第十二話 新たなヒロインの登場!
遅くなりました。
申し訳ありません!
黒坂との戦闘から一週間。僕達は再び平和な学校生活を送って……
「愛奈さん、秋渡君から離れて!」
「嫌です!それなら会長さん、あなたが離れてください!秋渡さんが嫌がっているじゃないですか!」
……うん、平和な学校生活を送っているんだ……よな?
今のやり取りを説明すると愛奈と冬美が僕の両腕に抱き付いているといった状況だ。そして喧嘩。理由は僕の隣で腕を組んでいいのは一人だけなんだそうだ。訳がわからんがな。
「もう二人とも離れてくれ。めっちゃ歩きづらい」
しかも周りからは好奇の目で見られる。見てきてる女からは殺気が感じるがな。中には男で僕にガンつけている奴もいる。睨み返す。あ、目そらした。情けねーな。
「なら秋渡さんは私と会長さんのどちらを選ぶんですか!?」
微妙に自棄になりながら聞いてくる愛奈。その眼差しは自分を選んでほしいという強い思いが取れた。
「秋渡君、信じてるよ……?」
対する冬美は不安な目で僕を見る。その瞳は少し潤んでいた。
どーしろと。
「はぁ……。とりあえず冬美、もう二年教室に着くからもう行きなよ」
本気で呆れた声を出して僕は冬美に言う。冬美は不満そうに頬を膨らませ、渋々無言で去って行った。
愛奈は勝った!と言わんばかりに目が光っていた。こう、キラーンって感じに。別に愛奈を選んだわけじゃないんだがな。
教室に入ると少しいつもよりもガヤガヤしていた。何かあったか?けど何か学校の行事はなかったはずなんだが……。
「皆さん、どうしたんでしょうか?」
愛奈も同じ事を思ったらしい。とりあえず腕を放せと言いたい。
いや、それよりもクラスメート達だ。
丁度近くに橋本がいた。こいつに聞くか。
「おう、橋本」
「ん?お、世刻じゃないか。おはよう」
声を掛けると橋本はこちらに気付き、挨拶と共に座ってた椅子をこっちに向けて座り直す。
「ああ。ところでこの騒ぎは何なんだ?」
単刀直入に聞いてみた。さすがにいつもも確かに賑やかだが今日は異様にみんな賑やかだ。
橋本は少しクツクツ笑うと、
「ああ、何でもここの近くの街の噴水広場で今話題のアイドルの木上美沙が来るって話が出てな。それがきっかけでみんな木上に会いたいからってなったんだ」
「ご丁寧な説明あんがと」
「おう!けどなぁ……」
ん?どうしたんだ?見に行くだけなら無料だし何も問題ないだろ。
なのに橋本はなぜ困ってるんだ?
「どうした?」
「いや、見に行けるだけでも嬉しいんだけどさ。なんかたった一人だけその木上と一日だけ一緒に買い物ができる券があるらしいんだ。しかも入手方法は噴水広場近くのデパートでの買い物だけ。だから皆行くって話をしてたんだ。何か買えばその抽選券を貰えるらしいからな。一人一枚だけど」
「……正直どうでもいいがお前詳しいな」
なんでそんな情報まで持ってんだよ。違う意味でこえーよ。
そこでふと気になったこと。
「そういやそれっていつから配布されてるんだ?」
「…………まさかお前もデート券がほしいのか?」
「いや全く。そうじゃなくてそのデパートには用事があるからだ」
橋本が言ったのを即座に否定。僕はそう言ったアイドルとかに興味がない。そーゆーのは大抵オッサンが追っ掛けるのが多いし。何より今の世界じゃアイドルとかはあまり関係ないだろ。そのボディーガードも女だし。
「やっぱお前はそうだよな。ところで用事って?」
「いや、単なる買い込み。あとついでに少し本を見てこようかと思って…………、って、なんだその顔は」
用事を言っただけなのになぜか橋本は僕を哀れむ目で見てきた。なんでだよ?
「…………世刻、それ、いつ行く気なんだ?」
「ん?放課後……」
と言いかけて気付く。ひょっとして……、
「おい橋本、まさかとは思うが……」
「多分お前が気付いた通りだ。デート券の抽選券はきょうの四時から配布だ」
……今日学校が終わるのは三時四十分。そしてここからそのデパートまで大体二十分くらいかかる。つまりはその配布時間と丁度被るというわけだ。
「マジかよ……。でも今日買わねーと夕飯作れねーんだよなぁ……」
はぁ……。僕はとことんついてないようだ。放課後はデパートがめっちゃ混むだろうな。本は諦めよう。
「御愁傷様、だな。世刻」
「ああ。本当そうだな……」
さて、どうする。とりあえずそのデート券とやらは手に入れたら橋本にでもやろう。どうせ当たらんが。放課後は少し覚悟しておこう。
その後は他の人に聞いてた愛奈が戻ってきて僕と少し無駄話をしてた。やはり他の奴等も同じ事を考えていた。星華は違ったがな。理由は僕と同じでアイドルに興味がないからだそうだ。けど僕がデパートに行くっつったら顔を少し青冷めていた。けど木上とのデート券ではなくただの買い込みって言ったらあからさまホッとした顔をしていた。なんでだろうな?
ーー???side
「ここが深桜か。中々綺麗なとこじゃねーか」
そう言った男は右手に持ったパンをかじりながら言う。男の見た目は第一印象で既に強者というのがわかる程だ。なにせ彼の右頬には十字の古傷がある。それはどれだけの修羅場を抜けて来たのかを物語っていた。髪は短く、色は濃い黒だ。そして何よりも目につくのが瞳だ。色は青色で綺麗なのだが、それは人を簡単に殺せるという冷徹さも生んでいた。
彼がいる場所には風が吹いていた。男がいた場所はデパートの屋上。このデパートは八階建てなのでかなり高い。しかも八階は彼の購入した場所だ。だから普通の人は来ない。正しくは来れない。
「木上美沙がここを選んだ理由は頷ける。けどそれが仇になったことを思い知らせてやる!」
男はそう言ってパンを食べきる。そして着ていたジャケットのポケットから通信機を出す。
「……準備の方はどうだ?」
『順調に進んでおります。この様子なら明日とは言わず今日にでも間に合います』
男に応えた男も特に抵抗もなく答えた。
「よし、では明日の木上の自由時間で監視がほぼなくなるデートの時に仕掛ける。その選ばれた者には悪いが共に死んでもらおう」
『そうですね。ではまたご連絡致します、青葉龍大様』
「期待しているぞ、悠」
『はい』
プツンッ
通信機を切り、不敵に笑う青葉。
「女なんて簡単に男を裏切る。その事に気付かせるためにもまずは俺が木上を消してやる……」
クツクツ笑う青葉。その笑みはたとえ誰が来ても負けない強者の証でもあった。
「まぁ別に木上を恨んでるわけじゃないから正直どうでもいいんだがな。さて、寝るか」
大きな欠伸をして、青葉はベッドへ寝転ぶと少し眠った。
ーー秋渡side
放課後。僕はすぐにデパートへ向かった。頼むから間に合ってくれ!ちなみに愛奈や恋華や冬美には説明した。まぁ愛奈はわかっていたがな。恋華と冬美は最初はやはりと言うべきか木上とのデート券のことを言ってきた。しかしそれを即座に否定したらよかったぁ~、と安心してた。理由は知らんけど。ともかくそんなこんなで授業が終わると即座にダッシュ。皆はついてこようとしたがそれは断った。なんせゆっくり歩いていたらめっちゃ混んでる中に入らなきゃいけない。それは遠慮したい。と、言ったら皆納得したような顔をして、なら仕方ないと言ってくれた。
しかしやはり現実は甘くなく、
「もう混んでる……。しかももう四時じゃん……」
間に合わず、人がめっちゃいた。とりあえず急いで買って帰るか。半ば自棄になってデパートへ突入した。ちなみに橋本曰くこれは今日だけらしいので今日は少し買ってまた明日来るつもりだ。幸い明日は休みだし。
そうして必要な食材を買ったらレジへ。しかし、
「まいど。あ、兄ちゃん、これ抽選券な。あとこれは他人へやるのは禁止だからなー」
レジの兄ちゃんはそう言って抽選券を渡してきた。って待て、他人へあげるの禁止?マジかよ……。
「マジで?」
「マジだ」
オウム返しをされた。しゃーね、持ち帰るか……。あからさま落胆した僕を見てレジの兄ちゃんはキョトンとしたが、すぐに別の客が入ってきて営業スマイルで答える。スゲーな。そこでふと、
「はっ、もらってもこの抽選日に行かなきゃいいじゃん!」
ということに気付いた。ま、そもそも来ても当たるわけねーがな。なら来ても平気か。橋本達も来るだろうし、暇潰しに来てみるか。
「貰えるのが今日だけなのは抽選日が明日だからなんだな」
抽選券を見る。そこに抽選日が書かれていた。そこには明日の日付だった。ま、どうでもいいか。
「さっさとかーえろ」
そう言ってさっさと帰宅することにした。が、ふと妙な気配を覚えた。しかし一瞬だったため、よくわからなかった。なんだったんだ?なんか少し嫌な予感がするな。
「(てか今の気配、さっきのデパートからだよな?ま、考えてもしょーがねーか)」
そう思い込み、帰宅して飯を作り、風呂に入ってさっさと寝ることにした。
明日がとんでもないことになりそうな予感に駆られながら。
どうも。
最近文章力がなくてうまく文を書けないアイギアスです。
最近急激に冷えてきましたね。
まぁやることが多くてそんなに書いてる暇がないんですけどね。
さて、『大切な明日』はまた新たなヒロインが登場しました。正直アイドル系を書くのは私には難しくて考えるのが大変なんですよね。それでも次も読んで頂ければ幸いです。