第百三十話 お泊まり会の騒動
恋華達の手料理も大体食べ終え、余り物はラップをしたりして片付けた辺りで小さな宴会は終わりを迎えた……。と僕は勝手に思ってた。
『いや、それで電話してくるのは流石に予想してなかったんだが……』
「分かってる。それは分かってるんだけどな。五神将に聞く訳にはいかないし相談するならお前かなって思ったんだ」
電話口の向こうから呆れたような、困惑するような返事がされる。
『あの子ら全員嫁にするんだろ?なら別に問題ないんじゃ……』
「冷静に考えてくれ。その中に現役アイドル、大財閥の令嬢、それに匹敵する令嬢と一夜過ごす事のヤバさを」
『それこそ暁との戦いがあったんだから今更じゃね?』
僕は今、恋華達が誰が僕と寝るかで揉めてる中、それを止める方法を橋本に尋ねるため電話していた。明菜がそれを容認してくれたから良かったが、橋本からの返事は思ったよりも淡々としていた。
『世間の目は気にするなよ。そもそも誰かにそれが漏れる訳じゃないだろう?』
「……その親にはバレるが?」
『五神将にそこまで意見言える人はいないだろうよ……。立場はお前が上なんだぞ……』
「……そうかもしれんけどさ」
『歯切れ悪いな……。本当にどうしたんだよ?』
「七人全員の目がガチだったから両親にバレる云々は置いといても鬼気迫る感じで正直怖い」
あいつらあんな目するの?ってレベルで闘志が凄まじかった。いや、星華は若干呆れていたが……。スマホ越しの友人は打ち上げパーティーの話は知っている。誘ったけど来なかったからな。理由も聞いてるし無理強いする気もなかったからそれはいい。まさかヘルプが来るとは思わなかっただろう。僕が逆の立場でもそう思う。
『……俺、美沙ちゃんとプライベートで会える事よりもお前に睨まれたくないってのもあって今日行かなかったんだがな』
「その気遣いは本当にありがたいとは思ってる。けど祝いだからそれ抜きで来て欲しかった。男女比率が違うと気まずいのはいつでも変わらんらしい」
『どう考えても今の世刻の悩みは男女比率じゃないだろう……。仮に飯はともかくどの道俺も相澤も多分泊まることなく帰ると思うぞ。普通に迷惑と考えて』
「……そうか。そう言われると何も言えないな」
少し残念そうに呟く。
『まぁ結婚したらどうせ毎日の様になるんだ。その前の予行練習とでも思っておきなよ』
橋本はそれが分かったのか微妙に笑いながらもそう言ってくれた。僕も「そう思うことにする」と言うと橋本は満足そうに頷いたかのような返事をした。
ーー
結局アドバイスといえる事は得られなかったが、何となく気持ちが落ち着いたように感じつつリビングへと戻る。戻ったことに即座に気付いた明菜から「おかえり」と言われたので「ただいま」と返す。恋華達は未だに揉めてるがその中でも美沙と幸紀はその輪から外れていた。
「二人はいいのか?」
揉めてる声を聞きながら二人に声を掛ける。美沙は思い出したように笑いながら、幸紀は何処か勝ち誇るような顔をしていた。
「よくよく考えたら自分はアイドルって事を忘れちゃいけないって思ったの」
「私は秋渡さんと寝た事がありますから!」
あー、言われてみれば幸紀とは別に初めてではないんだな。美沙の主張も分かる。相手が誰であろうともアイドルとして一線を越えるのはせめてちゃんとした交際があってからだろう。マネージャー達が慌てふためく所が容易に想像つく。まぁ幸紀の言葉を聞いて若干むくれた顔もした。ただ……。
「それだと愛奈があそこで揉めてるのはおかしいよな……」
令嬢である愛奈も本来ならば異性と寝る事をするのは結婚後だと思う。いや、愛奈の両親の態度から許容されてるのは分かるが、それでも僕の中のイメージではそんなイメージが強い。
「まぁ彼女の性格や普段の態度からはイメージが容易だよね」
美沙は少し羨ましそうに愛奈を見る。そもそも美沙の両親も僕との一夫多妻を苦虫を噛み潰したような顔をしていたんだ。この泊まることも恐らく他の子がいるから許したのだろう。反対に愛奈の両親は寧ろ乗り気だったから問題なく許されたからな。
「……こんなこと、言う日が来るとは思わなかったが……」
横目に美沙を、そして幸紀を見て、そして揉めている他のメンバーも見る。
「皆僕の嫁になるんだ。美沙も……愛奈も。どうなるかは確かに分からないけど僕は全員を守る剣士であり夫にもなるからな」
言ってて恥ずかしくなり顔が赤くなる。まさか漫画とか小説でしか言わない事を現実で言う日が来るとは……。暁辺りに聞かれたら爆笑されそうだ。それに怒って斬り掛かる真似をしてもアイツには確実に防がれる。黒坂と青葉はどう反応するかは分からんが棗は笑いながらも肯定しそうだ。思わず恥ずかしさで目を閉じると横から美沙の笑い声がする。
「……ふふ、そうだね。五神将の嫁になるってちゃんと自覚しておかなきゃだね」
アイドルって事もあるから美沙には炎上とかもあるだろう。過去には熱愛報道もあったらしいが美沙の冷たい言葉でそれはでっち上げなのが発覚したらしい。ファン曰く『あんな美沙ちゃんは初めて見た。蔑むような瞳が本気だったように見える』との事らしい。
「そういや僕の婚約者ってなると過去の事からまた言われるんじゃないのか?」
ふと思い出して聞いてみる。幸紀も気になるのか黙って美沙を見ていた。美沙は少し考える素振りを見せだが。
「私自身が嫌じゃないし、お嫁さんになる事は知られていると思うから多分大丈夫だよ。それに……」
美沙は顔を少し赤らめながら僕の裾を軽く握る。
「……何かあっても私の王子様は助けてくれるから」
美沙ははにかみながら答えた。
「確かにそうですね。秋渡さんならきっと、皆を守ってくれます」
寄り添いながら幸紀も肯定する。いや、まぁそりゃ嫁だし守るのは夫の責務であるとも思ってるからそれはいいんだが……。全面の信頼は歯痒いな……。
「……気楽に言ってくれるな。まぁちゃんと守るけどさ」
「うん、よろしくね、旦那様♪」
「はい!お願いします、秋渡さん♪」
笑顔で答える二人に苦笑する。あとやはり旦那様って呼ばれ方は何時になっても慣れられそうにない。あーだこーだ言ってる他の嫁達からもそう呼ばれるとしても慣れるのは難しそうだ。明菜がいい加減疲れたのかこちらを見て「何とかして」と目で訴えて来るが肩を竦めて「出来たらとっくにやってる」と返す。それを見た明菜は溜め息を吐く。
「……前から思ったんだけど」
そこでふと美沙が僕と明菜を見ながら少し考える素振りをする。
「明菜ちゃんはお嫁さんにはならないの?」
「それは私も思いました」
二人に見られ、舞達と戯れる明菜を見る。
「……明菜が望むなら多分今更一人増えた所で文句はないとは思う。が、明菜はあまり望んではいないみたいなんだ」
元の仲間達との事等もあるが、一番は明菜の気持ちだ。今までからして恋愛とかした事はないだろうし、ここにいるのも恩返しの為と聞いている。だから明菜の本心は分からないが少なくとも結婚については考えてはないのだろう。それとなく聞いた事もあるが、乗り気ではない事は分かってるし。あくまで恩返しで僕と舞に尽くすという立ち位置で満足してるようでもあるからな。
「(けどせっかくだしあの頃と考えが変わってるかもしれんからもう一度本心を聞いてみるのもいいかもしれんな)」
美沙と幸紀は「そっか……」とだけ答え、また皆へ視線を向けるのであった。ところでこの喧嘩……、喧嘩?はいつ終わってくれるのだろうか。なんだかんだ言ってそれなりの時間になっているのにヒートアップしてるのかまだ終わる様子がなさそうなのを美沙と幸紀と三人で眺めるのであった。
ア「どうも、アイギアスです!」
秋「秋渡だ」
美「美沙です」
幸「幸紀です」
ア「またしてもだいぶ時間が経ってしまいました。まずはそれを謝罪します。すみませんでした」
秋「詳しい作者の事情は前回とかの後書きで書いてあるから遅れた理由はそれもあると察してくれると有難いな」
幸「あと作者さんは戦闘シーンは頭でイメージ出来ても日常編とかだとあまりイメージが湧かなくて難しいそうです」
美「自分で言うのもなんだけどネタに使えそうな事は多いと思うんだけどね」
秋「仕方ないさ。学生時代から書いてて社会人になったら周りの環境も変わる。時間が経ちすぎて見返してから思い出すこともあるみたいだしな」
幸「気付いたら話数もかなりの量になりましたからね」
ア「特別編とかを除いても130話にもなりました!いつも読んで下さっている皆様には感謝しかないです!」
秋「本当は一月に更新したかったらしいが……まぁ、現実の方では色々あったからそれもあって進められなかったんだよな」
ア「そうですね。何がとは敢えて言いませんが被災した方達のご無事を祈る事しか出来ませんでしたから……」
美「まだ終わってないって思うとまだまだ油断は出来ないもんね……」
秋「そうだな。ただこうして投稿出来てる事から分かる通り作者は無事だから心配してくれていた方達……いるのか分からんが……には感謝する」
ア「まだ予断を許さない状況ですがこれを読んで少しでも楽しんで貰えたらなとは思っています!とりあえず今回はここまでにしようと思います!それでは……」
ア・秋・美・幸「また次話で!」
おまけ〜
秋「そういや年明けしてから大分経っちゃったけど新年の挨拶はしなくてよかったんかね」
幸「流石に今しても遅すぎるとは思いますが……」
美「あ〜、一月に更新したかったのはそれもあったんだね……」