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第百八話 最強と最凶の衝突

互いに吹き飛ばしを兼ねての一撃は両者共に少し仰け反っただけで終わった。だがそれだけで油断や体勢が悪いともっと強く飛ばされることだけはよく分かっていた。刃と刃がぶつかり合い、火花を散らしては距離を置き、そして即座に動いて攻撃をする。僕はそのスタイルをしているが、その動きを道場でやっていた時よりも数段素早くやらなければならなかったので疲労が溜まりやすくあった。しかも隙があったと思えた瞬間は暁によって距離を置くことになった時のみで他の時には一度もない。


「はぁ……はぁ……」


「くっ……はぁ……」


互いに再び距離を置くと荒い呼吸をする。無呼吸運動を何度も繰り返し、失敗すれば死ぬか決して小さくない怪我を負うということから集中力も相当なものであり、それが原因でほぼ無傷なのに追い詰められている感じがあった。


「ぜぇ……。本当に……やるねぇ……」


「はぁ……。こっちの……セリフだ……」


まだ一時間も経ってないのにこれではスタミナを切らしたらまず負けだ。何よりもこっちが主に攻撃してるからスタミナが切れるのは間違いなくこちらが先になる。左腕で汗を拭うと軽く息を整えて刀を構える。それに暁も汗を服で拭ってから長刀を構えた。そして今度は向こうから仕掛けて来たのだった。その動きは先程の呼吸が嘘のように鋭かった。


「くっ!」


キィンッ!と背後から現れた暁の長刀を振り返って両手の刀で受け止める。十字のようにして防いだ刀だったがそれはまだまだ甘かった。そのまま軽く宙を歩くかのようにして体を反転させて長刀を振るってくるのをまずは屈んで躱し、そのままの勢いで叩き付けるようにして縦に振るわれた長刀を次は刀で受ける。だが上からの攻撃だったからか、それか屈んで力をあまり入れられなかったからかその攻撃はとても重く感じた。


「(高いところからの攻撃は有利なのは分かってる。が、それは足場によるものが多いのにこいつのは少しでも空にいれば充分な重さになってやがる!こいつの体どうなってるんだ!?)」


内心そう悪態を吐きながらなんとか押し返した。暁は綺麗な宙返りをしながら地面に着地。そして暁を睨むと暁も余裕そうな笑みは浮かべておらずこちらを凝視していた。その目に油断なんてものはない。刀を構えてから今度はこっちが上に行きたいと思いながらどうするかを考える。


「考え事とは余裕だね!」


暁が怒りではないが眉間に皺を寄せながら猛スピードで突進してきた。僕は自分の反射神経、動体視力などを信じてその身を任せる。薙ぎ払われた長刀を右手の刀で受け流しつつ軌道を逸らして回避、脇を狙う蹴りを空中で回転しながら回避、そしてその間に暁を捉え、一閃。命中してもおかしくないその攻撃を暁は反射的に身を捻って回避。そして距離を置いてきた。


「……つくづく恐ろしい身体能力だな」


「君も人のこと言えないだろう」


「違いない」


暁の言葉に自嘲気味に笑うと再び刀を構える。暁も同じように刀を構えた。そして今度はこちらから猛スピードで突撃してその懐へ突っ込む。暁は少し笑ってから歯を食いしばり、僕が繰り出す一太刀を一つ一つ器用に、そして素早く防いでいく。右から狙えばそれに合わせて受け止め、左から狙えばそれに合わせて受け止める。簡単そうに見えて一撃が重い攻撃を数度も受け切れるわけがない。しかしこの男にそんな常識は通用しない。たとえ空中で攻撃されようとも軽く仰け反らせられれば充分というレベルの怪物。しかも僕は片手ずつに刀を持って暁は基本的に両手で長刀を構えているから力の分散もあって相当厳しい。


「ぐっ!」


「ほらほら!もっと全力で来なよ!」


僕の葛藤を読んだのか暁が試すように長刀を振りかざして来る。それを防いですぐに離れるが暁はすぐに距離を詰めて斬り掛かってくる。……後からなんか言われそうだけど仕方ない。やるか。

僕は暁がカウンターを決められることを覚悟で左手の刀を振るう。当然暁はそれを弾くとそのまま攻撃してくる。


ザシュッ!


「っ!?」


左肩から大きく斬られて噴いた血飛沫に僕は痛みを堪えるように歯を食いしばる。普通ならば避けられるはずの攻撃を僕が避けなかったことに暁は目を見開いたが、その間に右手の刀で小さくない隙を見逃さずに暁の右肩目掛けて斬り付ける。結果は……。


ザシュッ!


命中。僕もダメージが大きいが決して小さくないダメージを遂に暁に負わせることが出来た。結構な間互いに無傷だったのがお互い小さくないダメージを受けた。最初のダメージはこちらだが、暁にとっては多分自分がしてやられたと思ってるだろう。現に血が噴き出した肩を左手で抑えながら歯を食いしばっていた。


「かふっ!……やってくれたね」


口から血を吐きながら薄い笑みを浮かべながら睨んでくる。僕も同じように無言で血を吐いて暁を見る。やはりこいつからの一撃は大きく血が止まることはない。正直痛みが想像以上で結構深く斬られたみたいだ。少しフラつきながらも倒れることはない。口から血を流しながら刀を構える。左肩に痛みが走るがこれくらい我慢だ。庇いながら戦える相手ではないのだから。


「やっぱり君は恐ろしいね。僕にこんな深手を与えたのは君が初めてだよ」


「そりゃ光栄だ。もっともそれが無傷でやれたなら良かったんだがな」


「肉を切らせて骨を断つ。言葉通りそれをやるなんて思わなかったよ」


「このままじゃジリ貧だからな」


暁に向かって踏み込む姿勢を見せると暁も肩から手を離して刀を構えた。それと同時に僕は地を蹴って斬り掛かる。肩に痛みを感じるがそれを無視して暁に斬り付けると暁は今回は片手ではなく両手で僕の攻撃を受け止めた。刀と刀がぶつかり、その衝撃によって左肩に激痛が生じるが、それを堪える。しかし痛みによってか斬られた場所の問題なのかいつもよりも力が入らない。だがそれは暁も同じなのか痛みを堪えるように歯を食いしばっていた。


「(本当にとんでもない奴だな。普通なら戦闘不能でもおかしくないダメージなはずなんだが……)」


暁の肩からは深く傷付いたためなのか血が止まらない。かくいう僕もそうなのだが、少し体を逸らしながらだったためなのか暁よりも傷口は深くはない。だがそれは決して浅いダメージでもない。力の押し合いの末互いに距離を置いたのだが、すぐに肩を抑える。


「っ!」


右手で左肩を抑えながら左手で口元の血を拭う。やはりこの方法は試すには早かったか?思ってた以上の痛みに集中力が欠けてしまうことに苛立ちを覚えてしまう。自分のやらかしたことなのにそれでもだ。だがこの相手はそれでも倒すには至らない正真正銘の怪物。五神将の最強と最凶を今まで貫いた男。今まで同じ五神将相手にも傷をほぼ負わなかった者。そんな化け物が今目の前で血を流して肩を抑えている。そんな姿に思わず痛みを一瞬忘れて笑う。


「……どうしたんだい?いきなり笑って」


聞いてきた暁だが、なんとなく理由を察してるのか笑っていた。


「いや、お前みたいな化け物にも僕みたいな奴で傷を与えられるとは思わなかっただけだ」


そう返すと暁は口元の血を腕で拭うと笑みを深めた。


「それは僕も言えるかな」


「ほう?」


興味があってピクリと反応する。暁も息を荒くしながらも言う。


「まさか他の五神将でも出来なかった事を君はこんな方法でやってきた。しかもまさか一撃で僕にこんなに深い傷を与えてきたんだ。自分で言うのもなんだけど僕は化け物だからね。だから同じ化け物を相手に……いや、さっきのことを考えると君の方が一枚上手かな?」


「自分を下に見るとは意外だな」


「ふふ……、そう言わざるを得ないことをやられたからね。想定外だったんだよ?」


言ってから地面を踏み蹴り、僕に突撃してくる。刀をクロスさせて暁の長刀を受け止める。普段ならばそれだけで相手の動きは止まるのだがこいつは違う。弾き飛ばすように長刀を振ってくるとそのまま連撃を叩き込んでくる。刀と刀がぶつかり合う音が響き、暁が長刀を振るうと僕が受け止め、逆に僕が片手でも両手でも刀を振るうと暁が違うところから来る二刀を絶妙なところで長刀を斜めに構えて防いでくる。


「はぁっ!」


「そりゃっ!」


両方が攻勢に出てもまるでそこに頂点があるかのようにしてぶつかり合う。武器のぶつかりはあってもすぐにそこで反発したかのように互いに飛んで離れる。綺麗に着地をするとそのまま足を踏み出そうとして肩の痛みにその足が前に出なくなる。そこでしまったと思ったが意外にも暁も動かなかった。そちらへ視線を送ると暁も歯を食いしばっていた。その暁と視線が合う。


「ぜぇ……ったく……まさかここまで一撃でやられるとは思わなんだ……」


「僕もだ……はぁ……。本当に恐ろしいぞ……」


互いに軽口を叩く。それでもまだ目が死んでないことからこの戦いはまだまだ続くだろう。武器を構え直し、そして再び僕と暁は……


「うおぉぉぉぉっ!!!」


「はあぁぁぁぁっ!!!」


刀と刀、速さと速さで激突する。


ア「どうも、アイギアスです!」

秋「秋渡だ」

星「……星華です」

冬「冬美です」

ア「今回は早くもお互いに攻撃が当たった瞬間でしたね」

秋「あいつの攻撃はここに来るって分かってても素早い上にリーチ長いから結構被害抑えるだけでも難しいんだよな」

冬「見てるだけだと断言は出来ないんだけどあれ、狙われた場所は胸らへんだったの?」

秋「ああ。体を横にズラして肩に食らったが元々狙われてた所ならあいつはあんなに動揺しなかっただろうよ」

星「……狙い通りだったから」

ア「ですね〜。狙い通りだったらかなりの深手でしたよね?」

秋「肩の時点であれだけの激痛だったからな。下手をすれば意識も飛びかけるかもしれん」

冬「そ、そこまで……」

秋「ああ。それだけの力と技量があるんだよ、あいつは」

ア「想像できる分怖いです。さて、次はまた少し視点が切り替わる予定です!」

星「……そうなの?」

ア「ずっとお二人の戦いシーンだと他のキャラの心情が分かりませんからね」

秋「基本的に僕視点になるからな」

冬「なるほどね。で、本音は?」

ア「……文章力ないせいで長々と書けないんです。申し訳ありません」

星「……仕方ないこと。……それに実際分けたりしないと心情だけじゃなくて戦闘も終わるの早い」

ア「そうなんです。少しは引っ張れるように努力しますがそれでも厳しいです」

秋「ま、そこらは頑張れ。そろそろ終えるか」

ア「そうですね。それでは……」

ア・秋・冬・星「また次話で!」


オマケ


冬「そう言えば前回のメインヒロインはあの二人ってどういうこと……?」

星「……多分そのままの意味」

冬「ヒロインって柄じゃないのは分かっててもショックね……」

星「……まぁ秋渡が勝てばそれも杞憂に終わるだろうけど」

冬「どうして?」

星「……皆秋渡のお嫁さんになるから」

冬「あ、そ、そう言われればそうね」

星「……それに私は愛されるなら順番なんて気にしない」

冬「……ま、それもそうね。私達のために戦ってる秋渡君を信じましょう」

星「……うん」

冬「それでもどこか悔しい気分だわ」

星「……分からなくもない」


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