第十三話 アイドル木上美沙、五神将青葉龍大
疲れた~!
とりあえず更新です。
翌日。
僕は八時に目が覚めた。休みだから別にまだ寝ていてもいいのだが、買い出しもある。結局昨日はろくに買えなかったからな。まぁ開店までまだ一時間あるんだがな。
「さて、とりあえず朝飯にすっか。なんかあるかや」
自室から出てキッチンへ。冷蔵庫の中を見たらやはり何もない。当然と言えば当然だが……。さて、どうする……。
「悩んでもしゃーねー。コンビニ行くか」
そこでパンでも買って、そのままデパートに向かう。うん、そうしよう。自室へ戻り着替える。そして家を出て鍵をかけ、近くのコンビニへ向かう。
ーー
同時刻。
秋渡が来たデパートではとある工作がされていた。
「さて、これであとは木上のイベントが始まって東西南北全てからの狙撃っと。スナイパーによる狙撃だから外すことはねーな」
男ーー青葉龍大はそう言った。
そしてその付き人である男も、
「当然です。仮にそれで生き延びても貴方様がいるのです。彼女らに逃げ場はありませんよ」
男ーー悠もそう言う。
「それは買い被りすぎだ。五神将とはいえども何でもできる訳じゃない。あ、紅茶を入れてくれないか?」
青葉はポテチをパリパリ食べながら悠に言う。
「謙虚なさらないで下さい。真実ですから。紅茶はいつもと同じでよろしいのですか?」
青葉がいつも飲む紅茶はレモンティーだ。悠もそれを承知しているが、たまに彼は飲む紅茶の味を変える。だから悠は聞いた。
「いや、今日はアップルティーにしてくれ」
「了解しました」
一旦悠は部屋から去り、部屋には青葉一人になる。
「さて、残り三十分か。そういや五神将の棗と黒坂はここにいる男に敗れたんだったな。念のため注意しておくか……」
見た目は真剣だが、内心はその男との戦いもしてみたいと考えているほど笑っていた。それだけで彼がどれだけ好戦的かを物語っていた。
ーー
「ヘックシッ!」
いきなりクシャミ。誰か噂してんのかな?だとしたらそいつは相当暇人だな。
んなことはどうでもいいとしてだ。今はデパートの前にいる。……予想はしていたがスゲー人数だ。どっかに橋本でもいねーかな。あ、相澤がいる可能性も高いな。
とはいえ、向こうは僕に簡単に気付かないだろうな。なんせ僕は今フードを被ってるし。カラコンは変わらず付けてる。
お、そんな話をしてたら橋本が来た。えらくオシャレしてんなぁ。
「よう、橋本」
「ん?あれ、世刻じゃねーか!ここで会うとはな!」
僕は橋本に近付き、声を掛けた。さすがにここまで近ければ気付くだろう。短く挨拶を交わす。
「って、そうか、お前昨日ここに買い物に来たんだったな。買えたか?」
「買えたと言えば買えたが夕飯分しか買えなかった」
さすがにあれだけだと少なすぎる。思わず溜め息が出る。
「はは、昨日の混み具合の様子じゃそれも仕方ないよ。あ、そうだ。ついでだし俺とこの抽選会行こうぜ!」
と、お誘い。別に買い出しは後でもいいしすぐに帰れるからいっか。
「いいぞ」
ーー
というわけで今は橋本と抽選会の会場にいる。そこで見た光景で意外なのは男女比率がほぼ一緒だったことだな。
木上、か。名は聞いたことがあるが見たことはないんだよな。テレビあんま見ねーし。けど見た感じこの会場だけで五百はいる。つまりはそれだけ人気が高いというわけだ。
「うわ……。こん中やんのか……。さすがに萎えるな……」
僕の横でテンションが駄々落ち中の橋本。気持ちはわからんでもない。ギュウギュウ詰めだもんな。
ちなみにどうでもいいが僕はフードを被ったままだ。
……お、司会の人らしき女が出てきた。いよいよ始まるのか。
「始まるか。最初は何なんだ?」
まさかいきなり抽選会なんてことはないだろう。だったらもっと人数が減らされるはず。
「まずは普通に歌みたいだぞ。美沙の歌声は綺麗だから期待していいぞ!」
説明は嬉しいがなぜそんなにお前が胸を張っているんだ……。感謝よりも呆れてくる。
と、橋本と駄弁っていたら司会の女が出てきて、
「えー、まずはこのイベントに参加してくれてどうもありがとうございます!これより木上美沙によるミニライブとこの中からたった一人が選ばれる木上美沙との一日デート抽選会を始めます!」
わぁーーーーーー!!!
司会の言葉に盛り上がる輩。正直うっさい。橋本も横で叫んでいた。……元気な奴だ。
「では早速登場です。美沙ちゃーん!!」
「「「「美沙ちゃーーん!!」」」」
司会と共にギャラリーが木上を呼ぶ。すると、ステージの横から一人の少女が出てきた。
「(あれが木上美沙……)」
少し離れてるからよくわからんが顔立ちはとても整っていた。髪はショートで綺麗な緑色をしていた。スタイルも抜群。出るとこは出て、控えるべきとこは控えている。まさにアイドルと言った感じ。目はパッチリしていてエメラルドみたいな緑色をしている。まさに歌姫と言った感じにもなる。そんな彼女の登場だけで大盛り上がり。……ウゼェ。てかあっちぃ。
「みんな、今日は来てくれてありがとね!」
木上がマイクを持ってこれまた綺麗なソプラノボイスで話す。
完璧、だな。男女共に虜にできるのがよくわかった。
「私は今日をいつものライブ以上に楽しみにしてたんだ!この後のデート、誰とになるかわからないけど楽しみにしてるよ!じゃ、始めるよ!まずは『ダイアモンド』!」
わぁーーーーーー!!!
威力絶大であろう笑顔にまた盛り上がる。そして歌が始まったこれまた綺麗な歌声だな。溜め息が出る。そして橋本を見る。……とても盛り上がっていた。いつものクールな感じは全くない。残念過ぎる。……ん?なんだあいつ?通信機かなんかで何か話してんぞ?しかも木上に敵意を向けてる。……妙だな。何か嫌な予感がしてきた。けどどうする?ここでは何もできない。人が多すぎる。どうする……。
と、通信機で話していた男は通信が終わったのか木上を再び見る。あれは観察の目、だな?けど今は気にしても意味ねーか。改めて木上を見る。
「~♪」
変わらず綺麗なソプラノボイスで歌っている。凄いな。会場もかなりボルテージMAX状態だ。熱気がヤバイ。けどま、こんな歌聞いたらそうなるか。と、ここで歌が終わった。盛大な拍手が送られる。それに木上は照れ臭そうにはにかむ。
ーー
十分後。
ミニライブが終わり、木上が一礼してステージから去る。しかしステージから降りる直前に一瞬チラリと誰かを見ていた気がする。てか目があった気がする。なんて、自意識過剰にも程があるな。
と、んなアホなことを考えていたら司会の女が、
「ではこれより木上美沙とのデート抽選会を始めます!当たったらラッキーですね♪」
まぁそうだな。これだけの人数だもんな。
「楽しみだな、世刻!」
「お前がとてつもなく楽しみなのはわかったからヨダレ拭け」
興奮して息遣いが荒い橋本。お前、そんなキャラだったっけ?
ちなみに僕の抽選券の番号は九十番だ。意外に早い方だったらしい。どうでもいいが。
司会が木上に紙を引かせる。……気のせいかもしれないが木上は何かを祈るように引いた。なんでだ?
そして紙を開いた。その番号を司会に言う。そして、
「決まりました!本日木上美沙との一日デート券を手に入れたのは、九十番の方です!」
ほう、九十の奴か。そいつは良かったじゃないか……って、ん?九十?確か……チラッ。自分の手元の紙を見る。そこには間違いなく九十と書かれていた。横を見る。橋本は肩を落としていたが、僕の番号を見ると、
「おぉっ!?お前九十番じゃないか!!」
めちゃくちゃ大声で番号を暴露してくれやがった。お陰で周りの奴等にも、おぉっ!?だの、おめでとうっ!だの言われた。くそぅ!なぜ当たるんだ!?
「ではそこの男性で決定です!どうぞこちらへ!」
え、ステージに行くの?ヤなんだけど……。
「行ってこいよ、世刻!」
トン、と背中を橋本に押される。仕方ない。渋々行くか……。
ステージへ向かう。そしてステージに着くと心無しかめっちゃ木上にガン見されていた。この目、こんな奴と当たったのが悲しいからだろうな。そういやライブ前にこれを楽しみにしてたって言ってたな。こりゃ悲しいだろうな。
「ではお名前をどうぞ!」
「世刻秋渡だ」
名乗るのは好きじゃないけど仕方ねーか。はぁ……。頭ん中で溜め息は吐く。もう諦めるか。これは逃げらんないし。
「おめでとうございます、世刻さん!では世刻さん、今日一日、楽しんで下さいね!?」
異様にテンションが高い司会の女。なんで興奮してんだろ?
「じゃあそうさせてもらうわ」
逆にテンションが低い僕。帰りてぇ……。
と、そこでいつの間にか横に木上が来ていた。何故か顔が少し赤い。あ、ライブで歌った後だからか。
「今日はよろしくお願いしますね、世刻さん!」
「あぁ、よろしくな」
とりあえず半分自棄で行くか。そうしねーとやってらんねーや。
「では早速行きましょう、世刻さん!」
……気のせいか?さっきのライブの時よりも明るくなっているような……。そして腕を掴むのをやめて頂きたい。当たってるし。どことは言わねーけど。
さてはて、この後どうなるのかね?さっきの男のことも気になるしな。これなら一回戻って刀だけでも持ってきておけばよかったな。
「行くって、どこに?」
「とりあえずここの町を回りたいです!」
「大雑把だな。ま、いいか」
とはいえ僕はデートスポットはどこも知らない。どうすっかな。しかも木上と行ける場所は限られている。どうす……!?
「あぶねぇっ!」
「キャッ!?」
木上を引っ張り、腕の中に包む。なぜか抵抗する素振りを見せない。あ、急なことだから驚いてんのか。
いや、それより……、
「(今のはサプレッサー付きのライフル、か?ともかくここは危険だな。どうする…)」
「あ、あの~、世刻さん?」
「ん?あ、悪い」
ずっと木上を抱いていたのに今更になって気付く。そっと木上を放す。気分を悪くしただろうな、きっと。
「い、いきなり……、どうしたんですか?」
オドオドしながら聞いてくる木上。この感じだと撃たれたのに気付かなかったみたいだな。だとすると正直に言うべきなのか黙っとくべきなのか、どうすっかな。
……いや、普通に言おう。けどまずは場所を変えた方がいいな。
「後で説明する。けど少し移動しよう」
さっきみたいに強引だけども、木上の手を引っ張り、走る。木上は「えっ?えっ?」と何もわからないまま僕に引っ張られる。
クソッ!あいつ、一体何なんだ!?方角的に家にまでは追えないはず。しかも撃ってきた場所からは死角にもなる。これなら行けるはずだ。
パシュッ
「っ!?」
突然左肩に痛みが来る。撃たれた!?まさか追い付かれたのか!?いや、それはないな。なんせ死角に入った時点でもう追えないはずなんだ。だとしたら考えられることはただ一つ。
……他にもスナイパーがいるということだ。
「世刻さん!?」
木上が慌てて僕を支える。けど僕はそれを制して、
「木上、どっかの建物に入るぞ」
と言った。木上はよくわかっていないだろうけど頷く。建物に入ってしまえばなんとかなる。多分標的は僕と木上だけだ。なら他人に紛れてしまえば撃てないだろう。しかし、
「どうしよう……、近くに入れそうな建物がないです……」
なんだと!?慌てて周りを見る。確かにない。けどここなら自宅が近い。なら自宅に行った方がいいだろう。
「ここからなら家が近い。行こう」
「は、はい!」
木上から返事を聞く。心なしか声がウキウキしていた気がする。まぁんなことはいいか。
僕達はこのまま僕の家へ向かった。
誰だったかはわからないがこのまま終わると思わないでくれよ!やられたらやり返す。それだけだ。
どうも、アイギアスです。
またまた遅くなってしまいました。申し訳ありません。
さて、まずは一つ謝罪します。前回の後書きで申した新たなヒロイン、今回で登場してました。読み返したのが遅くなったため、気付くのが遅れてしまい、申し訳ありませんでした。
という訳で謝罪は短いですが終了です。
できれば次回も読んでもらえたら嬉しいです。