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特別話 クリスマス 2017

クリスマス。それは世の中のカップル達が浮きつく日でもあるだろう。たとえ女性が様々なことで優勢だろうともそこは変わらない。そしてそれはとある少年も同じことだった。


ーー

秋渡said


「……寒い」


クリスマスの朝、僕はそう呟きながら布団に潜っていた。クリスマスだかなんだか言われようとも寒いものは寒い。正直言ってずっと引き篭もってたいけどさすがにそういうわけにはいかないだろう。約束とかがあるわけではない。けれども絶対何かあることは変わらないので今日みたいな日は風邪を引いて寝ていたい。しかし残念ながらただ寒いだけで他は特に体調の問題はないことが分かっているから悲しかった。


「だからって……」


スマホの電源を付けるとメールの受信数が三百を超えていた。最初見た時は夢だと思って二度寝したのだが、起きてみたらむしろ増えていた。まぁ内容が凛桜の子達からのデートのお誘いなわけだが。普通ならばこんなに全体的に女子のレベルが高い凛桜の子から誘われれば嬉しいだろう。しかし生憎僕はそうはならない。いや、可愛いとは思うけどな?


「返信……しねぇと今日はまずいよな……」


今日とかの特別な日に返信なしは流石に良くないだろうしな。けどこのメールの量はどうしようか。流石に全部に返すと時間が掛かりそうだ。けど他に方法もないので全てに断りの返信をしておく。全員にやり終えたらまたスマホを置いて枕に蹲る。ついでに布団も被り直しておく。


「たまにはいいだろう……」


特別な日でもゆっくり過ごせたことはあまりない。年末とかは恋華の家族と色々してたしクリスマスも同じだ。そうなると全然休めないのでゆったりとは出来なかったのだ。だから何気に声の掛からないのをいいことに僕は再び睡魔に身を……。


「お兄様、おはようございます」


「秋渡、いい加減起きなさいよ」


委ねる前に妹と居候に妨害をされてしまう。仕方なく顔だけを布団から出して二人へ顔を向ける。舞は相変わらず笑顔でその銀と赤の瞳を僕に向けており、明菜は呆れながら溜め息を付いていた。舞が近寄って来る。


「お兄様、本日はいかがなさいますか?」


「寝てる」


「では私もご一緒に」


舞の質問に即答すると舞は一言言ってから本当に潜り込もうとしてきた。しかし逆に僕にはありがたくなることがある。舞を抱いてれば温かくなることだ。なので特に止めようとしないで再び襲って来ている睡魔と戦っていた。


「全く……。まぁいいか。あ、でも夜は出掛けるわよ」


「……何故だ」


「天音先輩から呼ばれてるのよ。小さなものだけどパーティーしようって」


「ゴロゴロ♪」


「一応聞くがそれ、男僕一人か?」


「ううん、橋本先輩と相澤先輩も一緒にどうかだってさ」


「ふふ……♪」


「分かった。じゃあそれまではのんびりさせてくれ」


既に甘えてきている舞の髪を優しく撫でる。地毛と分かってても疑ってしまうほどの綺麗な金色の髪は他人にはあまり触らせないらしい。僕もそうしようかと思って遠慮しようとしたら僕は別と言って触らせてくれる。本当にサラサラだな。ふと明菜はと言えばやはり溜め息を付いて「分かったわ」とだけ言って部屋から出て行く。残るは共にベッドで横になる僕と舞だけだ。


「えへへ♪お兄様♪」


「全く、甘えたがりめ」


「お兄様限定ですよ」


「そうか。じゃあちょっと失礼しようか」


「?」


撫でることをやめてから舞を腕の中へ抱く。少しギュッとすると舞はビクンと震えた。しかし舞はすぐに僕の背中に手を回してギュッとしてきた。そして幸せそうに顔を胸に埋めてきた。


「(ふむ、予想通りだな。こうしてた方が更に温まる)」


思ってることは流石に分からないが舞もきっと寒いのかもしれない。現にこんなにくっ付いて来るんだし。まぁ会えたのも遅かったんだし無理はないか。しばらくは自由にさせてやろう。


「(お兄様の匂い……。幸せ過ぎます……♪)」


僕と舞はそんな風に抱き合うことを恋華がやって来るまでの約一時間は続けていた。


ーー


「全く……。外に出るとどうなるかは知ってるからともかくまさか布団から出ようともしないなんて……」


「外に出ないだけでも僕には今日とかは平和になるからな」


着替えてからリビングで説教とは言えないがそれでも小言を恋華から頂戴する。しょうがないだろ、外だと異性といても声掛けられるんだし。はっきり言って美沙とかのアイドルなら分からんでもないがなぜ僕にこんなに声が掛けられるんだ……。


「はぁ……」


「恋華お姉様、ひょっとして羨ましいんですか?」


「はひゃっ!?」


恋華が漏らした溜め息に舞が少し口角を上げてニヤニヤしながら尋ねると恋華は上ずった声を上げた。それに明菜は「図星なんですね……」と呆れたように呟いた。


「ち、違っ!?」


「お兄様の腕に抱かれた温もりは最高でした……」


「なっ!?」


すっかり?蕩けた顔でトリップしている舞に恋華は絶句する。反対に明菜は頭を抱えているが……。明菜ってこうしてるとなんか保護者みたいだな。それよりも舞のやつ別に寒かったわけじゃなかったのか?まぁ甘えたかったのもあるだろうから別にいいか。何か減るもんでもないしな。僕はソファーに座りながら頬杖をついていると恋華は顔を赤らめながら否定しているがチラチラ僕を見ていることからバレバレだった。まぁその視線はスルーさせてもらうが。


「あ」


ふと僕は思い出したことがあって声を上げた。それに言い合いをしていた恋華と舞が、それを共に眺めていた明菜の視線が集まる。


「どうしたの?」


「ああ、そういやパーティーやるならプレゼント用意しねーと」


「そう言えばプレゼント交換するみたいなことも言ってたわね」


明菜に尋ねられて答えると明菜も思い出したように言う。僕はそれに頷くと仕方なく立ち上がって準備をするために部屋へ戻る。その前に全員に声を掛けておく。


「一緒に行くか?」


「行く!」「行きます!」「そうしてもらえると助かるわ」


恋華、舞ははっきり、明菜はホッと息を付いて答えた。そしてすぐに舞と恋華は準備のために動く。そんなに行きたかったのか?


「色々と参考にさせて貰うわよ?」


「期待はするなよ?センス良くないし」


「ふふ、分かったわ」


そう言って意味ありげな笑みを浮かべてから部屋へ戻る。僕も部屋へ戻って準備しなくちゃな。まぁ着替えは終わってるからコート羽織って財布とかスマホを持つくらいしかないけど。というわけでサッと準備が終わったのでリビングで待つことにする。ついでにメールを確認したら断った奴の返事が返ってきているのが多くあった。まぁ許してくれ。それらは悪いがスルーさせてもらうとしてプレゼントか。どうしようかな。いや、決められるんなら探すために出ることはないな。


「(女は準備に時間が掛かるからメールの見直しでもするか)」


それは恋華と出掛ける時によく分かってた。だから時間には余裕があるから少しだけ見ることにした。しかし、確認してみても特に大きな変化は見当たらない。まぁ誰からも来てないだけなのだが……。けどそれは別段悲しいことではない。なのでスマホを閉じてスっと目を閉じると少しだけ瞑想をする。修行ではないが、たまに五神将らとの戦いを思い出して振り返って自分の動きを再確認することにしていた。


棗との戦いは、一瞬で土煙の中でケリを付けたがあれはあいつの油断がまだあったから出来たことだ。もしそうでなければあんなにすんなり勝てるとは思えない。たとえ青葉ほどじゃなくてもパワーは武器の大剣から想像できることだしな。


黒坂とな戦いは、あいつの銃撃にまだなんとか対処できる範囲だったから勝てた。もし一丁じゃなく二丁だったらどうなってたかは分からない。それに冬美との戦いから体術もそれなりに学んでいるはずだ。なぜか僕との戦いでは使わなかったが何か理由があるのは違いない。


青葉との戦いは、完全に根気の戦いだった。最後は少しだけ本気を出して勝てたのだから我ながらまだまだ甘いと痛感させられた。自分の守るべき相手は守る。それを絶対に覚えていなきゃいけないことを覚えさせられた戦いだったな。


暁は……。


「お待たせ致しました、お兄様」


「ごめん、待たせたわ」


……タイミング悪くか良くか、舞と明菜が準備を整えてやって来た。二人ともコートを着てるから上は分からないが、舞は赤いフレアスカートを、明菜は青いジーンズを穿いていた。そして二人が来たので先に外へ出て隣から恋華が来るのを待つことに。やがて間もなく少しオシャレして恋華もやって来た。


「ごめん!お母さんに冷やかされて……」


「あー、おばさんいつも冷やかしてくるもんな」


恋華のお母さんは恋愛話に飢えているのかは知らないがよく僕と祭りとかに恋華が一緒になると冷やかしてくる。まぁそれに慌てふためく恋華だったからからかいがいがあるんだろうけど。そしたら恋華のお父さんは面白くないのか仏頂面になる。まぁ娘がたとえ幼馴染みだろうが男と親しげにしてるのは父親としてはいい思いはしないだろうからな。


「時間も惜しいし行きましょ」


「うん、そうだね」


明菜に促されて僕達は歩き出した。機会があれば恋華の両親と僕の話もするとしよう。


ーー

街へ出るとあちらこちらに人がいる。カップルもいれば友人らで出掛けている集団も見える。街の広場とかは大きなクリスマスツリーのイルミネーションが飾られたりしていてとても神秘的だ。僕は少し冷える手をコートのポケットに入れて寒さを誤魔化す。マフラーは巻いていないので首元も寒いがそれはコートで隠していた。


「お兄様お兄様!クリスマスツリーが綺麗です!」


「そうだな」


はしゃいでる舞を眺めながら恋華の隣に並ぶ。明菜は元気な舞を落ち着かせようとしているが、明菜の口角が上がってることからきっと楽しんでいるんだろうということが伝わってくる。櫻井ファミリーにいた時じゃ出来なかったことだしここまで賑やかになれることもなかっただろうから無理はないかもしれない。友達とこうして出掛けることも少ないと本人からも聞いていたし。ふとチラリと横を見ると恋華は微笑ましそうに二人を見ていた。そして視線に気付いたようで僕と目が合ってクリスマスツリーを見上げる。それに倣うように僕も見上げる。


「今年も変わらないね、これは」


「毎年変えられるわけもないしな。けどおかげでまたこの時期が来たんだなって思える」


「うん。今年は凄かったもんね」


本当に色んなことがあった。新たな出会いも正直多すぎると言っても過言ではないくらいにな。


「はぁ……」


「ふふ、息白いよ?秋渡」


「そりゃ冷えてるからな」


ふと吐いた息は白く、それを見られて恋華に笑われてしまう。まぁその程度でカッとなる僕じゃないから笑ったのだろう。恋華は長くなってきた髪がマフラーから出ないように抑えると少しだけ距離を近付けてくる。


「また、来年も同じように来れるかな?」


「それは僕達次第だな。進路のことも考えなきゃならんし」


「秋渡は決めてるの?」


「進学はしないと思う。勉強が嫌いとかはないけど特別そうまでして大学とか専門学校に行きたいとは思わないからな」


仮に大学に行くのはいいとしても専門学校は本当に行きたいようなところはない。それに、皆別々になると会える機会も減るのだからそれも考えてしまう。恋華は僕の話を聞いて薄く笑う。


「そっか」


「恋華はどうなんだ?」


逆に聞き返してみる。恋華の成績ならば大学も行けるだろうし調理とかの専門学校にも行けるだろう。だから気になってはいた。恋華は少し考える素振りを見せてから笑うと教えてくれる。


「私は就職かな。大学とか専門学校で色々と学ぶのも楽しそうだけど……」


恋華は一度言葉を区切ると少し顔を赤くさせる。それに僕は首を傾げるが、恋華は続けてくれる。


「やっぱり秋渡の傍にいたいかな。秋渡がいない大学とかに行っても面白そうに思えないし」


「……そうか。それは大変光栄だな」


「ふふ、思ってもないくせに」


少し冗談みたいなことを言ったら恋華には即座に見抜かれてしまった。やはり昔から一緒にいたから分かるのだろうか。けど……。


「恋華にそこまで思われていたことについては素直に嬉しいとは思ってるぞ」


「っ!もう、バカ……」


恋華に笑いかけてやると恋華は照れたように口元をマフラーに埋めた。それにフッと笑うと舞と明菜が近くに来る。


「何二人の空間を出してるのよ。ほら、早く行きましょ!」


「お兄様もお姉様も今はプレゼント選びですよ!」


「そ、そうね!い、行こ、秋渡!」


「そうだな。さっさと探すとしよう」


二人の空間と言われて恋華は顔を赤くしたが、やがて舞に引っ張られる形で再び歩き始めた。それに僕と明菜は付いて行くように後を歩く。そしてすぐにとあるアクセサリーショップに着く。まず感嘆の声を上げたのは舞だった。


「わぁ……♪お兄様お兄様!このお店、綺麗な物が多いです!」


「確かにそうだな。種類も豊富にあるし選びやすそうだ」


季節物もあれば普通に綺麗な物も多い。早速中へ入って物色してみるとまた予想以上に物は多かった。そして客も多いことから人気のある店なのだろう。


「多いわね。どれがいいのかしら……」


「深く迷うな。あのメンバーならどれだろうとも喜べると思う」


余程嫌な思いがあるものじゃなければ誰も文句は言わないだろう。僕も一人でざっと見渡してどれがいいかを考える。プレゼント交換用はそんなに深く考える必要はない。けれども僕には別の意味でプレゼントを渡してやりたいとも思う。全員が一緒なのはどうかと思うから同じ種類の色違いにしようかと思っていた。けど思ってた以上の数にどれにするか迷ってしまう。


「(ストラップ……いや、ここはリングか?けどネックレスも悪くないしな……)」


迷いに迷って色々と考え込む。それぞれイメージカラーは掴んでるからそこは大丈夫なのだが……。


「(人数が人数だからな……)」


合計八人。アクセサリーの種類も柄も迷う。仮にどれかに決められても色などが少なければ誰かと誰かが被ってしまう。となると色々と考えた方がいいんだが……。


「ん?」


ふとネックレスの棚に花柄の物を見付ける。しかも誕生石が真ん中に埋め込まれてるモチーフになってるからか色も豊富だ。それを見付けて僕はそのネックレスを手に取る。ざっと見ても色も不足していることもない。チラリと恋華達を見ればまだ決めかねているみたいで三人共こちらに気付いていない。僕はさっさとこれと思う物を手にして一応カモフラージュとして水色の雪の結晶が描かれている小物入れもプレゼント交換用として選び、レジへ。営業スマイルの女の店員さんがいた。


「いらっしゃいませ。プレゼント用ですか?」


「ああ。ネックレスは出来ればこの色と合っている包みに入れてもらいたいけど出来るか?」


「畏まりました。少々お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」


「ああ。あ、小物入れだけはこの小さな袋のラッピングで」


「畏まりました。先にお会計の方をしますね。ネックレスとチェーン、小物入れで……」


金額はやはり数があるから行ったが後悔はない。会計を済ませると店員さんは急いでラッピングを始めた。小物入れはさっさと終わったのでいいのだが、ネックレスは色違いの箱に入れて貰ってるから時間が掛かる。それを眺めて待っていると店員さんが作業をしながら声を掛けてくる。


「もしよろしければ終わり次第お呼びしますよ?」


「あー、じゃあ頼みますわ」


「はい。こちらが番号の札ですので店内でお待ちください」


「分かった」


店員さんから番号札を受け取ると店員さんはすぐに作業に戻る。手際を見ると慣れているためなのか作業が早かった。なので心配はいらないと判断してお言葉に甘えて店内を見て回る。すると何かと睨めっこしている舞がいた。その視線を追ってみると可愛い雪のヘアピンだった。


「欲しいのか、それ?」


「あ、お兄様。……はい」


どこか浮かない返事が返ってきたことに僕は眉を顰めるが、なんとなく理由が分かった気はした。


「別に僕はお前の金色の髪にその白いヘアピンは似合うと思うけどな」


「……え?」


「黒髪じゃないから目立ちはしないだろうが似合わないのはまた別だろ?むしろ僕や愛奈の方が髪と同化して分からねぇよ」


「あ……」


僕の言葉には遠回しに金髪に白いヘアピンは可愛い、僕は好きだということを伝えたのだが、それを舞は悟ったみたいだ。少し顔を綻ばせながらそれでも躊躇いがちに雪のヘアピンを手に取ると僕にそのヘアピンを見せてくる。


「私にお似合いだと思いますか?」


「ああ。少なくとも僕は似合うと思った」


「えへへ、ありがとうございます♪」


舞はお礼を言ってからレジへと向かった。それを後ろから眺めてから僕は明菜と恋華を探す。恋華はもう決まっていたみたいでレジに並んでいた。一つだけじゃなく何か別の物も見えるが気にしないでおこう。内緒に買いたいこともあるだろうしな。

さて、あとは明菜なのだが……。


「うーん、これがいいのかな……。でもなんかなぁ」


……凄く悩んでいらっしゃった。遠目からでも分かるほどにどれにしようか迷いに迷っている姿はあの戦いからは想像出来ない姿だ。カチューシャにしようかペンダントにしようか、はたまたブレスレットにしようか悩んでいるみたいだ。


「そんなに悩むか?」


「あ、秋渡」


話し掛けると普通に返事をしたことから頭が真っ白っていう状態ではなかったようだ。けど僕を見て商品を見てまた僕を見る。大方どれがいいか教えてほしいと言ったところだろう。


「ね、ねぇ、秋渡。こういう時ってどれにすればいいの?私、こういった行事とかに参加するのは初めてだから分からなくて……」


「あー、うん、まぁ……」


なんて答えろと……。というか今まで参加してても分からないよ。明菜が選ぼうとしている候補はクリスマスツリーのライトアップをイメージしたであろう明るめなカチューシャ、期間限定の雪の結晶のペンダント、水晶とアクアマリンとサファイアの三種類の天然石をモチーフとしたブレスレット。どれでも大丈夫だとは思うが……。値段はペンダントが一番高くカチューシャが一番安い。けどこれは値段じゃないからなるほど、迷うところだろう。しかし僕がざっと見ても明菜の選んだ物の候補はブレスレットが綺麗だと思った。


「ブレスレット……かな」


「どうして?」


「カチューシャはあいつらの中で着けるとしたらライブの時の美沙くらいだしペンダントはチョイスはいいけど高いイメージが強いから愛奈と幸紀以外は恐縮しそうだ。その点ブレスレットなら特に問題はないし手軽に着けられるからな」


「なるほど。確かにその通りね。じゃあこれにするわ」


「いいと思うぞ」


明菜は妙に嬉しそうにブレスレットを持ってレジへ行った。そしてタイミング良くそこでラッピング終了の呼び出しを受けてレジとは別のカウンターへ行く。そこには先程の女性店員さんがいい仕事したと言う顔をして大きな袋を用意していた。


「あの数を別々に持ち帰るのは大変ですからね。こちらを使ってください」


「すまないな。気遣いの上手い人だな」


「ありがとうございます。お兄さんもどなたに渡すのかは存じませんが喜んでいただけることを祈っています」


「……サンキュ」


僕は店員さんと軽く会話をして袋を受け取り、それを持って外へ出る。結構時間が経っていたようで夕方になっていた。外は相変わらず冷えてるが不思議と嫌な気分にはならない。袋の中も確認するとあの店員さんが気を利かせてくれたのかラッピングの袋に中のネックレスの天然石の色が書かれた紙が小さく挟まっていた。これなら袋だけで判断する必要もないので分かりやすい。本当に出来た店員さんだな。


「秋渡!」


店から恋華が出てくる。気のせいか小さな紙袋とラッピングされた袋があった。大方気に入ったアクセサリーとかがあったのだろう。


「って、凄い大きい袋ね……」


「ああ、ちょっとな」


「??」


「気にするな。他に欲しい物があっただけさ」


「秋渡ってそんなにアクセサリーに興味あったっけ?」


「さぁな?」


……やはり恋華相手に誤魔化しは無理か。ま、それはそれでいいか。やがて舞と明菜も合流し、四人で帰る。昼は食べると夜に食べられなくなりそうなので我慢した。明菜から聞いた話では愛奈のところのシェフが張り切って色々と作ってるらしいし。


「お?」


ふとフワリと白いものが降ってきた。


「雪だ」


それに気付くと辺りではホワイトクリスマスだの神秘的だの盛り上がっている声が聞こえる。かく言う僕も頬を緩ませ、恋華にそれを見られてクスッと笑われたが毎年のことなので気にしない。舞は感嘆の声を上げており明菜は口角を上げているだけだった。それでもこれは嫌な景色ではない。街のイルミネーションに自然の白が加わったのだから更に綺麗になった街が嫌な奴はいないだろう。そして四人で顔を合わせるとまだ早いかもしれないが先にフライングで言っておく。


「「「「メリークリスマス!」」」」


声を揃えて、笑い合いながら。



ア「どうも、アイギアスです!今年もあと僅かですね!皆さんは良いお年でしたでしょうか?」

綺「それよりも今年のクリスマスの話、あの四人だけなの?」

ア「はい。今年はパーティーの様子はどんな感じなのかをイメージしてもらいたいな、と思いまして」

優「去年のは結構危なかったわよね……」

ア「あはは……。まぁでも秋渡くん達が選んだプレゼントをヒロイン達がどんな反応をするのかを想像するのは面白いと思いますよ!」

綺「仮にそうだとしても少しくらい様子は書きなさい。読者にクレーム付けられるわよ」

ア「うっ!」

優「楽しみにしていた方は申し訳ありません。あ、そう言えば申し遅れました、私は……」

ア「ここでは下の名前だけで名乗って下さいね」

優「そうなの?では改めて優衣です」

綺「綺羅です。ま、パーティーの様子はもう想像してもらうしかなくなったわね……」

優「はぁ……。でもこれが感想とかで何か来たらきっと面白いわよ。なんやかんや感想にちゃんと返信してるし間違いとかを指摘されたら直すようにはしてるし」

綺「感想を下さった方々、本当にありがとうございます。メインヒロインでもなんでもない私達が言うのもなんだけど作者にはとても励みになってるので今後ともよろしくお願いします」

ア「ではここで終わりましょう!せーの……」

ア・綺・優「また次話で!そしてメリークリスマス!」


おまけ


秋「プレゼントは皆ちゃんと行き渡ったな」

恋「そうだね。秋渡は誰からの?」

秋「それは内緒だ」

恋「えー!教えてよ〜」

秋「……全く、僕が気に入りそうなものを一番知ってるから浮かれてるのを知ってるのにか?」

恋「え?」

秋「さぁな。恋華は何を貰ったんだ?」

恋「秋渡が教えてくれないなら教えないもん!」

秋「そか。なら聞くのはやめておこう」

恋「……諦め早いね?」

秋「まぁな。ちなみに僕はプレゼントに雪の結晶が描かれた小物入れを選んだことだけは言っておこう」

恋「…………え?」

秋「おっと、独り言だから気にするなよ?」

恋「……私は雪の結晶の形をしたネックレスにしたんだ。あ、これは独り言だからね?」

秋「そうなのか。それはまた凄い偶然だな?」

恋「そうだね。本当に凄い偶然だよね」

秋「僕の手元には雪の結晶の形をしたネックレスがある」

恋「私の手元には雪の結晶が描かれた小物入れがあるよ」

秋「……良かったよ、喜んで貰えて」

恋「それは私も同じだよ」

秋「ま、今年も残り少ないがよろしくな」

恋「うん!こちらこそ、よろしくね!」


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