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第百二十八話 キッチンでの熱気

家に着くと使用人の人達が何人か待機しておりせっせかと寝具を運び出した。自分家に運ぶのだから手伝おうと思ったが、先程運転してくれた執事さんからやんわりと「新しく主人にもなる方にそんな事はさせられません」と言われてしまい仕方なくそれに従った。リビングで寝る訳にはいかないので空き部屋に運んでもらう。


「……結構いいの買ったんだね。こ、こんなの使っていいのかな?」


様子を見に来た美沙が僕の後ろからそう呟く。元々今日買った寝具は将来を見越してって事と家にあるものだと足りないからという理由もある。まぁ選んだのは全部幸紀なのだが……。


「正直僕も値段見た時にやめとこうと思ったが幸紀に押し切られてな。仮にここで安めのものを買っても後々幸紀の家ともしかしたら愛奈の家から送られそうな気もするし先に折れといた方がいいと思った」


「あはは、それは想像出来るね……」


「うちの両親ならやりかねないので否定が出来ないです……」


僕が半ば諦めたように言うと美沙は賛同して幸紀も困ったように苦笑する。そしてテキパキと運び終え、布団等のカバーを付け終えると使用人の人達は深々と頭を下げてから帰宅した。


「さて、料理の方はどうなってる?」


「殆ど作り終えてるよ。皆手際良くていいなぁ」


車を見送り、リビングに戻る前に美沙が答えてくれる。そういや料理出来ない……わけでもないがそれでも美沙と愛奈は他の五人よりも腕は劣る。前に食べた時の味から別に下手なわけではないのだろうが。


「まぁ恋華は昔から作ってたし星華もそうらしいしな。冬美も作りはするらしいし舞は爺達の所で作ってたみたいだし。明菜も櫻井ファミリーの所で作ってたようだから出来るんだろうな。まぁアイドルだと作る時間も少ないだろうし愛奈はそもそも専属がいるだろうからな。幸紀は花嫁修業……だったか?」


恋華のは昔から食べてたしよく分かってる。星華も作ってくれた事あったしな。舞と明菜は家に住んでるからそこで知ったし。後は大体があの決戦前の差し入れで。幸紀のは俊明さん達からそう聞いた記憶があるな。


「はい。お母様が将来の為にと昔から。最初は好きでもない人の為なんてって思ったのですが今はやっておいて良かったと思ってます」


少し頬を赤らめながらじっと僕を見つめてくる幸紀。流石に照れ臭くて目を逸らしてしまうが、それを見た幸紀はくすりと笑うだけだった。だが美沙は少しだけムスッとしていた。


「はぁ……。これならもっと料理とか学んでおけば良かったなぁ。これじゃ秋渡くんのお嫁さん失格だよぉ……」


美沙は半分いじけながらそうボヤく。


「そんなことはないだろ。そもそも美沙がアイドルとしてここまで来てなかったら僕と会うこともなかっただろうしこうして一緒に話すことも婚約することもなかった。だから美沙はそれで良かったと思うぞ。……尤も、僕とこうなるのが嫌だったとか一人で選ばれたかったならそうならないが」


美沙の頭を撫でながらそう言うと美沙だけでなく幸紀まで頬を膨らませる。


「……秋渡くん、イジワルだよ」


「秋渡さん、イジワルですね」


野暮な事を言ったのは理解している。いや、敢えてそう言ったのを二人も理解しているのだろう。言葉の割に口調は柔らかいのだから。


「そうかもな。だが結果として全員がこうして受け入れた。つまりはこうなったのは今までの美沙や他の皆の結果となったって事だ。なら気にする必要はないさ。料理を覚えたいとか他の家事を覚えたいなら聞けばいい。教えてくれるやつはたくさんいるだろ?」


恋華も星華も舞も明菜も。皆快く教えてくれるだろう。僕が教えることだって可能だし幸紀も同じだ。幸紀を見れば頷いてくれる。それを見て美沙は微笑んだ。


「……そうだね。うん、ありがとう、秋渡くん、幸紀さん」


「お気になさらず。きっと愛奈さんも同じでしょうし皆で秋渡さんに喜んでもらえるようにしましょう」


「うん!私、頑張るよ!」


幸紀と美沙の様子からもう大丈夫だろうと判断した。そうしてリビングへと戻ると。


「あ、秋渡さん、お帰りなさいませ」


「おかえり、秋渡君」


愛奈と冬美が皿を並べていた。料理は手軽なものがいくつか出来上がっており、キッチンからは美味しそうな匂いが漂ってくる。……恋華、気合い入れてるな。


「ただいま。なんかこれだとこれ以上何か作るのはやめておいた方が良さそうだな」


「ですね……。恋華さんと舞ちゃんがかなり張り切ってますので……」


キッチンを見る限り恋華と舞のやる気オーラが凄く感じられる。その横で星華が軽くジト目で二人を見ていたが熱中している二人は気付いていない。


「星華ちゃん、凄く溜め息吐いてたけどね。こんなに作ってどうするのって」


「それは私も同感です」


冬美が苦笑すると同じく苦笑している明菜が出来上がった料理を運んできた。今だけでもサンドイッチや唐揚げ、様々なサラダに寿司。……なんで寿司?


「ああ、このお寿司はお父様が送ってくれました。なんでも秋渡さんの勝利やら婚約やらのお祝いだそうで先程秋渡さん達がお出掛け中に届きました」


「……これ、大トロとかない?全体的に高そうなんだけど……」


愛奈の簡単な説明に美沙が軽い冷や汗を流す。だがそれは僕も同じだった。あまり高級過ぎるものは手を出したくないのだが……。


「雨音財閥は流石ですね。私の所からは寝具の代金を出すくらいしか出来なかったのに……」


「その寝具も高かったんだがな」


チラリとその場の皆を見渡す。よくよく考えればお嬢様が二人もいるしアイドルもいるのだから当たり前だったのかもしれない。いや、お嬢様二人の両親が過保護なのもあるだろうが。


「……まぁ色々と違うってことにしておこう」


「そうね……」


「それがいいわね……」


色々と諦めた僕に冬美と明菜が賛同してくれた。美沙は苦笑していたが恐らくはアイドル活動とかで泊まったホテルとかが高かったりしたのだろう。つくづく身分差を思い知ることになるな。


「……秋渡、あの二人止めないの?」


と、そこで星華が疲れた顔(?)でこちらへと来た。自分の作りたいものは作り終えたのか、それとも二人の熱気に耐えきれなくなったのかは分からないが、いつもの無表情でキッチンの二人を見やる。そこには恋華と舞が未だに気合いを入れて何かを作っていた。油を揚げる音が聞こえるので唐揚げかと思えるが唐揚げは既に作ってある。追加で作る必要は特にないだろうという量だしそもそも男は僕しかいないから人数分よりも多めに作られても困る。だからこそ何を作ってるのかを疑問に思ったが……。


「いい、舞ちゃん!秋渡はポテトが好き!けど太すぎず、細すぎない絶妙な大きさをちゃんと理解するのよ!」


「はい、恋華お姉様!揚げる時間はこれくらいですか?」


「今の温度ならもう少しね。サクサク感が少し出てるくらいならいい!」


「むむ!流石は恋華お姉様。お兄様の事をよく分かってますね……」


「伊達に一途に想ってただけじゃない事、分かった?」


「はい!ですが愛ならば私も負けていませんよ!」


「なら秋渡への愛を証明する為にこのポテトを上手く揚げてみなさい!」


……ポテトを作ってるのは分かった。けど会話は正直よく分からない。いや恋華が僕好みの大きさのポテトを揚げてくれてるのは分かるが愛をどうとかは今は関係ないのでは?だがツッコミを入れるのもなんだしこれはそっとしておこう。あと後ろから「愛ならば私達も負けませんのに……」とか愛奈が呟いていた。まぁ気にしたら負けだな。


「何にせよこれはもう少し掛かるな」


「そんな冷静に今のやり取りをスルー出来るのも大概だと思うけどね」


リビングに戻りソファーに座って待つ事にした僕の呟きに冬美からツッコミを入れらるのだった。




ア「どうも!アイギアスです!」

恋「恋華です」

舞「舞です」

明「明菜です」

ア「まずはまた遅くなってしまい申し訳ありませんでした」

恋「秋渡だったら即座に斬り付けるんだろうな……」

明「容赦ないからね。まぁ今は世間は大変だから無理もない気もするけど」

舞「失踪とか疑われましたけど……」

ア「そう思われても仕方ないほど前話は空いてしまいましたし今回も結構長く空いてしまったから無理もないです。すみませんでした」

明「本当にごめんなさい。楽しみにしててくれた方には申し訳ないです」

舞「このままだと謝罪だけで後書きが終わりそうですね」

恋「それだと流石に良くないかな。それにしても秋渡と幸紀さんが買ってきた寝具、いくらしたのかな……」

明「考えない方がいい気もするわ……。あれ絶対高値だもの」

舞「お兄様も頭を抱えていらっしゃいました……。それほどなのでしょうけど聞くのも怖いですね」

ア「ちなみに作者は高額の物とかよく分かってないのでその辺りは追求しないでください」

明「や、まぁそれは別にいいんだけど……。んー、まぁお金持ちが二人もいるしその両親共秋渡の事気に入ってるんだから良しとしましょう」

舞「ですね。そんな方にも認められるお兄様は流石です!」

恋「クスっ。そうだね」

ア「さ、次回はいよいよパーティーの開始ですかね!」

舞「楽しみです!お兄様、私の料理喜んでくれるかな……♪」

明「その楽しみは次話に残しておきましょ」

恋「そうだね」

ア「それでは……」

ア・恋・舞・明「また次話で!」


〜おまけ〜


恋「それにしてもここの皆料理上手くない?」

舞「私は昔から祖父の家で作っていたので……」

明「ファミリーにいた時に作ってたしね」

恋「私も昔から作ってたな〜。秋渡もほぼ一人だったから上手くなったもんだし」

舞「そういえばお兄様に料理を教えていたのってどなただったんです?」

恋「うちのお母さんだよ。私と同じ感じで教えてた」

明「そうだったのね。なら恋華さんのお母さん、お料理は秋渡と恋華さんの二人よりも上手なんじゃないの?」

恋「んー、どうだろう?今は私達の方が上手い……のかな?作るのは私が多いから多分私や秋渡のが上かな」

舞「私も教えて貰えないでしょうか……」

恋「多分二人も同じくらい上手だと思うけどね」

舞「ふふ、ありがとうございます♪」

明「私も!?」

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― 新着の感想 ―
[一言] 久しぶりです このくらいの頻度をだったらまだ待てます、ギリギリ多分 なので無理しない程度に無理をして書いていただけると助かります くれぐれも体調にはお気をつけて そういえば一話から数えると…
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