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第十六話 一週間ぶりの再会

ザブタイが思い付かなくなってきた今日この頃。

一週間ぶりに見た木上。前はこいつとデートの時に久崎に襲われたんだよな。だからメールでは元気って聞いてたが実際に見ないとやはり確信は得られない。そう心配してたんだが……。


「久しぶり、秋渡君!」


……気のせいか?前よりも生き生きしている。ような気がする。マネージャーさんをチラッと見る。どうやらマネージャーさんも同じ心境だったみたいだ。唖然としてた。そしてまた木上に視線を戻す。ふと前と違うところに気付いた。それは、


「久しぶりだな。僕のロングコートを着てるとは思わなかったが……」


そう。今僕が言った通り、木上は僕が一週間前にあげたロングコートを着ていたことだ。サイズも木上の普段着よりもでかいはずなんだが……。


「えへっ。これを着てるとね、秋渡君に守られてる気がして安心して仕事に取り組めるんだぁ」


と微笑んで言う。実際は加護とかは全くないんだがな。けどそう思われるならあげたことは悪くはなかったな。


「秋渡君」


木上に呼ばれる。


「なんだ?」


「うん、今からさ、街を案内してほしいな」


とおねだりポーズ(多分本人は自覚なし)で言ってくる。まぁそんなんで心が全く揺さぶられないわけだが、最初からそのために来たんだもんな。だからそれは全然構わない。構わないんだが……。


「いいけどマネージャーさん達はどうすんだ?」


そう、僕に殺気を若干放ってきているマネージャーさんと運転手の女はどうするつもりなんだろう。ちなみにマネージャーさんが殺気を放っている理由は知らん。


「あ、そっか。友里、どうする?」


後ろを向いてマネージャーさんーー友里っつー人に聞く木上。考えてなかったとはな。


「そうね。ここは彼に任せても平気でしょうね。だからゆっくりしてなさい」


そう友里が言うと木上は向日葵のような笑顔になって、


「ありがとう!!友里!!」


めっちゃ感謝してた。友里はビックリしてた。こんなんでここまで感謝されるとは思ってなかったんだろうな。まぁ当然か。


「え、えぇ……。じゃあ私達はもう行くわね」


「うん!」


戸惑いつつも車に乗るーーかと思ったら僕のもとに来た。


「……わかってるでしょうけどあの子に変なことをしたら只じゃすまさないわよ?」


そう小さく僕を脅しに来た。かど僕は想定してたから特に驚きもビックリもしない。


「……それならさっきから木上に気付かれない程度に殺気を僕に放ってたから気付いたぞ?なんであれ僕と殺り合うのは止めておいた方がいいとは思うけどな」


と逆に殺気を放ち返す。もちろん加減はしてるがな。マネージャーさんはそのまま無言で振り返り、今度こそ車に乗る。そして何も言わずに去った。


「さっき友里になんて言われたの?」


「木上に危害を加えるな、だとさ」


あながち間違いではないことを言う。あの人は初めて見た時とは違い、僕を完全な敵として見てたな。まぁ戦えば返り討ちなんて余裕だがな。


「そか。じゃあしっかり守ってね、私だけの騎士様♪」


笑顔でそう言ってきた木上。別に木上の専属護衛でも騎士でもなんでもないんだがな。まぁいい。


「わかったよ。とりあえず行くぞ、木上」


そう軽く言うと何故か木上が頬を膨らませる。軽く流しすぎたか?

しかし実際は、


「ねぇねぇ。私のことは美沙って呼んでよ」


だそうだ。なんでどいつも僕に名前で呼びたがらせるんだ?理解できん。まぁ別に恋華も星華も冬美も愛奈も名前呼びだから別に構わんけどさ。


「わかったよ、美沙」


「ありがとう、秋渡君!」


嬉しそうに笑うきがーー美沙。そういや美沙はいつの間にか僕のことを名前で呼んでたな。別に名前にコンプレックスとかはないからいいけどな。


「さて、じゃあ行くぞ、美沙」


「お願いします、秋渡君♪」


言って何故か手を繋いできた美沙。え?なんでだ?てかなんか恥ずかしいんだが……。まぁこいつの気のすむままでいいか。

そして僕達は街の方に歩き出した。そこで悲劇が起こるとは知らずに。


ーー

美沙の専属のマネージャーである友里は車の中で少し冷や汗を掻いていた。理由は簡単だ。彼女が秋渡に対して忠告をしたと思ったら逆に忠告をされた。だがその意味を彼女は身体で理解した。なんせ彼から放たれた殺気、いや威圧感はまさしく五神将のものだった。彼女は一度だけ五神将の黒坂と会ったことがある。たまたま会っただけだが、黒坂が女に対して放つ威圧感は凄まじかった。思わず自然に身体が硬直するほどに。そして今友里はその時と同じものを味わっていた。秋渡から放たれた威圧感も黒坂と同格だった。それに思わず友里は無言で車に乗った。彼女は本能的に危険を感じたからだ。この男は危険だと。一応美沙の護衛も兼ねてるので友里は強い。だが強いとは言え五神将に勝てるかと言われれば不可能だ。彼らは正直人間離れをしている。そんな奴等だ。


「(美沙……)」


友里は美沙が心配だった。もし秋渡が五神将ならば絶対に殺されるだろう。五神将は女を恨んでいる……。そのことは公開されている。だから余計に不安だった。


「(無事に帰ってきてまたみんなにあなたの笑顔を見せてね、美沙……)」


秋渡が五神将じゃないことを祈りつつ、そう願った友里だった。



ーー

さて、僕は今物凄く困っている。あれから僕は刀と財布とスマホだけを持って美沙と街へ行った。行ったんだがよくよく考えれば簡単にわかるこたなんだが、美沙はアイドル。つまりこんな所で歩いていればファンが殺到してくるってことだ。で、今そのファンに囲まれて色々聞かれている。美沙だけでなく僕までもが、だ。その内容が、


「あなたは美沙さんの彼氏さんですか!?」


とか


「お二人の仲はどこまで!?」


とか挙げたらキリがない。しかも何故か彼氏かそうでないかだけでだ。ちなみに美沙の方には、


「この男の人と美沙さんはどのような関係なのですか!?」


とか


「美沙さんは彼のことをどうお思いなのですか!?」


などだ。美沙も苦笑を浮かべていた。普段は当たり前なのだろう。苦笑を浮かべているだけで困っている様子はない。さすがはプロと言ったところだ。

さて、んなことよりこの状況はどうしようか。しかも最悪なことに僕と美沙は今押されているためにめっちゃ密着している。つまりはな、囲まれて身動きが取れん!なんかこれストレスが溜まるな。


「…………どけ」


「……え?」


僕は苛立ちのあまり、自分ではあまり驚かないが聞こえた相手からしたら驚くほど冷たく低い声が出てた。まぁ気にはしないがな。実際の話、こいつら邪魔だし。


「どけと言ったんだ。だからさっさと道を空けろ」


今はカラコンをしているから普通の人と同じ黒い瞳だが、相手からしたら僕の目はそんなの関係なしに冷たいだろう。その証拠に周りが静かになる。しかし一人の女が、


「な!あんたねぇ!我らの美沙さんと付き合ってるからって調子に乗らないでよ!」


「あ?」


意味不明だ。そもそも僕と美沙は付き合っていねー。そっから間違いだ。てか何この女。ああそうか。今の世代は女の方が強い。だから女に逆らうんじゃねぇ、って言いたいのか。けどどこからどう見てもこいつの方が調子に乗ってる。


「あんた、今女に囲まれてるのよ?これが何を意味してるかわかる?」


要するに逆らえば強行手段に出るってことか。ま、僕からしたら余裕で返り討ちにできるがな。おもしろそうだし偉そうにしてる女を挑発しよ。


「ほう。けど囲んだからって絶対に僕に勝てるって言えんのか?」


嘲笑いながら言う。すると女は、


「こ、こいつ!みんな!こいつ殺すよ!」


「「「「はい!!」」」」


馬鹿女と囲んでたやつらが僕を攻撃してくる。素手で。一般の男なら物の数秒でボコボコにされるだろう。けどそれは、


あくまで一般の男だったらの話だ。


美沙が見てる中なのは後々がめんどいが仕方ない。とりあえず最初にストレートをかましてくる女の攻撃をかわして、隙だらけの背中を強く押す。


「え!?わっ!?」


盛大に転ける。ふん、いい様だ。そして二、三人でやってくるのを一人のパンチを掌で軽く受け止めてからそのまま掴んで引っ張る。


「キャッ!」


「危ない!」


引っ張った女を僕は盾代わりにする。攻撃してきた二人はやむを得ずに攻撃を中断。しかし僕は、


「返すぜ、お仲間さん」


と言って掴んでた女を攻撃してきたうちの一人に向かってドンッと突き飛ばした。二人は衝突して二人とも勢いを殺せずに転んだ。


「こ、この野郎!」


女とは思えねー口振りだ。美沙や冬美を見習って欲しいねぇ……。

ま、どうでもいいか。だってこのリーダーっぽい女はしばらく病院に世話になるしな。とか考えてたら女は僕に蹴りを入れてきた。避けるのも容易いけどここは受け止めよ。

ガッ。


「んな!?」


リーダーっぽい女は自分の蹴りを軽く掴まれたことに驚愕をしてた。そんなバカ面を見てから僕は、


「さーて、覚悟しろよ?僕に喧嘩を売ったのは大きいぜ?」


と怒気の籠った声で女に言う。そこで女は足を僕の手から振りほどこうとするが僕の腕は全く動かない。ちなみに力はかなり抑えてるよ?本気で掴んだらこいつの足折れるし。

さて、フィナーレだ。僕は恐怖に歪んだ馬鹿女の足を引っ張り女の重心を傾ける。そして隙だらけになった馬鹿女に僕は馬鹿女の腹に一発だけ軽く拳を打ち込んだ。すると女はうっ!と呻き声を挙げて倒れた。ふぅ。終わったな。いや実際にはまだまだ残っているが、僕と戦う気力を持ってそうな女は一人もいなかった。……若干名顔を赤くしてたが風邪なのか?ま、いいか。さて、んじゃぁ、


「美沙、行くぞ」


僕は美沙に声を掛ける。が美沙は妙にぽーっとして動かない。しかも顔が赤い。はっ!?まさかこいつ、風邪引いたのか!?と、とりあえずもう一回声を掛けてダメなら病院だな。


「おーい、美沙?」


近付いて声を再び掛ける。すると、


「ふぇっ!?」


となんか変な声で返事がきた。妙にビクッとしてた。あ、僕が怖かったのか?


「大丈夫か?」


「え、あ、うん、大丈夫だよ」


笑いながら答えた美沙。無理をしてるようには見えねーから作り笑いではなさそうだ。なら大丈夫だな。


「そうか。じゃ、行くか。とその前に」


美沙と歩き出した瞬間に僕は後ろを向いて、


「そこの馬鹿女の始末はしっかりしとけ。お前らの自業自得だし」


と目を細めて言って。すると何人かは顔を青冷めて頷き、何故か何人かは顔を赤くして笑顔で「わかりました!」と元気に答えた。え、なんで笑ってんの?普通怖がるだろ?まぁいい。いや良くねーかもだけど。


「さてと。ってかなり時間食ったな。どうする美沙?」


時計を見るともう六時前だった。この時間からだと道案内はできないな。


「じゃあとりあえずどこかで食事を取ろ?秋渡君」


と言ってくる。断る理由もないしさっきので腹も減ったから丁度いいな。僕は美沙の提案に承諾した。


ーー

近くのファミレスに入る。まぁそこでも美沙のことで多少揉めたが僕が美沙の後ろから寄ってきた男や女を睨むとビビって去っていった。根性ねーな。とりあえず席に案内をされ、二人で座る。


「うわー……。どれも美味しそう!秋渡君は?」


「ん?まぁ旨いとは思うぞ」


目を輝かして美沙はメニューを見ていた。僕は外食は基本しないから旨いかは知らない。さて、僕はどうすっかな。手頃にミートソースパスタにしとくか。


「美沙は決まったか?」


「うん!このミートドリアにする!」


「わかった」


僕は呼び出しボタンを押して店員を呼んだ。そして注文をしてその確認をし、間違いがないことを確認してから店員は去った。そしてこの待ち時間。当然かは知らないが美沙と話している。


「秋渡君はパスタにしたんだね」


「個人的には何でもよかったけど決まらなかったからな。適当に安いのにした」


「ふふ。秋渡君っておもしろいね!」


「そうか?」


などと話していたらパスタとドリアが運ばれた。おお。見た目は中々旨そうだな。早速一口食べる。ふむ、味は濃すぎないからいいな。パスタも程よい柔らかさだ。


「おいしい♪」


目の前で美沙はとても美味しそうにドリアを食べている。こうして見てるとアイドルというよりは一人の女の子にしか見えないな。僕は薄く笑う。


「?どうして笑ってるの、秋渡君?」


美沙が首を傾げて聞いてくる。


「今思えば僕は普段じゃありえない奴とこうして食事をしてるんだな、って思ってな」


あながち間違ってない答えを言った。改めて周りを見れば殆どの客は僕と美沙を見ていた。もちろん男女問わずだ。まぁ有名人と食事をしてる相手は一般の男だもんな。実際は遥か上の者だが……。


「そっか。迷惑掛けちゃった?」


少ししょぼんとして聞いてくる。が、僕は、


「そもそも迷惑だと思ったら一緒に食事どころか案内役なんか受けてねーよ」


と僕は曖昧に答える。


「そう……だよね。えへへ。変なことを聞いてごめんね?」


「気にするな。同じ立場なら僕も多分聞いてるだろうからな」


謝ってくる美沙に僕はそう答えた。誰だって自分が有名になったと聞けば相手に不愉快だと思われてもおかしくはない。それは大体の人がそうだろうと僕は思う。

と、その後も談笑をしていたら二人とも食べ終わった。会計は僕が払った。美沙は自分の分くらいは払うと言ったがそれはさせなかった。理由は特にない。奢るくらい別にいいだろ。

すっかり忘れていたが、美沙を狙う奴らがいる。人質とかではなく殺すことを目的としてだ。つまり何が言いたいかと言うと、うん。店を出た瞬間、十人近くの武装をした野郎に囲まれた。正しくは後ろが今までいたファミレスだから前方を囲んでいた。店の中も外を歩いていた奴らもざわついていた。悪い意味で。もちろんそうなると起こるのはパニックだ。さて、どうすっかな。


「木上美沙。貴様には消えてもらう」


と、唐突に言ってこちらに持ってた銃を向けてきたのだった。


恋「ねぇ、なんか最近私達出番なくない?」


星「……うん」


愛「困ります!このままでは私と秋渡さんがイチャイチャできないではないですか!」


冬「それはむしろさせないわ。けれど出番がないのは事実ね」


うぅー……スミマセン!


美「えへへ♪私はこのままの方が嬉しい……かな♪秋渡君を独り占めできるし♪」


恋・星・愛・冬「「「「絶対にそうはさせない!」」」」


こうしてると秋渡君のモテ度は凄いですね。なんか嫉妬してくるくらいに!


秋「なら僕と戦うか?」


絶対に勝てないので遠慮します!

と、まあ長くなりました。後書きという後書きではないですが。

ではでは。

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