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第百七話 世刻秋渡と暁春樹という者

恋華達side


ーー

とうとう始まり、戦いの火蓋が切って落とされた。秋渡は刀を二本とも躊躇わずに抜き、春樹はその長い長刀で斬り掛かる。恋華達は二人が動いた瞬間、数名が画面越しにも関わらず知らずに強い悪寒に襲われていた。


「っ!はぁっ……!」


「うっ……」


「っ……!」


「はぁ……はぁ……っ!」


冬美、そして明菜の二人が、そして五神将の三人が強い悪寒に震え、そして愛奈、美沙を始めにする他のメンバーが思わず膝を付いてしまっていた。それだけ画面越しの二人の覇気は次元が違う。


「……おいおい」


「なんつー覇気と殺気だよ……」


「俺達でもこんなの味わった事ねぇぞ……」


達也、虎雄、龍大が思わずボヤくが、それにはこの場の全員が同じだろう。何せ秋渡は龍大との戦いで少しだけ本気を出したがそれでも若干抑えられていた。そもそもあの時本気を出したのは速度だけなのだから。だが今はその時の比じゃない。力も速度も、そして神経そのものを全開にしているのだから。そしてそれに対する春樹も秋渡と並び立つほどの力を全開にしている。更には殺気と覇気が入り交じった戦場となったのだ。


「にしても本気でやべぇな、あの二人」


冷や汗を流しながらも何とか平常心を保つ龍大の言葉に全員が耳を傾ける。龍大もそれに気付いて続ける。


「今の一撃目、最初は本当にそれぞれ一撃は重かったが二撃から数撃は音速レベルで攻撃が交わされてたぜ」


龍大は口元をニヤリとしてるが「あんなの、常人……いや、俺らにも出来ねぇ」と付け加えた。秋渡と春樹は一撃目をぶつけ合うと即座に少しだけ距離を置こうとしてそのまま互いに追撃をし、そして目に見えぬ速度で攻撃を加えたが、お互いにダメージはない。攻撃した場所は全て重なったために防がれたということが起こったのだ。


「なんつー奴らだよ。攻撃しようとした所がまるで鏡合わせのようになるなんてな。軌道が全部見えたわけじゃねーから断言は出来ねぇけど」


はは、と空笑いをする龍大に誰も返事が出来ない。冬美達はおろか五神将の達也と虎雄も驚愕の顔で龍大を見ていた。つまりはこの場……いや、恐らく見えたのは当事者らを除けば龍大だけだったのかもしれなかった。虎雄は二撃目は見えたがその先は見えなかった。達也は三撃目以降も分かったが、軌道まではさっぱりでボヤけて見えた程度で正直見えたかと言われれば微妙だった。しかし龍大は全てとは言えなくとも軌道まで見えていた。それは龍大もやはり五神将だと物語っていた。


「秋渡……」


自分の知っている幼馴染兼未来の相手にどんどん遠くに行ってしまうような思いを抱いてしまう恋華。だが、仮に遠くに行きそうになってもその手を引っ張るのが秋渡だ。それでも不安はあった。


「秋渡さん。お願いします……」


近くで幸紀が不安な様子を隠せず、秋渡に全てを託す。どの道この戦いが始まった以上恋華達は皆秋渡に託すしかなかった。それは普通ならばとても重みになることなのだが、秋渡は自らその重みを増させたがそれを苦となるとは思わずにそれをなす為に戦っている。普通の人では考えられないことをしているのだ。


「……お兄様なら大丈夫です。約束……してくださったので」


「ええ。秋渡なら……勝てるわよ。こんなに見守る人がいるのだから」


舞を支えながら明菜も舞に同意する。秋渡は約束を破るような男ではない。それを理解してるからこそ明菜もそう言えるのだ。明菜は画面越しに刀を振るい、時に避け、時に距離を置いてすぐつめると攻撃を繰り返す秋渡を見る。遠いからかその目は見えない。けどその目は決して勝てない戦いへ赴いた人間ではない。


「(寧ろ絶対に負けられないって目をしてるわよね)」


明菜はそれを分かっていた。秋渡なのだからそんな目が出来るのだろう。この場の五神将にも出来ないことを秋渡はやってのけるのだから。けどだからこそ秋渡がどこかへ行かないか不安になるのだ。


「にしても本当にすげぇ戦いだな。気が付きゃそこらが斬れ始めてやがる」


達也の言葉に同調するようにいくつかの建物が斬られて崩れていた。そして画面の中では秋渡の二刀と春樹の長刀が互いに攻撃をしながら周りの建物を巻き込んで崩していた。それだけで一撃の重さを物語っている。


「ふぅ……。んじゃ俺らは見守るとしますかね」


龍大はそう言って悠から用意してもらった紅茶を啜っていた。だが龍大に反対する者はこの場にはいなかった。


ーー

沙彩side


沙彩は深桜とは離れた街から秋渡と春樹の戦いを眺めていた。残念ながら目の前で見ることは叶わなかったがそれでも構わない。強いて挙げれば協力関係にあったのにボスと一騎打ちをするとは思わなかったことだった。しかし裏を返せば自分を危険箇所から逃してくれたということにもなる。そのため沙彩は強く責めることはしなかった。代わりに秋渡が安心して戦えるように裏で彼を狙う者を仕留めていた。


「ぐっ……てめぇ……」


その内の一人に沙彩の因縁相手も含まれていた。沙彩に敗北して地面に横たわり、顔には怒りを表している男。以前雨音愛奈を狙った男、高須武だった。沙彩と武は秋渡抹殺の関係を持っていたが秋渡と舞の様子から自分が騙されていたと知り、沙彩は裏切っていた。そこからは互いに出会うことはなかったのだが……。


「力をくれたことは感謝するけどそれは貴方にではないわ」


「それでも俺に攻撃する理由はねぇだろ!」


武は叫ぶが沙彩は静かなままだった。それに苛立つ武だったが、やがて彼に振り向くとその顔は怒りに満ちていた。その顔に気が付いた武は叫ぶのをやめると沙彩は静かに彼に近寄り、告げる。


「よくも私を利用してくれたわね……」


苦幻夢を扱えるようになりようやく復讐を果たせると思ったらその相手は違うという始末。彼女が怒りに飲まれるのも無理はなかった。しかもその相手がその勘違いの相手を殺させようとしたのだから。だが今は不思議とそれが嫌なこととは思いはしない。おかげで勘違いと分かり、寧ろ真実に近付いたのだから。それでも今秋渡に勝利したことがあるのは沙彩一人に変わりはない。この戦いで分からなくなるが、それでも彼は負けることはもうないだろう。


「さてと……。貴方には少し、眠ってて貰うわ」


「なっ!?」


「この戦い、妨害させるわけにはいかないわ」


そう言って武が何か言う前に苦幻夢を発動させて彼を暫く夢の中へ引き摺りこんだ。武は虚ろな目でぶつぶつと呟くがそれを気に咎めず沙彩はたった二人の戦場へ目を移す。


「頑張ってね、秋渡君」


それは初めて彼に応援をした彼女の言葉だったが、それが誰かの耳に届くことはなかった。


ーー

秋渡side


「はぁっ!」


「ふっ!……やるねぇ!」


「そっちこそ……な!」


僕が薙ぎ払えば間一髪の距離で避けて即座にカウンター。それを避けられてもそのまま蹴りや空いた片手で殴りかかる所はこちらへの牽制になる上に隙をなくすものだった。仕方なく飛び退いて距離を置くと、相手も同じように離れていた。


「(チッ……。まるで読まれてる気がするな。やりにくいったらねぇ……)」


内心そうボヤくが刀を交差させて構えるとそのまま斬り掛かる。暁は笑って長刀を一閃してから同じく斬り掛かって来る。そしてこちらとの距離が縮まるとこちらはクロスして刀を振るうのに対し、二本の重なり部分を的確に長刀で防いできた。


「っ!」


「あはは!流石だね、世刻くん!」


ギチギチと刀を押し合うが、ここまで決定打がないとは思わなかったな。隙も見せない、見せかけると長刀が凄まじい速度で襲ってくることから油断なんて出来ない。仕方なく力を込めて押し込むと暁は楽しげな笑みを崩して少し仰け反った。……普通なら後ろまで吹き飛ばす程の力を入れたんだがな。やはり只者じゃない。追撃を考えてたがそれはやめて暁の動きを警戒する。


「ふぅ。まさか僕が仰け反るとはね。いやぁ、凄い力だ」


「吹っ飛ばすつもりだったんだがな」


「なるほどね。それは助かったかな?」


暁はあくまでも楽しそうにするだけで全然疲れを見せる素振りすらない。僕は長刀を肩に担ぐ暁に刀を構えると迎撃体勢を取る。暁はそれに一瞬目を見開くとすぐにニヤリと笑い、そして……。


「そりゃっ!」


「っ!」


瞬時に降り掛かる殺気と覇気と共にその重たい一撃を受け止める。結果として少し後方に飛ばされて刀をX字に振るうと先程立っていた所から少なくとも五メートルは仰け反っていた。暁はそれを笑いながら見ていたが己の長刀を眺めてから言う。


「おっかしいな。今ので龍大達なら君の背後の壁まで吹き飛ばせる程だったのに」


「それは残念だったな」


暁は言葉とは裏腹に楽しげに笑っていた。軽口を返したが、奴の威力はまるで高速道路を走る車を受け止めるかのような重さがあった。それは比喩ではなく本気で思ったことだ。……やはり強い。僕は目を細めて刀を構え直す。暁はそれを眺めてから口角を上げた。


「まぁいいや。……これならもっと本気でやれそうだ」


「じゃあ、第二ラウンドと行くか?」


「勿論!行くよ、世刻くん!」


「来い、暁!」


そして両者が再び地面を蹴って己が武器を振るい、火花を散らしてぶつけ合った。


ア「どうも、アイギアスです!」

秋「秋渡だ」

恋「恋華です」

幸「幸紀です」

ア「お、今回はメインヒロイン(作者の中の話)の御二方ですね!」

恋「え、そうだったの!?」

幸「そうだったんですか!?」

秋「……まぁ目立ち方とか今までの描かれ方からすればそうかもしれないな」

恋「はわぁ……じゃ、じゃあ秋渡とは繋がりやすかったってことに……えへへ……♪」

幸「しゅ、秋渡さんが選んでくれると……ふふ……♪」

ア「トリップ早いですね〜」

秋「そうだな。さて、本編の方はと言うと深桜の副会長さんが出たりしてるな。裏でこんなことされてちゃ頑張らないわけにはいかないな」

ア「それに今のところ互いに本気のようで本気じゃない小競り合い状態になってますね」

恋「……はっ!?」

幸「……あ、あれ?」

秋「お帰り、二人とも」

恋「あ、うん……」

幸「は、はい。ただいま……です?」

秋「暁の実力は想像の遥か上を行ってたな。あいつの読みが恐ろしい」

ア「それも全てを踏まえて最強なのですね」

秋「だな。さてさて、果たして僕はどれだけ怪我することやら……」

幸「しゅ、秋渡さんなら大丈夫です!きっと!」

恋「そうだよ。秋渡は負けない。それは昔から見てるから言えるわ」

秋「……ああ、サンキュな、二人とも」

ア「自分もささやかながら応援しています」

秋「おう」

ア「あ、感想下さる方々、ありがとうございます!いつも読んでしっかり返事をしています!」

秋「やれやれ……。まあいいか。締めるとしよう」

ア「それでは……」

ア・秋・恋・幸紀「また次話で!」


オマケ

秋「あいつの攻撃……本気で隙がないな……。いや、隙を距離を離させるとかでカバーしてやがった。こりゃ辛くなりそうだ」



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