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第百三十一話 夜中の遠い客

どうしてここまで熱狂したかは分からんが、流石に時間が時間だし近所迷惑も考えて三人で止めに入る。明菜からやっと終わったという顔からして思ったよりも体力を消耗したらしい。うん、素直にもっと早く止めるべきだったか。ちなみに僕が止めに入ったら意外にもすぐに皆は止まってくれた。渋々ながらも皆了承した。

なので今部屋には僕だけになっている。皆はやはり騒いで疲れたのかお風呂に入った後は先程の喧嘩が嘘のように静かだった。それに安堵して僕はベッドに横になり、外を眺めている。


「気配はするが何かをする気はなし……か?」


部屋に入って外からの強大な気配に身構えるが殺気を感じず、距離も縮めない事から手を出してくる事はないのだろう。しかもその距離も一瞬で埋めるには遠すぎる。


「しかし全員が一緒とは……。流石に落ち着かないな」


襲撃されても大丈夫なように刀を近くに置いておく。そして再びあいつらの方へと視線を向けるのだった。


ーー

春樹side


「やっぱり気付くんだねぇ、彼。気配はほとんど消したつもりだったんだけどなぁ」


春樹は秋渡に宣戦布告した丘で座りながら楽しそうに笑う。


「オメーとアイツが規格外なのは分かってたけどこの距離でも気付くのか。しかも多分暁だけじゃなくて俺らにも気付いてるぞ?」


大鎌を背もたれにして龍大は呆れるように息を吐く。


「気配探知は優れてるとは思ってたが殺気もない相手にここまででも分かるのか」


木に背を預けながら銃を少し弄っている虎雄。秋渡の察知力に驚きを隠せていなかった。


「大昔なら暗殺されそうでも返り討ちにしそうだよな、秋渡は」


春樹の隣に腰を下ろして笑う達也には皆が頷く。


「守るべき相手がいる事で強くなる……か。そんなのは物語の話だと思ってたんだけどなぁ」


春樹は楽しそうに笑って酒を煽る。


「俺達全員がそれで負けてるからな。所詮は作り話だけと思ってたのが……か。まともな一太刀すらも受けねぇんだからよ」


溜め息を吐きながら龍大は自分がこうして傷一つ与えられないのは春樹だけだとどこかで思っていた。だが幸紀も美沙も守る姿からそこで差が出た事を実感するようになっていた。


「抜刀術と二刀流が本職なのは分かってても一刀だけでも化け物だったからな、あいつ。マシンガン並の俺の銃も機械人間も惨敗だった」


自分の銃を見つめながらも目を閉じ、あの時の事を鮮明に思い出せる。連射数は流石に減ってはいてもあれだけの弾幕を一つ残らず落としたのが秋渡だった。あの日は友を助けるためうごいてたとはいえ、足止めに使ってた機械人間が全て破壊され、挙句自分らも負けた。春樹以外で初めて味わった完敗であった。


「味方なら最強、敵なら最悪の男だろうからな。アイツの女を狙うやつも多いだろうけど怒らせたらどうやっても負けるしな」


達也は笑いながら言うと改めて秋渡の家の方角へ視線を向ける。


「今なら女性を想う気持ちも少しは分かる。ただ俺らはその機会がねぇだけだからな」


「何よりも怖いのはアイツを激怒させる事だからね。怒りは冷静さを失わせると言うのに怒りながらも動きは冷静だった。全く、とことん規格外だよ、君は」


春樹はグイッと酒を飲むと同時に立ち上がり、仲間三人に向き直る。


「さ、帰ろうか。いつまでもここにいたら向こうが飛んできかねない」


春樹がそう言うと三人も頷く。そしてあの日と同じく、一瞬で消えた彼らのいた場所には静かな風が吹いているだけであった。


ーー


「(いなくなったか)」


四人の気配がなくなったのを確認し、皆がちゃんと寝ているかを物音を立てないようにしながら確認する。リビングに敷かれた布団からは皆の寝息が聞こえており、しっかり休んでる事を確認する。それを見て部屋に戻ろうとした時だった。


「……秋渡くん」


ボソッと名前を呼んだ声が聞こえた方に振り返ると美沙は暗い中でも分かるくらいこちらを見つめていた。


「……起こしたか?」


「ううん。まだ興奮が冷めてなくて寝てなかっただけだよ」


「そうか」


起こした訳じゃないことに安堵する。確かに美沙は皆よりも騒いではなかったから疲れも皆ほどなかったのだろう。


「それで、どうした?」


布団も近かったので側に寄って声を掛ける。美沙は寝間着姿が恥ずかしいのか布団で口元まで隠す。愛らしい姿に笑いそうになるが堪える。


「……やっぱり、一緒に寝ちゃダメかなって」


「……皆から文句飛んでくるぞ」


「その時はその時。……ダメ?」


一応皆に何か言われるのは承知してるようだが、どうするかな。美沙は暗闇でも分かるくらい顔を赤くしている。……さっきあいつらの気配もあったから悩んだが、今更何かするとは思えないしこの様子だとこっそりこっちに来ていたかもしれない。


「皆から何か言われても知らないからな。……おいで」


「!うん、ありがとう」


こうして美沙と同じベッドで寝ることになった。リビングを出る瞬間、明菜のジト目が感じたが、僕は肩をすくめるだけだった。それに枕を抱く美沙が首を傾げるが、「なんでもない」と伝えて部屋まで行く。そしてベッドに横になると少し窓側にズレて空いた空間に美沙がすっぽり収まる。ベッドは一人分としてならまだ大きい方ではあるが、二人になればそれなりに狭い。でも腕の中の美沙はどこか嬉しそうにくっついて来る。


「秋渡くんの匂いがする。凄く安心する匂いだね……」


「そうか?自分じゃ分からんな」


「ふふ、そうかもね」


匂いを嗅がれるのは恥ずかしい気もするが美沙が嬉しそうだし何も言わないでおこう。美沙の髪を梳くように頭を撫でてるとあの戦いから時間が経った事でこうしてゆっくり触れ合って気付いた。


「髪、伸ばしてるんだな」


「気付いたんだね。うん、少し伸ばそうかなって」


「綺麗な緑色が映えるな。触り心地もいいし」


髪が少し伸びるだけで女の子はこんなに見た目も変わるんだな。サラサラな髪を撫でていると美沙は更に体を密着させてくる。


「っと、女の髪を急に触るのは良くないんだったか?」


確か橋本辺りに言われた気がする。しかし美沙は手を離そうとすると僕の手を掴み、再び自分の頭に置く。


「好きな人なら話は別だよ。もう少し撫でてくれる?」


「……ふふ、仰せのままに」


本人がそう言うなら大丈夫だろうと再び撫で始める。家で多分舞が使っているのと同じと思われるシャンプーに女の子のいい匂いがする。


「……これで結婚した後だったらここで愛し合ってたのかな」


ポツリとこぼされた言葉に思わず手が止まる。


「……今それは言わないでくれ」


「狼になっちゃうから?」


少し照れながら言うと揶揄うように美沙が顔を上げる。どこか期待している目で見てくる姿はアイドルとして培われた笑顔の象徴なのだろうか。


「内緒だ。……何れそれは分かる」


「ん、分かった。……じゃあ、おやすみ、秋渡くん」


「ああ、おやすみ、美沙」


それきり会話は途切れ、僕は美沙の頭を撫でる。されるがまま美沙は目を閉じ、やがてスゥスゥと寝息が聞こえてくる。肩より下まで伸びた髪は恐らくあの決戦日から切ってないのだろう。それほどの時間しか経ってないと言うべきなのかそれほどまで経ってようやくと言うべきなのか迷うが、まぁいいだろう。


「それよりも明日の朝の言い訳を考えなくちゃな……」


そう思いながらもそれなりに疲れていた体は、すぐに僕にも睡魔が襲い、やがて美沙と抱きしめ合いながら眠るのだった。

ア「どうも、アイギアスです!」

春「春樹だよ」

達「達也だ」

ア「今回は少し出番があったお二人ですね」

春「バチバチに殺し合った彼の様子を見に来ただけだけど、彼の探知力は最早ゲームとかに居そうなレベルだったね〜」

達「いや、それはお前もだろう。簡単に自分の場所把握されるの結構怖いからな?」

春「ん?でも探知とかは君らも出来るだろう?」

達「お前らレベルと並べるなよ。正直同レベルに見られてんの恐ろしいんだぞ?」

ア「五神将の二人がとんでもスペックですからね……」

春「いやいや、僕も彼も龍大程の人心掌握は出来ないし虎雄みたいな機械兵器や改造は出来ないし君みたいな部下を簡単にまとめることは出来ないよ?」

達「他の二人はともかく俺のは出来るだろ。まぁ秋渡は部下とかはいないから実際は分からんが……」

春「僕のは二つ名に助けられてる所があるよ。彼は確かにカリスマ性でまとめられそうな気もするけどね」

ア「龍大さんは恐怖とかではないのですか?」

春「ああ見えて龍大の周りには彼を慕って集まった人が多いんだよ。だから人を集めるのは彼が一番さ。でも本人からも聞いてるけどアイツも達也みたいなリーダーシップは発揮出来ないって言ってたよ?」

達「……青葉がそんな事言ってるなんてな」

ア「集めるのは龍大さんが、纏めるのは達也さんがって事ですか?」

春「そういう事。ま、僕らの事はそんな話さなくてもいいだろう。そろそろ終わろうか!それじゃ……」

ア・春・達「また次話で!」


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