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第二十一話 孤独の悲しさ

サブタイトルほど重い話ではありません(笑)。

帰りに街を歩いていた。この時間は他の学校から帰ってくる奴も多い上に社会人も帰宅ラッシュだ。とはいえそこまで人口は多くないから意外に広々としてる。もちろん今回敵対する凜桜学園の奴もいる。そしてなぜかこちらを見る奴が多い。これはいつものことだが……。銀髪だからか?うーん、確かに銀髪だから目立つのはわかるけどな。ここまで見てくるか?しかも見てるの女しかいないような……。ま、どうでもいいか。あ、赤信号だ。当然僕は歩みを止める。近くの女子がその友人と思われる女子と僕をチラチラ見てきてる。なんでわかるかと言うとその女子達はバレてるのがわかってるかどうかは知らないが僕を見て指を指してるからだ。チラッと別の方向を見たが誰もいないし。店も特にない。だからわかった。やっぱ銀髪なのは目立つのか……。


「染めるのはめんどーなんだけどなぁ……」


呟く僕。あ、青信号に変わった。ということで僕は歩き出し、周りも歩き出した瞬間だった。対向車線から急に一台のトラックが突っ込んできた。完全に信号無視だな。周りはなんか悲鳴を上げてすぐさま渡ろうとした横断歩道から離れる。しかし一人凜桜の女子は気付いてないのかそのまま渡ろうとしてた。あ、よく考えたら僕もだわ。けど僕だけならいいがさすがに他の奴を事故らせるわけにはいかない。なので僕は瞬時に彼女を抱えて前に大きく転がった。


「ひゃっ!?」


この女子は突然知らない男に抱かれ、あまつさえ共に前に転がったことに驚いて悲鳴を上げた。しかし間に合ったおかげでなんとか二人とも無傷だ。ふぅ、よかったよかった。立ち上がり僕はトラックを見た。一言で言うと無惨な状態だった。トラックは近くの建物に衝突していて色々壊れていた。勢いもあったしな。さて、面倒ごとになる前に帰るか。そう思い僕は歩き出した。一応落とした物はないか確認はしたよ。なかったけどな。


「あの、待ってください」


唐突に後ろから話しかけられる。大体言われることは想像できてるから僕はイヤホンを耳に付けてスマホに差し込んで音楽を聞き始めた。もちろん聞こえないことにするためだ。何か言ってるだろうが僕は音楽しか聞こえない。するといきなり後ろからぎゅっ、と抱き締められた。と同時にイヤホンを外された。そして至近距離からぎゃんぎゃん言ってくる。


「無視しないでください!待ってくれるくらいいいではないですか!」


振り向くとそこには僕がさっき助けたって言っていいのかはわからんがともかくその子がいた。見た感じでは顔は整ってる。まぁ詳しい説明はめんどいからスルー。目の色は明るい茶色で髪も茶色い。そして短い。サラサラしてる。まぁかわいい方なんじゃないか?背は僕よりも二十五センチくらい低い。と思う。けどスタイルはかなりいい。モデル顔負けじゃねーか?ま、これくらいでいいか。


「なんだちびっこ」


「先ほど助けて頂いたお礼がしたくて……って誰がちびっこですか!?」


おぉ、見事なノリツッコミだ。思わず感心する。僕が頭の中で感心してたらわざとらしく咳払いをする。


「コホン……。そうではなくて先ほどの……」


「さて、帰るか。腹減ったし」


彼女の言葉を遮って僕はまた歩き出す。けどこの女は、


「だから待ってください!お礼がしたいんです!」


と言って僕の腕に自分の腕を絡めてきた。相当むきになってるのか彼女の何か柔らかいモノが僕の腕に当たってる。これは無意識だろう。しかしこの女は意外に大胆だな。大人しそうなイメージがあったんだけどな。わざわざお礼のためだけにこんなことをするとはな。


「お礼はいらん。だから腕を放せ」


「お断りします。なので少し時間をください」


「じゃあお礼は今腕に当たってるモノってことでいいからさっさと放せ」


僕が半分めんどくなってそれを言うと彼女は何のことを言ってるのかわからないのか、首を傾げたがやがて理解したのか、顔を赤くして腕を放す。じゃ、放れたしお礼?ももらったから帰るか。


「~っ!こ、これは違います!これは無意識に……」


「無意識のお礼か。中々やるな」


まぁ特に動じないけど。愛奈で慣れてしまった。……悲しすぎる。


「えっ!?いや、そうではなくて……」


声がしぼんでく彼女。しかももじもじしてる。不覚にもかわいいと思ってしまった。


「ふわぁ……。寝みぃ……。もう帰っていいな?」


誤魔化すように欠伸をしたんだがマジで眠い。疲れでも出てるんかね?特に何もしてないんだが……。


「い、いえ!まだお礼をしていないのでまだ帰ってはいけません!」


マジでどんだけこいつはここまで言うんだ?しぶといな。何より帰っちゃいけないってなんで?


「そこのファミレスで少しお話ししませんか?お礼に奢りますので」


そう言って彼女は一つのファミレスを指す。……入りたくない。あ、一応言っとくが今回の入りたくないはめんどいからじゃない。主に女性が多くいるファミレスなのだ。男性はここからじゃ一人も見えない。ので、


「断る」


「な、なぜですか!?」


心底驚いたかのように言うこいつ。察せよ……。


「女しかいない所にはさすがに入りたくない」


行く男子は恐らくカップルだけだろう。それか女に良いように使われる男か。


「え、うぅ……。じゃあどうすればいいのですか……?」


少し泣きながら聞いてくる女。見ても心は平静のままだ。精神力あるな、僕。それとも本当に冷徹なのかね?


「このまま帰らせてくれればそれでいい」


「うぅ……。そ、それじゃあ……」


あれ?こいつ、僕の意見流してね?そして涙に滲ませた顔をしながら僕を上目使いに見てきて、


「な、何かほしいものがあればそれで……。高いものは無理ですけど……」


と言う。はぁ、もうどうでもいいや。ほしいものとかないし。あ、冗談を言っとくか。


「じゃあキスで」


冗談でそれを言った。彼女は最初はなんて言われたのか理解できなかったのか、ポカンとしてたがすぐに頭が理解したらしく顔を赤くした。反応がわかりやすくて楽しい。しかしどうしたことか急に自分の唇に触れ、そして僕を見て、


「わ、わかりました……。それでいいのなら……」


と言って目を閉じて顔を上げる。ってあれ?なんかこいつ本気にしちゃってた?僕は慌ててではないが、


「冗談だ」


と言い、彼女の頬をにゅいと軽く引っ張る。柔らかい。


「ふぇ?」


間抜けな声を上げた彼女はまだ赤い頬で今の状態、そして冗談だと知り、


「な!え!?冗談ですか!?」


と大声を上げる。まさか本気だと思ったのか?


「うぅ……。からかわれました……」


と言い俯いた。さて、時間稼ぎはもう充分だな。


「んじゃ、僕は帰るわ」


彼女の頬から手を放して振り返る。するとそこで彼女は我に返り、


「え!?まだお礼が!」


またそう言ってきた。なにこの無限ループは……。


「あーもー!さすがに夕飯の時間だから帰らせてくれ!」


さすがに苛立ってきて声を荒くなる。だってしつこいし……。


「で、ではすぐに終わるので少し屈んでください」


すぐ終わる?あ、それってあれか。


「あれは冗談だと言っただろ?だから別にいい」


すぐに何をしようとしたのかがわかり、僕は断った。


「勘が鋭すぎです!」


ギョッとして言ってくる。また涙目に見えるのは気のせいだろうか?


「うぅ……。は!では私が今日は食事を……」


「妹がもう作ったと思うからもう遅い。てかいい加減諦めろ」


「うぐっ!」


彼女の意見をばっさり切る。ふぅ。さて、もういいだろう。


「では今日は諦めますがせめてお名前とメールアドレスを教えてくれませんか?」


「今日は諦めるってことはまだ諦めないのか?」


「当然です」


律儀だなぁ。そしてやっぱ思ったのがめんどくさい!さて、メールアドレスを教えるかどうするかだが……。なんか後悔しそうだ。よって、僕の答えは一つ。


「断る」


「何でですか!?」


ケータイを出していた彼女。早いよ。しゃーない。いい加減言っとくか。


「お前、知らないかもだけどあんたらの生徒会長が深桜高校から生徒を得るための決闘を申し込んでる。だから万が一何かあったら困るから教えるわけにはいかない」


僕が真剣な声で言うとやはり彼女は慌てた。いや、動揺した。けど理解はしてない。


「え?……えっ?」


「言わないとわからんみたいだから言ってやる。つまり敵に教えることはない」


僕はそう冷たく断言する。すると彼女はあからさま悲しい顔をする。いや、寂しい顔か?どちらにせよ今の僕と彼女は敵同士だ。


「それだけで、ですか……?」


彼女は声を絞り出す。けど先ほどと比べたらかなり弱々しい。


「文句ならあんたらの生徒会長さんにでも言うんだな。はぁ……。だからもう去ってくれ」


僕は突き放す。敵と長くいることは得策ではない。


「せ、せめてお名前だけでも……」


それでもまだこいつは言ってきた。この諦めの悪さは称賛すべきだな。


「ふん。生徒会長にでも聞いとけ。大体のこっちのデータを持ってるんだろ?」


「いえ、さすがの弓月会長も名前はわかっても顔は知らないと思いますよ?」


冷静に突っ込んできた。けど僕は何も言わない。


「……私は助けられたお礼と共に少しあなたと仲良くなりたかったのに……」


本格的にぽろぽろ涙を流し始めた彼女。泣きながらも彼女は話続ける。


「今までで……初めて……ヒクッ……楽しく話せたのに……」


泣きながら言った彼女の今の言葉に僕は少し疑念を抱く。今までで初めて?


「私が……うぐっ……何をしたって……ひぐっ……言うの……?」


…………。こいつ、ひょっとして……、


「お前、最近誰かと会話をしたか?」


「ふぇ……?」


「だから最近誰かと会話をしたか?」


同じことを聞く。僕は一つだけ思ったことがある。だから彼女の返答はさすがに大事だ。


「……一年前にそっちの学校の副会長さんが来てからは誰とも話してない。みんな、会長とかを怖がって同時に他の生徒会の人も……」


なるほど。つまりは生徒会長の威圧を恐れ、生徒会もそれより少し下とはいえ同等の力を持ってる。だから生徒会の人と絡むと無言の威圧を感じて堪えきれなくなり距離を置く。って言ったところか。

こいつは知らないうちに自分と仲のよかったやつらが自分から離れたことにショックを受けてたんだな。はぁ……。弓月ってやつはどんだけ自分のことを棚に上げているんだ?


「しかも私以外の生徒会メンバーは会長に心酔してるから特に何も思っていないんです……。だから私の居場所がもう……」


「その会長、今まで負け知らずか?」


「え?」


僕の言葉に彼女は顔を上げる。僕は少なくともこいつみたいな人間は今の世の中、少ないと思ってる。なんせ女性が男性と仲良くしたいって思ってる女性は少ないからだ。強いて言えば自分の足となって動いてくれるって言う認識だ。中学がそうだったしな。男子が物凄く屈辱を味わってた。僕は違うよ?話が逸れたな。つまり僕が言いたいこと、それは、


「(弓月に敗北を喫した時の悔しさを味わってもらうしかない!)」


と言うことだ。


「私が知る限りは負けてるところは見たことがありません。でもどうして……?」


彼女からの言葉はやはりと言うべきことだった。僕は彼女の側に寄り、彼女に手を差し出す。自分でも驚きだがここまで親切にできるもんなんだな。


「その会長、今回の戦いで敗北を知ってもらう。それだけだ」


「えっ!?む、無理ですよ!私達が総勢でも敵わないんですよ!?それなのに……むぐっ!?」


声を大きくした彼女の口を防ぐ。そして、僕は笑いながら、


「大丈夫だ。……立てるか?」


「え、あ、はい……」


顔を赤らめながらも僕の手を取り立ち上がる。なぜこんなに優しくなったんだろうな。まぁいい。


「一つ約束しろ。僕との会話は会長に内緒にしろ」


「は、はい。というよりも元から言うつもりはないですけど」


あ、言わなかったのね。けど念には念を、ってやつだな。


「さて自己紹介だ。僕は世刻秋渡。お前は?」


「わ、私は長谷川はせがわ幸紀ゆきです。でも突然どうして?」


彼女ーー幸紀は訳がわからず聞いてきた。ま、そうだよな。敵対って言って頑なに名前すら教えなかったんだからな。僕も案外自分勝手だな。自重して思わず笑う。


「幸紀ならまぁ大丈夫かとさっきの話で判断した。それだけさ。さて、悪いが妹をこれ以上待たせるわけにはいかないから失礼するわ。次は対戦日に会おう」


そう言って背を向け歩き出す。今回は幸紀も、


「わかりました。秋渡さん……」


とさっきよりも明るい声で幸紀は僕を見送っていた。背を向けてるからわからないが多分幸紀は笑ってるだろうなと思いながら舞が待っている家へ向かった。


ーー

余談だが結局家に着いたのが七時半だったため、舞にひどく心配されていた。しかもどこに行ってたのかを激しく問い詰められたがなんとか話を逸らすことに成功して安堵した。が、代わりに罰として風呂を一緒に入ることになった。何故だ……。年頃の女は男と入るのを嫌うものなんじゃないのか?そして僕は風呂場で初めて色々困惑しながら風呂に入ってた。舞は終始笑ってた。

なんか幸紀と話してた時よりも疲れた。何故か舞はずっと上機嫌だったし。僕が言いたいことは一つ。女ってわかんねぇ……。



どうもアイギアスです。最近は新キャラが多いですね。自分で考えることですが。

秋「なんか、僕だけ辛い思いをしてないか?」

ア「私はキミ以外の女子全員の方が辛い思いしてると思うよ?」

秋「え、なんで?」

ア「だって秋渡は冬美の告白の返事一つしてないじゃん」

秋「それについては悪いと思っている……」

ア「あれ?珍しく素直だね?」

秋「さすがにな。けど曖昧な返事をしたくないのもまた事実だ」

ア「……」

秋「暗くなっちまったな。また次の話で会おう」

ア「そうですね。また会いましょう」


さて、どうなるでしょうね?

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