第百二十九話 昔からの嫁候補
久々の投稿です。
少しして恋華と舞のポテト講座(?)が終わり、無事作り終えた瞬間、恋華と舞は星華からジト目を送られていた。なんでも他のをテキパキと作るまでは良かったが、ポテト作りだけに関して周りも引くほどの熱気を感じたらしく、唐揚げとかを作っていた星華はその場を離れられなくて元よりキッチンに立たなかった愛奈と美沙を初めとして冬美と明菜も避難したらしい。結果、まだ調理中だった星華がその横でずっと恋華と舞の先程のようなやり取りをずっと聞く羽目になったらしい。
「……流石にあそこまで横で騒がれると作りにくい」
「「ごめんなさい……」」
星華にそう言われて二人はシュンとしながらも謝る。だが星華も別に怒っている訳ではないと思うのでこの話はすぐに終わった。その間に美沙と愛奈が皆のコップに飲み物を注いでいた。
そして全員にコップが行き渡り、それを恋華が確認すると。
「さて、それじゃあ……」
恋華が軽く周りを見渡す。
「秋渡との婚約、退院祝い、暁春樹との勝利を祝って……」
皆がコップを持ち、恋華の次の言葉を待つ。
「乾杯!」
「「「「「かんぱーい!」」」」」
それぞれコップをカチンと当て、祝勝会が始まったのだった。
ーー
「秋渡さん、どれから食べますか?」
「そうだな……」
愛奈に先を譲られ、僕はテーブルの上にあるご馳走を眺める。恋華や舞は期待する目で見ているが、やはりポテトは少ししてからがいい。まずは唐揚げから頂くとしよう。口に入れた瞬間、脂の滴りと醤油の味が口に広まる。周りはカリッとしてるが中はモチモチしていて油加減とか味付けの濃さがそこまで強過ぎないため食べても飽きないような味だ。
「ん、これは醤油漬けか?それにしてもしょっぱくないからか食べやすいな」
「……ありがと」
素直な感想を言うと星華が照れながらお礼を言う。恋華達が「負けた〜!」とか言ってるが本気で悔しがってるようには見えないので特に問題はないだろう。僕が手を付けたからか皆も自由に食べていく。
「あ、確かにこの唐揚げ美味しい!星華ちゃん凄いね!」
「……料理はしてて楽しいから。……妹やお父さんとお母さんも喜んでくれてたし皆も喜んでくれるかなって」
「星華さん、今度作り方教えてください。私も振舞ってみたいです」
「……ん、いいよ、幸紀さん」
美沙が感動するように唐揚げを食べて幸紀は対抗心……なのか何かを燃やしながら星華に尋ねると星華も嫌な素振りを見せずに了承する。僕はそれを見ながら他の料理も均等に食べていく。……それにしても。
「(やっぱり多くないか?)」
愛奈の家から送られた寿司も考えると人数的に大丈夫でも僕以外は女だ。流石にガッツリ食べるのは無理だろう。
「それで、お兄様の勇姿は皆が感動するものなのですよ!」
「まぁ誰も勝てないと言われてた暁春樹に勝ってるからね」
「これはお兄様を崇拝する方が更に増えるのでは……?」
「崇拝する奴って元々いたのか……?ここのメンバーは崇拝とは違うだろ?」
舞がなんか僕の事を熱弁みたいに語っていたが明菜も飲み物を飲みながらもしっかり答える。だがその途中のおかしい発言に思わず口を挟んでしまう。なんだ崇拝って……。
「いてもおかしくはないわよ?秋渡君、他の五神将も倒してしまってるのだし。少なくともその光景を見た人の中にいてもおかしくはないわ」
冬美がそう言うと舞が大きく頷く。明菜は苦笑しているがどうやら否定してくれる気はないようだ。そしてトドメは……。
「というよりも既に凛桜にはたくさんの崇拝者がいますよね?会長ですらそれっぽく思えますし」
「あー確かにね。凛桜に行く時かなり秋渡君がいないか期待の目をされるわ……」
「そもそも不可能を可能にしたのを目撃した方もたくさんいましたから……」
「まぁそうね。あの時計破壊戦でそれが実証されてるのよね」
時計破壊戦か。懐かしく感じるがまだ半年ちょい前の話なんだよな……。あの時は凄かった。女の執念というか積極性が少し怖かったな。
「まぁその中から私はこの中で唯一選ばれた凛桜の者ですから、とても嬉しいですよ、秋渡さん」
「……あ、ああ」
幸紀に笑顔で誇らしげに言われ、思わず動揺するとそれを見て他の皆が笑う。それに釣られ僕も思わず笑ってしまう。弓月とかに聞かれたら嫉妬の視線で見られそうだ。
「……うん、やっぱり五神将との絡みは恐怖以外にも与えてくれてたんだね」
美沙がしみじみとそう呟く。それに他の皆も少し考えてから頷いていた。
「何より凄いのはその全てを秋渡は打ち破った事だよね」
「怖かったのに秋渡くんのおかげでそれも和らいだからね!」
恋華が誇らしげに言うと美沙が食いつくように答える。愛奈もクスクスと笑っていたが小さく「分かります!」と頷いている。
「あー、やめやめ。その話は今度にしよう。……悪い気はしないけどな」
「……ん、そうだね。……折角楽しんでる中なんだし」
「暗い話ではないけど食事中にする話でもないしね」
僕が少し照れくさそうに話を終わらせると星華が口元を少しだけ緩めながら頷き、明菜も苦笑しながらも同意する。ここにいる全員が一度は命の危険があった。だがそれもなんとか避けられ、こうして皆で話している。何度も思うがやはりこういう風に笑い合い、話し合い、共にいる事でそれを実感できる。
「お兄様?どうされましたか?」
「ん?何がだ?」
ふと舞に声を掛けられる。
「いえ、なんだかとても嬉しそうなお顔をされてたので……」
「うん。料理でそこまで喜ぶ姿は見ないしどうしたのかなって」
舞だけでなく恋華からも言われる。別に料理は美味いし喜んではいるが、確かに自分でもそこまで顔に出るほどとは思えなかった。だがもし喜んだ顔をしてるなら何故なのかは分かる。
「いや、なんでもない」
僕は首を振ると共にこれは黙っておくことにした。恋華達は首を傾げるが追求しようとはしてこず、そのまま皆との雑談に戻る。それを眺めながら恋華が作ったであろうポテトを摘む。……うん、サクサクで美味いな。薄めの塩味にしてあるからしょっぱさも強くないから食べやすい。
「あ、秋渡くん顔が綻んでる」
美沙に声を掛けられ、僕は思わず目を背ける。だがどうやら見ていたのは美沙だけでなく、冬美や幸紀も僕の事を見ていた。いや、まぁうん。恋華のポテトも結構久々だったからな。退院してからは初めてだし僕好みの味付けだからやっぱり嬉しいんだ。
「お兄様可愛い……」
「ギャップ萌えってこの事を言うのかしら?」
舞が恍惚とした顔で、冬美が頬を染めながら顔を逸らして呟く。妹よ、可愛いとはどういう事だ。
「きっとそうですよ。私もいつか秋渡さん好みの味付けの料理を作れたらいいな」
「幸紀さんなら出来ると思うよ。ただあまり被りたくはないかな」
幸紀が薄く笑いながらそう言うと恋華が何故かそんな返事をする。
「何故ですか?」
「私の強みが薄れちゃうから……かな」
恋華が頬を掻きながら返す。それに幸紀も苦笑すると他の皆も笑っていた。少なくとも料理に関して言えば恋華が劣るとは思えない。寧ろ料理を始めとする家事全般得意なのだから専業主婦になれば心強い事この上ないだろう。幸紀、愛奈はお嬢様だから執事やメイドもいるからそこまで家事が出来る方ではないだろう。尤も、それは恋華と比べれば、の話だ。
「少なくとも僕はこの中でダントツで家事全般出来る人だと思ってるが?」
「私も同感です、お兄様。この家で過ごし始めてからも恋華お姉様の家事の手際の良さは見ていて勉強になります」
僕と舞が揃って言うと恋華は「そ、そうかな……」と照れながらも嬉しそうにしている。その横で星華がじっと僕を見やる。
「……でも秋渡も男で家事が出来るよね」
「確かにあまり男性は家事が得意というのはお聞きしませんね。星華さんの言う通り、秋渡さんは家事が出来ますよね?」
星華が僕に向けてそう言うと愛奈も頷く。
「いや、僕は裁縫関連は絶望的だからな?」
「秋渡くん、なんでもそつなくこなしそうなのに?」
裁縫をする所を見たことない美沙が首を傾げているが、この中で唯一見たことある恋華だけは苦笑していた。
「……誰にでも欠点はあるもんさ」
「お嫁さんには裁縫出来る人を求めてたからね、秋渡は」
目を伏せてそう呟くと恋華がくすくす笑いながら付け加える。
「あぁ……、恋華さんがその候補として昔は最有力だったと」
冬美が納得したように言う。確かに裁縫能力があると助かるとは思ってはいた。ただ昔は結婚どころか誰かと付き合う事すら考えていなかったからどうとも言えない。ご飯を食べながらそんなことを思いながら、皆で喧嘩せずに夕食を終えるのだった。
秋「こんにちは、秋渡だ」
恋「恋華です」
秋「数年ぶりの投稿となり申し訳ない。作者がうつ病になったりでドタバタしてたらいつの間にかこんなに間が空いてしまった」
恋「それでもブックマーク登録してくれてる人には感謝します」
秋「本当にありがとう。ただ非常に申し訳ないが今回の後も何時になるかは分からない」
恋「それでも待ってて下さると嬉しいです」
秋「正直作者自身こんなに書けなくなるレベルになるとは思っていなかったみたいなんだ。うつ病もそうだが生活環境も不安定になってるからな」
恋「ストレスとかも今は多くなっているだろうから皆さんも不安などがあれば親しい人に打ち明けてみて下さい。それだけでも大分気持ちは落ち着くとは思うので」
秋「それでも無理だった場合は時間がある時に動画等でもあるリラックス効果があると言われている音や音楽を聞いてみるのもありだとは思う。人によってどんなものが落ち着くかはバラバラだからこれがいいとは一概には言えない。が、僕からは水の流れる音や波の緩やかな音をオススメしておくよ」
恋「他にもアクアリウムとかも画面越しだとしても魚の泳ぐ姿や水草の揺れる姿は落ち着くと思います」
秋「と、まぁここまで言った中で聞いてみて落ち着いた等ストレス解消の参考にでもなれば嬉しい。作者もまた頑張って書く気ではあるからな」
恋「感想貰った時は本当に嬉しく思っています」
秋「今回は今までみたいな後書きにならなくてすまなかった事を最後に今回は終わろうと思う。では……」
秋・恋「また次話で!」
おまけ
秋「そういや恋華はどういう音とかを聞くと落ち着くんだ?」
恋「私も秋渡と同じで水が流れる音とかが好きかな。あとは猫の動画を見たりして癒されてるよ」
秋「なるほどな」
恋「それと……。やっぱり好きな人の声は落ち着くよ?」
秋「……そうか。僕も恋華とこうして話してると心が落ち着く。お揃い……だな」
恋「ふふ、お揃い……だね」