第十九話 転校生、木上美沙
朝。僕は早く起きて舞を起こさないようにしようとしたんだが舞も僕と同じくらい早く起きた。どうやら朝は強いらしい。そして二人で朝飯を食べた後にまだ余裕があるので今更だが僕は舞に聞いた。
「そういや舞は学校はどうするんだ?」
「あ、はい。お兄様と同じ学校に転校とお爺ちゃんが……」
え?僕と同じ学校?
「舞……つからぬことを聞くがお前は何歳だ?」
「私ですか?十六ですけど……」
まさかの同い年!?マジで!?だが少なくとも僕は親とは十年間はいたぞ!?けど二人とも舞のことについては何も言ってなかった。
「た、誕生日は?」
もしここも同じだと舞は僕と双子と言うことになる。さて、どうなんだ?
「十二月八日です。突然どうしたのですか?お兄様」
「いや、なんでもないから気にしないでくれ」
「そうですか」
なんかちょっとしょんぼりした舞を見ながら僕は考える。幸いにも舞は双子ではないらしい。僕は九月八日だからな。ふぅ……。しかし、三ヶ月遅れでも隠すとはな。あの馬鹿親どもは何をしたかったんだ?……いや、よくよく考えればすぐにわかることだな。さすがにあの二人は僕が五神将の一人だと言うことを知っていた数少ない者だ。そういうことか、親父。あんたが言ってたことは……。
さて、舞が同い年で同じ学校に行くことは決定した。
「なら学校で教師達と会って話さないとな」
「はい。なのでお兄様と同じ時間に出ますね」
「案内が必要だろうしな。構わんぞ」
「はい!」
しかしわからないことだらけなのは当然だがなぜこいつは僕といるのを喜ぶのだろうか……。僕の正体を知ったらきっと毎日恐怖に刈られると言うのにな。とまぁ考えていたら時間も丁度よくなってきたからそろそろ着替えるか。
「じゃあ着替えて来るから舞も着替えてきな」
「はい」
僕の言葉に返事をして舞は昨日は使わなかった自室へ向かった。それを見届けてから僕も部屋へ行ってさっさと着替えた。そして鞄を持ち、玄関へ。少し経ってから舞もやって来た。
「すみません、お待たせしました」
「たいして待ってないから構わん」
そして外へ出てから鍵を掛けて歩き出す。その時に不意に風が吹き、風が舞と僕の髪を揺らす。そして僕はその時に初めて舞の今まで隠れていたもう片方の瞳を見た。目の色はやはりと言うべきか赤い
色ではなかった。僕は思わず驚愕していた。なんせもう片方の目の色は僕の髪と同じ、銀色をしていた。
「舞、その目……」
僕は思わず声を出してしまった。すると舞は、
「え?あ!」
と重大なことがバレたかのように手で目を隠した。そして僕の方を再び見て舞はどこか辛そうにしていた。
「その目……。やっぱり生まれつきか?」
「っ!……はい」
僕の質問に正直に答えた舞。多分目の色が違うというせいで苛められていたのだろう。そして舞はまた辛そうに俯く。
「やっぱり……。気持ち悪いですよね、こんな目……」
そう呟いた舞。しかし僕は、
「舞、少し僕の方を見てくれ」
そう言って僕はカラコンを外した。そして僕の目を見た舞は驚愕した。そりゃそうだろうな。なんせ僕とは全く色が真逆なんだもんな。いや、何よりも僕もオッドアイだったってところか。
「お兄様……?」
「つまり僕もってわけさ」
僕は薄く笑った。そして鞄に入れていた予備のカラコンを取りだして舞に差し出す。あ、色は黒な。
「使えよ。ないよりはいいだろ」
「で、ですが……」
「いいから使え。また同じ目に遭うのは嫌だろ?」
「っ!わかりました……」
そして渋々ながらも受け取り、手鏡も渡してから鏡を見ながらすぐさま付けた。最初はあたふたしてたが付け方とかを軽く説明したりして無事に付けることができた。
「ふぅ……。お兄様、不自然なところはありませんか?」
無事に付けれて安堵してから僕の方を向く。僕は舞の目をじっと見つめる。舞の顔が赤くなってる。見られて恥ずかしいんだろうな。
「特に不自然はないな」
「そ、そうですか……。ありがとうございます」
あやふやになりながらもお礼を言ってきた。
「いいよ。さて、少し時間食っちまったな。学校へ行くか」
「はい!」
そして僕は舞のペースに合わせて普段よりもゆっくりと歩いた。
「そういや今日は転校生は舞の他にもいたな」
僕は美沙を思い出す。美沙は多分今日からもう同じ机で勉強をするだろう。あいつ、頭も良さそうだしな。
「え、そうなのですか?」
自分の他にも転校生がいるとは思っていなかったのだろう。舞は驚いた顔をした。まぁ普通なら自分だけだと思うだろう。
「ああ。学年も同じだ。クラスは知らんけど」
だって聞いてないし。舞はというと、
「そうなのですか。なんであれ私はお兄様と同じクラスなら嬉しいです」
特に何も思ってないのか、美沙のことは何も思っていなかった。
僕はやっぱり兄妹だなと思いながら学校へ歩いた。
ーー
学校に着いた。なんか久々に早い時間に登校した気がする。ふと周りを見ると女子が数人僕と舞を見てひそひそ話をしていた。やっぱり注目を浴びるよな。滅多に僕はこの時間にいないし。
「さて、舞、とりあえず教務室に行くか」
「はい」
そして外履きから中履きに履き替えてから教務室へ。一応ノックしてから入る。
「失礼する」
「ん?世刻ではないか。どうかしたかね?」
なんかいかにも偉そうな教師に絡まれた。ちなみにただの少し太ったおっさんだ。担当科目は…………忘れた。
「担任に用があるだけだ」
「ん?千鳥先生か?彼女なら今は印刷室にいるぞ」
「そうか。ならすぐに出て……きたな」
僕は途中で言葉を区切った。なんせ丁度タイミングよく我らが担任の千鳥蘭が印刷室から出てきた。向こうも気付いたらしく自分の机にプリントを置くと僕達の所に歩いてきた。
「おはよう世刻君。珍しく早いわね」
「訳ありだったからな。転校生を連れてきたんだ」
「あ、そうだったの?それはありがとうね」
彼女に伝えて舞を中に入れ、僕は入れ違いに出た。さて、早いけど教室に行くか。一直線に教室へ向かう。その途中にある生徒会室のドアから誰かが出てきた。まぁ冬美だったんだけど。
「あら、秋渡君早いね。おはよう」
「野暮用があったんでな。お前こそ毎日ご苦労さんだな」
すぐさま僕に気付いて話しかけてきた冬美。こいつは生徒会長だからかいつも早いな。朝が苦手な僕には真似できん。
「ふふ、ありがとう。じゃあ私は教室に行くわ。じゃあね」
薄く笑って更に手を振って去っていく冬美。……一瞬冬美の笑みが作り笑いに見えた。気のせいかも知れないが……。何か生徒会で問題でもあったのかもな。なら深入りする必要はないだろう。さて、僕も教室に行くかと改めて思って教室へ向かった。
ーー
教室に入ると何人かのグループでみんなが楽しそうに話していた。みんな何の話をしてるんだろうな。とか思って鞄を置いてから席に着く。すると男子が二人近付いてきた。お決まりと言うべきかどうかは知らんが橋本と相澤だ。
「珍しいな、お前がこんなに早いなんて」
開口一番に相澤が僕にそう言ってきた。さりげなく失礼だけど確かに僕はほぼ遅刻なので否定もしない。横では橋本も驚いた顔をしてる。そこまで驚くか……。ショックはないけど。
「そうだな。まぁ少し野暮用があってな。それよりみんなは何の話をしてるんだ?」
僕は相澤に適当に答え、こっちから別のことを聞く。
「なんかな、転校生が二人来るって話が出てるんでな。まぁその内の一人は明日らしいけど」
「そうか。二人ともわかるけどさ」
「え!マジかよ!?」
僕が相澤の話を聞いて答えると身を乗り出して聞いてきた。しかも大声で。思わず僕と橋本は耳を押さえた。
「相澤、耳元で叫ぶな。うっさい」
「とと!そいつは悪かった。んで、転校生はどんな奴なんだ?女か?」
「両方とも女だ。一人は嫌でも見ればわかるぞ」
と、相澤に答えつつ橋本を見る。橋本はなんで見られたかわかっていないようだ。当然だけど。
「むしろわかんねぇって言ったら僕がお前らに驚くわ特に橋本に」
「え、そんなに有名なの?」
「ああ」
するとチャイムが鳴り、橋本と相澤は席へ戻った。そして担任の千鳥が入ってきた。とある超有名人を連れて。……なんか千鳥も緊張してないか?相手が美沙だからか?
「えー、皆さんもう知ってると思いますが今日は転校生が来ています。では自己紹介をお願いします」
千鳥にそう言われた彼女は、
「はい。皆さん初めまして。木上美沙です。知ってる人も多いでしょうがアイドルです。学校に早く慣れたいので皆さんよろしくお願いします」
と言い頭を軽く下げた。完璧な挨拶だった。そして顔を上げクラスを少し見回し、僕と目が合うとウインクをしてきた。……波乱が起きないことを願う。
「では木上さんの席ですがどこか希望はありますか?」
おい千鳥、それは完全な特別扱いになるんだぞ?まぁ美沙はこういう時は自分で決めるなんてことは……
「私、世刻君の隣がいいです」
……あったよ。しかも僕の隣。僕の席は一番後ろな上に隣はいない。休みだからとかではなく元々いない。自分のくじ運を今になって呪う。
「世刻君の?ま、まぁ木上さんが言うなら構いませんよ」
なぜか慌てふためく千鳥。僕はその様子を少し観察した。……美沙に対してではなく僕を警戒する様、絶対怪しい。何か隠してるな。それも悪い意味で。とか観察してたらいつの間にか隣に美沙がやって来てた。そして席に着く。
「よろしくね、秋渡君♪」
「ああ。よろしく」
僕は美沙の挨拶に答えた。そしてやはり千鳥は僕を見て普通のやつらにはわからないほどの極小の殺気を送ってきた。けど全く怖くなかった。
ホームルームが終わり、恒例のように質問攻め。しかも木上美沙というアイドルだからか、余計に熱気籠っていた。けれど美沙は嫌な顔をせず、ひたすら質問に答えていた。内容は略させてもらうな。めんどいから。ちなみに今回は珍しく橋本と相澤の両方が質問の輪に入っている。
「彼女が噂のアイドルさんですか」
と、言い急に僕に抱き着こうとしてきた愛奈。僕は立っていたのでひょいと避ける。愛奈は掴めなかったことにぷぅと頬を膨らます。いつものことだ。
そして、また美沙の方を見る。
「らしいな。僕はアイドルには興味ないから知ったのはつい最近だがな」
と僕は愛奈に答えた。愛奈は「すごい人気ですね」と呟く。立場上では愛奈の方が上だけどな。雨音財閥の一人娘だしな。
「あれ?なんか木上さん顔が赤くなっていません?」
愛奈に言われて見てみると確かに赤くなっていた。変な質問でもされたんだろう。知らんけど。
「何を言われたんだろうな?」
「何でしょうねぇ?」
二人して首を傾げたがすぐに一つ思い付いた。愛奈を見ると愛奈も何か思い付いたらしく、ポンッと手を叩く。そして僕達が同時に思い付いたこと、それは、
「「好きな人はいますか?」」
声を揃えて言った。やっぱり愛奈も同じだったか。
「でも赤くなるってことはいるってことですよね?」
「僕達が思い付いた質問だったらなの話だけどな」
美沙の好きな人か。同じ男性アイドルなんだろうな。スゲーな、美沙のハートを射止めたそいつは。余程なことをしたんだな。とか考えていたらふと美沙と目が合った。そして美沙はすぐに目をそらす。僕がその好きなやつに似てるのだろう。
「なるほど……。木上さんの好きな人は彼ですか……」
「え、わかったのか?」
僕が思わず聞くと愛奈はこくんと頷いた。マジか。愛奈もスゲーな、すぐにわかるなんて。本気で感心の目を向けていたら急にぽっと赤くなって、
「しゅ、秋渡さん……。そんなに見つめられると照れます……。子供ができちゃいますよぅ」
「んなことで子供できるか。それに僕はそんなのごめんだ」
「……真顔で言われました。ショックです……。けれどやっぱり秋渡さんは素敵です。なので結婚してください!」
「断る」
「うぅ……。で、でも私は諦めません!」
こいつの相手をするのが馬鹿馬鹿しくなってきた。そして諦めてほしい。と、ここでチャイムが鳴って美沙への質問タイムは一旦終了した。
授業中。
僕は美沙がまだ教科書がないとのことで美沙に教科書を貸している。そう、見せてるのではなく貸してるのだ。だって授業の問題簡単にわかるし。美沙はとてつもなく困っていたが、僕は基本授業は聞いてないと言うと苦笑して受け取った。んで、現在。
「秋渡君、ここはなんて言うの?」
なぜか教師は今日は自習と言ったために僕が美沙に勉強を教えていた。なんでも僕なら何度も話したこともあるから話しやすいんだそうだ。顔が赤いのはどうしてなんだろう?
「そこはxが2でyは3にだろ?この問題の式は3x+5yだからまずは3と2を掛けてそれから5と3を掛ける。そして後は掛けた二つを足せばいい」
「えーっと、つまり3xの方が6になって5yは15になるんだよね。そこから足して、21になったよ!合ってる?」
「ああ。合ってるぞ」
「よかったぁ……」
というわけで現在の状況は僕が美沙に数学を教えているというわけだ。解けたのがそんなに嬉しいのかめっちゃ安心してた。代わりにその様子を見ていた愛奈が不機嫌になってた。なんか呪詛を唱えてそうだな。
「秋渡さんの妻は私秋渡さんの妻は私秋渡さんの妻は私秋渡さんの妻は私……」
訂正、実際に唱えてた。しかもワケわからん呪詛を。後僕の妻は誰でもないからな?ところであれだけ呪いや殺気を向けられてるのにそれに全く気付かない美沙。すごいが違う意味で心配だ。なんせ今は上機嫌に鼻歌を歌いながら(自分が歌ってる曲。たしか前に聞いたダイアモンド)数学に取り組んでる。僕は波乱にならないことを願いつつ二人の様子を見ていた。
余談だが数学教師はこの時間中はなんか頭を抱えてたよ。珍しいこともあるもんだ。
どうも。最近この作品のネタが意外にも浮かんでくるアイギアスです。けれど浮かんでも疲れるものは疲れます。
秋「関係ないが結局この作品はヒロインは何人になるんだ?」
ア「答えちゃうと未知だね」
秋「しっかり決めろよ!」
ア「あんたがモテるのが悪いんだ!」
秋「そこで逆ギレかよ!?」
ア「黙れよ!」
秋「はぁ……。アホらし。ところであれから五神将が出てこねーな?」
ア「ああ、それは今は出てくる所ないからね」
秋「まぁ戦わないならありがたいけどな。五神将と戦うの大変だし」
ア「へ、へぇ……」
秋「……なんだよ?」
ア「自分も五神将なのにって思ってね」
秋「んー、まぁ否定はしねーな」
ア「まぁいいか。とりあえず……」
ア・秋「また次話で会いましょう!」
次回の更新も多分少し早いかもです。
何かミスがあれば教えてください。早いうちに訂正しておきます。




