特別話10000pv達成
今回は番外編です。
それといつもよりも長文です。
深桜高校の教室でのある日のこと。
その日はあるイベントがあるということで賑わっていた。しかしそれは体育祭でも文化祭でもない。では何なのか。それは、
「今日はクリスマスだね!」
恋華がテンションを上げて隣の秋渡に言う。しかし秋渡は全く興味がなさそうに本を読んでいた。恋華は返事すらせずに本を読んでいる秋渡に少し苛立つ。
「ねぇ秋渡、私の話聞いてる?」
少し怒声が籠った声で秋渡に尋ねてくる。そこでようやく秋渡が本に栞を挟んでから本を閉じる。
「聞いてる。クリスマスなんだろ?んで、それがどうした?」
クリスマスなんて興味がない。イベント自体が好きでない秋渡の顔にはそう書いてあるように見えた。その分恋華がなぜそんなにテンションが高いのかが理解できなかった。
「もう……、これだから秋渡は……」
恋華は溜め息を吐く。しかし秋渡にしてみればはなぜ自分があきられているのかがわからなかった。
「一体お前は何が言いたいんだ?」
正直秋渡からしてみればどうでもいいことではある。けどあきられた理由は知りたかった。
「秋渡、今日は何か予定ある?」
「?別にないぞ」
ーー秋渡side
質問の意図が掴めなかったが僕はそう答えた。すると恋華はあからさまに「キタコレ!」みたいに目を輝かせた、ように僕には見えた。しかもそれは彼の気のせいでなければ目を輝かせたのは恋華だけではなく教室中の女子全員に思えた。なんとなく何もないと言って後悔する。
とそこでポンッと僕の肩に手を置かれた。しかも両肩にだ。後ろを向くとそこにはまるで生きて帰れよ、と言いたげな顔をしてる相澤と橋本がいた。
「なんだよ……」
二人に聞くと二人は
「頑張って家へ帰れるといいな」
と相澤が言う。横で橋本も頷く。すると二人して離れていった。訳がわからん。
と不意に気配を感じ、横を見る。そこにはクラスメートの女子が三人いた。けど心なしか顔が赤い。……風邪か?
「あの……、世刻君、今日学校が終わったら……その……、一緒にお出掛けをしませんか……?」
三人の中の真ん中の子が顔を真っ赤にしながら声を掛けてきた。というかお出掛けに誘われた。……ちなみに正直どうでもいいかもしれないが三人とも顔が普通にかわいいと思う部類だ。
てか外出か。う~ん、正直言って寒いからさっさと帰りたいんだよな。ま、でもその前に、
「出掛けるってどこに?」
と質問に質問で返す。でもどこに行くかはわからんと判断はできねーだろ?
「え!?そ、それは……そのぉ……」
声がしぼんでく女子。残り二人も声を発してこない。……決まってねーのに話し掛けてきたのか。
「決まってないんならパスだ。もう少しちゃんと考えろ」
「う、うぅ……」
僕が冷たく突き放すとその女子は涙目になる。そして両隣の女子と共に席に戻っていった。何だったんだ?
「……さすが世刻。全く動じずに突き放したな」
相澤がそう言う。なんだそれは。まるで僕が冷徹人間みたいな言い方だな?
「じゃあ秋渡、私と町のクリスマスツリーを観に行こうよ!」
恋華がテンション高めで聞いてくる。けど僕はクリスマスツリーなぞ興味ない。よって行く気力も下がる。
「めんどいからパスだ」
正直に答えると、
「なんでよ!?は!まさか私とじゃなくて星華か会長か愛奈と行く気なの!?」
「何がどうなってその答えに行き着いた」
なんか恋華は変な誤解をしてないか?僕は別に誰かと出る気はない。いつもと同じ様に家に帰ってメシを食って風呂に入って寝る気だ。夕飯どーすっかな。
「え!?違うの!?ほ、他の相手!?」
「………………よくわからんが恋華、とりあえず落ち着け」
僕は未だに暴走気味になっている恋華に手でストップサインをする。一体どうしたんだ?
「じゃあ秋渡は一体クリスマスは誰と過ごすの!?」
なぜか大声で聞いてくる恋華。あーあ、恋華が大声なんか出すからクラスメート全員が何事かとこっちを見てきてるじゃねーか。まぁ大半は真剣な顔をした女子だけどな。理由は知らん。
ってそういやふと気になったけど星華はどうしたんだ?朝から見ないが……。
「家で寝てる。ところで星華はどうしたんだ?」
何気に質問の答えを返した後に質問をする。すると恋華は少しきょとんとする。なんでだ?と思ったらいきなり星華の席を見る。
「そういえばいないね。星華は休むことそんなに多くないのに……」
この口振りからしていないこと自体に気付いてなかったらしい。中々薄情なやつだ。あんま人のこと言えねーけど。
僕は溜め息を吐いてから、
「後で星華にメールしとくか……」
と呟いた。
と、そこで教室のドアが勢いよくガラッ!と開いた。そこには愛奈がいた。そして僕を見つけると、
「秋渡さーん、今日の放課後私の家に来てくださーい!」
超スマイリーに言ってきた。正直なんか企んでるようにしか見えない。こいつの父親が父親だし。
「何か大事なものが失う気がするから遠慮しとくわ」
なので丁重にお断りしといた。
「あのー……、一体私は何をするのだと思われたのでしょうか……?」
若干涙目で聞いてくる。けどこいつだ。油断はしてはいけない気がする。
「私は純粋に友人方でパーティーをしたかっただけなのですが……」
なんだと?こいつにしてはまともだと!?
てっきり僕を監禁してなにかしてくるのかと思ってたぜ。
「監禁なんかしませんよ!?」
「あれ?声に出てた?」
「バッチリと出てましたよ!?私、そのようなことをするように見えますか!?」
「見える」
「うぅ……。秋渡さんひどいです……」
涙を流す愛奈。どうやらさっくりと心にダメージを負ったらしい。ダメージを負わせたのは僕だけどな。
ついでにこれを機に別の相手に走ってくれると嬉しい。
「ならひどい男は捨ててさっさと他の相手を探してこい」
「それは嫌です」
即答で言われた。ついでに泣き顔から真顔になってる。こいつ、嘘泣きだったんじゃねーの?って思うほどの代わり映えだった。
しかしパーティーか。飯代は浮くからそこはありがたいな。
「ところで友人ってことは誰が来るんだ?」
予想では恋華、星華、冬美、僕、んで本人の愛奈、かな?
……あれ?これって男は僕一人じゃねーか?
「えぇーっと、恋華さん、星華さん、会長さん、そして愛しの秋渡さん!ですね!」
「なるほどな。あとどさくさに紛れて愛しのとかつけるな。お前のものになった覚えはない」
油断ならねーな、こいつは。
とそれは一先ず置いておいてパーティーどうすっかな。恋華は行くのかね?
「私行くよ!」
妙に目を輝かせる恋華。旨い飯でも食えるからと勝手に予想。多分ちげーけど。そもそも恋華がそんな大食いじゃないことも知ってるし。
「はい!お待ちしています!秋渡さんももちろん来ますよね!?」
そうだな……。僕は少し考えるけど断る理由は……あると言えばあるが別に今日くらいはいいか。
「しゃーねぇ、行ってやるよ」
僕がそう答えると恋華と愛奈は二人して喜びあった。たまに思うがこいつら、実は仲めっちゃいいよな。たまに、だが。
そんな喜びあっている二人を尻目に、橋本と相澤を見る。あの二人がこんな傍目からすれば面白いやり取りを見てないハズがねぇ。案の定二人は僕と目が合うとそらした。ま、この二人はクラスメートと仲良く遊んでるだろうな。再び恋華と愛奈を見る。と、二人は誰かに電話を掛けていた。多分星華と冬美だな。僕は後で聞けばいいか、と席に着く。途端に眠気がきて知らないうちに寝た。そのせいで午前中の教師からの話は一切覚えてなかった。
ーー
昼休み。
僕は少し風に当たりたくて寒いだろうけど外に出た。冬だからか外はやはり寒い。けど中は中で暖房をガンガンに効かせているから暑い。何よりも外の空気は旨いし。雪は降ってないな。ホワイトクリスマスにはならないらしい。天気予報でも晴れって言ってたな。
「…………ふぅ。戻るか」
さすがにずっと外は寒すぎなので校舎に戻る。と、その時だった。
「あれ?秋渡君?」
偶然外に出てきた冬美と遭遇した。生徒会の仕事なのか何か抱えていた。なんかの資料かな。
「やあ、冬美。仕事か?」
「うん。今日中に終わればいいなーって思って」
確かにそうか。折角の冬休み、わざわざ仕事をしに学校に来たくないしな。少なくとも僕はだがな。
「そうか。……大変なんだな」
僕はあまり表情を変えずに言うが冬美は、
「ううん。自分で望んでやってる仕事だもん。これくらいは当然だよ」
……自分で選んだから責任を持って仕事をする、と言ったとこか。僕には到底真似できそうにないな。
「それに、今日の夜はみんなでパーティーをするんでしょ?だから仕事の疲れはそこでとるよ」
前向きな冬美。そこは素直に尊敬したい。
しかしやはり冬美ももう声を掛けられていたか。なら行っても退屈はしなさそうだな。
「そうだな。その方がいいだろう。……じゃあ僕は邪魔をしないように教室に戻るわ」
「うん!また後でね!」
にっこり笑ってから冬美は去った。やれやれ……。こりゃ僕が行かないってことにはあんましできねーかな。
「ま、たまにはいいか」
そう呟いて僕は教室に戻った。
ーー
放課後。
僕はまず速攻で家に帰って街へ出た。愛奈に聞いたところ、パーティーは七時からだそうだ。ならどうせならまぁクリスマスなんだしなんかプレゼントを買ってやろうかなって思った。
あいつらが珍しく楽しみにしてんだ。たまにはいいだろう。
「さて、問題は何を買えばいいのかがさっぱりわからないことだな」
女の好みとかは全くわからない。ペンダントとかでいいのかね?
いや、時間があまりないんだしそれでいいか。天然石の種類とかはそれぞれのイメージ色にするか。恋華は赤、かな?んで星華は水色、だな。なんとなく。そんで冬美は白だな。これはすぐ思いついた。そして愛奈は青だな。となると、色的にそれぞれの天然石は、
恋華=ルビーまたはガーネット。どっちかって言ったらガーネットか。
星華=アクアマリン。
冬美=ダイアモンドまたはパール。なんとなくダイアモンドだな。
愛奈=サファイア。
と、まぁこんな感じか。さて、探すか。お、丁度いいところに雑貨店があるな。寄ってみるか。
店に入る。中々綺麗な店だな。お、ペンダント見っけ。眺めてみると色々な種類があった。あ、さっきの候補もある。ここですぐに買えるのは嬉しいな。と言うわけで早速買う。合計で八千円近くしたけど特に問題はないだろう。
「ラッピングはどうしますか?」
店員にそう聞かれる。ま、これもしておくべきだよな。
「クリスマス仕様でお願いします」
「畏まりました」
と、てきぱきと作業をする。慣れているからか凄く手際がよかった。四つ分もすぐに終わった。綺麗にラッピングされていた。
「お待たせいたしました。こちらが商品です」
黙って受け取る。そして店員は営業スマイルで、
「ありがとうございました」
と頭を下げる。それを見て僕は店から出た。そして時間を見る。五時半。まだ一時間半もある。ま、少しくらい早くてもいいか。そのまま愛奈の家へ向かう。
ーー
愛奈の家に着いた。インターホンを鳴らす。
『はーい。あ、秋渡さん!』
出たのは愛奈だった。来たのが僕だとわかり、喜ぶ声が聞こえた。そしてドアが開いた。オシャレなドレスを着込んでいた。正直綺麗だった。
「いらっしゃいませ、秋渡さん。早いですね」
「ああ、やることがなくてな。だから早く来た。まだ準備中だったか?」
「いえ、飾り付けはもう終わっていますのであとは料理だけです。ですがこちらはシェフに任せてあるのでご安心を」
「そうか」
「とりあえず中へどうぞ」
愛奈の家の中に入る。言っていた通り飾り付けは終わっているようだ。綺麗な飾り付けがしてあった。しかもクリスマスに相応しい飾りだった。
「うふふ♪」
妙に嬉しそうな愛奈。僕と二人きりだからだろう。なんせあれだけべったりしてくるからな。自意識過剰かもしれないがここまでやられれば嫌でもわかってしまう。
「……広いな」
思わず僕は呟く。なんせ愛奈の家はまぁ当然と言うべきか普通の家と比べたらかなり広い。さすがは令嬢、と言ったとこか。
「ふふ♪そうかもしれませんね。ですが本家はもっと広いですよ♪」
……そっちの本家とやらにはあまり行きたくないな。理由は……言わないでおこう。
ーー
愛奈と喋っていて一時間後。
キンコーン、とインターホンが鳴る。恋華達が到着したらしい。愛奈が出迎える。
「どうぞ~♪」
「おじゃまします!」
「……おじゃまします」
「おじゃまします」
恋華、星華、冬美の三人と対面。
僕を見つけるなり恋華は驚いた顔をする。
「あれ!?秋渡もう来てたの!?」
「やることがなかったからな」
「そっかー。それじゃ秋渡の家に行っても誰もいないよね」
「わざわざ僕の家に行ったのか?」
割りと本気で驚いた。一緒に行く気だったのか?
「みんなで一緒に行こうかと思って……」
若干悲しそうに言う恋華。こいつは悪いことをしたな。
「すまんな、恋華。冬美と星華もすまないな」
恋華に謝罪をして冬美と星華にも謝る。さすがに今回は僕が悪いからな。
「……私は気にしないよ?」
「私も」
そう言う二人。いいやつだなぁ。この二人ならいい嫁になるだろうな。
「……え?」
「え!?しゅ、秋渡……君!?」
急に赤くなった二人。ってまさか声に出てたのか?やべぇ。
「恥ずかしいことを言っちまったみたいだな。すまん」
「……ううん、いいよ。むしろ嬉しい……」
「あぁ……。秋渡君の……妻……」
謝ったのだが星華はなんか喜んでるしよかった(?)な。冬美はなんか違う妄想をしてた。てか単なる勘違いをしてた。別に僕の嫁なんて言ってないんだがな。
「秋渡さん。いいところで悪いのですがそろそろパーティーを開始したいのですが……」
微妙に怒ってる愛奈に声を掛けられた。嫉妬、なんだろう。よくわからんが……。
「ああ、わかった」
「ふぅ……。折角のパーティーなので今日は楽しくしましょう!」
愛奈がそう宣言をした。恋華が元気よく返事、星華が控えめに返事、冬美は苦笑しながらグラスを掲げた。僕も同じように少し笑いながらグラスを軽く上げた。そして、
「「「「「カンパーイ!」」」」」
カチンと乾杯をした。こう言った雰囲気も悪くはないな。自然と笑みを浮かべた。
そして少し経ってから、
「そうだ。みんなにクリスマスプレゼントがある」
僕が唐突に言うとみんなが僕を見る。僕はその中で一人一人にプレゼントを手渡す。今は小さな箱に入っている。
「秋渡、開けていい?」
「ああ。喜んでくれるかはわからないけどな」
全員が小さな箱の包みを開けてカパッと箱を開ける。四人の反応は、
「うわぁ……。綺麗……♪」
「……わぁ♪」
「綺麗な……ペンダント……♪」
「……嬉しい……です♪」
この感じからしたら喜んでもらえた、のかな。
「秋渡!」
「……秋渡」
「秋渡君」
「秋渡さん!」
全員が僕を呼び、そして、
「「「「ありがとう!!」」」」
最高の笑顔で声を合わせ、お礼を言ってきた。それに僕は、
「喜んでもらえて何よりだ。どういたしまして」
と言った。
全員に喜んでもらえてよかった。そしてみんながその場で付けたペンダントはやはり僕がイメージした色が似合っていた。
その後は楽しく喋りながら食事をして、帰りは愛奈のメイドに車で自宅まで送ってもらった。
……メリークリスマス。恋華、星華、冬美、愛奈。
今日は今までの中で最高のクリスマスだったぜ。こういった日も悪くない。イベントはあまり好きじゃないが仲間と一緒なのは楽しかったな。信頼できるからこそ、だろうな。
もう一度言おう。
メリークリスマス……。
秋渡「読者のみなさん、こんばんわ。これを投稿したのが夜だから『こんばんわ』な。作者は今疲れて少しぐったりしてるから代わりに僕達が何か言うことになったんだ」
恋華「読者のみなさん、こんばんわ~!そして秋渡、クリスマスだよ、クリスマス!」
秋渡「わかってるよ。まぁ丁度クリスマスが近いってことで作者はクリスマスの話にしたらしい」
恋華「へー、そうなんだ~」
秋渡「ああ。まぁうまく書けてる自信はあまりないらしいがそこは温かい目で見てやってほしい。これでもかなり考え込んでいたからな」
恋華「そうなの?ってこれだけ作者からしたら長文になったんだしね。仕方ないか」
秋渡「そういうことだ。おっと、もう時間だな。それじゃあ、」
秋渡・恋華「さよならー!」