を入れるわけもない。しかもそうなると生徒全般が反対をするだろう。
ん?気が付いたら教室に来てたな。じゃあ舞と帰るか。教室に入ると舞がいた。本当に待ってたんだな。
「あ、お兄様!」
「遅くなってすまないな。じゃあ帰ろうか」
「はい!」
舞は飼い主に褒められた犬のように僕にくっついてきた。まぁ腕に抱き付いてきただけだが……。けどこれはなんか恥ずかしい。そして舞の何か柔らかいモノが僕の腕に潰れてる。さすがに恥ずかしい。
「舞、なんで抱き付く?」
「お兄様が好きだからです!それとも迷惑でしたか……?」
急に泣き顔になる舞。なんとなく良心が痛む。くそ!
「……好きにしろ」
諦めて僕は舞に抱き付かれたまま帰った。正直周りの目が痛かった。まぁ普段から見られてたからそこまで痛くはないけどな。
家に着いた後は飯を舞と作って二人で食べて、風呂に順番に入った。先に舞を入れたけど。後からだと僕が入ってる最中に入って来そうな気がしたからな。悲しいことに我が妹は極度かは知らないがブラコンだと知ってしまったからな。自分の身を案じてそうした。寝る時もまた一緒とか言ってきたがそれはさすがにもうできないので説得して自分の部屋で寝てもらった。ベッドに入ってふと考えた。そういや明日は休日だったな。本来なら舞に街案内をしたかったが例のアレがあるから仕方ないか。とりあえず明日は勝つ。これだけだな。そして幸紀との約束も果たさないとな。あの会長を負かしてやるっていうな。そう思いながら僕は眠りに着いた。
アイギアスです。次はいよいよ戦闘ですね。
秋「戦うのは僕と生徒会の奴らじゃねーか」
ア「はい、そうですね」
秋「ま、勝ってやるさ。簡単には負けねーよ」
ア「強いのが羨ましい……」
秋「そうか?喧嘩売られやすいだけだと思うぞ?」
ア「それでもだよ!そもそも聞くけどキミに欠点なんてあるの!?」
秋「ん?そうだな……。裁縫は苦手だな」
ア「え、マジで?」
秋「大マジだ」
ア「意外です……」
秋「完璧人間なんていないだろ。それが現実さ」
ア「そうですね」
秋「さて、今回はここで失礼しよう。また次話で会おう」
ア「さようなら~」
次回は戦闘です。さてさてどうなるでしょうかね?
誤字などがあれば教えてください。