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恋の果実  作者:
7/21

もう一人のプリンス

「一ノ瀬君?」

「あっ! 桜ちゃん!!」

 そう、屋上にあった人影とは、藤咲君ではなく一ノ瀬君のだった。

 でも、なんでこんなところに?

「あの、お邪魔だったみたいですね。すみません、すぐに失礼します」

 私がいたら邪魔だろうし。それに、泣いてるところなんか見られたくないしね。

 私が教室に戻ろうと後ろを向いた瞬間、腕をつかまれた。

「別に邪魔じゃないから、ここにいていいよ」

 一ノ瀬君はそう言って笑ってくれた。

 よかった。邪魔じゃなかったんだ。でも、一ノ瀬君と二人っきりなのは、少しきついかも。

「はっ、はい、わかりました。あの、さっきの話ってなんだったんですか?」

 『ちょっと話があるんだけどいい?』さっきの言葉がずっと気になっていた。私なんかに、なんの話があるというのだろう? 話したのも、たぶん今日が初めてだろうし。

「あー。その話をする前に、言っておきたいことがあるんだ」

 私は首をかしげる。

 なんだろう?

「さっきはごめん」

 はい? なんで一ノ瀬君が謝ってるの?

 私はキョトンとしながら、彼の姿を見ていた。

「なんで、一ノ瀬君が謝るんですか?」

「だって、みんなの前であんな目立つようなことしちゃったし、クラスの女の子に何か言われたでしょう?」

 別に一ノ瀬君が悪いわけじゃないのに。

「そのことなら、別に大丈夫ですよ」

 そう言って、私は少しだけ笑う。

「なら、なんでさっき泣きそうな顔してたの?」

「えっ!? そんなことないですよ。見間違えじゃないですか?」

 なんで、一ノ瀬君がそんなこと知ってるの? まさか、見られてた?

「無理しなくていいよ。嘘つけないタイプだね、顔がひきずってる」

 やっぱり華と同じこと言うのね。昔は、みんなにそう言われてたっけ……。

「すみません。私、もうそろそろ教室に戻ります。華が心配するので」

「うん、わかった」

 私ははやばやと屋上を出た。

「やっぱり、昔と全然変わってないね。桜ちゃん」

 一ノ瀬君のそんな言葉にも気付かなかった。

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